No.514301

ソードアート・オンライン ロスト・オブ・ライトニング 第七話 報告

やぎすけさん

デュオの報告にキリトは・・・

2012-12-02 14:09:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2678   閲覧ユーザー数:2604

デュオ視点

しばらく飛んで、シルフ領の北東の【古森】というエリアを抜ける辺りまでモンスターに出会わなかった。

それにエンカウントしても俺とキリトが、即座に四散させていくためエンカウントしていないのと大して変わらない。

途中で遭遇したのは、五匹の【イビルグランサー】という名前の一つ目のトカゲである。

カース系魔法を使ってくるモンスターのため、接近戦は不利のはずだが関係ない。

突っ込んでは一撃で、一刀両断していくだけ。

リーファは、俺たちにカース系魔法が直撃するたびに解呪魔法をかけているが、正直なところほとんど意味ないような気がする。

 

キリト「これで・・・」

 

デュオ「ラスト!!」

 

とうとう最後の一匹が、俺たちの攻撃によって4等分にされて消えると、戦闘が終わった。

すると、リーファは手を上げて労いの言葉をかけてくる。

 

リーファ「おつかれ~。」

 

キリト「援護サンキュー。」

 

デュオ「意味があったかは、わからないけどな。」

 

俺とキリトも同じく手を上げて、リーファとハイタッチをかわす

 

リーファ「しっかし・・・まあ何ていうか、ムチャクチャな戦い方ねぇ。」

 

デュオ「せっかく剣があるんだから、これで殺らなくちゃ。」

 

俺は剣を背中に戻してそう言うと、翅が疲れたような気がする。

飛行時間が限界に来たので俺たちは山の裾野にある草原の端に着陸する。

キリトはふらつきつつも、何とか着地した。

 

リーファ「さて、ここからは空の旅はしばらくお預けよ」

 

キリト「え~、何で?」

 

リーファ「見えるでしょう、あの山」

 

リーファは正面に見える山を指差して続ける。

 

リーファ「あれが飛行限界高度よりも高いせいで、山越えには洞窟を抜けないといけないの。シルフ領からアルンへ向かう一番の難所、らしいわ。あたしもここからは初めてなのよ。」

 

キリト「なるほどね・・・洞窟か、長いの?」

 

リーファ「かなり。途中に中立の鉱山都市があって、そこで休めるらしいけど……。キリト君,デュオ君、今日はまだ時間大丈夫?」

 

デュオ「俺は問題ないよ。いつも暇だし。」

 

キリト「俺も当分平気だよ。」

 

リーファ「そう、じゃもうちょっと頑張ろう。ここで一回ロートアウトしよっか。」

 

キリト「ろ、ろーて?」

 

デュオ「なんじゃ、それ・・・?」

 

リーファ「ああ、交代でログアウト休憩することだよ。中立地帯だから、即落ちできないの。だからかわりばんこに落ちて、残った人が空っぽのアバターを守るのよ。」

 

キリト「なるほど、了解。」

 

デュオ「俺たちは後でいいよ。リーファからどうぞ。」

 

リーファ「じゃあ、お言葉に甘えて。二十分ほどよろしく!」

 

そう言うとリーファはログアウトした。残ったアバターは自動的に待機状態となる。

リーファがいなくなったのを確認すると、俺はキリトに言う。

 

デュオ「さて、ようやく3人だけになれたし、話すとするか。」

 

キリト「何をだ・・・?」

 

デュオ「レクトへのハッキングの結果だ。っとその前に・・・」

 

俺はメニューを開くと、ストレージから緑色のストロー状のものを二つ実体化させた。

 

キリト「何だ、それは?」

 

デュオ「スイルベーン特産だってさ。ほら」

 

一つを自分の口に咥え、もう一つをキリトに渡す。

キリトはそれを観察してから、俺と同じように口に咥えた。

 

デュオ「じゃあ話すけど、良い報告と悪い報告、どっちから聞きたい?」

 

キリト「じゃあ、悪い方から頼む。」

 

デュオ「OK。まず最初に、やっぱりアスナは世界樹の上にいる。」

 

キリト「本当か!?」

 

キリトは身を乗り出してくるが、俺はそれを手で制してから続ける。

 

デュオ「アスナだけじゃない。SAO未帰還者約300人が全員、レクトのサーバー内に監禁されている。」

 

キリト「なんだって・・・!?そのこと警察には・・・?」

 

デュオ「言うわけないだろ。なんて説明する気だよ?大手企業のサーバーハッキングしたら、SAO未帰還者の意識がありました、とでも言う気か?そんなことしたら、逆に俺が捕まるわ。」

 

キリト「そうか・・・でも何のために・・・?」

 

デュオ「人体実験だよ。」

 

キリト「っ・・・!!」

 

俺の言葉に、キリトは絶句した。

SAOから帰ってきてない人たちが、人体実験に使われていたのだから、当然の反応だろう。

 

キリト「じゃあ・・・!!」

 

デュオ「安心しろ、アスナは実験体のリストに入っていない。」

 

