No.534761

IS~ワンサマーの親友~ep11

piguzam]さん

大喧嘩までの鍛錬とスウィートタイム

2013-01-22 08:23:16 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:11261   閲覧ユーザー数:9573

 

 

前書き

 

まだ引っ張ってすいませんが、決戦は次話ですね。

 

今回は決戦までの動きです。

 

描写細かくするとストーリーが進まないので……鈍足ですいません。

 

なるべくサイドストーリーは面白くなる様に頑張ってます。

 

これからも忌憚無いコメントをお願いします!!

 

それでは、どうぞ!!

「よっこいせっと……ハァ……やっちまったな……」

 

先程、俺自らの手で人生の終止符を打ってしまった戦友である電子机を備品庫へ持って行き、入れ替えとして新たな戦友を担いだ俺はあの戦場(クラス)へ足を運んでいた。

既に授業は終わりのチャイムが鳴っており、クラスではもう休憩時間に入ってる筈だ。

 

まぁそれ自体はいいんだが……教室へ向かう俺の足取りはかなり重かったりする。

理由はまぁ……言うまでもなく、さっきの時間で俺がクラス内でヤラかした暴力騒ぎの所為だ。

別にあの腐れアマに暴力を振るった事自体はどうでもいい。

むしろ思いっ切りブン殴ってやれなかった事の方がとても悔やまれる。

だが、俺はあの場で腐れアマ以外にも、全く関係の無いクラスメイト全員を怖がらせちまった。

どうにも俺って奴は、怒りに呑まれると周囲の人間を善悪関係無しに威嚇しちまう。

まだ千冬さんや冴島さんの様に、特定の人間のみを威圧するって事ができねえ。

その所為で今回の騒動では、クラスの全員に俺の怒りの感情を浴びせるという最悪の結果になっちまった。

 

「まぁ……怖がられるのは仕方ねえか……カンッペキに俺の自業自得だしな……」

 

俺は自分に言い聞かせながら自分のクラスを目指すが、やっぱやっちまった感がハンパねえ。

 

これで俺は十中八九、クラスから孤立すんだろうなぁ。

いやでも恐らく一夏と箒辺りは俺に変わらず接してくれると思う。

あの2人と長いことツルんできた俺には、そんな確信めいたモンがあった。

 

だが、それは長い時間を一緒に過ごしてきたあの2人だからだ。

俺が今回の件で一番ヘコんでるのはその2人の事じゃなく、他のクラスメイトの事だ。

 

「……多分、本音ちゃん達はもう……無理だろうなぁ……ハァ」

 

俺は盛大に肩を落としながら、電子机を担ぎ直して歩いていく。

 

そう、俺が一番ヘコんでるのは、ルームメイトの本音ちゃんや、今朝方に自己紹介をした相川と夜竹って3人にも怖がられてるだろうって事だ。

せっかく自己紹介して今朝は仲良く喋ってたってのに、多分もう俺とは目も合わせちゃくれねえだろう。

自慢じゃねえが、俺の怒りを全身に浴びても俺に変わらず接してくれる人間ってのは、そうはいねえ。

長い月日を一緒にバカやってきた弾や数馬、弾の妹の蘭ちゃんとかは俺が怒る理由も知ってるし、そんな俺を受け入れてくれる。

だが、あの3人は無理だと思う。

なんせ知り合ってたった2日しか経っていねえ上に、アレだけの怒りって感情は浴びた事がねえ筈だ。

俺の本気の怒りは、野生の王者であるヤマオロシでさえもビビっちまうような代物だし。

あんな普通の女の子達がソレを全身で受けた日にゃあ……ショックで倒れてもおかしくねえ。

ホント……マジでやっちまったな、俺。

せっかくの高校生活も、これでハブられんの確定か。

特にルームメイトであり、俺の心のオアシスである本音ちゃんに怖がられるって思うとマジ気が重いぜ。

それもこれもあれも全部あのド腐れアマの所為だ、俺をどれだけ怒らせりゃ気が済むんだあのクソアマが。

おのれ腐れアマめ……神に誓ってぜってーにブチのめしてやる。

俺は腐れアマに対する怒りをもう一度チャージして心の奥に仕舞い、そのままクラスを目指す。

 

そして沈んだ気持ちで歩くこと10分、ついに魔の戦場(クラス)へ到着してしまった。

俺は扉を開ける勇気が持てず、その場で立ち止まってしまう。

 

「……ここでこうしてても仕方ねえか……ええい!!ままよ!!」

 

俺は投げやりに気持ちを切り替えて、遂に自動ドアの前に立って扉を開ける。

 

シュンッ

 

『『『『『……』』』』』

 

俺が教室に戻った、というか自動ドアが開いて俺の姿を捉えたクラスメイトは、全員静かに、それでいて俺をじっくりと凝視してくる。

オマケに誰も喋ろうともしないので、クラスの雰囲気はかなり重い。

しかも1つだけ空席がある。

そう、あの腐れアマの座っていた席だ。

まぁあの腐れアマが何処に行こうが何しようが俺にゃ関係ねえ。

俺はなるべくクラスメイトと視線を合わさないように自分の席があった場所まで歩いていく。

 

「おう、お帰りゲン」

 

「随分と遅かったな、道にでも迷ったか?」

 

すると、俺を視界に収めた一夏と箒は、周りの目も気にせずに俺に声を掛けてきた。

2人の表情は、まるでさっきあった騒動なんてまるで覚えてないって感じでにこやかだ。

しかも箒にいたっては冗談まで飛ばしてきてくれる。

あぁ……やっぱりコイツ等はイイ奴だな……ダチで良かったぜ、ホント。

俺は目の前にいる友達想いの2人に笑顔を浮かべていく。

 

「なに、ちょいと美味しく道草食って……いや飲んできただな。それでちょいと遅くなっただけだ(ドスンッ)」

 

「お前、千冬姉の授業中に飲みモン飲んでたのかよ?勇気あるな」

 

「なーに、オメエ等が言わなきゃいいだけだろ?」

 

「授業中に飲食は、余り感心できんな」

 

「そう固てー事言うなって箒」

 

箒の軽口に同じ様に軽く返しつつ、俺は電子机を床に降ろす。

中に入っていた参考書の類いは床に固めて置いておいたので、それを真新しい机に仕舞う。

俺が遅れた理由を聞いて呆れ顔を浮かべる一夏と箒だが、あんな事があったんだ、ちょっとぐれえ許してくれ。

 

俺達がそんな会話を繰り広げている間も、他のクラスメイト達は一切喋らない。

そのせいか、俺達の声はよく響く。

わかってたとはいえ、これはキツイもんだな。

俺は周りの沈黙を誤魔化すかのように、一夏と箒に何か明るい話題を振ろうとして……。

 

シュインッ

 

「ただいま~……あ~、ゲンチ~だ~♪お~かえり~♪」

 

「んえ?……」

 

教室の後ろのドアから掛けられた声に、俺は間抜けな声を挙げてしまった。

そして俺が振り向くと、声の主はトテトテとゆったりとした歩きでニコニコしながら俺の傍に来る。

 

「およ?ど~したのゲンチ~?なんか~豆鉄砲が鳩喰らった~!?みたいな顔になってるよ~?」

 

「のほほんさん、それ逆だぞ?」

 

「豆鉄砲が鳩を食らう……何やら珍妙というか……えげつない光景だな」

 

「うぇ……止めてくれよ箒……銃口に鳩が首突っ込んでる光景が頭に浮かんできちまった」

 

俺に声を掛けてきた子に、俺の傍にいた一夏と箒がそれぞれ声を返していく。

しかし俺は余りにも信じられない出来事で頭がバーストしそうになっていてその子に声を返せずにいる。

え?ウソ?なんでだ?

 

「んむ~?どうしたのさ~?ゲンチ~?」

 

俺の呆けた顔を見て首を傾げる、電気ネズミのような髪留めを左右に結いつけた、ダボダボの裾がトレードマークの女の子。

混乱の真っ只中にある俺はその子の声にハッとして、少しばかり現実に戻って来た。

 

「……本音……ちゃん?」

 

「うん~?な~に?ゲンチ~?」

 

俺のルームメイトにしてIS学園の癒し系アイドル、本音ちゃんは首をコテンと倒しながら、昨日と変わらぬ様子で接してくれた。

うん、相変わらず仕草の1つ1つが和む……じゃなくて!?

俺は恐ろしいまでのマイナスイオンオーラを放つ本音ちゃんの雰囲気に当てられて夢見気分になりかけていた思考を振り払う。

 

「……恐くねえのか?」

 

「んに?なにが~?」

 

俺の何とか搾り出した一言に反応した本音ちゃんは更に首を傾げてしまうが、俺には本音ちゃんが何時も通り接してくれる理由が分からなかった。

だからこそ、俺は更に言葉を続ける。

 

「だからよ……俺が恐くねえのか?……さっきの俺のツラ、見ただろ?」

 

俺は拒絶されるかもっていう怖れを呑み込んで、真剣な表情で本音ちゃんに問う。

あん時の俺の形相はマジで『良い子には見せらんないよ』っていうか『トリコのゼブラがぶち切れ』状態だったし……絶対恐がってると思ったんだが。

 

「……ぜ~んぜん♪」

 

だが、俺が戸惑い躊躇しながらも搾り出した一言は、本音ちゃんの笑顔を乗せた言葉で呆気なく答えられた。

いや、しかも全然って……微妙に自信無くしそぉだぜ。

本音ちゃんの何時も通りの様子に毒気を抜かれて俺がぼけ~っとしてる間にも、本音ちゃんは笑顔で言葉を続ける。

 

「だって~、ゲンチ~は、セッシ~に大切な人の事を~わる~く言われたから、怒ったんでしょ~?」

 

本音ちゃんの言うセッシ~って……あの腐れアマの事か?

