No.513764

アイマスSS 歩いて帰ろう~最近のいおりんときたら編~

間に合わなかったぁ・・・悔しいのぅ、悔しいのぅ。お題は「進歩」なのです。いおりんが素直になったらきっとぐうかわ。ツンデレラでも最強なんですけどね

2012-11-30 23:27:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1501   閲覧ユーザー数:1489

 

 歩いて帰ろう~近頃のいおりんときたら編~

 

 この765プロに勤め始めてはや数年。自分で言うのもなんだが、プロデューサー業も板につき始めてきたと思う。

 

 何人ものアイドルをプロデュースし、トップアイドルとして育て上げてきたつもりだ。

 

 時に、最近のニュースといえば、やはり人気絶頂のアイドルグループ、我らが竜宮小町が解散したことだろう。

 

 ファンからの反響は凄いものだったが、彼女たちは良いファンを持った。

 

 それぞれがそれぞれの道を進むことを快く受け入れ、応援してくれている。一昔前なら親衛隊なんて呼ばれるようなファンたち。ほんとうに有難い。

 

 と言うわけで俺は、このような経緯を経て、かつての担当アイドル、水瀬伊織のプロデューサーに舞い戻ったわけである。

 

 戻ったわけなんだが――。

 

「伊織、そろそろ仕事に戻らないと」

 

「なによ、もう少しくらい良いじゃない。せっかく昼からオフなんだから、ゆっくりさせなさいよね」

 

 今現在の我々の格好といえば、俺が事務所のソファーに座り、更にその膝の上に彼女――水瀬伊織が座っている。

 

「そうは言ってもだなぁ、その仕事が終わらなきゃ一緒に帰れないぞ?」

 

「そ、それは困るわね。どいたげるから早く済ませなさいよね」

 

 膝の上から、普通より少し高い体温が離れた。

 

「かしこまりました、お嬢様」

 

 なんて軽口をたたくのも、最近になってからだったように思う。

 

 彼女が竜宮小町に入る前、初めて俺が所属アイドルとして彼女とあったときは、事あるごとに怒鳴られていた気がする。

 

「にひひっ、あんたもレディーの扱いに慣れてきたみたいで、一緒にいる私も鼻が高いわ」

 

 決して大きく笑うわけではないんだが、子供の無邪気さと大人の優雅さを兼ね備えた笑みは、これから事務仕事につく俺の心には栄養剤だった。

 

 さて、音無さんは相変わらず頑張ってるし、俺も頑張るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始めの頃は、私一人でもなんでもできると思ってたし、正直プロデューサーなんていらないとさえ思ってたわ。

 

 でも、事務所の仲間達と仕事をしてきて、人間は誰かと一緒に歩んでいく生き物なんだと悟ったの。

 

 だから、またプロデューサーが私を担当してくれるって聞いた時、正直すごく嬉しかったの。

 

 ――にひひっ、本人には言えないけど。

 

「伊織さ、最近良く笑うようになったよな」

 

「そ、そうかしら?スーパーアイドル伊織ちゃんだもの。誰が見てるかわからないじゃない」

 

 そう、誰が見ててもいいように、私の一番をみせてるわけ。当の本人は気付いてないみたいだけど。

 

「やっぱ、笑ってる顔が一番可愛いな。さすがスーパーアイドル」

 

「ば、バカ!当たり前じゃないのよ!」

 

 あぁ、またやっちゃった。ホントはありがとうって言いたいのに、なんでいつも憎まれ口を叩いちゃうんだろ。

 

「そうだな。伊織が可愛いのは当たり前だよな」

 

「もう――」

 

 ぎゅっとシャルルを抱きしめて、熱くなった顔を隠した。

 

 あいつは下むいて仕事してるし、見えてないわよね?

 

 か、可愛いだって。ふふ、悪い気はしないわね。

 

「あと、どのくらい掛かりそうなの?」

 

「そうだなぁ。もうすぐ終わるかな」

 

 そっか。すぐじゃない。

 

「それが終わったらもう帰れるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、最近アイドルたちと歩いて帰ることが多くなった。もちろん伊織ともよく一緒に帰る。

 

「そうだな、音無さんが優しければ帰れるな」

 

 ――音無さんが無言で睨んでる気がするが、まぁ気のせいだろ。音無さん優しいし。

 

「小鳥は優しいから、帰れるわね」

 

「そうだな、小鳥さん優しいもんな」

 

 褒め殺しにされた小鳥さんは、顔を赤らめて自分の仕事に戻る。可愛らしい人だなぁ。

 

「さて、そんなことを言ってるうちに終わったぞ。帰るか」

 

「待ちくたびれたわよ」

 

 こんな感じの言葉にも、棘がなくなった気がする。

 

「ごめんごめん、さぁお嬢様、参りましょうか」

 

「えぇ、行きましょう、P」

 

 そういえば、最近伊織に名前で呼ばれることも増えてきた気がする。

 

 なんて言うか、むず痒いというか。まぁはっきり言って嬉しい。

 

「何よニヤニヤして。気持ち悪いじゃない。シャキッとしなさいよね」

 

 まぁこうやって怒られるのも悪くはない。正直最初の方はこたえたけどな。

 

「あぁすまん、伊織に名前呼ばれるのが、なんて言うか嬉しくてな」

 

 一瞬で伊織の顔が真っ赤になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 な、何をこんな往来で恥ずかしいこと言ってんのよ!

 

「ば――」

 

 だ、ダメよ。ここで怒鳴っちゃ。素直にならなきゃ。

 

「と、当然でしょう?この伊織ちゃんに褒められたんだから、もっと喜びなさい」

 

 ――これも違うわね。素直になるって難しいわ。

 

「なぁ伊織、寒くないか?」

 

「確かに寒いわね。でもそういう時期でしょ?悪い気分じゃないわ」

 

 あんたと一緒だしね、にひひっ。

 

「ホットの100%オレンジジュースがあればよかったんだけどな」

 

「あんまり美味しくなさそうね、それ」

 

「ほっとレモンとかあるし、いけると思ったんだけどなぁ」

 

 あんたの、こういうなぁんにも考えて無さそうな所、見習いたいわね。嫌味じゃないわよ?

 

「今度温めてみようか。意外といけるかも」

 

「気が向いたらね」

 

 あ、と短く声を上げて、小走りで道の端の自販機に駆け寄っていく。

 

 こういうとこ、とっても気が利くんだから。

 

「悪い悪い、おまたせ」

 

 すっと差し出されたホットの紅茶の缶は、これでもかっていうくらい熱かった。なんとかならないのかしらね、これ。

 

「伊織の口に合えばいいけど」

 

「たまにはこういうのもいいわ」

 

 プルタブを引き上げると、ふわっと紅茶の匂いが漂ってきた。正直安っぽいけど、あいつが買ってきただけで美味しいわ。

 

「――はぁ」

 

 私が息を吐くと、温まった息が白くなった。もう冬ね。

 

「私ね、あん――あなたにずっと言いたかったことがあるの」

 

 今なら、言えそうな気がする。

 

「いつも、ありがと。初めて担当してもらった時から、ずっと感謝してたのよ?」

 

「へ、それって――」

 

 あいつの顔が――私もだけど――赤くなってるのがわかるわ。

 

「か、勘違いしないでよね。一時の、気の迷いなんだからぁ!!いい、これからもずっと見ててよね!!にひひっ」

 

 
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