No.527207

新春スペシャル作品  忍者大戦ヤグラ  その3

BLACKさん

この作品は「ハヤテのごとく!(アニメ3期)」と「世界忍者戦ジライヤ」を見た影響で作った作品で両作品を足して2で割った作品となってます。割合としてはハヤテ7:ジライヤ3くらいになってます。

2013-01-03 17:08:57 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:1002   閲覧ユーザー数:988

主な登場人物

 

 

芥子頭治(からし とうじ)

 

主人公、男性。18歳。黒髪短髪。

忍者の任務中に唯衣と出会ってしまい、執事をやることになり、執事をやっている。ほぼ万能だがどこか抜けている。

何故万能かと言うと、彼が世界忍者の一人だからである。

世界忍者としての実力も本物。忍者の格好をしている時は「ヤグラ」と名乗っている。

忍者の流派は「日隠流(ひがくれりゅう)」

 

 

 

 

凪村唯衣(なぎむら ゆい)

 

ヒロイン、女性。16歳。銀長髪。

大富豪の凪村家の令嬢。頭脳明晰、スタイル抜群のほぼ万能だがどこか抜けている。

忍者に興味を持ったために頭治を執事に迎え入れる。

 

 

 

ユリア

 

女性。17歳。紫色の長髪。

頭治が執事をやる前から唯衣の専属メイドとして働いてる女性。スタイル抜群。

外国の大学を飛び級で卒業している。そのため学校に行っていない。ほぼ万能だが頭治と唯衣同様、どこか抜けている。

世界忍者ではないが、実力は世界忍者に匹敵する。

 

 

 

凪村友里(なぎむら ゆり)

 

故人。享年25歳。茶髪長髪。

唯衣の母親。唯衣と似たような顔立ちでスタイルも抜群だったが、成績はそうでもなかった。そして天然。

 

 

 

カイル・ハイム

 

故人。享年20歳。銀髪短髪。

唯衣の父親とされる人物。何らかの事情で友里の前からいなくなってしまった。

実はある物が目当てで凪村家に侵入した泥棒だが、友里に見つかってしまうものの、そのまま友里と恋に落ち、唯衣が生まれる。

何やらその死や泥棒したのにはとんでもない理由があるとか……。

 

 

 

ミヤコ・ハイム

 

カイルの弟、レオン・ハイムの娘。15歳。銀髪短髪。

父のレオンが死んだのでカイルの娘である唯衣を頼ってきた少女。

しかし何やら秘密がある様子。

 

 

頭治や唯衣の友人達

 

 

 

 

 

織田巽香(おだ せんか)

 

女性。17歳。黒髪セミロング。

頭治と同じ世界忍者。忍者時は「セン」と名乗っている。

忍者の流派は「織田流」

 

 

 

山本和樹(やまもと かずき)

 

男性。16歳。茶髪短髪。

頭治と同じ世界忍者であると同時に唯衣の同級生。忍者時は「レッパ」と名乗っている。

忍者の流派は「邪滅流」

 

 

 

賀上梁(かがみ りょう)

 

男性。17歳。黒髪短髪。

頭治と同じ世界忍者。忍者時は「シシガ」と名乗っている。

忍者の流派は「獅子流」

 

 

 

宮木葵(みやき あおい)

 

女性。16歳。青長髪。

唯衣の同級生で生徒会長。頭脳明晰で武道全般の達人。

かなりしっかりしているためによく唯衣などのフォローをする。

 

 

 

凪村號(なぎむら ごう)

 

男性。58歳。白髪短髪。

唯衣の祖父で唯衣の母である友里の父親。

凪村家を大富豪にした人物。

16年前に一度起こったことをきっかけに烈山(頭治の父親)と出会い、仲良くなる。

そのことは頭治と唯衣は知らない。

 

 

 

芥子烈山(からし れつざん)

 

男性。58歳。白髪短髪。

頭治の父であり「日隠流」を教えた師父でもある。

若くして現役を退いてはいるが、実力は今でも一級品であり、世界忍者最強とも謳われている。

頭治が唯衣と会うきっかけを作った人物でもある。

 

