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戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝 第10話 安土城戦~戦慄の芦屋道満~

enarinさん

○ボーカロイド小説シリーズ第9作目の” 戦国慕歌路絵巻 風雲!鏡音伝“シリーズの第10話です。
○巫女の鏡音姉弟(?)が主役の擬似タイムスリップジュブナイルです♪
○メインは和風の妖怪とか陰陽師とか出てくる、バトル物でもあります。

☆安土城の城外戦と、安土城城内での芦屋道満戦です。

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2012-10-26 20:09:08 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:631   閲覧ユーザー数:629

(山城国・三条大橋の温泉宿『麻呂眉屋(まろまゆや)』・玄関前)

 

 用意が調った後、学歩と升太以外が玄関前に集まっていた。タンクは横付けされており、安土城攻略隊の、役小角、リン、レン、ネル、ハク、てと、ゴズキとメズキが、タンクの前に集まっており、他のメンバーが玄関前で彼らを見送りしていた。

 

役小角:では、行って来る。後にも先にも、この戦いが最終決戦。それだけに敵の機械軍団は強力だ。こっちに敵が来る事も考え、ミクにはジャミング(撹乱バリアー)も頼んである。大丈夫だと思うが、ヤバイと思ったら、トリンで逃げてくれ

ミク:引き受けたミク!

レン:学歩さんと升太さんの事、宜しく頼みますね

ミキ:任せて!

 

ネル:そろそろ出発するよ! みんなタンクに乗っかって!

役小角:では、行って来る

レン:映画とかだと、“I’ll be back.”(すぐ戻ってくる)っていうんだっけ?

リン:英語のままだと間違いだけど、あの映画ならジョークでいいんじゃないの?

 

 こうして攻略隊の面々はタンクに搭乗したり、上に乗っかったりして、搭乗を済ませた。

 

役小角:では、行くぞ!!

ネル:アイアイサー!

 

 ブオオオオオ!!!!!

 

 ネルが操縦桿を握り、操作パネルをタッチするとホバータンクのエアーが噴射され、本体がある程度浮き上がった。

 

役小角:目的地は、本丸“安土城”落下地点、発進!!!

ネル:Go!!!

 

 ギューーーーーーン!!!!

 

 操縦桿が前に倒されると、ホバータンクは勢い良く発進していった。玄関前の見送りチームは見えなくなるまで手を振っていた。

(安土城最上階・天守の間)

 

 安土城最上階にある天守の間には、中央の水晶玉を囲むようにして、安倍晴明、芦屋道満があぐらをかいており、そして奥の巨大な椅子には、晴明らとは大きさ、霊力が桁外れの、天守“(第六天魔王)信長”がどっしりと座っていた。

 

 その中央の水晶玉は光っており、そのとき、“めぐみと彼ら”との作戦会議が始まっていた。

 

めぐみの声:知っての通り、伏見城は陥落し、この城は地べたに落ちてしまった

安倍晴明:まぁ、城自体の装備と我々の霊力で、ある程度は軽減しましたけどね

芦屋道満:めぐみ様、我々を早々にこちらに派遣されたのは、まさか、この落下を予見されての事だったのですか?

めぐみの声:そうだ。あの秀吉では多かれ少なかれ、伏見城は陥落するとは思っていた。そして、現にそうなってしまった。この人事は間違い無かったが、仙狐には申し訳なかったと思っておる

 

信長:その事はもういい。めぐみ様、つまりは、奴らがこちらに攻めてきているから、城内に入られる前に兵で撃退せよ、そういうことですかな?

めぐみの声:奴らの戦力は先に話した通りだ。城外、城内、どちらでもいい。3人の力を持ってして、攻略戦チームの連中を必ず撃破するのだ。奴らさえいなくなれば、今、ジャミングしてわからなくなっている残りを片づけるのは容易だ

安倍晴明:運が良かったのか悪かったのか、城は浅い湖の中央に落下し、水上にあるのは安土城3F以上。自然の“掘”が出来た関係で相手は攻めにくいはずだ

めぐみの声:それがそうでもない。例のホバータンクは水上走行も可能だ。信長、その辺は理解していると思っているが?