 

「まぁ……そうだけどよ……」

 

「でしょでしょ~?確かに凄かったけど~、ちゃんとした理由があったもん~、だから~♪わたくし布仏本音は、全く恐くなかったので~す♪」

 

「……本音ちゃん」

 

やべっ、滅茶苦茶嬉しいっつーか、何この天使様?いやこの女神様は?

さっきまでビビッてた俺が今の言葉でどれだけ心が暖まった事か……本音ちゃんマジ女神だぜ。

俺が本音ちゃんの言葉にほんわかとしていると、本音ちゃんは笑顔を崩さずに俺と視線を合わせてくる。

 

「それに~……ゲンチ~と仲悪くなっちゃうのはやだもん~♪ゲンチ~のパフェ食べれなくなっちゃうよぅ♪」

 

あれそっち!!?

 

「後半が本音か!?」

 

「ちゃっかりしてるな、布仏」

 

「にひ~♪」

 

本音ちゃんのちゃっかりとした言葉に一夏は驚きの表情で突っ込みを入れる。

そんな一夏にものほほんとした表情でニコニコ笑顔を絶やさない本音ちゃん、君本当にちゃっかりしてんな。

一夏の横に居る箒も、呆れながらも本音ちゃんの言葉に笑顔を見せていた。

一夏、突っ込んだら負けだ。

俺も突っ込みたくなったが、寸での所で踏ん張ったぜ?

まぁどうあれ、俺みたいな乱暴者を暖かく迎え入れてくれた本音ちゃんには感謝してもしきれねえ。

ちゃんとお礼はしねえとな。

 

「本音ちゃん」

 

「はいは~い♪」

 

俺は現在進行形で周りにマイナスイオンを撒き散らしてくれてる本音ちゃんに笑顔で声をかける。

 

「約束のパフェ、感謝を込めて今日は特別に2個、デザートに出させてもらうぜ」

 

俺は笑顔で指を2本立てながら本音ちゃんに感謝の気持ちを伝える。

そして、俺の感謝を込めた提案に本音ちゃんは目の色を輝かせた。

うん、この笑顔が見れるならパフェを作る苦労なんて安いモンだぜ。

 

「ホント~!?2個も作ってくれるの~!?ホントにホント~!?」

 

「あぁ、勿論だ。腕によりをかけるからよ。楽しみにしててくれ」

 

「わ~い♪や~りぃ~♪」

 

俺の言葉に本音ちゃんは可愛らしくガッツポーズを作って喜びを露にした。

そんな本音ちゃんの様子を微笑ましく見ながら、俺は心中で安堵の息を吐く。

しっかし……俺を恐がってねえ子が本音ちゃんだけでもかなり有難いとこ……。

 

『『『『『な、鍋島君ッ!!!』』』』』

 

「ぬほぉう!!!??」

 

俺が本音ちゃんの有難さと優しさを噛み締めていると、何やら急にクラスの全員が俺に向かって雪崩れ込んできた。

え!?いやちょ!?マジで何事ですか!?

俺が行き成りの事態にテンパッていると、女子のやたらキラキラした視線が雨霰と降り注ぎ始めた。

 

「わ、私達ももう怖くないよ!?」

 

「うんうん!!さっきはチョ~怖かったけど、家族とか大切な人の事言われたら仕方ないよね!!」

 

「お……おぉ?」

 

まず先陣を切って俺に詰め寄ってきたのは相川と夜竹だ.

2人ともちゃんと俺を視界に捉えながら話しかけてきてくれる。

その2人の目には、恐怖とかの感情は一切見えなかった。

お前等も……俺の事をハブらないでくれんのかよ?……ありがてえぜ。

そして、俺に畏怖の眼差しを向けていないのは相川と夜竹だけじゃなく、詰め寄ってきた女子の誰も彼もだ。

 

「同感。いくら今は女の方が立場が上でも、人として言っちゃいけない事は変わらないもんね」

 

「私は日本人じゃないケド、オルコットさんのアレはダメだっていうのはわかるヨ。私だって、自分の住んでル国の事とか、家族の事悪く言われたら嫌だシ」

 

「っていうか、例え試験でも千冬様に勝った鍋島君に女の方が強いなんて口が裂けても言えないって」

 

「そうだね~。さっきの鬼も逃げ出す様な迫力ギガ盛りのコワモテフェイスと、頑丈な鉄製の机を一発でオジャンにしちゃうパンチなんか見せられたら無理無理。あたし等なんかパンチ一発でザクロだよ?」

 

「鍋島君は、大事な人のため怒ったんデショ?ワタシ、そういう人って、凄いと思ウ……ワタシも……アンナ風に……守ってもらいたいナ♡」

 

「それに、家族とか大切な人の為に怒れる人って……カ、カッコイイし」

 

「あっちょっと!?アンタ達何抜け駆けしてんの!?」

 

「『俺が、『鍋島元次』本人が、あの『喧嘩』は『負け』だって思ってる以上、あれを『勝った』なんて言いたくねえ』……もうなんか、アレで溶けちゃいそうだった」

 

「ねね!?昨日もそうだったけど、さっきの鍋島君って、体から何か蒼い炎みたいなのが見えたんだけどあれ何!?教えて教えて!!」

 

「あ~あ。アタシもあんな風に怒ってくれる彼氏欲しかったなぁ~。まぁ彼は彼でいい所があるんだけど♪」

 

「へ!?アンタ彼氏いたの!?」

 

「これより異端審問会を始める!!罪状はNU・KE・GA・KEについてだ!!」

 

あれ?なんか後半余計なのが多々混じってる希ガス。

 

1人女の子連れてかれたし。

っていうか誰かヒートアクション使いたがってた?修行すれば使えるぜ?

そのままクラスの雰囲気はさっきとは打って変わって賑やかなモノに変貌してしまった。

そんな様子を眺めながら、俺は笑顔を浮かべてしまう。

良かったぜ……このクラスで、ホントによ。

俺は肝っ玉の据わってるクラスの女子達に感謝の思いを抱きながら、授業開始1分前のチャイムの音を聞く。

そのチャイムで全員が席に着き、1分後には一般教科担当の先生が入って来た事で、4時間目の授業が開始された。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「はい、じゃあ今日はここまでです」

 

授業終了のチャイムと同時に一般教科の先生はクラスから退室し、それを皮切りにアチコチが賑やかになっていく。

なんせこれから昼休みだからな。

かくいう俺もガソリンタンクが空ッ欠だ。

なんせ本音ちゃんを乗せての全力疾走が効いたの何のって奴だ。

早いトコ食堂でエネルギーを補充しねーとな。

俺は教科書を中に仕舞って座ったまま背伸びをする。

あ~、ゴキゴキと骨が鳴るのが心地いいぜ。

 

「おーい、ゲン。一緒に飯行こうぜ!!」

 

「おう、今行く」

 

と、俺が身体を伸ばしてリラックス運動をし終えたトコで、一夏が声を掛けてきた。

傍には既に箒と相川がスタンバってる。

 

「ゲンチ~♪一緒に行こ行こ~♪」

 

「げ、元次君。わ、私、お弁当なんだけど……い、一緒にいいかな?」

 

そして、教室の後ろからほわわんとした声で本音ちゃんが、何やら遠慮気味に弁当を持った夜竹が、それぞれ俺に声を掛けてくれる。

よっしゃ、俺も行きますか。

 

「あいよ、本音ちゃん。夜竹も遠慮すんなよ。皆で食った方が、飯ってのはウメーからな」

 

「う、うん。ありがとう♪」

 

「よ~し♪レッツゴ~♪」

 

俺達6人は食堂へ向かうが俺達の後ろをまるでハーメルンの笛吹きよろしく、色んなクラスの女子が着いてくる。

相変わらず他のクラスからは珍獣扱いだな、俺達は。

そんな俺と一夏のIS学園での扱いというか捉えられ方に一夏と2人で苦笑いしながら、俺達は更に歩を進めて行く。

そして食堂に到着した時には、ぞろぞろと列を成していた女子がバラけていった。

まぁ皆昼休みは大事だもんな。

俺は頭の中でそう結論付けて、食券を買う為に一夏達と並ぶ。

弁当持参の夜竹には、先に席の確保を頼んでおいた。

一夏と箒は日替わり定食、相川はパスタ、本音ちゃんはオムライスと、皆好きな物を頼んでいく、

かくいう俺はというと……。

 

「お姉さま、特盛りでお願いしゃーす」

 

またもや社交辞令をカッ飛ばしていた。

 

「はいはい!!特盛りだね!?任せときな!!」

 

そして、俺の社交辞令で気を良くしたマダムから受け取ったのは、トレー二枚。

さて、あいつ等は……。

 

「ゲンチ~!!コッチだよ~♪」

 

