No.511903

ゼロの使い魔 ~魔法世界を駆ける疾風~ 第十八話

十八話です。お楽しみいただければ幸いです

2012-11-24 23:03:10 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:9713   閲覧ユーザー数:8983

俺とルイズはいま、公爵家から学院に戻る馬車に乗っている

いくら姉の治療といっても学校を休める日数は限りがあるからだ

だから今朝早く起きて、鍛錬も途中で切り上げたんだが…

 

「なんで貴方たちがいるんですか?義父上に義母上。エレンにカトレアまで…」

「あら?わたくしたちがいてはいけないのですか?」

「そうだぞ婿殿。何も悪い事はなかろう」

「ご、ごめんなさいあなた。わたしは止めたんだけど…」

「わたしは病気で学院に行った事がなかったから♪」

 

義母上と義父上は素知らぬ顔で答え、エレンは幾分すまなそうに、そしてカトレアは学院が楽しみでしょうがないという顔で答えた

 

「ありがとうエレン。君だけが味方だ…」

「わたしはうれしいです!ちぃ姉さま♪」

 

ルイズはカトレアが一緒に来る為か、鼻歌でも歌いそうなくらい上機嫌だ

 

「とりあえず、ここにいる理由を聞けばよかろう。ハヤテよ」

 

クラマがそう言った。ちなみにクラマの紹介は初日に済ませて、今はカトレアに撫でられて目を細めている

 

 

「ああ、そうだねクラマ…。改めてお聞きします。一緒に学院に行く理由はなんですか?」

 

本当になんなんだろうか?

くだらない理由だったら『飛雷神』で屋敷に強制送還させるけど…

 

「うむ。実はワシもカリーヌも、共にオールド・オスマンに世話になってな。娘に婿ができた事を知らせに行きたいのだ」

「…『サイレント』(ぼそっ」

 

そう義父上が言ったあと、義母上がサイレントを唱えた

 

「…なにか内密の話があるのですね?」

「ああ。実は近いうちにアルビオンで内乱があるらしくてな。それがトリステインに飛び火しかねんと思い、オールド・オスマンに相談しに行くのだよ」

 

ああ。ウェールズ皇太子が殺されるヤツか

…今のうちにワルドのことを言っておくかな

情報は武器。事前に知っておけば、対処もし易い

 

「…義父上、義母上。わたしも相談したい事があるのですが」

「む?それはアルビオンに関することか?」

「間接的に、ですが」

「いいだろう」

「まず最初に言っておきます。これから話す事は絶対に口外しないでください。エレンにカトレア、ルイズもだよ」

「わかった。口外しない事を誓おう」

 

さて、何から話そうか

 

「まず、俺の情報源からお話しします。彼女の名前は『マチルダ・オブ・サウスゴータ』と言います」

「ッ!?…モード大公絡みかね?」

 

驚愕の表情を浮かべた後、確認をするように声をかけてくる

 

「その通りです。そして、俺が彼女と会ったのは魔法学院です。ルイズ、ミス・ロングビルがマチルダだよ」

「えっ!?ミス・ロングビルが?」

「ちょっと待ってあなた。わたしたちはそのミス・ロングビルのことを知らないわ」

 

エレンが疑問の声を上げる。

ああ、マチルダって数年前に雇用されたって言ってたな。エレンと面識が無いのも当然か

 

「そうだね。彼女はオスマン学院長の元秘書だよ。今はアルビオンで情報収集をしている。そして彼女には、ひとつ異名があります」

「異名?婿殿なんですかその異名とは?」

 

さて、と…

これを言って、義父上と義母上がどう反応するかは分からない

でも隠しておいて後でばれた方が面倒な事になる

なら、今伝えるのが得策だ

 

「『土くれのフーケ』です」

「「「「「!!??」」」」」

 

馬車の中にいる全員が驚愕する

ルイズは俺がフーケを術で消滅させたところを見ているから特にそれが顕著だ

まあ、アレは土で作った人形だったけど

 

「皆さんが驚くのも無理はありません。しかし彼女が盗みをしていたのはある理由があったのです」

「理由?」

「ああ、そうだよカトレア。その理由をお話します。まず、彼女には妹がいます。幼い頃からずっと一緒にすごしてきた、妹が」

「妹…?その妹がなに?」

「今から話すよルイズ。その妹は先ほど義父上が言っていた『モード大公』の娘です。そして、彼が粛清された理由ともいえます」

「モード大公が粛清された理由?たしかに理由は明らかになっていなかったけど…」

「明らかに出来ないのもこの世界では当然だね。モード大公はエルフを妾にしていたんだ。その娘が、マチルダの妹なんだ」

 

人種で迫害するなんて事は、どの世界でも同じか…

前世でも現代はともかく、一昔前なんかは黒人を奴隷にしていたからな

それ以前に、この世界では貴族と平民という差があるからな

 