信長:こちらも飛行型の機械兵を200配置させた。条件は厳しく見積もっても五分五分だ

芦屋道満:相手のホバータンクは出来上がってまもない機動兵器。戦力はこちらが上だ

 

めぐみの声:とにかく作戦を開始してくれ。もうそろそろこちらに到着するはずだ

信長:では、晴明は城内、道満は城外の機械兵の指揮にあたってくれ。我は城の装備を操作する

安倍晴明、芦屋道満:御意!

(安土城・落下ポイントの近く・湖面上)

 

役小角:ホバータンクで助かった

レン:まさか湖の中央に落下していたとはね

リン:まぁ、落下の衝撃で湖の水はほとんどはじき飛ばされているけど

ネル:役小角、ホバータンクが無くて、ここに来たら、どうしようと思っていたんだ?

役小角:まず湖岸から、飛行型の鬼、“飛翔鬼”を100程出して、同時にリンの遠距離攻撃で攻めて、道が造れたら、飛翔鬼に乗って城内に入るつもりだったが

ハク:ちゃんと策はあったのね

 

役小角:さて、見て解るとおり、飛行型の機械兵が、ざっとみて200近くは配備されている。そして城の前に芦屋道満がいるようだな

レン:指揮官ってことですね

ネル:で、どうするわけ?

役小角:当初の予定とほぼ同じく、飛翔鬼を10体出して応戦し、ホバータンクの霊力武器で、“ここから”、攻撃する

ネル:あれ? 水上戦にしないの?

レン:・・・・あの数と機動力では水上戦は“不利”なんですね

役小角:そう。ホバータンクは本来の“戦車”の役割通りの使い方をすべき物だ。だが、“あるポイント”で私が合図をしたら、そのまま強行突破する。タイミングが大事だ。“兵が少なくなってから“だと”増援“され、”多いとき“では強行突破できん。そこら辺は私が考える。リンは城内戦に向けて、霊力を温存しておいてくれ。城に入ってからは、リン、レン、君たちが主役だ。タンクは”道を開ける“役割だからな

 

芦屋道満:いけーーーーー!!!!!

 

ネル:どうやら、城の方で合図があったようだ。攻めて来るぞ!

役小角:では。召還!、飛翔鬼、10匹!

 

 役小角のかけ声と同時に、レン達の前の湖面に飛翔鬼10匹が現れ、役小角の命令を待っていた。

 

役小角:君たちは、機械兵を出来るだけ外側に追い出す、“誘導”を行ってくれ。勿論こちらからの弾には当たらないように

飛翔鬼たち:キーーー!!!

 

役小角:では。作戦開始!!!!

 

 こうして、本丸城外戦の火蓋が斬って落とされたのだった!

(湖面)

 

機械兵:ウギーーーー!!(なんだ!、このカトンボ!!)

飛翔鬼:キーーー!!(さぁ、こっち来いや!)

 

 飛翔鬼達は、巧く飛行する機械兵を外側に誘導し、戦車が城に向けて撃てる“弾道”を作っていた。

 

ネル:まずはホーミングミサイルだ!

 

 バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!・・・・

 

 ホバータンクから霊力で作られたホーミングミサイルが十数発発射され、機械兵を追尾、迎撃していった

 

ネル:次は本丸! 喰らえーーー!!!

 

 ドン!!!!!!

 

 同じくホバータンクの装備を“霊力アサルトライフル”に変え、アサルト弾を数発、本丸前の湖上の城壁に向かって発射した!

 

 ドガン!! ドガン!

 

 数発の弾丸命中で、城壁は破壊されてしまった。

 

芦屋道満:お、おのれ! まさか本丸まで一緒に狙ってくるとは!

信長の声:城の防衛装置を起動する。道満、お前は城に戻れ!

芦屋道満:御意

 

 こうして戦闘開始5分で、敵軍城外兵の指揮官は城内に戻ってしまった。

 

信長の声:防衛システム、稼働!