俺が辺りを見渡して一夏達を探すと、何やら俺に向かって飛んでくるのほほんボイス。

お?いたいた。

掛けられた声に従って視線を彷徨わすと、俺に向かって手を振って、いや裾を旗の様にパタパタしていた本音ちゃん達を発見。

その席へ歩み寄って行く。

最初こそ俺が来るのを笑顔で待っていた皆だが、俺の昼飯を見て一夏と箒以外は唖然とした表情を浮かべてしまう。

俺はとりあえず席に着き、トレーをテーブルの皆に邪魔にならねー様に置いていく。

さぁ、楽しい飯時の始りってな。

 

「いや~、ヤッパ昼はコレぐらい食わねえと身がもたねえぜ」

 

「鍋島君ドンだけ食う気!?」

 

夜竹が確保してくれていた窓際の景色が綺麗なテーブル席まで昼食を持ってきた俺に、相川から驚愕のツッコミが飛んできた。

相川が驚愕の表情で指差す俺の昼飯メニューは、フライドポテト山盛り一皿とフライドチキンの詰め合わせ10本入り。

そして大ジョッキに並々と注がれたアメリカンコーラだ。

朝は米だったから、昼はアメリカンなチョイスにしてみた結果がこれだったりする。

 

「へへっ、何せ朝は本音ちゃんを乗っけての全力疾走、昼前に大声出したりと、まぁかなりガソリン使ったからな。もう空っ欠なんだよ」

 

「す、凄い量だね……だ、大丈夫なの?」

 

「ゲンチ~は~大食いキャラだ~♪」

 

俺が笑顔で相川に声を返すと、俺の横に座っている本音ちゃんと夜竹もビックリした様な声で、俺に聞いてくる。

それと本音ちゃん?こんな野獣みてーな男で大食いキャラとか言わないで、男の腹ペコキャラとかマジ誰得ですか。

そんな俺に構わずに、一夏と箒は慣れた様子で自分の飯にありついていた。

まぁコイツ等はこんな光景は見慣れてるか。

箒は2年前に会った時に束さんと俺と3人で飯を食ったからな。

そん時の俺の食事っぷりに驚いてたから、もう慣れたってわけだ。

 

「まぁ、話しはそれぐらいにしとこうや。そんじゃま、いただきます。んあ~~。(ドザザザザッ)」

 

「ってポテト一気!?豪快にも程があると思うんだけど!?」

 

「ほわ~。ワイルドな食べ方だね~♪」

 

「本音!?ワイルドってだけじゃ済ませられないレベルだから!?」

 

「あ、あはは……」

 

俺は呆ける夜竹達に飯を促して、自分の飯を食い始めた。

まずはポテトを皿ごと傾けて一気に口の中へ放り込む。

細身のシュリングポテトなんざちまちま食うのめんどくせえからな。

そのまま口の中でモグモグと咀嚼し、ジョッキのコーラをゴクゴクと豪快に流し込んで口の中を潤す。

うんむ、塩味がイイ仕事してやがるぜ。

オマケに喉を通る炭酸も爽快で滅茶苦茶心地いい、こりゃ最高の昼飯になりそうだ。

口の中のポテトを片付けた俺は、そのままフライドチキンに被りつく。

おお!?チキンもジューシーでプリプリな肉と、辛めでサクサクとした衣がマッチしてて最高に美味えわ。

 

「あっ、そうだ。なぁゲン」

 

「ん?もぐもぐもぐ……バキバキバキッ!!!ゴックン。ふぅ、何だ?」

 

「骨まで食べた!!?」

 

「げ、元次君?ほ、骨は普通食べれないと思うんだけど……」

 

「心配はいらないさ、夜竹。ゲンには骨も関係無い。精々カルシウムが多めに取れるとか考えてるんだろう」

 

「そ、そういう問題……かなあ?」

 

「しののんは~驚かないんだね~?」

 

「ゲンのスペックに一々驚いていたらこれから大変だぞ?布仏」

 

と、ここで何かを思い出したかのように声を挙げた一夏が、そのまま俺に振り向いて声を掛けてきた。

俺は一夏に手をパーに開いて、待てとサインを出して口の中のチキンを骨ごと噛み砕いて飲み込む。

後ちょい待て箒、その言い方は俺を人外って言ってるのと一緒だ。

さすがにこちとら人間辞めてねえっての。

そして俺がチキンを飲み込んだのを確認した一夏は、やけに真剣な表情で俺を見てくる。

 

「ISの事について教えてくれ」

 

「……あぁ?」

 

そして、とても真剣な表情で一夏が紡ぎ出した言葉は、俺にとって余りにも予想外過ぎた。

え?何言ってんのコイツ?

一夏の予想外にも程がある言葉に面食らっていたが、俺は何とか意識を戻して一夏に視線を合わせる。

 

「いきなり何言ってんだお前?」

 

「いやほら、1週間後に俺達はオルコットと戦うだろ?でも俺はISの事は全然わかんねえから、ゲンに教えてもらおうと思ったんだ」

 

一夏の言葉に、テーブルに着いていた面々は、色んな反応を見せてくる。

相川は興味深そうに、夜竹と箒は俺たちを心配そうに見つめ、本音ちゃんはオムライスをパクついて……ちったあ心配してくれませんか本音ちゃん?

ドンだけマイペースなのよ?いや見てて和むけどさ。

そんな周りの反応には構わずに、一夏は只じっと俺の事を見てくる。

いやまぁ一夏もアイツに負けたくねえから真剣に話してるんだろうが……聞く相手が違うだろぉに。

 

「ハァ……アホか。俺だってISの事なんざ全然わかんねえよ」

 

俺は溜息を吐きながら一夏にそう言って、再び目の前のチキンにかぶりつく。

大体、俺はまだ予習してるから一夏よりは先にいるが、それ以外の女子にはISって面でかなり遅れてる。

彼女達は小学校の頃からISについての授業を積み重ねている。

その積み重ねはかなり膨大な量だし、たった2、3日の積み重ねしかしていない俺や、全くしていない一夏とは知識の面では比べるまでもねえだろう。

 

「え?で、でもよ。ゲンは千冬姉に勝ったんだろ?それって、ISに詳しいからじゃねえのか?」

 

「もぐもぐもぐ……バキバキバキッ!!!ゴックン。だから俺は勝ってねえって……まぁ、いいか。あのな一夏?ISってのはマルチフォームパワードスーツ。要は剣道で使う面や小手なんかの防具みてえなモンの延長だ。それは判るだろ?」

 

「あぁ、確かに試験で使った時はそんな感じだったな」

 

「つまりだ。ISってのは俺達が普通の動きをするのを延長したようなモンってわけだ。だから俺は普段通りの喧嘩で使う動きで千冬さんと戦えたんだよ。勿論、空を飛んだりするのはIS専用の動きってゆーか、操作方法があるんだろうがな。俺は千冬さんが飛ばない様に、必死こいて地面に縫い付けたから戦えたが」

 

「……つまり、急ごしらえで頭だけISを理解しても?」

 

「身体がそれに着いてこれねえだろーな。幾ら頭ん中でスゲエ動きが出来るって理解しても、それを可能にすんのは自分の身体だけだ。勿論、頭も必要だが、俺は他の子達より身体スペックがズバ抜けてたからこそ、IS初搭乗でもそれなりに戦えたってわけさ」

 

俺が千冬さんと戦えたタネ明かしをすると、一夏は項垂れてしまった。

まぁ唯一何とかなるかもって可能性が目の前で否定されたんだから仕方ねえよな。

だが、俺達にはまだ色々やれる事が残っているんだぜ?

俺は項垂れる一夏を見ながら、更に言葉を続けていく。

 

「だからよ。ISの知識面については、箒に教えてもらえ」

 

「わ、私か!?」

 

「え?箒に?」

 

俺が笑いながら繰り出した言葉にいきなり渦中に巻き込まれた箒は素っ頓狂な声を挙げて驚き、一夏は?顔で箒を見やる。

ふっふっふっ、こんな感じで幼馴染のフォローっつーかアタックチャンスは作ってやらねえとな。

俺は1度コーラで喉を潤し、慌てる箒と?顔の一夏をもう1度見る。

 

「ゴクッゴクッゴクッ、プハァ……あぁ、箒だって小学校の頃からISの勉強してきてんだろ?だったら知識面では俺なんかより箒の方が断然適任だ」

 

「だ、だが私は、他の女子と同じで余り詳しくは無いぞ?」

 

「そうは言っても、俺や一夏よりは詳しいじゃねえか。それにお前が一夏に教えてやれば、放課後寮の部屋でも教えてやれる。短期間での詰め込みはできるだろーよ」

 

「……そうだな。箒、迷惑じゃなかったら俺にISの勉強を教えてくれねえか?」

 

俺の言葉に一夏は納得したのか、箒に視線を向けて真剣な表情で頼み込む。

すると、いきなり真剣な表情で見つめられた箒は頬を赤く染めてワタワタと慌てだした。

俺はそんな箒に、一夏からは見えないようにサムズアップを送って頷きを見せる。

こっからは箒次第だぜ?