 

 

 

 

魔血(まけつ)一族

 

 

正体不明とされる悪の世界忍者の集団。物語開始前から世界をまたにかけ、暗躍している(らしい)。

一族と言っているが血の繋がりがあるのは一部の者だけで、部下(もっぱら戦闘員)は妖術で生み出された鴉天狗の化身。

魔血一族の長は魔血潔斎。黒い鬼の仮面をかぶっている。幹部はその娘、魔血霞。潔斎の被っている仮面を半分にしたような仮面をかぶっている。

 

 

 

 

 

唯衣達はアメリカのニューヨークの警察署にある遺品管理室へとやって来たのだが……。

 

「なんで地下にあるの?」

「危険だからそうよ。銀嶺を運んだ警察官も何人か不運な目に遭って亡くなった人も……」

「……大丈夫なのか?」

「とりあえず家の者なら大丈夫じゃない?」

 

そして銀嶺が保管されている部屋まで行き、目の前には懐中時計の銀嶺が置いてあった。

 

「…………」

「…まず誰が触る?」

「じゃんけんね」

 

三人でじゃんけんし、負けたユリアが銀嶺を最初に拾うことになった。

 

「……」

 

ユリアは緊張しながら銀嶺を拾い上げる。

それから数十秒静止する。

 

「…何も起こりませんわね」

「ああ」

「じゃあ出ましょう」

 

三人が部屋から出ようとした時であった。

部屋の扉から強い風が吹きだし、その風がユリアのスカートをめくり上げる。

 

「きゃああああ!」

 

ユリアは一生懸命にスカートを抑えるが、風の勢いは強く、スカートの中身を頭治はもろに見てしまった。

 

「頭治さん、見ました?」

「いえ……」

「嘘つかないで!」

 

ユリアにビンタをくらわされる頭治。

 

「俺も不幸な目に遭った!」

 

三人は警察署から出て行った。

 

 

「もう……」

 

ユリアは少し怒っていた。

 

「俺が一番酷い目に遭った気がするぜ」

 

頭治は叩かれた頬を抑えている。

 

「なあ、もう俺が持ってた方がよくねえか?」

「なんで?」

「二人の不運が遠まわしに俺のところに来そうだからだよ。

さっきみたいなことがまた起こらないなんて可能性はないだろ?」

「…………」

「それじゃあ頭治さん、お願いします」

「ああ」

 

ユリアから銀嶺をもらう頭治。

 

「さて、俺にはどんな不運がやって来るかな」

 

普通に歩いていると突然看板が落ちてくる。

 

「危ない!」

 

頭治はすぐに唯衣とユリアを庇う。

三人は無事、落ちてきた看板から避ける。

 

「危なかった……」

「でもなんでいきなり……」

「確実に俺ってかこれだろうな」

 

頭治は銀嶺を見る。

 

「とりあえずこれを持つのはいいが、ミヤコがどこにいるかだ」

「それにこんな街中で襲われたら……」

「ああ、まずい」

「とりあえずは街から出ましょう。車を手配します」

「車もなんか危険な気がするが、歩いて行くのは時間かかるし、移動手段上安全なのは車の方だな」

 

ユリアは車を手配するが、車が来るのに少し時間がかかるとのことだった。

 

「車も少し時間かかるか……。とりあえず俺だけでも離れてるな。あっちの方にいるから、後で合流しよう」

「わかったわ。どのくらいで合流すればいい?」

「そうだな……3時間後だな。一応携帯……」

 

頭治が携帯を出すと携帯はいきなり電池切れになる。

 

「ちょっと待て!? 俺フル充電してたはずだぞ!」

「これも銀嶺の不運の力?」

「とにかくは3時間後だ。もしも俺がいなかったら、先に二人で少し先のホテルにでも行ってくれ」

「わかったわ」

「ホテルは『サイドホテル』よ」

「了解した」

 

頭治は唯衣とユリアと別れた。

 

 

「別れたのはいいが、携帯の電池切れで基本的に連絡も取れない……。

まあ、合流場所と時間は指定してるし問題ないだろ。

合流できない時のことも決めてあるし……」

 

