No.516990

IS x アギト 目覚める魂 02:邂逅 その2

i-pod男さん

二話です。あかつき号のメンバーを登場させます。木野さんもです。

2012-12-10 00:33:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3533   閲覧ユーザー数:3398

「遅い・・・・」

 

千冬はそう呟いた。少し遅めとは言え午前中に一夏は試験会場に向かった。そこまで時間が掛かるとは思えないのに、既に二時半を過ぎていた。連絡も再三再四取ろうとしたが、携帯に掛けても例の電源が入っていないのメッセージが流れるばかり。思い当たる所には全て連絡しても、全く足取りが掴めない。

 

「一夏・・・・」

 

モンド・グロッソで起こった自分の失態を二度と繰り返すまいと毎日の一分一秒に細心の注意を払って過ごして来た。あの事件以来、一夏の心は脆くなり、毎晩の様に悪夢を見て泣き叫びながら起きて来る。口数も昔に比べると減った。最近はマシになっているが、それでもまだ油断は出来ない。特に、両親がいない姉弟二人には・・・・そんなとき、突然電話が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、ある屋敷では・・・・

 

「ふんふふん〜、ふふ〜ん♪」

 

一人の少女が小さな髪留めを付けて鏡を見ていた。それには、可愛らしい青い花、飛燕草(デルフィニウム)が付いている。彼女の頭髪も水色である事も相まって、良く似合っていた。

 

「あらあらご機嫌ね。」

 

「あ、お母さん・・・・」

 

彼女の母親は年齢はそれなりの筈なのだが、それを感じさせない雰囲気を持っており、外見も三十半ばにしか見えない色白の美人である。

 

「随分前の事だけど、引っ越す前に友達から貰ったんだ。(今頃どうしてるかな・・・・一夏。)」

 

「あら、そのお友達は只のお友達じゃなさそうね?浅い仲でも無さそうだし。簪ちゃんたらおませさん♪」

 

意味深な言葉を残して別の座敷に入って行く。

 

[そんな事・・・・(ある様な、無い様な。)」

 

(私も頑張らなきゃ・・・・今のままじゃ、追い付けない・・・・!)

 

髪留めの位置に満足したのか、軽く頷くと机に向かい、束になっている参考書を開き、パソコンを起動した。気が遠くなる様な長芋時と数字の羅列を捲りながらパソコンを操作し、必要な所には付箋をつけたり蛍光ペンで線を引いたり走り書きをしたりと、ベテランのサラリーマンもびっくりな程の速さでそれを片付けて行く。

 

 

 

 

 

 

『立て・・・・立て・・・・!!襲え!襲え!!』

 

そんな恐ろしい声を聞いて、一夏は跳ね起きた。見慣れない飾り気の無い部屋。見た所、病室の様だ。服は隣のテーブルの上に丁寧に畳んであり、私物も全てある。そこに置いてある腕時計を見ると、そろそろ三時になる頃だった。

 

「目は覚めたみたいだな。」

 

「あ・・・・門牙さん・・・」

 

「まさかお前がギルスに変身出来るとは思わなかった。それは本当に予想外だ。お前、大丈夫か?大分うなされてたみたいだが。」

 

「幻聴が・・・・」

 

「体力の低下に伴ってそれは起こる。今回は一気に力を解放し過ぎたからその分足りなくなってぶっ倒れたんだろう。まあ、加減を間違えなければ大丈夫だ。そこは慣れと練習あるのみさ。」

 

「目が覚めましたか、それは良かった。」

 

ドアを開いて入って来たのは、中年間近の男性、木野薫だった。

 

「あの、ここは・・・?」

 

「真島医院の病室だ。私の名は木野薫。外科医だ。君と同じ、アギトの『光』を持っている。」

 

「アギトの、光・・・?」

 

「その事は俺が一から説明する。一度しか言わないからしっかり聞けよ。遥か昔、闇の力、創造主(オーヴァーロード)は自分に似せて人間を作った。人類はソイツに取って子供みたいな物で、何よりも愛していた。だが、光の力、己と対を成す存在が人類に制御出来ない知恵、アギトの力を植え付けようとした。オーヴァーロードはそれを嫌い、光と戦い、勝利した。だが、光は最後ギリギリで人類にアギトの力を植え付ける事に成功する。そして時を超えてオーヴァーロードが現代に蘇り、そのアギトの力を持つ者を抹殺する為に奴らを、アンノウンを放った。」