それでやっと俺の意図に気付いたのか、箒は俺に感謝の視線を送ると今だに真剣な表情を浮かべている一夏に正面から向き直った。

 

「スゥ……ハァ……わ、わかった。私が出来る限りは、ISについて教えてやろう」

 

箒がそう一夏に返すと、一夏は顔を輝かせて笑顔を浮かべた。

その笑顔だけで、もう何か色んな席から「羨ましい!!」って視線が飛んできてるし。

すまねえがこれも幼馴染みの特権だと思ってくれ、女子一同。

 

「ありがとうな、箒。よろしく頼むぜ」

 

「あ、あぁ。お前もちゃんと頑張るんだぞ?」

 

「わかってるって。教えてもらうからには、真面目にするさ」

 

一夏はそう言ってやる気を漲らせて飯の続きを始めた。

その傍らで箒は幸せそうな表情を浮かべて笑顔を見せている。

だがまぁ、これだけで終わりってわけじゃねえぞ。

 

「それと、箒にはもう一つやって欲しい事がある」

 

俺はそんな微笑ましい幼馴染みの2人を見ながら、顔に笑顔を浮かべて言葉を続ける。

すると、さっきまで夢見心地だった箒と、飯に齧り付いていた一夏は揃って、?顔を浮かべて俺を見てきた。

なんつうかお前等息ピッタリだな。

 

「もう一つ?一体なんだ?」

 

そして、話題に挙げられていた箒が俺に聞き返してきたので、俺は箒に笑顔で答えを口にする。

 

「それはな……」

 

俺の出した言葉に一夏は驚き、箒は是非もなしと言った顔で頷いた。

そして、俺が言った頼み事は今日の放課後に始める事となり、俺達はそこで話を打ち切って、食事を再開した。

さぁ、放課後に向けてエネルギーを補充しとかねえとな。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

バシーンッ!!

 

開け放たれた窓から爽やかな春風が流れ込む道場に、竹刀で打ち付けられる乾いた音が響く。

と言っても、俺は今着いた所だがな。

何かやたらとギャラリーがいる入り口を潜り抜けて、道場の中に視線を向けると。

 

「あいてて……ヤッパ強いなぁ、箒」

 

「そう言うお前は……お前は、かなり鈍ってしまったな」

 

そこには、床に尻餅をついた状態で対戦者……箒に言葉を掛けてる一夏が居た。

ドチラも防具に身を包んで竹刀を持ってるトコを見ると、ちょうど立ち合いが終わったトコのようだな。

 

「あっ、ゲンチ~。こっちだよ~♪」

 

と、俺が道場の状況を把握していると、壁際に座っていた本音ちゃんが裾をパタパタ振って声を掛けてくれた。

本音ちゃんの傍には他の剣道部員の子達も固まっている。

やっぱりここでも俺と一夏に対する視線は変わらねえのか、剣道部員の女の子達は何やらヒソヒソと話してる。

このまま入り口に居ても仕方ないので、俺はとりあえず本音ちゃんの居るほうに歩いていく。

 

「おっす」

 

「お~っす♪」

 

そのまま本音ちゃんとイェーイって感じでハイタッチをする。

ただ俺の背が高いから、俺はそのまま手を前に出す感じになったがな。

 

「どうだったの~?買い物出来た~?」

 

そして、本音ちゃんは両手を合わせながら目をワクワクと期待させて俺を見てくる。

やれやれ、ホント食いしん坊ってゆーか……甘い物に目がねーんだな、本音ちゃん。

俺はそんなwktk状態の本音ちゃんに笑顔を見せる。

 

「大丈夫だ。ちゃんと目当てのモンはゲット出来たぜ。今日は楽しみにしてな」

 

「うぇ~い♪早く夜になんないかな~♪」

 

俺の言葉に本音ちゃんはニッコニコしながらそう言って目の前でクルクルと回りだす。

って何だ?なんか周りの様子がおかしいぞ?

ちょいと耳をダンボ耳にしてっと……。

 

『ね、ねぇ……今、布仏さん『早く夜に』って……まさか!?』

 

『ま、まま、ままままさか!?噂に聞くナイトバルーン(夜の風船)を買ってきたの!!?』

 

『鍋島君に美味しく!!美味し~く実食されちゃうの!?ペロリされちゃうの!?い た だ き ま す されちゃうの!?』

 

『きっと骨の髄までシャブシャブされちゃうんだわ!!残さず美味しく食べられちゃうのよ!?』

 

『小動物チックな布仏ちゃんを野獣味溢れるワイルドな鍋島君が捕食するのね!?キャプチャーしちゃうのね!?』

 

『野獣の本能全開だね!!』

 

『うぅぉぉおおおお!!?漲ってきたぁぁあああああ!!!』

 

『ギギギ、くやしいのうくやしいのう』

 

『まだ……まだ間に合う!!『ワークス上山』さんに注文した『ピッキングツール内臓ヘアピン』が届けば……!!』

 

『アンタ乱入する気満々なの!?』

 

なんてこった、全く持って聞きたくなかったぜ。

 

余りにも頭が痛すぎる、つうか俺の扱いは既に野獣で決定なのか?

泣いてもいいよねコレ?IS学園怖い。

大体常識的に考えて、購買にナイトバルーンは売ってねえ。

つうか最後から二番目、さすがに貞操の危険を感じたら俺も暴れるぞ?

俺は今聞いた事を頭から追い出して、目の前で回っていた本音ちゃんに目を向ける。

 

全く、こんな純真無垢な子に対してなんて事……。

 

「う、うぅ~~!!!(ゲ、ゲンチ~のえっちぃ!!……こ、こっち見ないでぇ~!?恥ずかしぃよぉ~!!?)」

 

そこには俺の視線から胸やお尻を抑えて隠そうとする本音ちゃんの姿が、ってちょい待て!!?

今の聞こえてたの!?そしてなんでそんなに恥ずかしそうにするかね!?食べないよ!?いや美味しそうだけど!?

俺そんなに飢えてないからな!?無理矢理なんてしねえから!?

そんな本音ちゃんの様子に気づいた俺は急いで本音ちゃんに否定しようとするが、本音ちゃんは只俺を見つめるだけだ。

只、真っ赤な顔で、ウルウルとした子猫のような目で、只、只、俺を見つめるだけ。

心なしか、非難の色が入ってるように見えるとです。

 

やべえ、どうしたらいいんだこの状況。

 

「ゲン」

 

ここで焦る俺の後ろから何やら悲しそうな、それでいて不機嫌そうな声が聞こえてきた。

これはチャンスとばかりに振り向くとそこには悲しそうな表情を浮かべた箒が居た。

一夏はというと、まだ床に座り込んでヘタっている。

ナイスタイミングだぜマイ幼馴染みよ。

 

「よ、よお。どうだった?6年振りの一夏の太刀筋は?」

 

コレ幸いとばかりに箒に声を掛けるが、当の本人は相変わらず浮かない表情だ。

 

「……正直、あそこまで腕が鈍ってるとは……これは相当厳しいぞ」

 

「あっちゃ~……まぁ、アイツは中学ん時は帰宅部だったしなぁ……俺みてえに鍛えてたわけじゃねえし」

 

「やはり、千冬さんの事か?」

 

「あぁ、アイツは中学時代はバイトしまくって、少しでも千冬さんの負担を減らそうとしてたからな」

 

「……そうか……コレは試合までにかなり鍛えなおさないとマズイな……正直、IS以前の問題だぞ」

 

箒はそう言って腕を組んだまま難しい顔をしてしまう。

そう、俺が昼食時間に箒に頼んだのは『一夏と剣道の試合をしてくれ』って事だったんだ。

実は俺と一夏が箒と別れる前、その時の一夏の剣道の腕前は、箒より上だった。

箒としては、今日こそどれぐらい一夏に近づけたか確かめたかったんだろうが、生憎とアイツの腕前はかなり落ちてる。

千冬さんは高校を卒業したと同時に「これ以上迷惑はかけられない」って、親父達の援助を断ったからなぁ。

その所為で千冬さんは多忙の身となり、一夏はそんな千冬さんを助けたくてバイトに精を出していた。

さすがに親父達も、働ける年になった本人から断られたら引くしかなかったって悔しがってたっけ。

まぁそんな訳で、今の一夏の強さってのは正直俺でも解らなかったので、今の腕試しに発展したわけだ。

俺が直接闘り合っても良かったんだが、一夏の同門にして全国優勝経験のある箒の方が今の一夏がどれぐらいのモンか確実に理解できると踏んで、俺は箒に頼んだ。

その箒がここまで難しい顔をするって……こりゃあ大変だぞ、一夏の奴。

 

「なぁゲン?何で俺と箒を立ち合わせたんだよ?これって何か意味があったのか?」

 

と、俺と箒がどうしたモンかと頭を捻っていると、そこに状況が理解出来ていないお花畑野郎が登場。

その能天気さに俺と箒は揃って溜息をつく。

ホントどうしてやろうかコイツ?

俺と箒の溜息の意味に気付いていないのか、一夏は防具を付けたまま首を傾げる。

重たくねえのかソレ?

