「や~まをと~び~谷をこえ~~、ぼくらのまちへ~やってきた~~・・・・・・」
「うう、ついについてしまったのじゃ・・・・・・」
前回の空の旅は洛陽から5kmほどの地点で終了し、しばらくは徒歩。後は途中で会った商人の荷馬車の荷台にのっけてもらったりしながら目的地である麗羽の元にたどり着いた二人。
・・・・・・であったが、ご機嫌に歌を歌っている一刀とは対照的に、美羽はげんなりとしていた。
「しけた面すんなよ。俺にまかせとけって」
「・・・・・・本当に大丈夫かえ?」
「おう!大船に乗ったつもりでいろや」
「・・・・・・不安じゃ」
などとくっちゃべりながら、一刀と美羽は城下街に入り、城へと向かったのだった・・・・・・
「これは一刀様!今までどこにおられたのですか!?」
城門の前まで来たとき、門番が一刀に駆け寄ってきた。
「まあ、話すと長くなるんで今は勘弁してくれや。麗羽いる?」
「はい!首を長くして一刀様の帰りを待っておりました!」
「んじゃ、通るぜ?行こうぜ美羽」
「う、うむ」
二人は門を抜け、城の中へ入って行った・・・・・・
「あれ?風じゃねえか?」
麗羽の部屋へ向かう途中、一刀は前方に風の姿を見つけた。
「お~い、風」
一刀の声に、風はくるりと振り向いた。
「・・・・・・お兄さん?」
風は一刀の姿を確認すると、小走りで駆けてくる。
「久しぶり~~~」
一刀はそう言いながら走ってくる風を抱きとめようと両腕を広げた。
・・・・・・が、
「てい!」
メキャ!
「ぶっ!」
一刀の顔面に、風のこぶしが埋まった。
風の頭の上の宝譿も、青筋を浮かべながら持っているアメで一刀の頭をポカポカと叩いている。
一刀の横にいた美羽もポカーンとその様子を見ていた。
「・・・・・・痛いじゃねえか」
「お兄さんが悪いのです。一ヶ月も音信不通になって、風がどれほど心配したと思っているのですか?」
むくれた顔を一刀の顔に近づける風。
その間も宝譿は一刀の頭に攻撃を加えている。
「悪いと思ってるよ。でも俺だってそうなりたくてなった訳じゃねえんだ」
「というと?」
「あのな・・・・・・」
一刀は一ヶ月間消失の経緯を簡単に説明した。
「ほうほう。それは楽しそうで良かったですね~~」
「んな訳あるか!散々な目に会ったわ!なあ?」
一刀は美羽に同意を求めた。
「う、うむ。あんな事はもう二度とごめんじゃ・・・・・・」
美羽は首を縦に振る。
「ほらな?」
「でも、華雄さんの色んな姿が見れたのでしょう?」
「ああ、あれは良い物だった・・・・・・はう!?」
鼻の下を伸ばした一刀だったが、風に足を踏まれて変な声を出した。
「お、お前。ちょっと見ない間にやる事が過激になってねえか?」
「知りません。・・・・・・そんなに色んな衣装を着た女性が見たいなら、言ってくれれば風だって少しくらい・・・・・・」
ぼそっと呟く風。
「へ?」
「何でもありません。それよりお兄さん。早く麗羽さんに会ってあげてください」
「お、おう・・・・・・何かあったのか?」
「それは本人から直接聞いてください。では、風はこれで・・・・・・」
それだけ言うと、風はすたすたとその場を立ち去っていった。
「何なんだ?」
一刀は首を傾げながら、美羽と共に麗羽の私室へ向かったのであった・・・・・・
「随分と遅いお帰りでしたわね。待ちくたびれましたわ」
部屋に入ってきた一刀に対しての麗羽の第一声である。
「色々あったんだよ。本当にな・・・・・・」
一刀は麗羽にも、風にしたように簡潔に自分に起こった出来事を話した。
