No.499826

おや?五周目の一刀君の様子が……18

ふぉんさん

お久しぶりです。
更新しないとなぁと思い投稿。
忙しくてサイトすらろくに開けない……

2012-10-24 18:14:13 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10374   閲覧ユーザー数:7908

憂いを断った俺は、呂布との再開を果たすため劉備軍が治める徐州へ向かっていた。

星の話通りであれば呂布は劉備軍に属しているはずだからな。

その道中の城下町、予備の剣でも備えておこうと鍛冶屋に寄ったのだが、思わぬものを見つけた。

 

「これは……」

 

「それに目をつけるたぁ、お客さんもお目が高いねぇ」

 

壁に立てかけられた、質素な作りの剣。

普通の形をした剣ならば目を奪われる事は無いのだが、その剣は湾曲で刃が細く薄い。

日本刀にそっくりだが、この剣は両刃になっていた。どちらにせよ突く事を念頭に置いてない造りである。

 

「それは魏の有名な職人がつくったもんでな。本人曰く会心の出来だったらしいんだが、使う人が居なかったんで売りに出したんだと。物珍しさに仕入れたんだが、こっちでも買い手が居なくてなぁ」

 

それはそうだろう。こんな癖のある武器、余程の手練れでなければ扱えない。

俺の戦闘スタイルは基本、相手の攻撃を受け流し隙を突く。

湾曲のこの剣はぴったりではないだろうか。

 

「なるほど……いや」

 

反董卓連合の戦を思い返す。銀華を庇った時の様に、咄嗟に敵の攻撃を防ぐにはこの剣は向かないか。

そこで、俺が今腰に差している剣を見やる。

張飛の一撃にも耐え切った剣だ、どこで手に入れたかは覚えてないが、そこらへんで売っているものよりは良いものだろう。

俺は剣を抜き、鍛冶屋の親父に渡す。

 

「この剣で、頑丈な短剣を作ってくれないか」

 

「あん?ちょっと待ってくれ」

 

親父は剣を受け取ると、刀身を数十秒眺めた後数回その場で素振りをする。

最後に指で刀身を叩き、眉を寄せた。

 

「お客さん。こいつぁもう使い物にならんな。刃はよく手入れされているが、芯にガタがきてる。よくこんな状態で折れないもんだ」

 

「そうか……」

 

その言葉に落胆する。当然といえば当然だったかもしれない。

良質とはいえ、どこぞの武将が持っている武器とは比ぶべくもないのだろう。

だが、それなりに長く使っている剣であり、多少の愛着もある。

どうしたもんか。

 

「そんな顔せんでくれお客さん。俺がなんとかしてやるよ」

 

「本当か?」

 

「あぁ。ただ、そいつを買ってもらえたらの話だがな」

 

親父の視線の先にあるのは、先程の日本刀紛いの剣。

値は、所持金の半分程だった。

かなりの痛い出費だが、話を聞くにそれだけの価値があるということなんだろう。

 

「……その剣の代金込みでなら買おうか」

 

「チッ。しっかりしてらぁ。分ったよ」

 

苦い顔をして親父が頷く。

どんな良い物でも、買い手がつかなくては意味が無い。

元の剣の値引きは、親父としても俺をここで逃したくないのだろう。

 

「……御代は確かに頂いた。持ってけ」

 

新しい剣を受け取り、専用の鞘に仕舞う。

 

「名は、流剣(るけん)。孤影が流れる水の様に滑らかだったことから付けたらしい。大切に扱ってくれ」

 

「あぁ」

 

「要望の品は二日後にはできるだろうよ。そんときにまた来てくれ」

 

親父は俺にそう言うなり、剣を持ち置くの工房へ入っていった。

外へ出ると、薄暗い鍛冶屋に居たせいか、日の光に軽く目が眩んだ。

額に手を当て息を吐く。さて……

 

「ねねになんて話すかな……」

 

独断で路銀の半分を使ってしまった。

まぁ武器の質は戦場で生死に関わる。納得してくれるよな。

「理解はしたのです。ですが、理解と納得は別物なのですよ」

 

夜。宿に戻った俺はねねに事情を話すと、そんな言葉が返ってきた。

ねねは昼間、旅の支度でいろいろな店を回っていた。

その出費を合わせて、路銀の七割方使ってしまっていた。

 

「そんな高い剣を買わずとも、一刀殿ならどんな敵も蹴散らせるのです」

 

「そうだが、武将レベルになると厳しいものがあってだな。呂布の所に着く前に、どっかの諸侯軍と鉢合わせにでもなったら必要だろう」

 

「むー……確かにその通りなのです……」

 

旅の路銀なんて他に使い道は無いんだからいいじゃねぇか。

何がそんなに気に食わないのだろうか。

 

「……恋殿の食費貯蓄計画が……」

 

ねねが何かボソッと呟いたが、とても小さくて聞こえなかった。

剣を預けてから二日後。俺は言われたとおり鍛冶屋に向かった。

中に入ると、親父が置いてある武器の手入れをしていた。

 

「お、来たか。ついさっき出来上がったぞ」

 

渡されたのは刃渡り二十五センチ程の短刀。

握ってみると、やはりしっくりくる。

 

「助かった、礼を言う」

 

「そうしてくれ、無償だってのにやけに気合入れたからな。名はお客さんが決めてくれ」

 

名か。この短刀を作った目的は守りにある。

両刃である流剣はみねが無く、左手を添えて力を入れるなんて出来ないからな。

 

「……牙刀(がとう)でいい」

 

「牙刀か。悪くない名だな」

 

短刀のなりを短く鋭い獣の牙に重ねて名付けてみた。

流剣は左脇に差してあるので、牙刀を右脇に差す。

もうこの街に用は無い。徐州へ向かうとするか。

 

「また機会があったら寄る」

 

「おう、調子が悪くなったらまた来てくれ」

「恋殿ー!もう少しで会えますぞー!」

 

数日後、もう徐州にはいったのだろうか。

危惧していた軍との接触は無かった。賊には何回かあったが、全て少数だったので俺一人でも事足りた。

 

もう少しで呂布に会えると思い、日を増す毎にねねのテンションが上がっている。

俺の言葉を鵜呑みに、徐州に呂布がいると信じきっているが、星の体験した歴史とは違い呂布が居ない可能性だって低くない。

今更、もしかしたら居ないかもしれないなど、このねねの笑顔を見てしまうと言いだせなかった。

居なかったら居なかったで、俺一人でも探しに出るとしよう。俺は約束だけは守る男だからな。

 

「しかしなぁ……」

 

劉備軍にいる星と銀華が気がかりである。

星はこの世界に来た初日から、何も告げず別れそれっきり会ってない。

銀華に至っては俺も劉備軍に行くと騙し納得させたのだ。

久しぶりに女を抱きたいというのに、まずはあいつらを説得しなければならないとはな。

徐州の城に着くまでの間、俺は溜め息を禁じえなかった。

 

 

 

※いい加減一刀にもちゃんとした武器もたせないとなぁと思いましてオリ展開です。

そうじゃないと恋姫武将とまともに戦えないかなぁと今更思いました。

雑兵の武器とか使ってたら普通に武器毎やられちゃいますもんね。


 
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