No.511361

Fate/anotherside saga~ドラゴンラージャ~ 第七話『ヘルタント子爵』

本格的に寒くなってきましたね~
この時期はインフルエンザはもちろん、風邪の予防もしっかりしたいですね。

今回は、直接の出番は少なくてもヘルタント男児への大きな影響力を持っている「あの人」の登場です。
……バレバレだから隠す必要ないですね(^^;)

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2012-11-23 12:43:56 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1275   閲覧ユーザー数:1234

 

 

 

 

 

やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、 ほめてやらねば人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

――山本五十六

 

 

 

 

 

 

✞       ✞       ✞

 

 

 

 

 

「着いたぞ。ここが領主さまの住んでいらっしゃるヘルタント城だ」

 

 

ヘルタント城は村の近くに位置する小高い丘の上に建てられた城だった。

城と言ってもそこまで大きくはなく、貴族の豪邸というよりは実用性を重視した要塞のような感じを受ける。

 

 

「ほう。この城は…………悪くない、むしろ良いな。地味で飾り気の一つもないのは残念だが、この城には人の温かみと誠実さを感じる。城主であるヘルタント子爵とやらの人柄をうかがうことができるな」

 

 

ネロがそこまで誉めるなんて珍しいな。

おまけに基本、装飾華美な物が好きな彼女がこんな『戦うための城』ってものを誉めるなんてね。

なにか思うところでもあるんだろうか?

 

 

「ここが正門だ」

 

 

サンソンに案内されて城の門をくぐる。

城としてそこまで大きくないとはいっても、学校の校舎ぐらいしか知らない俺としてはその門の大きさにも圧倒されそうになった。

隣を歩くネロはいつもとまるで変わらない。

やっぱり彼女はこれよりも大きな城で生活していたのかな?

 

 

「ハーメル執事さま、先ほど報告した旅人の二人を連れてまいりました」

 

 

門をくぐった先にある大きなホールになっていた。

そこに立っていたあごひげを生やした中年の男性にサンソンが駆け寄り話を始める。

 

 

「君達がタクト・コノエにネロ・クラウディウスで間違いないかな」

「はい」

「うむ、間違っておらぬぞ」

「よし。ではサンソンご苦労だった。きみは通常の勤務に戻りたまえ」

「はっ!」

 

 

ハーメル執事と呼ばれた男性の指示に従い、サンソンがこの場を後にする。

このハーメル執事っていう人の眼も先ほど出会ったジャックたちヘルタントの人と同じようにきれいで澄んでいる。

 

 

「私がこのヘルタント城の執事を務めるハーメルというものだ。さ、領主さまがお待ちになっている。さっそくだがこちらへ」

 

 

ハーメル執事に案内されながら俺達はホールを出てそのまま一階の廊下を歩いていく。

廊下の右側の壁にかけられている槍剣をネロが興味深そうに見ている。

反対側の壁にかけられている多くの肖像画は、たぶんこれから会うヘルタント子爵の先祖の方々の肖像画なんだろう。

しばらく進むと、俺達は大きな木製の扉が付いた廊下の突き当たりにたどり着いた。

 

 

「ここが領主さまのおられる執務室だ。わかっているとは思うがくれぐれも失礼のないように」

 

 

俺がその言葉に頷くのを見てから、ハーメル執事は大きな木の扉をノックする。

 

 

「領主さま。オーガから村を守ってくれた旅人が到着いたしました」

「おお、来てくれたか。わかった、入れてくれ」

 

 

ハーメル執事が扉を開け先に入り、俺とネロも続けて部屋にはいる。

執務室の中は思ったよりも殺風景だった。

四方の石壁には何の装飾もされておらず、家具も机とテーブル、本棚、それと暖炉があるくらいだ。

暖炉の上には剣と楯がかけられているが、他には装飾らしいものは見当たらない。

普通なら貴族の見栄とかで無駄に豪華にするのだろうが、ここにはそういった類の物は一切ない。

ここの領主はネロとは違って装飾華美が嫌いなのか?

というよりも贅沢ができないのか?

ネロはこのあまりにも殺風景な執務室の様子に若干がっかりしているようだった。

…………いや。

がっかりって、何を期待してたんだ?