 

「何でそんな事を知ってるんですか?」

 

「夢で見たイメージさ。中々刺激的だったよ。話を戻すぞ。アギトの力を手に入れた人間を、アンノウンは見分ける事が出来る。俺達に出来る事はアンノウンの気配を察知する事ぐらいだ。ちなみに、アギトの力を持っている人間は、何かしらの特殊な力、才能を持っている。俗にいう、超能力だな。」

 

「ちょ、ちょっと待って、超能力?!あの、サイコメトリーとか、念動力とか言うアレですか?!」

 

一夏は信じられないと言う顔をした。そんな都市伝説紛いの事が本当にある筈が無い。

 

「そうです。能力は個々にありますが、稀に複数持っている人もいます。例えば、門牙君は何かに触れる事でその、何と言いましょうか、そう、『残留思念』を見る事が出来るのです。当然、人に触れればその過去も見る事が出来る。所謂サイコメトリーです。そしてもう一つは予知能力。先の未来が何なのか見る事が出来る。」

 

「と言っても、十秒だけだし、俺の未来だけなんだがな。お前もあるだろう?変身以外に何かしらの能力が。」

 

木野の言葉に門牙が残念そうに溜め息混じりにそう返す。

 

「そう言えば、昔・・・・昔、攫われた時に、パニックになって泣き叫んで、何故か手錠が外れて逃げられたんです・・・・後、夢の中とか、ボーッとしてる時とかに突然頭の中に何かのイメージが浮かんで来て、しばらくしたら全く同じ事がその時間に起こりました。」

 

「念動力と予知能力・・・・彼もまた、持っているのですね。でも、まだ完全に覚醒し切ってはいない。」

 

木野が静かに言う。

 

「俺、これからどうなるんですか?」

 

「お前に選択肢は限られている。まあ、ISを起動してしまったから尚更だ。俺も同じだがな。アギトの力に関しては、そのまま保有する、または俺達に譲渡する、の二つがある。これはお前が決めろ。先に言っておくが、一度アギトの力を手放せば、お前はアンノウンには狙われない。」

 

「でも・・・・俺以外にも、狙われる人は、いるんですよね・・・?」

 

「ああ。アギトの力をその身に宿す人間は、一家全員を皆殺しにされる。不可能と思われる様なやり方で。地上での溺死、壁に埋め込まれる、カマイタチ現象でバラバラに切り裂かれる、などなど。っと、話が逸れたな。次に、ISを起動してしまった事だ。俺達は世界で二人しかいないイレギュラーだ、当然俺達を狙う人間もいる。超能力者なんて早々お目にかかれないからな。選択肢は、IS学園に入ってそこで保護してもらう、それかこのまま政府から追われる身となる。あ、後自決って方法もあるな。」

 

「俺なら最後の二つはあんましお勧めしないけど。」

 

「浩二・・・・」

 

真島浩二が部屋に入って来た。

 

「目が覚めたみたいだね。俺はこの病院の院長の息子で、真島浩二って言うんだ。研修生の医者だけど。よろしく、織斑一夏君。あ、ちなみに俺も超能力者。」

 

「はあ・・・・」

 

今一つ状況に頭が追い付いていないのか、どこか気の抜けた返事を返す一夏。

 

「あ、そうだ!千冬姉に電話しないと・・・!」

 

「それなら問題無い。木野さんが電話しておいた。勝手ながら君の携帯を使わせて貰ったけどね。そろそろ来る頃だと思うよ?」

 

「でも、何て言ったんですか?流石にアギトだの何だの言っても信じられないと思いますけど。」

 

「確かにな。そこは上手くやってある。時間はあまり無いから、決めるなら今日中にやれ。俺達の連絡先をお前の携帯に入れておいた。しっかり考える事だな。後、お前の姉さんも狙われるかもしれないから気を付けろ。」

 

「・・・・はい・・・・」


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択