アホ毛の女の子が、メチャクチャ驚いてるね。
無理もないか。
絶対に。
分からないと。
思っていたようだからね。
だが。
あまたの人間と関わって。
傷つけられてきた僕には。
特殊能力、ってほどじゃないけど。
一目見れば、その人がどういう人間なのかが、だいたいわかる。
まぁ、ゼウスさんが僕にくれた『神の加護』のおかげなのかもしれないけど。
そんな僕が。
彼女を見たときに思って。
彼女から感じたものは。
『恐れ』だった。
よくよく考えれば。
こんなところに来るまでに。
彼女ほどの強さを持った人間が。
あんな奴ら。
たたきつぶせないはずないんだ。
それなのにしなかった。いや、できなかった。
人質にされた少女が、彼女の持つ圧倒的な『力』に、『恐怖』しないように。
となると。
彼女はその『力』に。
自分自身で。
恐怖している、ということになるのか。
震えながら。
俯いている彼女を見て。
僕はそう思っていた。
なぜ、わかったんだろう。
恋が、自分の『力』を恐れているってこと。
初めてだった。
それに気づいてくれた人は。
ご主人様でも、気づいてくれなかった。
恋は、普通じゃない。
それは、生まれた時からだった。
ほかの子供たちとは、明らかに。
違っていた。
だから、恋は。
他の子達から、こう呼ばれてた。
『化け物』
と。
すごく、悲しかった。
好きで、こんな『力』を持ったわけじゃない。
それなのに……。
「れ、恋?大丈夫か?」
ご主人様が、恋の様子に気づいてくれて、声をかけてくれた。
優しい、聞いていると落ち着く、ご主人様の声。
だけど。
今はその優しさが、辛いとしか、感じられなかった。
恋の尋常じゃない『力』のことは、俺もよく知っている。
華雄や霞を相手に軽くいなしているところを、俺は何度も見た。
だけど、いつも恋は、自分の『力』に対してさして興味があるようにも見えなかった。
けど、高順の今の言葉で見たこともない動揺を見せて、震えながら
うつむいている恋は、本当に辛そうだった。
その原因を作った張本人は、なんでもないような顔で俺と恋を見ている。
その様子にわけもなく頭に血が上った俺は。
知らないうちに、高順の胸ぐらを掴んでいた。
「お前、今あの子に何を言ったか、自分でわかってるのか!?」
叫びながら問い詰めると。
「もちろん」
と、言ってきた。
そのいまだなんでもないような様子に俺は。
「お前に、あの子の苦悩がわかるのか!?俺はあの子に、恋に、『真名』を預けてもらったけど、
恋の過去のことは詳しく知らない。少ない時間の中での、あの子しか見ていない。
けど!!!
お前なんかよりは、あの子の痛みも分かるつもりだ!!!」
と、言葉を叩きつけてやった。
許せなかった。
恋は優しい女の子だから。
きっと。
ガマンしていたのだろう。
俺たちに言いたいことも隠して。
だけど、初対面であの少女の命を助けたからって。
他人のトラウマをほじくりだしていい、ってことにはならない。
それも、なんでもないような顔で。
俺の怒鳴り声に、人質の少女も恋も驚いていた。
まぁ、滅多に出さないしな。
それでも、まるっきり表情を崩さないこの少年に。
さらに怒鳴ってやろうとした瞬間。
やはり、少年は表情を変えず、言った。
「羨ましいよ」
と。
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第十二話です。