 

「はぁ……お前の今の実力を測るためだっての」

 

「俺の今の実力?」

 

「そうだ。ISとは昼食時にゲンが言った様にマルチフォームパワードスーツとされる代物、謂わば手足、いや鎧の延長だ。」

 

俺の溜息混じりの発言を引き継いで、箒が一夏に言葉を続ける。

俺と箒の言葉を聞きながら、一夏は何とか理解しようとフムフムと頷いている。

 

「つまり、今のお前の身体能力が、ISの能力をどれだけ引き出せるか大きく左右する。だから今の手合わせで一夏の戦闘能力を測ったのだが……」

 

「……だが?」

 

箒の言い難そうな表情に、一夏は疑問の色を強くして箒を見つめる。

仕方ねえ、俺が代わりに言ってやるか。

 

「結果は、オメエ弱すぎ。ダメだこりゃ。鍛える意味あんのかテメエ?ってトコだ」

 

「もう少しオブラートに包んで言ってくれませんかねえ!?俺の涙腺が崩壊寸前なんだけど!?」

 

俺の言葉に一夏はそれこそ食って掛かるが、テメエが弱すぎて話しになんねえのが悪い。

つうか男が泣いてもキモイだけだ、価値があるのは女の涙だけだっての。

 

「っていうか、ISを使った練習はしないのかよ?ぶっつけ本番なんてヤダぞ俺」

 

「俺だって嫌に決まってんだろ……でも仕方ねえんだよ。『空いてねえ』んだから」

 

俺は一夏の最もな言葉に項垂れる。

俺だってIS使っての練習とかしたかったっての。

 

「へ?空いてねえってどうゆう事だよ?」

 

「一夏、このIS学園は世界で最もISを多く所有しているが、それでも全校生徒が満足に使える台数じゃない。だから訓練機は、順番待ち……予約制なんだ」

 

一夏の言葉に、横で難しい顔をしていた箒が仕方無さそうに説明していく。

まぁ俺も受付で聞くまではそんな事実は全く知らなかったからな。

一夏が首を傾げても不思議じゃねえか。

 

「よ、予約制?じ、じゃあ……」

 

一夏の嘘だよなっていう縋るような、弱りきった子犬の様な表情に、箒を始め周りの女子はウッとした表情になるが、俺は構わずに箒の言葉を引き継ぐ。

 

「あぁ、受付に聞きに行ったが、次の空きは早くて1ヶ月後だとよ。それまでは訓練機の空きはねーらしい」

 

「マ、マジかよ……」

 

俺の無慈悲な言葉に、一夏は膝を突いて絶望を露にする。

これで俺達はあの腐れアマとの喧嘩、マジにぶっつけ本番でISを乗りこなさないといけねえってワケだ。

 

「ま、どっちにしろオメエは1週間の間、箒に剣道とISの知識の両方を見てもらえ。幾らなんでも両方とも不足してちゃ試合どころか、老後の笑い話しにもなんねえよダボが」

 

「お前はホンットーに人の傷口を抉るのに遠慮ってモンがねーな!?ドSか!?」

 

「バカ、お前だからだよ」

 

「嬉しい言葉の筈なのにこれっぽっちも嬉しくねえ!?」

 

ギャーギャー喚く一夏を箒に任せて、俺は道場の入り口へ向かう。

まぁこっから先は俺が居ても意味はねえしな。

俺は俺でやる事は決まってるし。

 

「ってちょっと待てよゲン!!お前はやらねーのかよ!?」

 

「あ?何をだ?」

 

だが、俺が入り口へ向かおうとしていると、一夏が声を掛けてきた。

俺は入り口に身体を向けたまま、首だけで振り返って一夏に聞き返す。

 

「だから、お前は計らなくていいのかよ!?自分の力!!」

 

「……いや、誰が相手してくれんだ?」

 

「……あ」

 

俺は一夏の言葉に従って、辺りを見渡すが、誰も俺と目を合わそうとはしねえ。

だって一夏の言ってるのって、さっきまで一夏がやってた立ち合いって意味だからな?

つまり、誰が俺と喧嘩やってくれんの?って事だ。

当然、誰も俺とはやりたくねえみてえで、皆視線を逸らしていくではないか。

まぁこんなガタイしてりゃ当たり前か。

それに、俺があの腐れアマにブチ切れて机をパンチでブッ壊したのは、既にどのクラスも知ってる話しだ。

女子はホントに噂の伝達率がすげえよ。

だが、ここまで言われて何もしねえのは、些か空気が読めてねえだろう。

つまり……。

 

「じゃあここは言いだしっぺの一夏に相手してもらうか(ゴキゴキゴキッ!!!)」

 

「いやいやいや!?ぜってーいやだっての!!?お前と喧嘩なんかしたら試合前に死んじまう!!?」

 

俺はにこやかに拳を鳴らしながら一夏に歩み寄っていくが、一夏は手をブンブンと振って俺の誘いを断りやがった。

おいおい一夏君よ?君には拒否権なんて存在しねえんだぜ?

 

「なぁに言ってんだよ一夏?テメエ3時間目に千冬さんが言った言葉忘れてんのか?」

 

「……へ?」

 

俺の言葉に一夏は呆けた声を出すが、俺はソレには構わずに言葉を続ける。

 

「あん時、千冬さんはこう言ったんだぜ?『今は私の管轄時間だ、織斑を殺るのは後にしろ』ってな(ゴキゴキゴキッ!!!)」

 

俺は輝く様な笑顔を浮かべつつ、首を廻して骨を鳴らしながらあん時の千冬さんの言葉を一夏にもう一度教えてやる。

すると、俺の言葉でやっと思い出したのか、一夏は面の中で大量の汗を掻き始めた。

全くよぉ……俺をクラス代表になんぞ推しやがって……漸く処刑の時間が来たぜ。

俺は『猛熊の気位』を発動し、呆けた一夏の顔面に向かって勢い良く上体を後ろに逸らして……。

 

「人を毎度毎度の如く面倒に巻き込むんじゃねえよこのヴォケェェエエエエエエッ!!!!!(ドグアァァアアアアアンッ!!!)」

 

「すみまぎゃああああああああああああああああああああああああッ!!!??(ピューンッ!!)」

 

『『『『『織斑君(一夏)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!???』』』』』

 

渾身のヘッドバットをカマした。

 

俺のヘッドバットを食らった一夏は宙に身体を浮かせて5メートル程宙を滑空して、床に落下する。

ざまあみろってんだ。

床に落下した一夏は余りの衝撃に起き上がれないのか、手をプルプルと震わせて宙を彷徨わせる。

 

「い、いい一夏!!?しっかりしろぉぉおおおお!!?ゲ、ゲン!!もう少し手加減してやってくれと言っただろう!!見ろ!?鉄製の面があらぬ方向に曲がってるではないか!?」

 

倒れた一夏に走り寄った箒は一夏の上体を抱き起こして、俺に非難を飛ばしてくる。

その声に従って一夏を見てみると、一夏の着けている防具の面の網部分の鉄が、あらぬ方向にひん曲がりまくっていた。

だが寸での所で一夏に直接当たりはしなかったようで、面の中に見える一夏の顔には傷1つ付いてなかった。

 

「チッ何だ、中にはダメージ入ってなかったのかよ?よっしゃ、次は確実に通すとすっか(ゴキゴキゴキッ!!!)」

 

「何でそうなる!?後生だから勘弁してやってくれ!!後生だから!!」

 

俺が冗談で拳を鳴らしながら近寄ると、箒は俺に喧嘩で勝てないと判断したのか俺の前に両手を広げて必死な表情で止めに掛かってくる。

ったく、冗談だってのに本気にするなよな。

俺は更に追撃をかけるつもりは更々無かったので、さっさと引き上げる。

 

「冗談だ冗談。箒、一夏の介抱は任せたぜ?」

 

「あっ、おいゲン!?何処へ行くんだ!?」

 

「俺は俺でヤル事があんだよ。じゃあな~」

 

俺はもう一度入り口へ向かい、後ろから声を掛けてくる箒に手だけ振って歩いていく。

さぁ、部屋に戻って仕込みをしねーとな。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

カチャカチャ……。

 

晩飯も終わった夜の余暇時間。

部屋の中では俺セレクションのウエッサイメロウソングが部屋を心地いい音で満たしていく。

今かかってる曲は『bigron』の『T-Luvin』という最高にクールな曲だ。

そんな曲をバックソングに、俺は鼻歌を歌いながら冷蔵庫から材料を取り出す。

 

俺はキッチンで『あるモノ』を作っていた。

造形は美しく、食べやすい様に、ソレでいて彩りも豊かに、といった感じの作りこみだ。

ガラス陶器の美しくも彩のない透明な器の中に、まずは麦の色をしたコーンフレークを敷き詰める。

次にプリン、そして1センチの角切りにしたカステラとバナナを並べる。

更に上から生クリームを盛り、仕上げはイチゴをトッピングし、隣にバニラアイスを丸くして置く。

最後のアクセントはキュウイでお終い。

コレにて洋風パフェの完成っと。

 

コレを4つ作って冷蔵庫に一旦仕舞う。

もう1つのパフェを完成させてから出さねばなんねーからな。

 

次のパフェは和風だ。

 

まずは一番下の段。

コチラもさっきのパフェと同じ様にコーンフレークを敷き詰め、生クリームを敷く。

その上の段に抹茶アイスを多めに、バニラアイスを少なめに入れて、更に小豆に白玉、そして甘み休みにサクッとしたウエハースを2本刺す。

これで俺の和風パフェは完成だ。

うん、どっちもいい出来に仕上がったな、これならアイツ等も満足するだろう。

俺はパフェの器をお盆に乗せて鼻歌混じりにリビングへ戻っていく。

 

「さぁ、お待たせだ。出来上がった……ぜ……」

 

だが、一歩リビングへ足を踏み入れると俺は言葉を失った。

それは何故かというと……。

 

「でへへへへへ~~~♪ぱふぇぱふぇ~~~~♪(ダラダラダラ)」

 

「ほ、本音ちゃん!?涎が凄い出てるよ!?お、女の子なんだからシャキっとしないと!!」

 

「の、のほほんさんの気持ちは良く解るぜ……ゲンの作る料理やデザートは最高にウメエからな……ゴクンッ」

 

「い、一夏!!男がはしたないぞ!!男子たるもの、毅然と食事を待つ心構えを……ゴクリッ」

 

「す、すっごい誘惑感……鍋島君って、見た目に似合わずかなりの料理スペック持ってるんだ……ジュルッ」

 

「もう清香ちゃん!!ダメだよ、女の子が袖で涎を……よ、涎を拭うなん……て……コクッ」

 

扉を開けると、そこには欠食児童の群れが……いやまあ一夏と箒、夜竹に相川と本音ちゃんなんですけどね?