頭治が歩いていると突然トラックが自分に向かって突っ込んでくる。

 

「ほっ!」

 

頭治は持ち前の忍者としての器量でトラックから身をかわす。

 

「え? え?」

 

突然姿を消した頭治に驚くトラックの運転手。

 

「ブレーキも効く。どうなってんの?」

 

トラックの運転手はそう思った。

 

「危ない危ない」

 

頭治は既に一つのビルの屋上にいた。

 

「魔血一族もよく分からん女もこれを狙ってるんだよな」

 

頭治は銀嶺を出し、銀嶺を見る。

 

「迂闊に出して大丈夫か?」

「!」

 

頭治はすぐに後ろに振り向くと同時に距離を取る。

そこにいたのは梁と唯衣の同級生で生徒会長の宮木葵がいた。

 

「梁、それにお前は葵。梁はともかく葵までどうしたんだ? こんなところで……」

「私はアメリカの観光旅行に来たのよ」

「そんで俺はたまたま宮木と会って、宮木の観光旅行に付きあってるってところだ」

「ただこんなビルの屋上まで連れてこられるとは思わなかったけどね」

「いやいや、そもそも梁、お前昨日まで日本にいたよな? 俺は自家用ジェットで来たけどさ……」

「俺もお前と別れてすぐにアメリカに来たんだ」

「私は昨日から来てたのよ」

「そうか」

「で、お前はどうしてこんなところにいるんだ?」

「唯衣達と別れたんだ。銀嶺の不運の力であいつらまで不運になるといけないからな」

「けどここも危ないんじゃないか?」

「かもな。けど、さっきは危なかったぜ。トラックにはねられそうになったんだしな」

「お前ならトラックにはねられても怪我しないと思うけどな……」

「いくらなんでもそりゃねえだろ。あの強化服着てるんなら話は別だけどよ」

「ところでその時計って……」

「不運を呼ぶ時計、銀嶺。言っておくが今は渡せねえぞ。こいつには人の命がかかってるんだからな」

「人の命?」

「唯衣の従妹のな……」

 

頭治が葵にミヤコのことなどを話した。

 

「そんなことが……」

「ああ。これがミヤコを助け出すための手がかりであると同時に鍵だ。

……ところで梁、巽香と和樹はどうした?」

「多分あの二人はいつものパターンだと思うぞ」

「……なるほど」

 

いつものパターンと聞いて理解した。

和樹は忍者としては致命的な方向音痴であり、巽香はその和樹にいつも付きあわされるので、二人ともアメリカに向かったはずが別の飛行機に乗ったりしている可能性もあるのだ。

 

「となると今ここにいる世界忍者は俺とお前だけか……」

「お前たちだけではないぞ」

 

するとそこに魔血霞が現れる。

 

「魔血霞!」

「ちっ、見つかったか!」

「銀嶺を渡してもらうぞ!」

「そうはいかないぜ!」

「逃げるぞ、宮木」

 

頭治と梁は世界忍者でない葵を抱えて、一気にビルを降りる。

 

「何で逃げるの? 私がいるから?」

「いや、あんたの実力はよく分かってる。けどあそこはビルの屋上だ。何かあって落ちたら大変だろ。

俺達世界忍者なら落ちても大丈夫だけど、そうでないお前は……」

「ごめんなさいね」

「だが今は平地だ。ここならまず落ちる心配はない」

「またこいつのせいか」

「まあ狙ってるのがそれだから、そいつのせいだな。不運とか関係なしにな……」

「さすがにこれは不運だと思わねえよ」

 

すると頭治達の走る足元に石があり、頭治はそれに躓きそうになる。

 

「大丈夫?」

「…こいつは不運のせいだな」

 

とにかく三人は魔血一族から逃げる。

そうしているうちに街外れに出てしまう。

 

「やば、唯衣達の合流場所から大分離れた」

「だったら俺がそれを持とうか?」

「いや、一応こいつは凪村家の物だ。唯衣か爺さんの許可なしに他人には渡せねえな」

「仮にも執事ってわけか」

「わかったわ。私達で足止めするわ」

「すまないな」

 