 

 信長の声に呼応して、城の至る所に配備されていた“砲台”が姿を現し、ホバータンクめがけて、霊力弾を発射してきた! しかし、この時は、“役小角が待っていた”ものだった。

 

役小角:よし! これで“接近戦”が出来なくなった! 全員乗れ! 式神でホバータンクの周りを囲ませ、正面弾道のルートで“強行突破”する!!! 召還!、式神!

 

 役小角は式神を無数に出して、ホバータンクの回りを何重にも囲ませた。そして全員が乗ったレン達の本陣“ホバータンク”が、遂に動き出したのだった!

 

 グォォォォォ!!!!!

 

 壊れた城壁に向かって、一直線に走り抜けるホバータンク!! 砲台からの無数の霊力弾は何重にも防御している式神で無効化され、ホバータンクは無傷だった。

 

役小角:よし! 策通りだ。このまま一気に城内に突っ込む!!

 

 グゴゴゴゴゴ!!!!・・・・・・・・ガゴン!!!!!

 

 式神の防御がほとんど無くなった状態で、遂にホバータンクは、壊れた城壁をくぐり、城内へと侵入したのだった!

 

役小角:さて、ここまでが私の策だ。これから先は晴明と道満との戦闘がある、未知のエリアだ。タンクのクルーは回廊を移動して道を切り開いていってくれ。そして、レン、リン、ここから先は君たちが主役だ。ゴズキとメズキも加勢する。頑張ってくれ! 私は後方で状況を判断してながら、加勢することにする

 

レン、リン:はい!

(安土城城内・3F)

 

 ブオーーー

 

 ホバータンクは壊れかけた回廊をゆっくり駆逐しながら、先への道を造っていった。

 

役小角:さすが“機械の城”だな。タンクが通れるか、実はちょっと確信が持てなかったのだが、安心したよ

レン:しかし、内部は“時代劇セット”と“機械セット”が混在していて、なんか変な感じですね

リン:まぁ落下しても内部は壊れないんだから、相当に丈夫なわけね

 

 中央の広間を横断しながら先行していたホバータンクが急に止まってしまった。

 

ネル:さぁて、皆さん、残り二人の門番の一人、芦屋道満の登場らしいぜ

 

 広間の出口付近で、青色の装束を着た、陰陽師が一人、立ちふさがっていた。

 

芦屋道満:我が名乗る前に、名前を教えるな!・・・まぁいい。その通り、我は芦屋道満。先ほどの城外戦の指揮をしていた者、元は伏見城の門番を勤めていた

役小角:そうだな。人事異動か?

芦屋道満:落下するこの城を守るためらしいな。まぁそんなことはどうでもいい。我の役目はお前らをここから先に進ませないことだ

レン:悪いんだけど、これまで役小角さん、賀茂保憲、仙狐と戦ってきたから、ちょっとやそっとの能力じゃ驚かないよ

芦屋道満:どうせお前は封じられるだけだ。我の相手は、鬼と戦車か

 

役小角:なに!!!!

 

 芦屋道満が手を組み呪文を唱えると、周囲全体が暗転し、そして、暗闇と氷の世界の中に立っている人物が、芦屋道満、ホバータンクと搭乗者の3名、ゴズキ、メズキの6名だけになってしまった。

 

ゴズキ:なんだ! なんだ!?

メズキ:・・・・まずいな・・・・・。

ネル:な! なんだ! これ!

ハク:ちょっと! 役小角さん達、いないよ!

てと:((( ;゚Д゚)))

 

芦屋道満:ここは“陰氷世界”。我と晴明は“道満晴明”(どうまんせいまん)の関係。我が属性は「陰」、つまり“暗黒”と“氷結”だ。術で効果のある範囲で、“光”の属性を持っている人物は全て安倍晴明に送ることができる。つまり、我と戦う資格のあるのは、“闇”属性で2軍のお前らだけだ。この世界ではお前らの武器が“同属性”故、我に効果があるのが残念だが、所詮2軍。蹴散らしてくれるわ!

