No.499565

SAO~菖蒲の瞳~ 第八話

bambambooさん

八話目更新です。

いよいよ始まります第一層ボス戦。

アヤメ君の加わったキリトパーティはどんな活躍を見せてくれるのか!?

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2012-10-23 21:50:29 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1543   閲覧ユーザー数:1423

 

第八話 ~ 第一層攻略戦・1 ~

 

 

【アヤメside】

 

昨日中にウユ村からトールバーナに戻ってきた俺たち三人は噴水広場へ向かっている。

 

いよいよ今日がボス戦だ。

 

アスナは昨日の出来事で何か吹っ切れたらしく、憑き物の取れたような清々しい表情をしている。あの目深に被っていたフードも、今は被っていない。

 

アスナの素顔を見たとき、予想以上の美人で驚いたことは記憶に新しい。キリトなんか完全に見とれていた。

 

因みに、クエスト終了後、報酬で貰ったクリームを《固い、不味い、ボソボソしてる》の三拍子揃った黒パンに塗って食べさせてみたら、目を輝かせて食べていた。

 

キリト情報侮り難し。さすが元ベータテスター。

 

そしてそのキリトはと言うと、朝から何か考え事をしているようだった。

 

良からぬ事を考えてなければいいが……。

 

「おっ、来たな」

 

そうこう考えていると、攻略戦リーダーのディアベルを発見した。どうやら集合場所に到着しようだ。

 

もう既にかなりの人数が集まっている。

 

「遅刻したか?」

 

「いや、まだ集合時間まではある。皆のやる気がありすぎるだけだよ」

 

ディアベルは苦笑いしながらそう言ったあと、一瞬で表情を真面目なモノへと切り替えた。

 

「どうやら全員揃ったようだな。これよりボスの部屋へと向かう! 全員、無駄なアイテムの消費は避けるように!」

 

『オーッ!』

 

ディアベルが先導し、ボス戦に参加するプレイヤーたちが次々とフィールドへと出て行った。

 

「俺たちは最後でいいか。人数も少ないしな」

 

「私もそれでいいよ」

 

「昨日までのアスナなら率先して前に出ようとしてたのにな」

 

「それは言わないでください……」

 

「どうでもいいけど、アヤメって意外とSっ気あるよな」

 

「失礼な」

 

まあ、そんなこと言えるだけの余裕があるってことか。変に緊張するよりマシだな。

 

「二人とも! 早く行かないと置いてかれちゃうよ!」

 

「直ぐに行く!」

 

 

第一層の迷宮区は全部で二十階あり、その中は両側の壁に申し訳程度の松明が灯っているだけで中は真っ暗だった。

 

しかし、そんな視界の悪い迷宮区内での戦闘で、死に繋がるようなダメージを受ける者は無く順調にボス部屋へと進む事が出来た。

 

ディアベルの指揮力が優れていたからだろう。

 

《スイッチ》の事を知らなかったアスナが、「……ボタン?」と聞き返してきたくらいしかトラブルっぽいトラブルは無かった。

 

「ねえキリト君。随分奥まで来たけど、まだ着かないの?」

 

さすがに変わらない風景に飽きてきたのか、アスナがくたびれた様に言った。

 

「ベータテストの時と造りが同じみたいだからもう直ぐの筈だ」

 

そうキリトが言うので、俺は前方を集中して観察してみた。

 

「……確かにあるな」

 

キリトの言う通り、今までとは格の違う荘厳な扉が見えた。

 

最早《門》と言ってもよい。

 

「アヤメさん、こんな真っ暗なのに見えるんですか?」

 

「俺はレベル上げを夜にやってるから《暗視》は必需品なんだよ」

 

「え? アヤメこんな早くから《視覚強化》スキル取ってんの?」

 

「投げナイフも使うから必要があるんだ」

 

プレイヤーのスキル構成は各々で全く違うが、俺みたいに半分程が趣味にあたりそうな視覚強化を上げるヤツはいないんだな、やっぱり。

 

「あ…見えた」

 

どうやら、アスナにも見える距離にまで近付いたらしい。

 

扉の前に辿り着くと、ディアベルはこちらに向き直った。

 

「皆ありがとう! ここまでメンバー四十四人全員が一人も欠ける事無く辿り着く事が出来た! もう俺から言えることはたった一つ。……勝とうぜッ!」

 

