No.502965

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第七十八話 しゅごごごごごごご

2012-11-01 02:54:18 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:6077   閲覧ユーザー数:5533

 第七十八話 しゅごごごごごごご

 

 

 

 聖王教会のカリムとの話を終えてから、数日後。

 

 「時は来た!」

 

 「何の?」

 

 場所は八神邸。

 俺はアリシアとフェイトと一緒にはやての家にお呼ばれされていた。

 ちなみにリインフォースさんとシグナムさんは買い物に出ている。

 

 金平糖に核でも撃ちこむのか、はやて?

 

 「ちゃうて。…高志君もいややなぁ。明日はあの日やで?」

 

 「赤飯でも炊こうか?」

 

 「ちゃうわ!」

 

 ばちこーんっ。と、夜天の書を俺の顔にぶつけるはやて。

 騎士の皆が闇の書から独立したとはいえそんな軽々しく放り投げていいものではないと思うんだ。

 

 「はやてちゃん。一応、なのはちゃん達も後から来るそうですけど…。明日、何かあるんですか?」

 

 「あ~、おほん。明日はバレンタインデーや」

 

 バレンタインデーですか。

 この転生した世界にもありやがったか…。

 

 「……チッ」

 

 忌々しいイベントが…。

 

 「舌打ち!?高志君、どうして舌打ちなんかするんや!?」

 

 「…リア充死ね」

 

 もてない男どもの思いを口にしたまでだ。

 

 「いやいやいやいやいや。…高志君、フェイトちゃんやアリサちゃんみたいな綺麗な女の子と毎日お話しているのに充実してないとかいうんか」

 

 「俺の日常を日記に書いてお前に見せてやろうか?マジ泣けるぜ?」

 

 今日なんか特にひどい。アリシアが俺にじゃれているところ見たプレシアが嫉妬して俺のほっぺを摘まむ。

 それを見たフェイト。

 その時の表情が何か寂しそうに見えたんだよ。

 フェイトから見たら悪戯兄妹と母親の図にも見えたかもしれないんだぞ!

 おかげで俺の心労は一気に上限に近付いたよ。

 フェイトとプレシアの溝は徐々に埋まりつつあるが、その溝たる俺の自身の存在が辛いんだよ。

 

 学校では苦手な英語が赤点すれすれだったんだ。思わずガンレオンの翻訳機能を使う所だったよ。

 でも、使わなかった。使ったら何かに負けるような気がしたから頑張ったんだよ。すんごい頑張った。その分辛い。だって俺見た目が子どもでも二十年以上生きているのに十歳以下の子供たちのテストで赤点ギリギリだなんて…。凹む。

 

 なのは達と知り合ってからは北海君や沖縄君とも話すことも減った。

 理由は二人以外の人物によく連れ出されるからだ。おのれ、なのは(構ってちゃん)め…。断ろうとするとフェイトと一緒に涙目になるし…。

 女の子って何かと気を遣うんだよ。特に事情が複雑なフェイト。

 男友達っていうのもなかなかいいもんなんだよ。お互いに気づかう必要が無いから…。

 その点、クロノやユーノは良い奴だ。よく俺の愚痴も聞いてもらっているし…。

 

 学校が無い日はアースラで管理局員見習いとして働いている。

 管理局の仕事ではアースラの外壁修理やメンテナンスをやっていることもある。

 宇宙空間で空中遊泳しているような感じでアースラから伸びているロープでガンレオンを展開した俺を次元空間で直接修理を行っている。初めてガンレオンが修理用機械(ガンレオン)らしいことをやったような気がした。

 ガンレオンに送られてくるデータ通りに動けばいいのでこれに関しては文句が無いように思えたのだが、一度だけ何故かガンレオンとアースラを繋ぐロープが切れた。

 その時、次元空間内に戦慄が走った。

 

 また別の日。

 空いた時間にフェイトやなのは。守護騎士達と模擬戦。アサキム対策を行う。

 ボッコボコ。

 

 わかる?