 

ネル:ちょ! レン達抜きだと!?

ハク:まずいよ、これ!

てと:(((((((( ;゚Д゚))))))))

ゴズキ:おいおい! 悪い冗談だぜ!

メズキ:・・・・いや、これは現実だ。ある意味、最強の能力だな、芦屋道満!

芦屋道満:それはどうも。我と晴明は、未来から来たロボットの中でも最強クラス。しかも“ドーマンセーマン”の術の通り、“一対”になっておる・・・・そんなことはどうでもいい。さっさと片づけさせてもらうぞ!

 

 メズキを除くネル達はかなり動揺していた。こんなケースは初めてだからだ。

ネル:メズキよ~! どうする~!?

メズキ:・・・ここは私が指揮を執る。運良くこの世界は、ホバータンクが自由に走行できる広さを持っている異世界だ

ハク:でも、レンさん達抜きなんですよ! 無理です!

ゴズキ:「無理でもやってみろ」、そういう事ですかい、お天道さんよ!

メズキ:そう言うことだ。我らがやられれば、道満は晴明と合流するだろう。そうなると、“光”属性を封じられる能力で、レン達の動きも封じられるから、晴明と道満の攻撃を一方的に喰らって全滅だ。つまり、

ゴズキ:『負けられない戦い』、そういうわけか・・・・いいだろう! 面白い!

 

ネル:面白がっている場合じゃないでしょ! と、とにかく策を練らないと!

ハク:そういう時間もくれないみたいよ

 

芦屋道満:その通り! まずは冷静な司令塔を潰す! 陰術! “大氷塊”!!!

 

 道満の手から巨大な三角錐型の氷塊が現れ、メズキめがけて投げつけてきた!

 

メズキ:ぬ!

ゴズキ:そうは行くかいよ!! ふん!

 

 メズキの前にゴズキが立ちふさがり、飛んできた氷塊にハンマーナックルを思いっきり叩き込み、粉々にしてしまった!

 

芦屋道満:ほぉ! お前は「パワータイプ」のようだな。覚えたぞ

ゴズキ:それだけじゃないぜ。俺とメズキも、お前と晴明と同じく、“一対”なんだよ!

メズキ:そう。だから、同じ「闇」属性でも、私はこんな事ができる。陰陽術、“爆炎”!!

 

 メズキは術を唱えると、右手から巨大な“爆炎”を出現させ、高速で道満へ撃ってきた!

 

 ボワァ!

 

 爆炎は油断していた道満にクリティカルヒットした! 炎に包まれる道満!・・・・しかし、装束が少し焦げた位で、大したダメージを与えられなかった。

 

メズキ:即時に氷結バリアーを張ったか。まぁ直撃故、少しは効いたようだが

ゴズキ:よっし! 油断しているな! 一気に叩こうぜ!

メズキ:いや、そういうわけにはいかんようだ

 

 道満は首を上げ、メズキを睨み付けた。

 

芦屋道満:ふふ、なかなかのコンビネーションだ。我が装束を焦がされたのは初めての経験だ。メズキ、お前は「術タイプ」か。覚えたぞ

 

ネル:お二人さん、ちょっと退いていて! ホーミングミサイルで片づけるわ!

 

 ネルはパネルを操作し、操縦桿のトリガーを引き、ホーミングミサイルを1回分の4発発射した!

 

 バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!

 

 ホーミングミサイルは的確に道満に向けて飛んできていた。道満は動かずに、両手を素早く動かして、術を唱え、同じく“4発”のエネルギー弾を発射した!

 

芦屋道満:こちらもソレくらいの事はできるのだよ! 陰術、“誘導氷塊”!

 

 道満が発射した4発の氷塊は、ソレと同じ能力だった。ホーミングミサイルをホーミングし、両方がそれぞれぶつかり、どちらもなくなってしまった。

 

ネル:ちっ! むこうも誘導弾、持っているのかよ!

