No.507586

すみません。こいつの兄です36

今日の妄想。ほぼ日替わり妄想劇場36話目。今回は、いかにも男子の妄想です。女の子にベタベタしまくりです。小説の場合、年齢制限ってどのあたりなんでしょうね?

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(第一話) http://www.tinami.com/view/402411

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2012-11-13 00:11:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1004   閲覧ユーザー数:919

 日曜日、俺が熱を出した。

「おのれぇ。真菜めぇ…」

熱を出していた妹は一歩先に全快している。学校休んだくせに、土曜日になったら元気になるとは都合のいい熱の出し方をしたな。妹め。病院に行って、鼻にこよりみたいなものを突っ込まれる検査で、あっさりA型インフルエンザ陽性だった。

 つまり、妹の発熱もインフルエンザだったということだ。

 すなわち、俺は二週間登校禁止になった。

「にーくんー。大丈夫っすかー」

へらへらと妹が部屋に入ってくる。抗体をさっさと作った妹に当たり判定はない。

「ふ、ふざけんなー。うつしおってー。げほげほげほげほ」

「マジごめんっすー。熱、どーっすか?」

妹が背中をさすってくれる。

「つーか。真奈美さん、げほげほげほ、どーすんだ!まじ、ふざけんな」

俺が付き添わなかったら、真奈美さんまで学校に行かないだろーが。あー。熱で頭がぼーっとする。

「体温計、もーいーっすよー」

妹がパジャマの中に手を突っ込んで体温計を奪い取る。手が冷たい。

「うお。四十度って初めて見たっすーっ!!」

妹が、飛び上がってばたばたと部屋を出て行く。四十度もあるのか、そりゃ頭がぼーっとするはずだ。妹がまたばたばたと戻ってきた。手に、携帯電話を持ってる。なにすんだ?

 ぱしゃ。ぱしゃ。

 四十度を示す体温計を写メってる。

 …まじ、ふざけんな。

「ふざけんなてめー」

床に座って写メってる妹を踏みつけてやろうとして、バランスを崩す。うわ。

「ふぎゅっ」

ストンピング攻撃のはずがボディプレスになった。まぁいいや。もう、頭がぼーっとしてなにもかも面倒くさい。とりあえず、妹をヒキガエルみたいに潰してやるという結果は得られてるみたいだし。