キリト「そうか・・・」

 

キリトは、胸を撫で下ろす。

恋人が実験に使われていないとわかったのだから、当然そういう反応をするだろう。

俺がキリトの立場なら、同じことをしたはずだ。

 

デュオ「みんなをログアウトさせるためには、ゲーム内にあるコンソールからアクセスするしかない。」

 

キリト「それはどこにあるんだ?」

 

デュオ「おそらく世界樹の上だろう。」

 

キリト「結局、俺たちはあそこに行くしかないわけか。」

 

デュオ「そうなるな。」

 

俺は、キリトの言葉を肯定する。

そして今度は良い報告を口にしようとすると、先にキリトが訊いてきた。

 

キリト「で、良い報告っていうのは?」

 

デュオ「ああ、サチや黒猫団、それにディアベルやグリセルダさんたちが生きてる。」

 

キリト「何!?・・・本当か!?」

 

デュオ「ああ。」

 

俺が頷くと、キリトは期待と希望、そして疑問の入り混じった表情でさらに訊いてくる。

 

キリト「でも、何で・・・?ナーヴギアはゲームオーバーになって約10秒でマイクロ波を発生させるんじゃ・・・?」

 

デュオ「実は、ナーヴギアはゲームがクリアされる前にログアウトしたプレイヤーをゲームオーバーと判断してマイクロ波を発生させていたんだ。だけど、須郷がSAOからログアウトすると、自分のサーバーに自動ログインされるように仕組んでいたから、ゲームオーバーで帰還するはずだったプレイヤーの意識がSAOのサーバーから現実ではなく、仮想空間のレクトのサーバーに移動したから、ナーヴギアはゲーム内で蘇生したと勘違いしてマイクロ波を発生させなかったんだ。」

 

キリト「つまり・・・」

 

デュオ「サチたちは、須郷が仕掛けた実験用の細工によって命拾いしたってわけだよ。」

 

キリト「生きていたのか・・・よかった・・・」

 

キリトは、小さな子供のように喉を詰まらせて声を上げて泣き始めた。

俺は、そんなキリトの肩にそっと手を置くと、言った。

 

デュオ「泣いてる場合じゃないぞ。須郷のやったことは結果としてみんなを助けたけど、みんなはまだあいつに利用されてるんだ。」

 

キリト「ああ・・・助けな・・・きゃ・・な・・・」

 

キリトは泣き続けながらも、どうにか答えた。

すると、胸のポケットからユイが出てきてキリトの肩に乗った。

 

ユイ「パパ・・・」

 

ユイは、心配そうにキリトのこと見る。

 

デュオ「ユイ、今は泣かせてやろう。パパのそれは嬉し泣きだから。」

 

ユイ「でも・・・」

 

デュオ「何かしてやりたいよな。」

 

ユイ「はい・・・」

 

デュオ「だったら、元の姿に戻ってキリトのことを抱いててやると良い。“友達の俺には出来ない、家族のお前になら出来ることだ”。」

 

俺がそう言うと、ユイは空中で一回転して元の姿に戻り、座ったまま泣き続けているキリトを抱きしめる。

 

デュオ〈ふつうの家族って、こんなに暖かいものなのかな・・・?〉

 

返事のない自問自答を、心の中でしてから俺は、何気ない仕草で2人から目を離し、ハッカ味のストローを吸った。

 

リーファ「お待たせ!モンスター出なかった?」

 

無言でハッカの香りを楽しむこと、約30分。(キリトが泣き止んで、ユイが妖精の姿に戻ってから15分。)

ようやく、リーファが待機状態から立ち上がった。

 

デュオ「おかえり。」

 

キリト「おかえり。静かなもんだったよ」

 

リーファ「・・・それ、何?」

 

デュオ「雑貨屋で買い込んだんだ。・・・吸うか?」

 

うなずいたので、咥えていたストロー状のものを口から離してリーファに投げる。

リーファは、数秒間それを睨みつけてから、やがて口に咥える。

 

デュオ「間接キスってやつか?」

 

俺が何気無く呟くと、リーファはストローを吐き出して、咳き込む。

飛んできたそれを、慌ててキャッチしてリーファを気遣う。

 

デュオ「だ、大丈夫か・・・!?」

 

リーファ「ゴホッ・・・ゴホッ・・・な・・・え・・・」

 

顔を真っ赤にして噛みまくるリーファ。

 

デュオ「そんなに不味かったか?」

 

リーファ「ゴホッ・・・そう・・・じゃなく・・・って」

 

デュオ「なんだ、間接キスが嫌だったのか?」

 

リーファ「別に嫌じゃないけど・・・」

 

デュオ「はあ、なんだって・・・?」

 

リーファ「な、なんでもない!!」

 

リーファは、顔を真っ赤にしてそっぽ向いてしまった。

結局、どうしたのかは教えてくれなかった。

その後、キリト、俺の順でログアウトして準備をしてから、ルグルー回廊を目指して歩き出した。


 
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