そう言って頭治は梁と葵と別れた。

 

「さてと、宮木」

「ええ」

 

葵の体から粒子が出て、その粒子が刀を形成する。

葵の体から出てきた刀の名前は「聖刀・桐牙(せいとう・きりきば)」。

少し前のある事件をきっかけに梁が和樹に頼み、葵の体に埋め込んだ獅子流の秘刀の一つである。

 

「ふん!」

 

梁も忍装束に姿を変え、シシガとなる。

そこに鴉天狗達が現れる。

 

「いくぞ、世界忍者と一生徒会長の足止めだ!」

「ええ!」

 

シシガと葵が鴉天狗達に突っ込んでいく。

 

「でやあっ! とりゃあ!」

 

シシガは手に付けた爪で鴉天狗達を倒していく。

 

「はあ! やあっ!」

 

葵も持ち前のセンスで鴉天狗達を斬り倒す。

そうしているうちに二人は鴉天狗達を倒した。

 

「これで全部か?」

「あの女は?」

「いないな。あの女一人だけなら頭治の力で撒けるとは思うが……」

「私達も追う?」

「いや、お前は凪村達と合流してくれ。頭治は俺の方で追う」

「わかったわ」

 

シシガも頭治を追うことにした。

その頃、頭治は……。

 

「まったく、少しがむしゃらに走ったからどこかよく分からねえ」

 

頭治の足は早く、持久力もあったために簡単には止まらず、頭治が気付いたら既に街の外であった。

 

「砂漠って程じゃないが、荒野まできちまったな……」

 

そこはどこにも隠れるところのない場所だった。

正確には看板が少しあるが、人が隠れるには難しい大きさである。

 

「魔血一族はともかくあの霊が気になるな。あの霊、もしかしたら障害物とか関係なしに来る可能性あるしな……」

 

頭治はもう少し様子を見てから街に戻ろうと考える。

それからしばらくして、やって来たシシガと合流。

尾行されている気配もなく、安全だと確信した頭治と梁は街に戻った。

 

「頭治!」

 

街に戻ってすぐに唯衣、ユリア、葵と合流した。

 

「大丈夫? 頭治」

「大丈夫だ。俺は逃げただけだからな。むしろ怪我の心配は梁か葵の方に向けてくれ」

「俺達も大丈夫だ」

「ええ」

「よかった……」

「とりあえず、ホテルに行こうか」

「ホテル?」

「『サイドホテル』って名前らしい」

「あら、奇遇ね。私達もその『サイドホテル』ってホテルに泊まってるのよ」

「ありゃ?」

 

そして五人は宿泊先のサイドホテルに向かい、40階の部屋に入った。

それから夜になる。

 

「さてと、今のところ目立った不運はなしだな」

 

銀嶺をテーブルの上に置き、五人がそれを囲むように立つ。

 

「けど、これが狙われる可能性がある」

「どこかの金庫って言っても魔血一族やあの女が狙う可能性はあるし、ミヤコの命も危ない。

というかミヤコは一体どこにいるんだ?」

「それが問題よね」

「…………」

「凪村、どうしたんだ? 考え込んだ顔をして……」

 

梁が唯衣に声をかける。

 

「実は頭治と別れてすぐにお爺様から連絡があったの?」

「お前のじいさんから?」

「何かわかったことがあるの?」

「ええ。この銀嶺、長針と短針が8のところで重なると絶大な幸運を招き寄せるって……」

「…ちょっと待て」

 

葵が持っている腕時計をいじる。

 

「やっぱりおかしいわ。長針と短針はどうやっても8で重ならない」

「重ならない? で、重なったら幸運がやって来る。この時計、壊れてるんじゃないのか?」

 

梁が銀嶺を触ろうとする。

 

「うかつに触るな!」

「おっとあぶねえ」

 

頭治の言葉で梁はふと我に返る。

 

「とにかく、もう少しこいつについて調べる必要があるな。

じいさんはなんか他に言ってたか?」

「いいえ……」

「親父の方も調べてくれてるが、まだ連絡はないしな……」

 