皆して俺が持つパフェの皿を凝視してるし。

まぁそんだけ楽しみにしてもらえんのは、料理人冥利に尽きるんだがな。

一夏達は全員テーブルについて、俺のデザートを今か今かと待っている。

ちなみに何故一夏達がいるかというと、本音ちゃんが昼の休憩時間に誘ったからだ。

材料は多めに買っておいたから良かったが、下手すりゃ足りなくなる所だったぜ。

つうか、何か皆トロけた顔してんのは何故?

唯一マトモだった夜竹ですら、小さく喉を鳴らしてるし。

まぁいいか、余り深く考えるのも面倒だ。

例え本音ちゃんの涎がナイアガラの滝みてえになってても考えない。

そのまま俺はテーブルに近づき、最初に聞いていたリクエスト通りにパフェを各自に配っていく。

 

相川と一夏、本音ちゃんにイチゴパフェ。

 

夜竹と箒、本音ちゃんには和風パフェ。

 

本音ちゃんは約束通りに2個の配布だ。

それぞれをテーブルに置くと、皆目を輝かせて自分のパフェに釘付けになってしまった。

 

「ま、まぁとりあえず食ってくれ。お代わりはねえが、満足できると思うぜ?」

 

「そ、そうだな!!それじゃ、いただきます!!」

 

『『『『頂きまーす!!』』』』

 

そして一夏の声を皮切りに、全員が一斉にパフェに口をつける。

さあて、お口に合うか!?

 

『『『『『パクッ』』』』』

 

……一口食べて、誰も何も言わずにモグモグと咀嚼し……。

 

「……う……うんめぇぇえええええええええええええッ!!!がつがつがつ!!!」

 

一夏の、腹から響き渡るような大声が部屋に木霊した。

っていうかうるせえ!?

叫び声を挙げた一夏はガッつくようにパフェをドンドンと平らげていく。

もう少し味わって食えよな。

他の皆はというと、もうなんか幸せに蕩けきっていた。

 

「はぁ~~……これはファミレスなんか比べ物になんないよぉう……それに、部屋の音楽もイイ感じで優しいメロウだし……この雰囲気が凄く良い……」

 

「うむ……和風パフェと言うだけはある……小豆も白玉もいい味で、全く嫌味が無い……さすがはゲンだ」

 

「はむはむはむ♪ん~~♡ちょぉちょぉちょぉ幸せだよ~~♡」

 

「うわぁ……!?元次君のパフェって凄く美味しい……どうしよう。食べるの勿体無いかも……はぁ♡……それに、この音楽がまた優しくて、幸せな気分になっちゃう♡」

 

もう全員が幸せいっぱいって顔で頬張ってやがる。

その顔を見てると、俺も自然と顔が綻んできた。

 

さて、それじゃあ行きますか。

俺は冷蔵庫から和風と洋風をそれぞれ1つづつ出してお盆に乗せて蓋を被せてドアに向かって歩いていく。

 

「はむはむ♪う~ま~う~ま~♪……あれ?ゲンチ~、どっか行くの~?」

 

と、俺が部屋から出ようとする動きに気付いた本音ちゃんが、声を掛けてきた。

俺はその声に首だけで振り返って、?顔の本音ちゃんに笑い掛ける。

 

「なに、ちょっと配達にな。本音ちゃんはゆっくりパフェを食べててくれや」

 

「ふ~ん?わかった~。行ってらっしゃ~い♪」

 

俺の言葉に本音ちゃんは納得してくれたのか、電気ネズミの着ぐるみの長い裾を振って笑顔で見送ってくれた。

そんな本音ちゃんに微笑ましい気持ちを貰いながら、俺は部屋から廊下に出る。

さて、行きますか。

俺は放課後に見たマップを思い出しながら、ある部屋を目指す。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「さて、と……105、ここだな(コンコンコンコン)」

 

さて、歩くこと5分で、俺は目的の部屋に到着したので、その部屋をノックする。

そして部屋の主が言葉を返してくるまで待つ事にした。

さっき通り縋った職員の人に聞いた部屋だから、ここで間違いねえと思うんだが。

 

『はぁ~い。どちら様ですか?』

 

ノックしてから何の音沙汰も無いので俺が部屋の番号間違えたかな?と首を捻っていると、部屋の中からのんびりした声が聞こえた。

うん、この声は間違いねえな。

俺は部屋の主に声を返す為に、軽く咳払いをする。

 

「夜にすいません。鍋島っす」

 

『……ふぇ?……え、えぇぇ!!?げ、元次さん!!?ち、ちちちちょっと待って下さい!!?(ガタガタバタンバタンッ!!!)』

 

すると、訪問者が俺だと解って驚いたのか、さっきまでのリラックスした声はどこかへ飛び、部屋の中からバタバタと慌しい音が聞こえてきた。

おいおい、何をそんなガチャガチャとひっくり返してるんですかい?

そしてそのまま2分ぐらい待っていると……。

 

「(ガチャッ)……こ、こんばんわです。元次さん」

 

何やら花柄の可愛らしいパジャマに身を包んだ真耶ちゃんが恐る恐るといった感じで顔を出してきた。

年齢的には幼いんだろうが、真耶ちゃんにはピッタリ似合ってるから不思議だな。

ちなみに3桁の部屋番号は、全部教師の寮だそうだ。

 

「へへっ、こんばんわ。真耶ちゃん。ゴメンな?急に来ちまってよ」

 

「い、いえいえ!?げ、元次さんならいつでも大歓迎です!!で、でも、どうしたんですか?こ、こんな時間に……(よ、夜に女性の部屋に男の人が来る……ま、ままままましゃか!!?)」

 

俺が謝罪を口にすると、真耶ちゃんは首が取れそうな勢いで左右に首を振っていく。

何やら真耶ちゃんの顔は熟れたリンゴの様な赤みを帯びているジャマイカ。

しかも瞳も何を考えてるのかウルウルと潤いを見せている。

た、確かにこんな時間に女の部屋に来るってのは良い事じゃねえよな……さっさと用事を済ませよう。

 

「あぁ、実は夕食のデザートにパフェを作ったんだが……少しばかり余っちまってな。良かったら真耶ちゃんにと思って……ほい」

 

俺はお盆の蓋を開けて、中から洋風パフェを取り出す。

すると、さっきまで何かを期待していたような真耶ちゃんの顔は明らかに落胆したような感じに早代わり。

 

「あっ……そ、そうなんですか。……ありがとうございます(わ、私のばかばかばか!!そんなワケないじゃない!!……はぁ……)」

 

真耶ちゃんは何やら暗い雰囲気を背負いながら肩を落としてしまった。

な、何か悪い事したか?俺?

とりあえずいつまでも俺がパフェを持っていても仕方ないので真耶ちゃんに差し出したんだが……それを受け取ると、真耶ちゃんはまた瞳を輝かせていく。

移り変わりが激しいな真耶ちゃん。

 

「わぁ……!!す、凄い美味しそうです!!こ、これって元次さんが作ったんですか?(わ、私より上手かも)」

 

そして、パフェを受け取った真耶ちゃんは、俺を見上げながらそう聞いてきた。

うんうん、見た目は合格って事だな。

 

「おう、まぁ、今日のお礼にと思ってな……ありがとうな、真耶ちゃん。俺の事を避けないでくれてよ」

 

俺はそう言って、真耶ちゃんに頭を下げる。

今日の3時間目に、あんなにブチ切れた俺を、何時もと変わらない態度で接してくれた事への感謝を込めて。

まぁ、その感謝の印がパフェってのも、安いモンだがな。

 

「い、いえ!?そんな感謝される様な事じゃないですよ!?せ、先生が生徒を見捨てたりなんて、絶対にしませんから!!」

 

「例えそうだとしても、だ。俺はあん時、真耶ちゃんが変わらない態度で接してくれたのがスゲエ嬉しかったんだ……だから、俺は何度でも感謝するぜ?」

 

俺はそこで言葉を区切って、下げていた頭を上げる。

すると、俺の視界に入って来たのは、俺を見つめて微笑んでる真耶ちゃんだった。

ヤッパ優しいよな、真耶ちゃんは……ホント、良い女だぜ。

 

「まぁ、そのパフェは俺の感謝の気持ちだと思って受け取ってくれ。味については保証するぜ?」

 

「クスッ……ハイ♪では、有難く頂戴します♪」

 

「あぁ、是非そうしてくれ……それじゃ、急に来てゴメンな?」

 

「いえいえ♪……ま、また……いらして下さい……お休みなさい、元次さん♪」

 

「あぁ、お休み。真耶ちゃん」

 

俺がお休みの挨拶をすると、真耶ちゃんは微笑んで頷き、部屋の中へ帰ろうとする。

俺はそんな真耶ちゃんに背中を向けて帰ろうとするが……。

 

「あ~、そうそう……真耶ちゃん」

 

俺はさっきから言いたかった事があったのを思い出して、途中で歩を止める。

そのまま背を向けていると、後ろで真耶ちゃんが扉を閉めようとしていた手を止めたのが、気配でわかった。

 

「?はい、なんですか?」

 

「いや、その……まぁ、なんていうか……」

 

「?」

 

俺が言い難そうにしていると、後ろの真耶ちゃんの空気が怪訝なものに変わっていく。

まぁ言い淀むのは勘弁して欲しい。

なんせその……面と向かっては言い辛いっつーか……ねえ?