「に、にーくん?ちょ、あ、熱いっす。体温高いっす?」

困ってやがる。ざまーみろ。少しは反省しろ。

「真菜、てめー。ふざけんなー。真奈美さん怖がるだろーが。真奈美さん、学校で漏らしたらどうすんだ。真奈美さん…」

「に、にーくんの、ば、バカアホォーッ!!ベッドで寝てるっす!」

妹が俺を押しのけたらしい。床が冷たくて気持ちいい。

「ほらぁ。ベ、ベッド上がるっ…っすーっ」

足の方から順にベッドの上に移動させられているみたいだ。頭の方からにしてくんないかな。目が回る。どっち上だろ。

 喉が痛い。身体の節々が痛い。

「痛い…」

「に、にーくん?ど、どこ痛いっすか?」

「腕、だるい。足も…背中、痛い…頭熱い」

つーか、どこもかしこも、じんわりと痛い。身の置き場がない。

「と、とりあえず冷やすっすね」

妹の足音が遠ざかる。

 ……。

 冷たい。

 両脇の下になにか冷たいもの。首の下も、額にもつめたいものが押し当てられている。冷たくて気持ちいい。

「いいな…これ。なんだ?」

「ペットボトルに水入れて、凍らせたっす。少し楽になったっすか?」

妹がのぞきこんでいる。今度は殊勝な顔をしてるな。

「わりとな…サンキュ」

「おかゆ温めて持って来るっすね」

「携帯取ってくれ」

「だめっす」

「取ってくれ」

「…なにするっすか?美沙っちにメールするなら駄目っす」

「わかってるじゃないか。美沙ちゃんに連絡して、明日、真奈美さんを頼まないと…」

「わかってないのは、にーくんっす。それは、私がやっとくっす。とにかく、真奈美っちのことで美沙っちにメールは禁止っす」

だるいし、面倒くさい。

「じゃあ、お前、美沙ちゃんに電話して、真奈美さんと話をさせてくれ」

「私がやるっす」

妹が、部屋を出て行く。

 なんだよ。美沙ちゃんにメール禁止って…。和解した…と思うんだけどな。

 五分ほどで妹が戻ってくる。手におかゆの入ったどんぶりを持ってる。

「ああ、悪いな…」

身体が重い。上半身を起こすだけでけっこうきつい。枕を立てて寄りかかる。

「まずは、具合のいい間にご飯食べるっすよー」

「自分で食うよ」

スプーンにお粥を掬って差し出す妹を制する。

「ちぇ」

生姜を丸ごと食わせた復讐をされてたまるか。実際、生姜は熱が出てるときにはよさそうだけどな。あとはネギだっけ?生薬っぽいの。

 おかゆの味が分からないけど、とにかくネギがしゃりしゃり言うのがうまい気がする。あと塩気が嬉しい。

「真菜…」

「わかってるっす。電話するっす」

妹が、しぶしぶといった体で携帯電話を操作する。

「あ、美沙っちー。私っすー。あ、私はもう大丈夫っすー。三十六度っすー。でも、今度はにーくん熱出したっすからー、ゼリーくれー」

あと二つ残ってるだろ。

「真菜、そうじゃない」

「あとー。にーくん、インフルエンザっすからー。つーか、私もインフルエンザだったみたいっすー。それで、にーくん学校行けないっすー。真奈美っちも行けないっすか?うん。聞いてきて。待ってるっすー」

……真奈美さんが、これで学校行けなかったら明日の朝イチで真奈美さんを呼んで、あえてうつすしかないな。熱が出る前に速攻で病院で検査させて、陽性の検査結果を貰ったところでタミフル飲んでもらえば、そんなに辛くならないうちに治るだろうし、検査結果があれば一週間くらいは公休にしてもらえた気がする。そうすれば、出席日数は大丈夫だ。

「どうだったっすかー?」

電話の向こうに美沙ちゃんが戻ってきたみたいだ。

「行くっすか?おっけーっすー。んじゃーまた、明日っすー」

真奈美さん、学校行くのか…。なにもないといいな。そっか真奈美さん、俺が付き添わなくても学校に行くのか…。

 なんだか、少し寂しい気もする。

 …なんだそりゃ。喜ばしいことじゃないか。熱で多少、頭が混乱しているんだな。

「つーことで、にーくん。真奈美っちは大丈夫っすよー」

ぼーっとした頭で聞く妹の声に現実感がなくなって、そのまま眠ってしまった。

 

 次に目を覚ますと、夜中だった。家の中が寝静まってどこからも音が聞こえない。枕元に置いたアクエリアスのペットボトルを手に取って、ぐびぐびと飲めるだけ飲む。水分は大事。あと、休養。節々の痛みは、そのまま…というか、むしろ悪化してる気がする。全身がぼんやりとしびれたみたいになっていて、力が入らない。

 

 また目を閉じる。

 

 眠りに落ちる…。

 

 身体の左半分が熱い。熱い。

「真菜…氷、ないのか?」

ぼんやりした頭で、つぶやく。妹はここにいないんだった。

「…ん。まってて…」

左半身の熱がすっと離れる。あいつ、また潜り込んできてたのか。いくらうつらないからと言って、いい加減やめさせないとな…。

 すっと頭が持ち上げられて、頭の下のアイスノンが冷たいものに交換される。

「すまん…」

礼を言って、目を開ける。

 あれ?

 真奈美さん?

「あと、少し時間あるから…」

真奈美さんが、そう言ってベッドにもぐりこんでくる。

 え?まさか、さっきまでの左側の熱さは、真奈美さんが添い寝してたの?!なんで!?