そんな時であった。突如下から爆発音が聞こえてくる。

 

「なに?」

『緊急事態発生! 1階ロビーで爆発火災が発生! お客様はただちに避難してください! ……繰り返します…………』

「爆発火災……」

「何か匂うな」

「ええ、煙が既に……」

「そっちじゃない」

「じゃあ、何?」

「魔血一族……いや、あの女の方だ!」

「頭治!」

「ああ! 唯衣達は本当に避難してくれ」

「わかったわ」

「とりあえず銀嶺は……」

「危険だが、俺が持っていく」

「……気をつけてね」

「ああ」

 

頭治はヤグラの姿になり、銀嶺を持つ。

梁もシシガの姿となり、一緒にロビーの方へと向かった。

 

 

二人は1階のロビーまで降りた。

スプリンクラーの水である程度は抑えられてはいるものの、火と煙が立ち込めていた。

 

「確かにすごい煙と火だ……」

「俺達もこの格好じゃなきゃ参ってるぜ……」

「……あんなところに人影が……」

「避難しそびれた人なら、助けてやるか」

 

二人がその影のところに向かう。

すると二人はその影がはっきり見える所までやって来ると……。

 

「ミヤコ!」

 

そこにいたのは連れ去られたはずのミヤコがいた。

 

「なんでお前がここに……」

「離れろ! ヤグラ!」

 

するとミヤコはその手でヤグラに襲い掛かって来た。

 

「うおっと! いきなりご挨拶だな、ミヤコ」

「ヤグラ……」

「ああ、どう考えても操られてるな。目に生気を感じねえぞ」

 

ヤグラとシシガはすぐにミヤコの目を見て、操られてることに気づく。

 

「俺達はこの格好だから何とかなってるが……」

「ミヤコは普通の服だ。あいつの耐性は知らないが、このままじゃ、煙の吸いすぎで死ぬか焼け死ぬぞ」

「だったら助けないとな!」

「でえええええい!!」

 

ミヤコは素手で二人に襲い掛かる。二人も素手でミヤコに応戦する。

しかしミヤコの力はとんでもないものだった。

ミヤコの何回目かの拳を避けた時、ミヤコの拳が床につくと、床が思いっきりへこんだ。

 

「おいおい! いくらなんでも力ありすぎだろ!?」

「だが操られてる以上武器は使えない!」

 

おまけにミヤコの足技も並みの格闘家を凌ぐものだった。

 

「あぶねえ!」

「せいやあっ!」

 

ヤグラがミヤコの足を掴んで関節を外す。

 

「!!!」

 

ミヤコは痛がる。しかし叫び声は出ない。

 

「悪いな、ミヤコ。次はもう片方の腕の関節を外して、連れ帰る」

「させるか!」

 

するとヤグラ達の床から木の根のようなものが現れ、床を破壊し、ヤグラ達を襲おうとする。

 

「なんだ!?」

「あぶねえな……」

 

するとその木の根がミヤコを縛り、そのまま連れ帰る。

 

「ミヤコ!」

「追わせはせんぞ!」

 

すると二人の前にミヤコを連れ去った女が現れる。

 

「邪魔だ!」

「獅子双爪斬!」

 

ヤグラとシシガが女に向かって斬りかかる。

だがシシガの攻撃は透き通り、ヤグラの攻撃は防がれる。

 

「くっ!」

「!?(俺の攻撃は貫通させずに止めた?)」

「甘いわね!」

 

女はヤグラに蹴りを入れる。

 

「ガハっ!」

 

ヤグラは飛ばされる。

飛ばされたショックで銀嶺が落ちる。

 

「あれは銀嶺! あれさえ手に入れば!」

 

女は木の根を使って銀嶺を獲ろうとした。

しかし……。

 

「獲った!」

 

そこに見ず知らずの男が割って入り、銀嶺を奪ってしまう。

 

「獲った! 獲った!」

「おのれーーーーーー!! 銀嶺を返せーーーーーーーー!!」

 