芦屋道満:ホバータンクは「射撃タイプ」か、覚えたぞ

メズキ:・・くっ、覚えるためにわざと喰らったか・・・

芦屋道満:さて、一通り覚えたところで、そろそろこちらから仕掛けさせて貰うとしよう。陰術、“大誘導氷塊”、“鳥籠氷塊”!

 

 道満は“ホバータンク”の上方に向かって、2つの術を唱えた。1つは先ほどのホーミング氷塊の強化版、もう1つは謎の武器だった!多数のホーミング氷塊、そして上方から大きな“氷の籠”が落下してきた!

 

ネル:うわ! とりあえずホーミングミサイル!

 

 ネルは咄嗟にトリガーを引き、おそらく一番怖い“誘導氷塊”をホーミングミサイルで破壊する事にした。ホバータンクから放たれる誘導弾! しかし相手の方が“数”で勝っていたのだった。

 

ハク:ネル! だめ! 全部打ち落とせない! 数発着弾するわ!

ネル:ちぃ!

 

 カキン!カキン!カキン!・・・

 

ハク:5発着弾・・・・って爆発しないみたいだね・・・・

ネル:それよりもっと恐ろしい状態になったみたいだ。本体と地面が氷で固まって動けなくなった・・・・

ハク:えっ!!! 最大出力で脱出できないの?

ネル:だめだ。カチンコチンだ

てと:((´д`))

 

芦屋道満:そして恐怖は更に続くのだよ。動きを封じた後は、“弾丸”を封じさせて貰う

 

 ガキン!ガキン!・・・

 

 先ほど、放った“鳥籠氷塊”が、上方から落下し、ホバータンクの周りにドーム上の“柵”となって、周りを覆い尽くしてしまった!

 

芦屋道満:さて、これで邪魔なタンクは沈黙した。次はペア鬼の2体か

ネル:待ちやがれ! こんな柵、ぶっこわす! アサルトライフル!

 

 ネルは武器をアサルト弾に切り替え、道満に標準を絞って、トリガーを引いた!

 

 バゴン!

 

 残念ながら道満の言葉は嘘ではなかった。アサルト弾一発が、柵の内側にぶつかって爆発してしまった!

 

ネル:ちぃぃぃ! これじゃ、こっちのタンクにダメージが及ぶ!

ハク:本当に“武器も動きも封印された”わけね

てと:(||゚Д゚)

 

 道満は柵が落ちてきた時点で、ホバータンクの方を向いてなかった。そして攻撃をゴズキメズキに集中していた。

ゴズキ:くそっ! タンクがやられた!

メズキ:涼しい顔して、あっさりと撃沈したな・・・。まずいな・・・

ゴズキ:いや、そんな冷静に考えている場合じゃないぞ! あいつ、残った俺達に向かって来るぞ!

メズキ:我々は物理と魔法にそれぞれ長けたペア。“遠距離攻撃”では火力が足りないことに気付いたか

 

芦屋道満:ま、そういうことだ。いくらこちらが撃っても、ゴズキ、お前が殲滅していたら、司令塔のメズキを叩けない。なら、飛び道具ではなく、近接武器でゴズキ、お前を消す。陰術、“アイスブレード”!

 

 道満は、術を唱えると、鋭い氷の刃を持った、洋刀を1本作り、右手で構えて、じりじりと近づいてきた。

 

ネル:やばい、やばいよ・・・なんか手はないのか!?

ハク:・・・・この柵は“タンクの弾丸”が効かないんだよね?

ネル:そ、そうだよ! だから困っているんじゃ・・・

ハク:こっちの弾丸って、霊力で弾丸の形に作った“エネルギー弾”だよね?

ネル:そうだけど・・・

ハク:それに戦車は柵に入れられる前に“氷で動けなくされた”んだよね

ネル:・・・なるほど!

ハク:そう、この柵は実体を持つ“物理物体”には効果がないのよ

ネル:でも、動けないからどうしようもないか。私たちで氷でも壊す?

ハク:もっといい方法があるじゃないの! ヘリの時に積み込んだ武器が!