「突拍子も無い話ですわね」
「信じないか?」
「いいえ。一刀さんのおっしゃる事ですもの。信じますわ」
麗羽はちらりと、一刀の後ろに視線を向ける。
「そこに美羽さんも居る訳ですし」
美羽は一刀の背後に張り付くようにして隠れていた。
しかし、麗羽の方からはちらちらと、美羽の豊かな金髪と、豪華な衣装が見え隠れしていたのであった。
「お、お久しぶりです。麗羽姉さま・・・・・・」
そ~っと一刀の後ろから顔を出す美羽。
「そんなに怖がらなくてもいいでしょう?」
「お前が美羽にどう接して来たか、良く分かるぜ・・・・・・」
「失礼ですわね。ちゃんと可愛がってあげていましたわよ?」
「可愛がる・・・・・・ねえ」
その言葉の意味は苛め系の意味だろうなあと一刀は思った。
「ところで一刀さん。一つ報告したい事がありますの」
「お?何だ?」
「実は・・・・・・」
「うん」
「私、一刀さんの子供を身篭りましたの」
・・・・・・
麗羽の報告に、一刀は目をぱちくりさせていた。
美羽に至っては、完全に固まってしまっている。
「俺の・・・・・・子供?」
「ええ、三ヶ月だそうですわ」
「・・・・・・い」
一刀は両手を握り締め、前傾姿勢になった。そして、
「イヤッホーーーーーーーーゥ!!」
大きな喜びの声を上げ麗羽の元に駆け寄った。
そして麗羽をお姫様抱っこの体勢に抱え上げ、
「うおおおお!」
ポーン!と、麗羽を上に放り投げた。
「キャア!」
悲鳴を上げる麗羽。
落ちてくる麗羽を一刀はがっちりキャッチする。
「いやあ、俺の子供かあ。男かな?女かなあ?名前はどうしようか、なあ麗羽!」
「う、嬉しいのは分かりましたから少し落ち着いてくださいまし・・・・・・」
「落ち着けねえって!いやあ、今日はいい日だあ!」
いままで見た事のないくらいハイテンションの一刀に若干引き気味の麗羽。
「そういえば、この子が生まれたら美羽はその子の叔母さんって事になる訳だな」
「おば!・・・・・・」
その一言に、今まで固まっていた美羽が露骨に嫌そうな顔をした。
「妾はおばさんなどと呼ばれる歳ではないぞ!」
「いや、この場合は歳関係ないだろ?良かったなあ美羽おばさん♪」
「やめんかあああああ!!」
一刀のハイテンション状態が治まったのは
それから10分後の事であった・・・・・・
「いやあ、すまんすまん。随分舞い上がっちまったようだ」
落ち着いた一刀は、麗羽の寝台に座っていた。
その隣には麗羽がいて、美羽は少し離れた場所で椅子に座っていた。
「でも意外ですわね?一刀さん子供好きだったんですの?」
「ん?まあな。ただ、俺が近くに行くと、赤子は必ずと言っていいほど泣き出すんで、ろくにスキンシップも取れなかったけどな・・・・・・」
遠い目をする一刀。
「だから、もし自分の子供が出来たら思う存分可愛がってやろうと思ってたんだ」
「その子にまで泣き出されたらどうするのじゃ?」
「・・・・・・首吊ろうかな」
「だ、大丈夫ですわよ・・・・・・たぶん」
引きつった笑みを浮かべながら言う麗羽。
「だといいけどな・・・・・・っと、とりあえずその話は置いておくか。麗羽、俺が居ない間にこの国どうなってる?」
「それでしたら、私より風さんに聞いた方がいいと思いますわ」
麗羽は寝台の近くに置いてあった呼び鈴を鳴らした。
扉を開けて女官があらわれ、麗羽の命令を受けて女官は風を呼びにいった。
少しして、麗羽の部屋に風はやってきた。
「それで、風に何の用ですか~~?」
「この国の現状を教えてくれ」