女が木の根で襲おうとしたが、突如と女が苦しみ出す。

 

「う……時間切れか……必ず銀嶺を取り戻す……」

 

女が消えると同時に木の根も消えていった。

その隙に銀嶺を盗んだ男も姿を消していた。

 

「逃げられたか……」

 

するとパトカーやら消防車のサイレン音が聞こえてくる。

 

「どうする?」

「このままだと俺達が爆発犯人されるかもな」

「逃げるか」

「ああ。忍者らしく去る」

 

二人はその場から去って行った。

 

 

二人は唯衣達と合流した。

 

「頭治、大丈夫?」

「ああ。だが、銀嶺を獲られた」

「獲られたって誰に? まさかその女に?」

「いや、まったく知らん男にだ」

「もしかしたら魔血一族に雇われた奴かもしれんな」

「ありえる。魔血一族は何するか分からんからな」

「……それともう一つすごく言いにくいことが一つある」

「何?」

「……ミヤコと会った」

「本当に?」

「ただ操られてた。足の関節を一つ外して連れ帰ろうとしたんだが、あの女に阻まれた」

「そう……」

 

唯衣は落ち込んだ顔を見せる。

 

「ごめんな……」

「ううん……」

「それはそうと銀嶺の場所を探さないと……」

「だな……」

「ミヤコを助け出すためにも必要みたいだしな……」

 

五人はひとまず霊的な女とミヤコを追うよりも、銀嶺を追うことにした。

その一方で銀嶺を盗んだ男は……。

 

「へへへ、こいつは結構金になりそうな時計だな。

あいつらに渡すのももったいねえや。

このままパクっちまうか」

 

男は車に乗り、そのまま逃げていく。

 

「どこへ行こうと逃しはせぬぞ」

 

逃げていく男を遠くから見る霞と鴉天狗達がいた。

その更なる一方で、女とミヤコは……。

 

「足の関節が外れてるな。はあああ」

 

女がミヤコの足に触るとミヤコの関節は元に戻る。

 

「…………」

「これで元にもど……っ!」

 

女はまだ苦しむ。

 

「……大丈夫?」

 

ミヤコが声をかける。

 

「いい。お前も銀嶺を探して来い」

「……はい」

 

女が手を動かすとそこに空間の穴が生まれる。

ミヤコはその空間の穴に入り、その場を去っていく。

 

「……くっ……、なんとしても銀嶺を取り戻し、あの方を……」

 

ひとり呟く女であった。

 

 

次の日になり、頭治達は銀嶺を一生懸命に探すも手掛かりが見つからない。

 

「全然見つからないな」

 

車を運転する頭治がぼやく。

 

「でもあれを持ってると不運が来るはずなのよね……」

「そんな情報が入ってこないとなると、盗んだ奴が相当不運な目に遭ってるのに慣れているか……」

「既に魔血一族、もしくはあの女の手に渡っているか……ね」

「何にしても早く見つけないといけないわね」

「ああ、人の命が関わっているからな」

 

車を運転していた頭治がラジオをつける。

 

『ニュースを続けます。本日ロサンゼルスのカジノでついている男が現れました。

その男は懐中時計のおかげだと言って喜んでいたそうです』

「懐中時計……」

「もしかしたら……」

「しかしロスっていきなりとんでもなく遠いな」

「どうやってロスまで行ったんだ?」

「手がかりがないんだ。ロスまで行くぞ。車じゃ飛ばしても3日はかかる。唯衣……」

「わかってるわよ」

 

唯衣はすぐに最初にアメリカまで来た時の自家用ジェット機を再び手配し、五人はそれに乗ってロサンゼルスまで飛んだ。

 

 

ロサンゼルスに着いた時は夜になってしまった。

 

「着いたわね」

「ああ。とりあえずはそのカジノを探そう。そこから男の情報が出るかも……」

「……あれ!」

 

葵が見た先には大金を抱えて車を走らせる男がいた。

 

「あの男……」

「間違いない、あの時は覆面をしていたが、体格と背格好からして盗んだ男だ」

「追うぞ!」

「ああ!!」

「でも車じゃないと……」

「おいそこの人、その車、譲ってくれ」

 