 俺の心と体は毎日疲弊しているのですよ。

 

 「充実してるやん」

 

 「違うぞはやて。俺のはリア充じゃない。忙しいだけだ」

 

 リア充ちゃう。癒しが無い。

 今度アルフのしっぽをもふもふさせてもらえないかどうか頼んでみるか?

 

 「私が癒してあげようか?」

 

 アリシアが居間にあるソファに座っている俺の膝の上にのっかてくる。

 出来ることなら目の前にいる柔らかい女の子の髪をもふもふして癒されたいところだが、ガンレオンや別経路でプレシアに知られたら…。

 

 

 

 真っ暗で何も見えない。

 

 

 

 とあるミュージシャンとは逆のコメントをすることになる。

 とりあえず頭を撫でる程度で勘弁してほしい。ここまではプレシアも許容範囲だろう。

 

 俺に背中を押しつけているところでアリシアはフェイトに手招きして自分の呼び寄せると、一度俺から離れてフェイトを後ろから抱きしめて、再び俺に背中を預ける。

 すると、俺・アリシア・フェイトの順番で抱きしめるような形で頭を撫でるという状況になった。

 はやて達から見るとトーテムポールみたいにも見えるだろう。

 

 「あはは、アリシアちゃん達はほんま仲がええな。うし、うちらも負けていられないで。シャマル、ヴィータを後ろから抱きしめて私の所に来るんや。ザフィーラは私の後ろな」

 

 「はーい♪」

 

 「えっ、あたしは別に…。シャマル!」

 

 「…」

 

 シャマルさんがヴィータを素早く捕まえるとはやての胸に自分の頭を持って行く。そして、黙ってはやての後ろに回った狼形態のザフィーラの腹を枕にするような形でもたれかかる。

 ほのぼのとした空間がいつの間にか形成されていた。

 

 …少しだけ癒された俺がいた。

 

 「…何してんだろうな?俺等?」

 

 「うーん。なんやったかな?まあ、こんな風にのんびりするのもいいんとちゃう」

 

 「そうですね~。今まで戦い続きでしたから~」

 

 「だね~」

 

 ゆるゆるになった俺とはやて。そして、頭を撫でられているシャマルさんとアリシアもゆるゆるになっていた。

 

 「じゃなくて!バレンタインて、なんだ!シャマルも頭をいつまでも撫でるな!」

 

 がー!と、吼えるようにヴィータが勢いよくゆるゆるトーテムから離脱する。

 ちぃっ。忌々しい単語を発するでない。

 せっかく癒されていたのに…。

 

 「ふふふ。それを知りたくば今一度私らと合体するんやヴィータ。そうすれば話してあげるで」

 

 「む、むぐぅ」

 

 はやての言葉にヴィータは戸惑いはしたものの最後には折れて再びトーテムの一部になる。

 

 「ほ、ほらっ、これでいいだろうっ」

 

 「ヴィータはツンデレさんやなー。あっ、頭は撫でられ続けておかんと話さんで?」

 

 「う、うう~」

 

 そして、はやては話す。

 バレンタインデーという忌々しいイベントを。

 

 

 「…つまり、女の子が好きな人にチョコをあげる日なのか?」

 

 「せやで~。しかも手作りなら倍プッシュや」

 

 「じゃあ、明日お兄ちゃんにあげるね~♪」

 

 アリシアちゃんは高志君にべたべたやな~。

 命の恩人だからという事だけじゃない。家族のように思っているからかそれとも一人の男の子として好きなのかは定かじゃないけど…。

 …いや、定かか。

 だって、アースラであんな濃厚なシーンを見せつけるんやし…。

 でも、アリシアちゃんはまだ幼稚園児や。

 ま、まだ付け入る見込みはあるで。

 

 「じゃ、じゃあ。あ、あたしもはやてに渡す」

 

 お、嬉しい事いってくれるやん、ヴィータ。

 

 「じゃあ、私もはやてちゃんに手作り(・・・)のチョコを…」

 

 「で、でも大事なのは心や!」

 

 あ、あかんっ。危うく地雷(致死性)を踏むところやった。何とか軌道修正しないと…。

 

 「主。今、戻りました」

 

 「買い出しのチョコの材料は何処に置けばよろしいでしょうか?」

 

 バッドタイミィイイイングッ!!