「・・・・・・ぐ~~」
「寝るな!」
「おお!」
「ったく、久しぶりにお約束のボケかましやがって・・・・・・」
「いやいや、長い話になりそうでしたので、つい睡魔が・・・・・・」
「だったら分かりやすく、簡潔に重要な所だけ教えてくれ」
「仕方ありませんね~~・・・・・。・」
そう言うと、風はぽつぽつと語り始めたのだった・・・・・・
「まず、麗羽さんは今、桃香さんと同盟を組んでいます」
「正式に組んだ訳か。桃香の所は将は良いの揃ってるから、兵士をこちらから貸し出してやれば良い働きしてくれるだろうなあ」
「既に何度か合同調錬も行っています」
「それは何より」
「それと、公孫瓉さんの事なんですが・・・・・・」
「ん?白蓮がどうした?」
「いえ、こちらにも同盟の使者を出したのですが、いまだ返事が来ていないのです」
「ふ~ん、桃香はその事知ってるんだよな?」
「勿論です。桃香さんも直接説得に行ってくれたのですが、余計に悩んでしまっているらしく・・・・・・」
「・・・・・・相変わらず優柔不断なやつ」
「と、いう訳で、お兄さんには公孫瓉さんの説得に行って欲しいのですが・・・・・・」
「構わねえよ。あいつとも一度きっちり話しておきたいと思ってたしな」
「そうですか。では次に、曹操さんです」
「勢力の規模はどんな感じだ?」
「私達とまでは行きませんが、こちらに戦いを仕掛けられるほどには整ってきているかと・・・・・・」
「やっぱあいつは要注意だな」
「はい。こちらも軍備を増強しておく事にしましょう」
「ん」
「それで、次は賈詡さんたちの事なのですが・・・・・・」
「ちょい待ち。そういえば、月と、月を任せた明命はどうした?」
「ああ、董卓さんなら軟禁と言う形で城の一室に居てもらってます。会いますか?」
「ああ、後で会う」
「明命さんはもう帰られました。お兄さんもいなかったですし、さすがにずっとこちらに居てもらうわけにも行きませんでしたしね~~・・・・・・」
「そか。今度土産でも持って行ってやろう」
「話を戻しますが、董卓さんのいない今、賈詡さんが董卓軍の指揮をとっています」
「まあ当然だろうな」
「それで今、彼女は帝の後見人となっていて、宮廷内の権力をほぼ手中に収めています」
「・・・・・・つっても、今あそこの権力握った所で、プラスなんざ無いだろ?苦労してんだろうなあ・・・・・・」
「ですが、帝の命令として何かしらの介入は可能です。用心にこした事はありませんよ?」
「いや、もっともだ」
「それと、袁術さんの所なのですが・・・・・・」
ちらりと袁術を見る風。
「何じゃ?」
首を傾げる美羽。
「はっきり言って、状況は非常に悪いです」
「何じゃと!?」
「・・・・・・何で?」
風の言葉に袁術は動揺し、一刀は普通に聞き返した。
「何でも、袁術さんがいなくなって張勲さんが無気力人間になってしまったらしく、治安も財政も軍備も相当悪いらしいです」
「七乃・・・・・・」
七乃が気がかりのようで美羽は不安そうにしている。
「・・・・・・」
一刀はあごに手を当てて考え込んだ。
そして
「美羽」
「・・・・・・何じゃ?」
「一週間後、出発するぜ」
「・・・・・・え?」
思わず一刀を見つめる美羽。
「っつーわけだ。麗羽。悪いがまたすぐ出かけるぜ」
「仕方ありませんわね。美羽さんの事では見てみぬふりは出来ませんもの」
「風。しばらく留守を頼む」
「やれやれ、お兄さんは本当に忙しい人ですね~~・・・・・・」
「え?え?」
美羽はおろおろとしている。