頭治が近くにいた男の人に車を譲ってくれと頼む。

 

「はぁ? 何言ってるんだ?」

「唯衣」

「仕方ないわね」

 

唯衣がお金を出し、頭治に手渡す。

そのお金を男に渡した。

 

「……こ、こんなに!? うひょ。ラッキー」

「さあ、追うぞ!」

 

五人はもらった車に乗り込み、男の後を追う。

 

「どこまで行くんだ?」

「とりあえずは止まるのを待つんだ」

「どうしてすぐに止めないの?」

「俺達なら手裏剣でタイヤをパンクさせることくらいそんなに難しくない。

けどそれでやけになられたら面倒だ。俺と梁だけならまだどうにでもなるが、何が起こるか分からない状況でやるべきことじゃない」

「私達の安全が第一ってことね」

「まあ世界忍者である前に……」

「執事ですから……」

 

それから数十分におよぶ車の尾行が行われる。

そしてようやく銀嶺を盗んだとされる男の車は道の端で途中で止まる。

 

「さてと、この金どうしようか……」

 

男は金の使い道を考え始めたのだ。

 

「三人はここにいてくれ」

 

頭治と梁は服を変えていく。

二人はこそこそとやっていく。

 

「う~ん……貯金ももったいないしな……」

「それよりも大事なことがあるぞ」

「うん?」

 

男が気が付くと、ヤグラとシシガが目の前にいた。

 

「おわっ!? いつの間に!」

「お前が盗んだ懐中時計を返せ!」

「返せだと!? 何のことだ?」

「とぼけるんじゃねえ!」

「「させん(ぞ)!!」」

 

二人の女性の声が聞こえてき、二人の元に手裏剣が飛んでくる。

二人は手裏剣を避ける。しかし手裏剣だけでなく、蹴りまで飛んできた。

 

「あれって……」

「ミヤコ!」

 

唯衣が飛び出してしまう。

 

「手裏剣はミヤコじゃないな。魔血霞、出てこい!」

「ほほほほほ!」

 

すると物陰から魔血霞と鴉天狗が現れる。

 

「あの女と手を組んだのか!?」

「ミヤコ・ハイムとは関係ない。だがその男には私達魔血一族も用がある。

男、よくも逃げ出してくれたな。銀嶺を渡してもらおうか」

「じょ、冗談じゃねえ!」

「ミヤコ!」

 

唯衣がヤグラとシシガのところにやってくる。

 

「唯衣、今はダメだ。まだミヤコは操られてるし、危険だ。俺が外した関節も治されてるようだ」

「それでも私は……」

「…………攻撃をいなすだけで何とかしてくれるなら止めない。けど、危ないことをするなよ?」

「わかったわ」

「私も唯衣の側にいるわ、頭治さん」

「私も……」

 

唯衣とユリア、葵の実力は決して低いものではない。

三人とも何かしらの達人クラスの実力がある。

しかし世界忍者と比べるとやはり実力は下になるし、今のミヤコはその世界忍者に匹敵する実力。

いくら達人クラスでも世界忍者クラスが相手では劣ってしまう。

だがそれでも戦いようがあるのをヤグラは理解している。

そのためミヤコを任せると言ったのだ。

 

「とりあえず俺達は銀嶺を奪い返すぞ」

「ああ」

「させん!」

「かかるでやんす!」

 

ヤグラ、シシガは魔血一族と戦う。

 

「おねがい、ミヤコ! 正気を取り戻して!」

 

ミヤコが素手で襲い掛かるも唯衣はうまくミヤコの拳に当たらないように合気道の要領で拳をいなしていく。

ミヤコがキックを出そうとした時は、ユリアが入って来て、その攻撃も合気道のようにかわされる。

 

「…………!」

「はあああああ!!」

 

その隙に葵が峰の方にした桐牙でミヤコを攻撃しようとするもミヤコは避ける。

そんな一進一退の攻防が続いている。

 

「てりゃあ!」

「ふりゃああ!」

『ぎゃああああああ!!!』

 