だがここで言っておかないと、後々までそのままかも知れねえし……よし、言っとこう。

俺は気持ちを固めて軽く2,3回咳払いをする。

 

「……あの、よ……いくら女子しかいねえっつっても……もう少し、ボタンは閉めた方がいいぜ?」

 

「ふぇ?……ッ!!?(バッ!!!)し、ししし失礼しみゃす!!?(バタンッ!!!)」

 

俺の頬をポリポリと掻きながら発した言葉に、最初は呆けた声を挙げた真耶ちゃんだったが、俺の言葉の意味を理解すると急いで部屋に隠れた。

俺はその様子を見届けてからもう一度歩を進める。

いやね?真耶ちゃんは可愛い花柄のパジャマを着てたんだけども……ボタンがね……結構、開放的状態だったというか……かなり深い谷間がよく見えたと言うか……ごっそさんです。

とりあえず今見た物は脳内データフォルダにしっかりと最高画質で保存しておき、俺は次の目的地を目指す。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「寮長室……ここか……おし(コンコンコンコン)」

 

次なる目的地、寮長室は生徒寮の中にあったので、かなり帰りは早くなる。

とりあえずこれで、消灯時間には間に合うだろう。

帰りの時間の余裕を確認した俺は、さっきと同じ様に扉をノックする。

 

『……誰だ?こんな時間に?もうすぐ消灯時間だぞ』

 

すると、中から返事のような説教のような声が聞こえてきた。

まぁ、それが寮長の仕事だもんな。

 

「すいません、鍋島っす」

 

『なッ!!?……げ、元次か?どうした?』

 

俺が返事を返すと、中から千冬さんの焦った様な声が聞こえてきた。

あり?なんか忙しかったか?

 

「遅くにすいません。ちょっとしたお届けものがあるんですが」

 

『届け物だと?……ち、ちょっと待ってろ(ガチャガチャバタンバタンズドゴォォオンッ!!!)』

 

まぁ真耶ちゃんと同じで物を片付ける音が、ってちょい待て!!?

なんだ最後の音は!?千冬さんドンだけ散らかしてんだよ!?いや家事能力はねえのは良く知ってるけども!!?

最後のあの轟音は一体何を片付けた音なのよ!?……は、激しく気になるぜ。

 

そんな謎極まる音に思考を巡らしていると……。

 

「(ガチャッ)す、すまんな。待たせた」

 

部屋の扉が開いて、中からタンクトップとジャージのズボンという出で立ちの千冬さんが出てきた。

開かれた扉の奥に見える部屋の中は、特に何もおかしい所は見当たらない。

……あの音は何だったのかは忘れる事にしよう、うんそれがいい。

 

「いやぁ、いきなりすいませんね、織斑先生」

 

「べ、別に構わん……それより、今は放課後だ。何時も通り千冬さんでいいと言っただろう」

 

「あ~、さーせん。どうにも切り替えが上手くいかなくて……まぁいっか、とりあえずコレ。デザートにでも食って下さいっす」

 

「む……コレは……パフェか?」

 

俺がお盆から和風パフェを取り出して、千冬さんに手渡すと、千冬さんは疑問顔で俺に向き直ってきた。

まぁいきなりデザート渡されたらそうなるわな。

 

「そうっす。ちょいと機会があったんで作りました」

 

「ほう、お前の手作りか……それは有難い。お前の料理はどれも美味いからな……しかし、急に作って持ってくるとは……驚いたぞ?」

 

俺の言葉を聞いた千冬さんはうっとりした表情で和風パフェを見つめてる。

この人も外見の所為で決められがちだが、和風の甘味が大好物なんだよな。

そういうトコはやっぱり女の人だね、うんうん。

 

「まぁ、そのパフェは今日のお礼も兼ねてますんで……今日はありがとうございました。千冬さんが止めてくんなかったら、間違い無く俺はあの腐れアマを半殺しにしてましたわ」

 

俺は千冬さんにそう言ってから頭を下げる。

実際問題、あん時千冬さんが止めてくれなきゃ、俺はあのまま握り締めた拳で腐れアマを二度と立ち上がれないぐらいにボコしてただろうしな。

そうなったら、担任である千冬さんや、親父達に迷惑がかかってただろうし。

前に鈴を虐めてたゴリラを叩きのめした時は、親父達にも迷惑かえちまったのになぁ……やっぱキレたら後先考えねえや、俺。

 

「半殺しで済んでいたら、オルコットにとっては御の字だったろうな……さて、消灯時間も近い。早く部屋に戻るんだぞ」

 

千冬さんは俺の言葉にそう言って微笑むが……千冬さんは、俺が半殺し以上の事をすると思ってたんですかい。

失敬な、幾ら俺でも……多分、恐らく、きっと……もしかしたら、殺ってたかも(汗)

ま、まぁ実際にゃやってねえんだし問題ないだろう!!

俺は軽く頭をよぎった思考を振り払う。

 

「わかってますって。それじゃ、お休みなさいっす。千冬さん」

 

俺は千冬さんの言葉に返事を返して、踵を返す。

さぁ、さっさと部屋に帰らなきゃな、早くあの癒しっ子のいるオアシスへと。

 

「あぁ、お休み……そうだ、元次」

 

「へい?何すか?」

 

だが、いざ部屋に戻ろうとした時に、千冬さんが俺に声を掛けて来たので、俺は振り返った。

俺が振り返った先の千冬さんは、何やら不敵な笑みを浮かべて扉に背を預けていた。

 

「男が啖呵を切ったんだ……逆上せ上がってる小娘の天狗っ鼻をへし折ってやれ……ではな」

 

千冬さんはそれだけ言うと、部屋の中へ引き返していった。

俺はそんな千冬さんの姿を見ながら、獰猛な笑みを浮かべてしまう。

 

「……キッチリとブチのめしてやりますよ」

 

小さく小声で、聞こえないように呟いて、俺は自分の部屋へ引き返していく。

千冬さんが応援してくれてんだ……これで負けたら末代までの恥だと思って喧嘩してやるぜ。

 

 

まぁ、そんなこんなで俺は寮の部屋へと帰って来たんだが……中にはまだ一夏達が居て、皆で楽しそうに喋っていた。

そのまま俺も混ざって皆で雑談を楽しみながら、俺達は就寝時間まで部屋に居た。

そして就寝時間が近づいたので、一夏達は自分達の部屋に戻っていった。

俺と本音ちゃんも寝る事にしたんだが、その時本音ちゃんが俺のISの知識面でのコーチを買って出ると言ってくれた。

本人は「パフェのお礼だよ~♪」と言ってたが、また何か作ってあげる事にする。

なんせ可愛いからな。

 

それで俺達は眠りにつき、IS学園2日目の夜は終了した。

 

 

 

 

 

 

そこから暫くはホントに怒涛の日々だったぜ。

 

一夏もISの授業は必死に聞くようにして、わからない所は箒に教えてもらい、箒が空いて無い時は他の女子にも聞いていた。

そして放課後は一夏達は剣道場で剣道の試合をして一夏は昔の剣の感を取り戻す事に専念していた。

更に夜は俺と本音ちゃん、一夏、箒の4人でISの知識面の勉強を合同でやって、レベルアップを図った。

疲れた頭に糖分を送り込むために、俺も夜は色んなデザートを作って皆に振舞ったしな。

 

一方の俺は、授業に専念するのは勿論の事、一夏の放課後の鍛錬も手伝った。

段々と剣の感を取り戻してきた一夏が、剣VS剣の戦いに慣れすぎない様にするためだ。

なんせISには剣以外にも銃やグレネードなんかが搭載出来るからな。

 

そん時の鍛錬の一幕。

 

『オオオオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァアアアアッ!!!(ズドドドドドドドドドッ!!!)』

 

『うわわ!?ちょ!?ゲ、ゲェェン!!?百一烈拳は卑怯だろ!!?っていうか前から思ってたけど何でリアルに使えるんだよ!?もはや削岩機の域じゃねえか!?』

 

『おぉ~~!!?ゲンチ~の手がいっぱい増えてる~~!!?』

 

『馬鹿野郎!!相手が銃で弾幕張ったらこんなモンじゃすまねえんだぞ!?これぐれえ全部避けろや!!』

 

『無茶言うなーーーー!!!?ってしまっぼばばばばばばばばぁぁああああッ!!?(ドガガガガガガガガッ!!!)』

 

『『『『『織斑君(一夏)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!???』』』』』

 

『だーはっはっはっはっは!!!コイツァ面白れーや!!!そらそらそらそらそら!!しっかり避けろよぉおおおッ!!?(ズドドドドドドドドドッ!!!)』

 

『元次君!?な、なんかスッゴク生き生きとしてるんだけど!?』

 

『日頃の恨みが~~えくすぷろ~じょんしてるんだね~~♪』

 

『呑気に言ってる場合じゃないぞ布仏!?『うぉらぁ!!猛熊5連蹴撃!!!』『ぎゃーーーー!!?』ってゲンこらーーー!?お前は試合前に一夏を潰す気かーーー!!?』

 