ネロの様子に少し呆れながらも、目の前の机に座って書類に目を通している人物に目をやる。

けっこう歳を召している男性だ。

髪はすでに白髪に染まり、目元には深いしわが寄っている。

厳しい顔で書類に目を通しているが、それでもこの人物が持つ穏やかな空気を消してしまっているわけではない。

この人物がここら一帯を治める領主である、ヘルタント子爵なんだろう。

ヘルタント子爵はしばらく書類を見ていたが、疲れた顔で書類を机に置いてからこちらに向き直った。

 

 

「待たせてしまってすまない。どうしてもこの書類にだけは目を通さなくてはいけなくてな」

 

 

ヘルタント子爵はすまなそうな顔で、当然のようにこちらに謝ってくる。

そのことに俺は少なからず驚いてしまう。

 

 

「領主としてこの地域を治める者として、俺のような普通の人物よりも仕事を優先するのは当たり前のことだと思いますが……」

「いいや。君達をここに呼んだのは私の身勝手な都合によるものだ。それなのにせっかく来てもらった君達に対して、わずかな時間とはいえこちらの事情を優先してしまったのだ。それについてはやはり謝らなくてはならない」

 

 

俺の言葉にヘルタント子爵は首を横に振って答えた。

…………律儀な人だ。

生前ローマ皇帝だったネロにワラキア大公だったヴラド三世(ランサー)

そして世界の王になるはずだった少年、レオ。

聖杯戦争で少しは人の上に立つ支配者(じんぶつ)と出会った俺から見たら、このヘルタント子爵は少し優しすぎる気がする。

ネロにしろ、ランサーにしろ、レオにしろ、それぞれタイプはまるで違ったがそれでも三人ともある種の強さを身に着けていた。

それは政治の世界を生き抜く者なら当然身に着けていなければならない強さ。

そうでないと、きっと過酷な政治の世界ではあっという間に脱落してしまうのだろう。

現にネロもランサーもその最後はあまり良いものではなかった。

彼にはその強さが薄い気がする。

まるでないわけではないが、そんなに強いわけでもない。

政治の世界にいるには真面目すぎるし、優しすぎる雰囲気がする。

……でもどちらかといえば俺はそういう人のほうが好きだけど。

 

 

「さ、まずはこちらに座りなさい」

「ありがとうございます」

 

 

ヘルタント子爵に勧められて、俺達は部屋にある数少ない家具であるテーブルを挟んでイスに座った。

俺とネロが隣同士で座って、その前にヘルタント子爵。

ハーメル執事はヘルタント子爵の後ろで待機している。

 

 

「まずは礼を言わせていただきたい。我が領地に侵入したオーガ三匹を倒し領民を救ってくれたこと。何度礼を言っても足りないほどだ。ありがとう」

「いいえ……。ここの警備兵隊長でもあるサンソンさんにも言いましたが、あれは自分達が勝手にやったことです。あまり礼を言われても困ります」

「いや、そう言うな。君達は人の命を救ったのだ。それはどれ程感謝しても決して返すことのできない恩だ」

「……もったいないお言葉です」

 

 

ヘルタント子爵はにっこりと笑う。

 

 

「礼の代わりになるかはわからんが、少量だが謝礼を用意させてもらった。受けとってくれないか?」

「はい。こちらとしても助かります」

「はは、そうか。そう言ってくれると用意したかいがあるというものだ。謝礼はハーメルに預けている。帰りにでも貰って行きなさい」

「ありがとうございます」

 

 

さっきからネロが一言も口にしないな。

別に機嫌が悪いわけではないみたいだから今回も話は俺に任せるということか。

確かに領主に向かってネロがいつもの口調で話したら色々と問題がありそうだな……。

 

 

「それで、君達を呼んだのにはもう一つ用件がある」

 

 

うっ!

やっぱり来たか……!

 

 

「君達の旅の話を聞かせてほしい。なにしろ領主などやっていると中々ここから出て行く機会がなくてな。おまけに、残念なことだがここには旅人もあまりやって来ないのだ。だからぜひとも君達の話を聞きたくてね」

 

 

……さて、ここが一番の問題だ。

なにしろ俺とネロは旅人ということになっているが、実際には今日初めてこの世界にやってきた別世界の人間だ。

旅をしたことがないだけじゃなくこの世界のことすらほとんどなにも知らないのだ。

とはいえ、ここで旅の話は話せないといっても怪しまれるだけか。

 

 

「……上手く話せる自信はありませんが……」

 

 

俺は少しためらいがちに話し始める。

 

 

 