ヤグラ達は鴉天狗達を倒す。

 

「後はお前だけだ!」

「くっ……」

「魔血霞は俺に任せろ」

「頼むぞ」

 

逃げる男を追うヤグラ。魔血霞はそれをさせまいとし、その霞を阻むシシガ。

 

「逃がすかーーーーー!!」

「ひぇえええええ!!」

 

男は逃げるもヤグラの方が早いために回り込まれる。

 

「逃がさないぞ!」

 

ヤグラは閃光神堂剣を引き抜く。

 

「く、来るな! 来るな!」

 

男がヤグラに向けて拳銃を撃つも、ヤグラは閃光神堂剣で放たれる弾を叩き斬る。

 

「無駄だ。その銀嶺を渡せ!」

 

ヤグラが無理矢理とばかりにとびかかった。

 

「ひぃいいいい!!」

 

その時であった。男が手に持ち、とっさに前に出していた銀嶺が突如と剣へと変わり、ヤグラの体を突き刺した。

 

「!」

「頭治!」

「あの鎧を貫通させた!?」

 

頭治がヤグラとして活動する時の鎧はかなりの固さであり、並の武器では傷をつけることさえ出来ない。

 

「ヤグラ!」

「…………」

 

銀嶺は剣から再び懐中時計に戻る。

 

「ひ、ひぃいいいい!!」

 

男は銀嶺を放り捨てる。

それをうまく唯衣が拾う。

 

「何があったーーーーーー!!」

 

そこにようやく巽香と和樹がやって来る。

 

「ち、あの状況に残りの二人まで来たか。ここは退くべきだな」

 

霞は逃げていく。

 

「ヤグラ!」

「大丈夫?」

「起きて、頭治!」

「……血が出てない?」

 

普通剣に刺されたら血が出るものだが、ヤグラの体からは血が流れていない。

 

「和樹、これって……」

「わからん……」

 

ヤグラが目を開ける。

 

「頭治……」

 

ヤグラが辺りを見渡す……。

そしてすぐにヤグラは立ち上がる。

 

「ヤグラ!」

「頭治?」

「悪いが、俺にはやらなければならないことがある」

 

ヤグラは立ち去ろうとする。

 

「待って! 頭治! あなたは私の執事でしょ?」

「唯衣、俺は執事をやめるからな。じゃあな……」

 

ヤグラはただそれだけを言って走り去ってしまう。

 

「ヤグラ!」

「頭治さん!」

「芥子さん、どうしたのかしら? 人が変わったかのような態度に……」

(人が変わった……)

 

唯衣は手に持つ銀嶺を見て、なにかを考える。

 

(頭治、あなたに一体何が……)

 

 

銀嶺について起こったことを霞は潔斎に報告していた。

 

「何!? 銀嶺が剣に姿を変え、その剣にヤグラが刺された!? 馬鹿者! あれの重要性は教えた筈だ!」

「申しわけございません、父上!」

 

潔斎は大いに怒る。

 

「だが起こってしまったものは仕方ない」

「なんとしてもヤグラを探し出します」

「探せ! こうなれば儂も自ら探しに行く!」

「父上……」

「お前たちだけに任せておれん! いくぞ!」

「はっ!」

 

潔斎もヤグラを探しに出て行った。

それとほぼ時を同じくして、芥子家の書庫では……。

 

「むっ!?」

 

烈山がある文献を見つける。

 

「これは……」

 

烈山は文献を詳しく読む。

 

「こいつはいかん!」

 

烈山は文献のいくつかを再確認する。

 

「すぐに連絡せねば!」

 

烈山はいくつかの文献をもって書庫を出ていくのだった。

それから少し時間が経ってのアメリカでは……。

 

頭治はヤグラから姿を変え、元に戻っていた。

 

「くそ……、レディアめ。どこにいる!?」

 

頭治はレディアと言う人物を探していた。

 

「俺が知ってる入口はもう防がれてる。どうすれば……どうすればいい?」

 

頭治は焦りながらも、そのレディアと言う人物を探し続けるのだった。


 
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