「そいじゃ、出かける前に準備しておくとするか・・・・・・」
そう言って一刀は部屋から出て行った・・・・・・
が、すぐ戻ってきた。
「そういえば、俺が帰ってくるまでに人が訪ねてこなかったか?」
「どんな人ですの?」
「ええと、白い二人組的な・・・・・・」
「・・・・・・それって、わたくしたちと敵対しているあの?」
「いや、片方とは和解したというか・・・・・・来てないか?」
「そんな報告は来ていませんが~~・・・・・・」
「ん~~・・・・・・まだついてないのか?」
「いえ、私達は既に来ていますよ?」
「「「「!!」」」」
部屋のどこからか、干吉の声が聞こえた。
「ど、どこだ?」
皆あたりを見渡すが、どこにも干吉の姿は見えない。
「ここです」
今度ははっきりと聞こえた。
全員がその場所を凝視する。
その場所とは、
「待ちくたびれましたよ。北郷一刀」
鏡台の鏡の中であった・・・・・・
ずるずると鏡の中から干吉と、縛られた左慈が出てくる。
「幽霊か妖怪みたいな隠れ方してんじゃねえよ・・・・・・」
一刀は呆れたように言う。
他の三人は開いた口が塞がらないと言ったかんじで固まっているが・・・・・・
「いや失礼。城についたはいいんですが、どう待とうか悩んだ結果何故か・・・・・・」
「もういい。深く聞きたくない」
一刀はばっさりと切り捨てる。
「とりあえず、一室貸してやるからそこに住めよ」
「ありがとうございます」
「それと、ちょっと待ってろよ?」
一刀はそう言って部屋を出て行った。
「む~~!む~~!」
さるぐつわをされている左慈の息遣いだけが部屋に響く。
しばらくして一刀は戻ってきた。
その手には鍵が一つと、真桜ちゃんのからくり箱を持っていた。
「それは?」
「プレゼント」
一刀はそう言うと、鍵を干吉に放り投げた。
キャッチする干吉。
「地下室の鍵だ。あんまり騒がれると困るから、しばらくはそこで愛を育んでくれ」
「むぐっ!」
それを聞いた左慈の目が限界まで開く。
「それと・・・・・・」
ごそごそとからくり箱を漁る一刀。
そしてそこからある物を取り出した。
それは・・・・・・
「お菊ちゃんSサイズだ。慣れたようだったらもっとでかいのくれてやるよ」
「北郷一刀・・・・・・ご協力に感謝します」
干吉は一刀に近付き、しっかとお菊ちゃんを受け取った。
「・・・・・・」
左慈はいつのまにか静かになっていた。
冷や汗だらだらで、顔からは血の気が引いている。
「ところで、あの変化技が使われる心配はないんだろうな?」
「心配ありませんよ。あの技は一度使ったら10年は使えませんから。それでは、さっそく地下室へ行かせていただきましょうか?」
「おお、行け行け・・・・・・」
「むごお~~~~!!」
哀れ左慈は、ずるずると干吉に引きずられていった。
そして
「アッーーーーーー!!」
その日地下室から
左慈の絶叫が止むことは無かったという・・・・・・
合掌
どうも、アキナスです。
あっという間に麗羽のところに帰ってきた一刀プラスアルファですが、予想以上にカオスな展開になってしまいました。
しかも干吉の愛の調教(笑)が始まってしまいましたし・・・・・・
左慈の運命やいかに!?
そして一週間後再び旅立つ一刀。
果たして、その先に待ち受けるものは?
とりあえず、次回は拠点イベントの予定です。
そんなところで次回に・・・・・・
「暗黒魔闘術奥義!地獄破斬撃!!」
Tweet |
|
|
58
|
1
|
追加するフォルダを選択
洛陽を抜け出した一刀たちは・・・・・・