気が付いたら記憶もなく見知らぬ土地にいたこと。

殺されそうになった俺をネロが助けてくれたこと。

それ以来ネロとはずっと一緒にいること。

友人だった人物が俺を殺しに来て逆に返り討ちにしてしまったこと。

薄暗い森で毒矢を受けて死にかけたこと。

旅の途中に出会った無邪気な少女のこと。

愛したものしか食べられないという狂気の女性のこと。

何度も俺を殺しに来た暗殺者のこと。

友人二人と昼食を食べたこと。

燃えるような夕日の中で完璧な騎士と戦ったこと。

ネロと共に死にそうになっていたところを謎の女性に助けられたこと。

そしてこのヘルタントにたどりついたこと。

 

 

 

今までの経験(おもいで)を脚色を加えながらヘルタント子爵に話す。

ヘルタント子爵は時折相づちを打ったり驚きの表情を浮かべたりしていたが、俺が話している間は何も言わなかった。

 

 

「これは驚きましたな。この広い大陸にはそのようなこともあるのですね!」

「…………」

 

 

俺が話し終えると、ハーメル執事が感動したかのように声を上げた。

でもヘルタント子爵は何も言わずに何やら考え込んでいる。

 

 

「ヘルタント子爵さま?」

「………………」

 

 

俺が声をかけても、ヘルタント子爵は何の反応もしない。

その様子にネロは眉をひそめ、ハーメル執事も困ったように眉尻を下げる。

しばらくヘルタント子爵は黙っていたがやがて口を開いた。

 

 

「…………間違っていたらすまないが君はウソを付いていないか?」

「えっ……」

 

 

まさかばれたのか……?

でも、どうして……?

ヘルタント子爵は俺の様子を見てにっこりとほほ笑んだ。

 

 

「やっぱりな。君はウソをつけない子みたいだな。話をしているときどきに目が泳いでいたからもしかしたらとは思ったんだ」

「……はぁー。やはりばれてしまったか。タクトの事だ。いつかは見抜かれるとは思っておったが……よもやここまで早いとはな」

 

 

ヘルタント子爵とネロの言葉が心に突き刺さる。

……俺ってそんなにウソが下手なのか?

 

 

「それでどうしてウソをついたのか教えてくれないか?」

「それは……」

「理由が言えないならそれでもいい。ただ、もしも君達が困っていることがあるのなら私は恩返しとして助けてやりたいと思う。……もちろん、我が祖国に剣を向けるような用件以外のことだったら、だがね」

 

 

ヘルタント子爵は真面目な表情でこちらを見る。

そこには生涯をかけて一つの領地を治めていた者の強い顔があった。

そして歳と地位にあわず、その瞳はとても澄んでいて美しかった。

……この人は本当に今日自分の領地にきたばかりの俺達に力を貸そうとしてくれてるんだ。

いくら自分の領地に現れたオーガを退治したとはいえ、俺達は一介の旅人にすぎない。

それなのに、この人はまるで古くからの友人を助けるかのような真摯さで、俺達を助けたいと思ってるんだ……。

そこまで考えて俺は結論を出した。

友人でもない、自分とはまるで関係ない他人を信用できると、生まれて初めてそう思ったのだ。

 

 

「……わかりました。まずはウソをついたことを謝罪いたします。申し訳ありませんでした。……信じられないかもしれませんが、今度こそ本当の俺とネロの旅の話をします」

「……よいのか、タクトよ?」

「ああ」

「……ふ、そうか。ならば余は何も言わぬ。そなたの思うままに行動すればよい。余はただそなたの決めた道を一緒に歩いて行くだけだ」

 

 

ネロはしばらく俺の顔を無言で見ていたがやがて微笑んでそう言った。

俺も彼女に微笑み返し、領主様に向き直る。

 

 

「……領主さま。先ほども言いましたが、これから俺が話すことは嘘っぱちの作り話のように聞こえるかもしれません。ですが、すべて事実です」

「…………」

 

 

ヘルタント子爵は俺の言葉に驚いたようだったがそれでも大きく頷いてくれた。

……信じてはもらえないかもしれない。

いや、むしろ信じてくれる可能性はほとんどないと言っていい。

この世界とは違う別の世界から来たなんて普通考えもしない。

それでも、俺はこの人に話したかった。

この不器用な領主さまに、俺の本当の話を。

そして俺は、俺の巻き込まれた月で起こった魔術師の戦いの顛末とその後に出会った不思議な女性について全て余すことなく話した。

あとがき

というわけで第七話『ヘルタント子爵』でした。

領主さまの登場です、

原作でも台詞の少ないお方なので少々言葉遣いが乱れ気味かも?

 

……今回の超展開についての言い訳は次回以降ということで。

 

では、また次回お会いしましょう。

(五日連続の『小テストorレポート締切』地獄が終わってホッとしている)メガネオオカミでした。

 


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