 

 な、なんちゅうタイミングで帰って来るんや…。

 

 (は、は、はやてぇええええ…)

 

 (…………我は守護獣。我は守護獣。我は守護獣。守護獣守護獣守護獣守護獣しゅごごごごごごごご)

 

 シャマルの腕の中で震えているヴィータは知っている。そして、私の頭を抱えているザフィーラも震えていた。てか、バグっていた。

 最初はまだ私がなのはちゃん達と知り合う前の事。

 私の代わりに料理を作ったシャマル。それを食べた私達。

 その時、蒐集活動に出ていたヴィータだけが食べていなかった(助かっていた)。そして、ヴィータが戻ってきた後に見た私達は…。

 

 

 ミンナ、カタコトニ、ナッテイタンヤ。

 

 

 栄養素は完璧に補充できるし、疲労回復にも効果はある。

 だ・け・ど!

 精神が壊れるんや!体を直せても意味ないやん!

 しかも、食べた本人の記憶がその時だけ飛んでいる。

 それが分かったのは二回目の事件。

 次の被害者はまたもやシグナムとヴィータ。

 ザフィーラもヴィータと同じ用件で助かっていた。私はというとその時は入院していたので助かった。

 カタコトになってお見舞いに来ようとしたシグナムとヴィータを止めるのは大変だったとザフィーラも言うてたしな…。

 ヴィータとザフィーラの見てきたことから記憶が飛んでいるという事にたどり着いた私・ヴィータ・ザフィーラの三人は『シャマルには料理をさせてはいけない』と心に刻みつけた。

 

 「さあ、それでは試食タイムに入りましょうか」

 

 はやっ?!

 いつの間に作ったんやシャマル?!

 気がつけば台所に立っているシャマル。アリシアちゃん。

 フェイトちゃんは高志君の太ももを枕にして寝ていた。よっぽどアリシアちゃんのナデナデが気持ちよかったんやね…。

 

 「高志。主、お茶が入りました」

 

 「あ、いただきます」

 

 ありがとうな、リインフォース。

 でも私はお茶よりも精神の安全が欲しい。

 私達の目の前にあるテーブルの上にお茶を並べていくリインフォースの後ろからシャマルが物体X(チョコらしき物)を置く。

 

 「私も半分作ったんだよ」

 

 アリシアちゃんも作ったんか…。

 となれば確率は二分の一。

 

 「では、皆で食べるとしようか」

 

 シグナムはあの惨事を思い出せないのか、なんの恐れもなく物体Xに手を伸ばす。

 形が不揃いのチョコレートの入った器を見て私はつばを飲み込んだ。

 …ごめんな。高志君。

 うちは生きたいんや!

 バグったらちゃんと看病するから、恨みっこなしやで!

 

 (死にたくない死にたくない死にたくない死にたくな…)

 

 (しゅごごごごごごご)

 

 いくで!私の騎士達!

 物体Xの数は十数個!一人三個ずつ食べればノルマ達成や!

 私は怯えているヴィータとバグっているザフィーラに目配りをしてチョコに手を伸ばす。

 

 ぱくっ。

 

 私がそれ(・・)を口の中に入れた時に信じられない光景が目に映った。

 

 「それで、これがフェイトとお兄ちゃんの分。二人には初めに食べて欲しいからシャマルさんとは別にしてもらったんだ」

 

 アリシアちゃんが別の器(・・・)に入ったチョコレートを取り出した場面を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オイシカッタデ♪

 

 

 

 


 
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