『あぁん!?手加減していいのか箒よぉ!?ここで一夏がボロ雑巾になりゃ、同部屋のお前が一夏を優しく介ほ……』

 

『ガンガン行っていいぞゲン!!相手は待ってはくれんのだからな!!これぐらいの内容は当然だ!!』

 

『箒いぃぃいいいいいいいい!!?何て事をいぶばばばばばばばばぁああああッ!!!??(ズドドドドドドドドドッ!!!)』

 

『だーはっはっはっはっは!!!余所見してんじゃねーぞくらぁ!!!』

 

『いっそ一思いに殺せーーーーー!!!?』

 

なんてこともあったが、概ね問題なく修行、というか鍛錬はこなしてこれた。

何度か一夏の顔がパンプキンみたいになってたが、全く問題は無かったぜ。

そして今日はあの宣戦布告から3日目になる。

んで、授業が終わった休憩時間、俺達は放課後の鍛錬の方向性について話しあっていたんだが……。

 

「うぁ~……しんどい」

 

「オメエの事で話してんだぜ?しゃきっとしやがれ」

 

一夏は相変わらずうなだれていた、まぁ最近はかなりハードな鍛錬ばっかだからな。

だけど女子はそんな一夏を待つわけはなくチャイムが鳴ると同時に俺達に詰め寄ってきた。

やれやれ、まだ俺達の扱いは変わらねえか。

まぁまだ入学して5日だしな。

入学から続く様子見は終わったのか、教師が教室を出るなりいきなりこの光景である。

ってかおい誰だ、『もう出遅れるわけには行かないわ!』とか言った奴。

 

「ねえ!!織斑くん、鍋島くん!!二人は他にどんな友達がいるの?」

 

「織斑君は彼女とかいるの?」

 

「今日のお昼ヒマ?放課後ヒマ?夜ヒマ?」

 

「いや一度に訊かれても……」

 

俺の方は大体プロフィール答えたからそうでもねえが、一夏は自己紹介で何も言わなかったからなぁ。

色々知りたがりな女子達に質問攻め食らってるし。

 

「千冬お姉さまって普段はどんな感じなの!?」

 

「え……う~ん?……どんな感じって言われてもなぁ……ゲンはどう思う?」

 

ってココで俺に振るんかい。

一夏の声と視線に、周りの女子が一斉に俺を見てきた。

しっかし、家での千冬さんかぁ……ここでだらしないとか言ったのがバレたらブチ殺されるだろうし……う~ん。

未来の惨劇を阻止すべく、散々悩んだ末に俺が繰り出した答えは……。

 

「……案外可愛いトコあるんじゃねえかな?」

 

THEお茶を濁す☆

 

これしかねえよ。

だが、俺が女子連中に視線を向けると、女子連中と一夏は、何故か俺の後ろを見ていた。

皆一様に顔が青色ではないか。

あれ?これってまさか?

 

メキャアッ!!!

 

人体で

 

絶対に鳴らない音が

 

俺の頭で鳴った

 

by元次

 

「って痛えぇぇええええええええええええッ!!!??」

 

こ、この突き刺す様な痛みは!!?

俺は頭頂部を抑えながら後ろへ振り返る。

 

「や、ややや休み時間は終わりだぁ!!!貴様等とっとと散れぇ!!!(だ、だだ誰が可愛いだこの馬鹿者!!?そういう事は思っていてもこんな場で言うな!!!)」

 

そこには、蒸気を噴出しながら赤い顔で出席簿を持つ千冬さんの姿がございました。

かなり恥ずかしかったのか、最早呂律も回ってなかったっす。

みんなもプライバシー問題には気をつけよう☆

手元の出席簿の角から煙が上がってるトコを見ると、あの角っこで俺の頭をデストロイ!!したんですね、わかります。

そんな千冬さんの怒声に、女生徒は皆走って自分の席に戻っていく。

それを確認した千冬さんは、俺を一睨みすると、教卓へと戻っていった。

やっぱりあの濁し方はまずかったか……すんませんでした。

 

「……それと織斑に鍋島、お前たちには学園で専用機を用意する事になった」

 

俺が心の中で千冬さんに謝罪を述べていると、千冬さんは教卓の上から俺と一夏を見下ろしてそう言った。

だが、千冬さんの言った言葉の意味が判らねえのか、一夏はチンプンカンプンな顔をしていた。

かく言う俺もそうだ。

千冬さんの言う『専用機』ってなんだ?

 

「せ、専用機!?1年のしかもこの時期に!?」

 

「つまりそれって政府からの支援が出ることで……」

 

「いいな~私も専用機欲しいな~」

 

だが、周りの女子は千冬さんの言葉の意味が判ったのか、ガヤガヤと騒ぎ始めた。

かくいう俺はその『専用機』とやらの情報を知る為に教科書の最初のページ辺りからペラペラと中身を見ていた。

えーっと?専用機、専用機……どこだ?その項目は?

だが、幾ら探せど探せど、専用機と書いてある項目は一切存在しない。

そんな焦る俺と、チンプンカンプンな顔をしている一夏の様子を見て、千冬さんは一夏に視線を送った。

 

「織斑、教科書6ページを音読しろ」

 

俺は千冬さんの言葉を聞いて、教科書のページを捲っていく。

音読されても、自分で読まなきゃ理解できねえからな。

えっとぉ……教科書6ページ?……ってこれは……ISのコアについて?

俺がちょうど目当てのページを見つけると、グットタイミングで一夏の音読が始まった。

 

「へ?は、はい。えーと……『現在、幅広く国家・企業に技術提供が行われているISですが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されていません。現在世界中にあるIS467機、そのすべてのコアは篠ノ乃博士が作成したもので、これらは完全なブラックボックスと化しており、未だ博士以外はコアを作れない状況にあります。しかし博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しており、各国家・企業・組織・機関では、それぞれ割り振られたコアを使用して研究・開発・訓練を行っています。またコアを取引することはアラスカ条約第七項に抵触し、すべての状況下で禁止されています』……」

 

「つまりそういうことだ。本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。お前等の場合は一般人なので、データ収集もかねてIS学園の所有となるISが用意される。理解できたか?」

 

「な、なんとなく……」

 

「そーゆう事っすか……」

 

一夏は千冬さんの言葉に生返事を返したが、俺にはどうゆう事か大体解った。

要は男のIS操縦者のデータが欲しいから、政府が俺等のISを用意するって解釈でいいんだろう。

そうでなきゃ、態々一般人である俺と一夏のために調整したワンオフカスタムのISなんて贈ったりしねえだろうからな。

 

「あの……先生、篠ノ乃さんって、もしかして篠ノ乃博士の関係者なんでしょうか……」

 

と、そんな事を考えていると、女子の1人が千冬さんに質問していた。

まぁそりゃ気付くよな、篠ノ乃なんて苗字はかなり珍しいし。

 

「そうだ、篠ノ乃はあいつの妹だ」

 

そして、千冬さんは女子の質問に頷いて言葉を発した。

すると教室が驚きと驚愕の歓声で響き渡る、そりゃそうだろうなぁ。

なんせISの生みの親の妹がクラスメイトなんだからな。

 

「えええーーーっ!?す、すごい!このクラス有名人の身内が二人もいる!!」

 

「篠ノ乃さんも天才だったりするの!?今度ISの動かし方を教えて~!!」

 

女子はワッと立ち上がる子もいるぐらいテンションが上がっていた。

千冬さんの授業中に度胸あるなぁオイ。

そして、そんな女子達に箒は苦笑いを浮かべて視線を合わせていた。

 

「あ~、すまないが、私もISの事は皆と同じぐらいしか知らないんだ。ISが出来上がったのも、私が小学生の頃の事だったしな。期待に応えられなくてすまない」

 

箒が苦笑いしながらそう言うと、アチコチから「あ~そうだよね。私達と同い年だもんね」とか「天才の妹ってだけで、色眼鏡で見たりしたら失礼だよね」といった反省する様な声が挙がった。

中には、態々箒に「ごめんね!!篠ノ乃さんは篠ノ乃さんだもんね!!」「家族だからって全部同じなワケないよね。本当にごめんなさい」って謝りにいってる子もいた。

俺はそんな光景を見ながら、心の中で安堵した。

なんせ昔は、束さんの事を憎悪してたからな……昔のままだったら、多分アイツはキレてただろうし。

箒のあの反応と表情には、そんな怒りとか憎しみなんてモンは一切入ってなかった。

それは完全に、束さんと箒の中が戻ってる証だろう。

俺はその事実が何より嬉しくて堪らねえんだ。

ふと視線をずらして見ると、一夏も同じ様に嬉しそうな視線を箒に送っていた。

その一夏の視線に気付いた箒は、恥ずかしさで顔を赤くして俯いてしまった。

かっかっか、頑張って一夏を射止めろよ?箒。

 

「……では、授業を始めるぞ」

 

俺がそんな幼馴染み達の姿に暖かい気持ちになっていると、女子が静かになるのを見計らっていた千冬さんから、授業開始の宣告が出た。

そして、全員が教卓へ視線を向け、今日も授業が始まる。

 

 

さぁ、あの腐れアマをブチのめすまで後4日、やれるだけの事はやりますか。

刻々と近づく大喧嘩に胸を熱く燃やしながら、俺は授業に身を入れていく。

 


 
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