ネル:! そうか! アサルト弾用の主砲、あれ、伸縮自在の物理物体だったな!

ハク:あれを、道満の土手っ腹にぶち込むのよ!

ネル:いける! いけるぞ! なら、早速ゴズキとメズキに指示を送るよ

ハク:作戦開始ね!

ネル:ところで、ハクさん、結構大胆ですね?

ハク:あら!? そうかしら? ほほほほ

 

 こうして“最後の策”がスタートしたのだった。

 

***

 

 ジリ・・・ジリ・・・

 

 道満はジワジワとゴズキとメズキの方へ近づいていた。もうほんの数歩で白兵戦ができる距離だった。

 

ゴズキ:やばいぞ、おい・・・

メズキ:なにか策はないのか・・・。やたらに動けば、あの刀の餌食になる・・・

 

ネル:お~い! ゴズキ、メズキ! これからそっちに近接攻撃する! 何とかして二人で道満の動きを止めてくれ!

芦屋道満:ふん! ブラフも大概にしろ!

メズキ:(・・・・あの状態で言っているんだ。勝算はあるようだな)パワーアップの術をかける、二人でなんとかあいつを羽交い締めにするぞ!

ゴズキ:わ、わかった。何もしてなくてもやられるだけだからな

メズキ:では、行くぞ! 陰陽術、“剛腕力”!

 

 メズキはハク達が唱えたことがある、力が大幅に上がる陰陽術をゴズキと自分に唱え、ダッシュで道満に向かっていった。

 

芦屋道満:ふ、わざわざヤラレに来たとは、こっちには刀があるのだぞ!

 

 ゴズキはダッシュしながらも、強気で叫んだ。

 

ゴズキ:刀があるのがどうした!!

芦屋道満:なに!?

メズキ:斬られないと思って来たと思うか!?

芦屋道満:ま、まさか、お前達、斬られるのを覚悟の上で、だと!!!!

 

 油断した道満は、脚力まで上がっていて素早いゴズキとメズキの動きを見過ごし、前からメズキ、後ろからゴズキ、それぞれで羽交い締めにされてしまった!

 

芦屋道満:うぉぉ・・・う、動けん!

ゴズキ:おい! ネル! 動けなくしたぞ! さっさと“攻撃”ってヤツ、かましてくれ!

ネル:二人とも! 今のタンクの位置からだと、二人ともが弾道に入っちまう! なんとか横から押さえ込んでくれないか!

メズキ:だめだ! 今の位置から、3人とも動けない!

 

ゴズキ:・・・・・・・やれ。やるんだ!

ネル:え!?

ゴズキ:俺達“鬼”は、所詮召還された身。なんとでもなる! 俺達の事は気にせず、その攻撃ってヤツ、さっさとぶち込め!

メズキ:そ、そうです!

芦屋道満:そ、それは、困る!

 

 グサッ! グサッ!

 

 道満は最後の力を振り絞って、刀でゴズキとメズキに刀を突き刺した!

 

ゴズキ、メズキ:うぉ!

 

芦屋道満:こ、こいつら、こんな状態になって、まだ、ち、力を落とさん!

ゴズキ:俺達が全員死んじまったら・・・

メズキ:レン達がやばいんですよ!

ゴズキ:ネル! やれ!

 

ネル:ぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・二人とも! すまん! アサルトライフル砲身、最大長まで伸びろ!!!!!!!

 

 ギューーーン!、パリーーーーン!!!!

 

 武器から伸びた“砲身”は、予想通り“物理物体”に弱い“氷の柵”を突き破っていった!

 

 ギューーーーン!!!!

 

 そして一直線にゴズキの背中めがけて、どんどん伸びていった!

 

 ギューーーーーン!!!! グサッ!!!!

 

ゴズキ:ゴフッ!!!!

 

 砲身は前で羽交い締めにしていたゴズキの背中を突き破り、道満の胸、人間でいう心臓部の表面の手前で止まった。

 

 ネルは泣きながら、最後の操作をしていた!