 ひうっ!?

 さっきまでの事象にこだわっている場合じゃない!

 添い寝どころではなく、真奈美さんが完全に俺に覆い被さる姿勢で布団の中にもぐりこんできた。

「ちょ…ひぎゃ…ま、真奈美ひゃんっ!」

だめだ。熱で力が入らない。真奈美さんを押しのけられない。ちょっと!やばい!やわらかいし!

 真奈美さんの頭が左肩の鎖骨辺りに押し付けられる。胸のあたりにふんわりと柔らかい圧力がかかる。少し固めの重みが腰の辺りにかかり、脚と脚が絡みつく。真奈美さんの髪から沸きあがる甘い香り。真奈美さんの両手が俺の脇あたりの汗ばんだパジャマを掴んで、腕が身体を挟み込む。

 待って!

 心拍数が上がる。血圧が上がる。

 汗が吹き出る。

 まずい!

 めまいがしてきた。頭の血管切れるかもしれない。

 死ぬ!

「なおと…くん。すごい…熱い」

熱いよ!そりゃそうだ!体温四十二度くらい行ってるよ!

 このままはマズい!体力的にも!インフルエンザの患者の隔離という点でも!倫理的にも!真奈美さんから逃れようと、身体をくねらせて、ベッドの中でずりずりと這い上がる。真奈美さんだけが、その場所に残った。真奈美さんの頭が、俺のみぞおち付近まで下がって、真奈美さんの腰が俺の脚の間にはまり込む。真奈美さんの両手が、わき腹辺りを抱え込む。

 つーか、よけいにマズい姿勢になった。

「つーかっ!だめっ!うつる!」

「いいの…」

「よくない!まじ、つらいからだめ!あと高校二年生の男女が、こんなことしひゃらめぇ!児童ポルノになっひゃうううぅー!」

熱で大脳新皮質の働きが完全に弱っている。真奈美さんの温かさと柔らかさに、新皮質のくびきから解き放たれた不随意反応が発生し始めていて、これ以上真奈美さんに上に乗られているのは、アウトになる。これ以上は絶対に駄目だ!

「だめ!ちょっと、降りて!」

火事場のウンコパワーで真奈美さんをベッドから押しのける。

「…ひゃっ」

真奈美さんが、ベッドから転げ落ちる。

「ご、ごめんっ。で、でも、駄目。し、心配してくれるのは、あ、ありが…ぜぇぜぇ」

それ以上、声が出なくてへたり込む。

 真奈美さんが、起き上がってもう一度俺に毛布をかけなおしてくれる。

「…いや…だった?」

「…むしろ、逆…でも、うつるから…。それに、ほら、だめだよ」

頭が回っていないのは、熱のせいである。たぶん。

「…いやじゃ…ない?」

「いやじゃ、ないよ」

この真奈美さんの目を見たら、嫌だなんて言えない。

「うつるから、早くうがいして、ちゃんと手を洗って」

「…うん…」

「ってか、どうやって入ったの?今、何時?」

「七時半くらい…。お見舞い持って来たらおばさん、入れてくれたから…」

母さん、止めてくれよ。うつるじゃん。

「…真奈美っちー。学校行くっすよー」

妹がドアを開けて、入ってくる。危なかった。真奈美さんと文字通り同衾しているところをこいつに見られたら、終わってた。

「ほ、ほら。今日は、妹が一緒に行くってさ…ま、真菜!真奈美さんを怖がらせたら、オラオラパンチくらわせるからな…」

ちょっと照れ隠しの入った命令を妹に下して、妹と真奈美さんを部屋から追い出す。

「ういっすー。いくっすー」

真奈美さんの手を取って、妹が連行していった。

 

 い、要らないことに体力を使った気がする。ドアが閉まるのと同時に、あらためてベッドに身体を沈めた。シーツにも毛布にも真奈美さんの甘い香りが残っていた。

 

(つづく)


 
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