「と言う事は、ハーフエルフ…ですか」

「そうです。だからマチルダは盗みで生計を立てていた。彼女の妹はとても仕事は出来ない。エルフは迫害されているからね。だけど彼女のほかにも孤児たちもいました。その孤児たちを食べさせるためにも、貴族の宝を盗み、売るしか方法はなかったんだ」

「…おそらくそのモード大公の粛清もアルビオンの反乱の原因だろうな」

「その通りです。そしてフーケの正体を知った俺は、彼女がこのまま処刑されるのは惜しい。と考え、フーケを表向き死亡したことにして彼女をアルビオンの貴族派のところへ送り込んだのです」

「何故、惜しいと考えたのだ?」

 

義父上がギラリとした眼光を向け、詰問してくる

 

「まずは学院長の秘書を勤めていた事務能力です。彼女を味方に出来ればそれだけ事務が捗ります。次は裏社会で気付いてきた人脈です。裏では表よりも精度がいい情報がありますから。そして言うには及ばず彼女はトライアングルのメイジです。正直、メイジは居すぎて悪いと言う事はありません」

「…ふむ。情報源については分かった。では相談したい事とは何だ?」

「…マチルダがつかんだ情報によりますと、トリステインの貴族にかなりの数の売国奴がいるとのことです。その売国奴はアルビオンの貴族派に与し、トリステインの情報を売っているとの事です」

「な、なんだと!?」

「そんな!国を売るようなヤツが貴族なんて!」

 

ルイズが俺の言葉に反応し、憤慨する。

それはもう頭が噴火するのではないかという位に

 

「ルイズの怒りももっともだ。だけど、これが本題ではないんだ」

「売国奴より重要な相談とは一体なんですか?」

「…現時点で判明した売国奴が重要なのです」

「一体誰なの!?あなた!」

「うん。正直俺も疑いたい大物ばっかりだ。まずは高等法院長のリッシュモンです。しかも彼は売国のみならず賄賂などを常習的に受け取っているとのことです」

「リッシュモン!?いきなり大物だな…。確かにやつは黒い噂が絶えなかったが」

「後は男爵や騎士などの小物ばかりですが、ヴァリエール家に関係するものが一人おりました」

「我がヴァリエール家に売国奴が!?一体誰だ!そ奴は!?」

「…魔法衛士隊隊長『ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド』子爵です」

「…ワ、ワルド様、が?」

 

ルイズは先ほどの怒りを霧散させて、顔色を変じさせる

かなりのショックを受けたようだ

…やっぱり、ルイズがいないときに話すべきだったか

 

「待て婿殿。ワルド殿が売国奴、いや貴族派に組しているとして理由はなんだ?ワシには彼が理由もなく貴族派に与するとは思えんのだ」

「おそらく『聖地』と、聖地に赴くための『力』かと。貴族派は『レコン・キスタ』と名乗り『聖地回復』を謳っているとのことですので」

「まさか、ワルド殿が…」

「私も何度もマチルダに調べなおさせました。しかしなんど報告を聞いても『リッシュモン』と『ワルド』。この名前は必ず報告に上がるのです」

「…わかった。こちらのほうでも売国奴に関する情報は調べておく」

 

正直な話、この世界のワルドがレコン・キスタに与しているかは分からなかった

だけどマチルダからの報告に必ず入っている

もう疑いの余地もないだろう

 

「そういえば使い魔品評会というものがありましたよね?」

「え?ええ、あったわよ。それがどうかしたの?」

「わたしの得た情報によると、その品評会にはアンリエッタ王女が来るそうです。そして護衛として魔法衛士隊も来るそうです」

「…つまり婿殿はこの機会にワルド殿が不審な行動をしていたら、始末する。と言いたいのですね?」

「その通りです」

「そ、そんな!」

 

ルイズの顔からは血の気は失せ、もはや蒼白になっている

暗に義母上が言ったワルドを殺す、という言葉に抵抗を感じているようだ

 

「ルイズ。分かって欲しいとは言わない。キミの婚約者を殺そうとしているんだからね…。でも俺は、出来る限りの事をしたいんだ。何もしないで手をこまねいてルイズやカトレア、エレンが傷ついたりしたら俺は自分を許せない」

「でも、だからって殺すなんて!」

「もちろん好き好んで殺すなんてしたくないよ。できればマチルダの報告が間違っていて、ワルドが何もせずにそのまま任務を続けてくれればいい。だけど警戒するにこしたことはない。少しだけでもいいから頭の隅においておいてくれ」

「…わかりました。警戒はしておきます」

 

…ふう。納得はしてないみたいだな

まあしょうがないか。憧れの人が反乱軍の一員だって言われたんだから

 

 

そして馬車の中に少し気まずい沈黙の時間が訪れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでワシはいつまでこうしておればいいのじゃ?」

「あら♪いいじゃない可愛いんだし♪」

 

…クラマェ。空気を読もうよ…

第十八話です。

ハヤテの忠告によりルイズはワルドにある程度の不信感を持ちました

このことが後々、どのように絡んでくるのでしょうか

では、次回の投稿をしばしお待ちください


 
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