 

ネル:零点距離だ!!!! 最大出力“アサルトライフル”、発射!!!!

 

 バシュッッッッ!!!!!!

 

芦屋道満:ウゴフォォ!!!!!!!

メズキ:ゴフォ!!!!

 

 最大出力で発射された霊力アサルトライフルは、道満の心臓部表面とメズキの心臓部を貫通して、虚空の異世界の彼方まで飛んでいき、消えた。

 

 ドサッ!

 

 道満、ゴズキ、メズキの3人はその場に倒れ込んでしまった。

 

ネル:ゴズキ! メズキ!

 

 周りの異世界は、いつの間にか畳敷きの元の広間に戻っていた。道満の言葉の通り、レン達の姿はなかった。

 

 ネル、ハク、てとの3人はタンクから降りて、割れた氷の柵をくぐり、その3人の元に駆け寄った。

ゴズキ:ごふぉ・・・なかなか・・・見事な・・・攻撃・・・だったな・・・グッジョブだ・・・

ネル:喋るな! ハクの陰陽術で回復するから!

メズキ:ごふっ・・・・それより、ヤツは・・・・

 

 道満はすでになにも喋らず、動かずに倒れていた。どうやら即死だったらしい。

 

 シューーーン、カラン、ゴロリ

 

 賀茂保憲と同じように、壊れた変身ロボットに戻り、横に、「Type:Tonio」と彫られたドッグタグが転がっていた。しかしネル達はゴズキとメズキの方に集中していた。

 

ハク:ネ・・・ネル・・・回復術が効かないよ・・・・

ゴズキ:・・・致命傷・・・だったんだ・・・

ネル:そんな! 二人とも死ぬな!!!

メズキ:・・・お別れの時間だ・・・

ハク:待って! オーバー出力でやってみるから!

ゴズキ:これから・・・晴明とか・・・信長とかを・・・ヤるんだろ・・・霊力は温存・・・しておけ・・・

 

 ハクはぼろぼろ泣きながら、それでもやめなかった。しかし、時すでに遅しだった。ゴズキとメズキの姿は半透明になり、消えかけていた

 

メズキ:この状態からだと・・・次の召還はずっと先・・・だと・・思うが・・・

ゴズキ:え・・・役小角様に・・・・・宜しく・・・・伝えてくれ・・・・じゃあな

 

 シューーーーーーン

 

ネル、ハク、てと:!!!!

 

 ついに二人とも完全に消えてしまったのだった。ガタッと膝から崩れるネル、回復術の構えで呆然としているハク、そして、

 

てと:・゚・(ノД`;)・゚・

 

 “てと”も泣いていた。

 

ネル:ぐす・・・・ハク、てと、先を急ごう。ゴズキ達の“遺言”をレン達に伝えなきゃいけない

ハク:・・・・・・そうですね

ネル:二人が命を賭して守った、俺達とタンク、できるなら晴明戦、最低でも最後の信長戦に、ちゃんと使おうよ。それが約束だ

ハク:・・・はい、行きましょう

 

 こうして、3人は再びタンクに乗り込み、“強い霊力”を探しながら、先を急ぐことにした。

 

(続く)

 

CAST

 

巫女・鏡音リン:鏡音リン

巫女(?)・鏡音レン:鏡音レン

 

巫女・初音御貢(ミク):初音ミク

 

拳の升太:墓火炉 升太

アホ毛のミキ:miki

人形のテト:重音テト

 

懐刀の侍・神威学歩:神威がくぽ

忍者・海斗:KAITO

くノ一・女威虎(メイコ):MEIKO

 

めぐみ:???

陰陽師“役小角”:Prima

 

陰陽師“安倍晴明”:???

陰陽師“芦屋道満”:Tonio

 

カラクリのネル:亞北ネル

深酒のハク:弱音ハク

人形の“てと”:重音テト

 

ホバータンク(ミリアム)のCOMP:MIRIAM

 

第六天魔王信長、飛翔鬼、機械兵、ゴズキ、メズキ、その他:エキストラの皆さん


 
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