『オーッ!』

 

ディアベルの一声で、全体の志気が上がった様に見えた。

 

「そうだ。二人に言わなきゃいけないことがあった」

 

「なんだアヤメ?」

 

「そんな武装で大丈夫か?」

 

「……何となく、その質問には答えちゃいけない気がする……」

 

「私も……」

 

「死亡フラグは本当に建つのか気になったんだが……」

 

『やめろ(て)ッ!?』

 

「冗談」

 

これくらいからかっておけばリラックス状態になれるだろう。

 

それにしても、息ピッタリだ。

 

「暢気なヤツらやなぁ……。もう開くで!」

 

側で俺たちの様子を見ていたらしいキバオウに怒られてしまった。

 

気を引き締め直し、薄暗い部屋の中へ慎重に入っていく。

 

全員が入りきると、部屋が一瞬にして明るくなった。

 

だいたい幅二十メートル、長さ百メートルくらいの長方形の部屋。その最奥にある祭壇の様な場所に、この第一層のボスがいた。

 

この部屋の主――《イルファング・ザ・コボルト・ロード》は俺たちを見つけると、その脇に置いてあった巨大な長柄の斧を掴み取り、咆哮を挙げた。

 

それと同時に、コボルト王の両脇に取り巻きである《ルイン・コボルト・センチネル》が三体現れる。

 

「――皆、行くぞッ!!」

 

ディアベルの号令と共に、全員が走り出した。

 

第一層ボス戦―――開戦。

 

 

【キリトside】

 

「手筈通りに行くぞアスナ! アヤメは援護を頼む!」

 

「分かってる!」

 

「了解」

 

俺たち三人に与えられた仕事は取り巻きの除去。

 

雑魚モンスターであるが、喉以外の部分を頑丈な鎧で覆っており非常に倒しにくいモンスターだ。

 

そこで、俺が考えた作戦はこうだ。

 

「ハアッ!」

 

先ずは俺が、何でもいいから剣技を相手にかます。

 

そうすると、俺は剣技がガードされたために暫く硬直してしまうが、それは相手にも言える現象だ。

 

「アスナ!」

 

「うん!」

 

『スイッチ!』

 

その無防備な状態の時に、アスナが細剣基本技の《リニアー》をがら空きの喉に当てる。

 

――ズバッ!

 

緑色の閃光となった鋭い突きは寸分違わず喉を貫き、取り巻きのHPバーを奪い去った。

 

これが俺の作戦。いたってシンプルだが、効果はあるようで安心した。

 

「一体目!」

 

そう叫ぶアスナの左側から、もう一体の取り巻きが接近してきた。

 

「アスナ左だ!」

 

「え…?」

 

俺が叫んだ直後、俺の隣をアヤメが駆け抜けて行き、取り巻きを蹴り飛ばした。

 

「やらせはしない」

 

十メートル程離れていたのに、その距離を一瞬で埋めたアヤメの瞬発力に内心驚く。

 

初期にしては速過ぎるくらいだ。

 

「キリト! 次が来るぞ!」

 

……っと、驚いてる暇はないな。

 

「もう一度行くぞアスナ!」

 

「今度は油断しないわ!」

 

蹴り飛ばされた方はアヤメに任せ、俺とアスナは三体目へと向かっていった。

 

チラッとボスの様子を見てみると、ボスのHPは警戒域(イエロー)にまで減っていた。

 

なかなか善戦しているようだ。

 

俺たちも、こっちをさっさと片付けてあっちの援護に向かうか。

 

……あれをやるためにも。

 

「セアッ!」

 

片手直剣技《ホウィスク》を取り巻きの武器に叩き付ける。

 

「ハッ!!」

 

硬直したところに、すかさずアスナが《リニアー》を放つ。

 

今度は僅かにHPが残った。

 

「―ッ!」

 

しかし、そこにアヤメが投げナイフを投げ込んで残りを刈り取った。

 

投げたアヤメはと言うと、その振り向き様に今まで相手をしていた取り巻きに回し蹴りを放った。

 

今度のそれは剣技だったらしく、紫色のラインを描いて取り巻きの鎧に命中する。

 

「キリト!」

 

「分かった!」

 

俺は全速力で取り巻きへと近付き、《ホリゾンタル》を喉元へと命中させた。

 

HPが0になり、ポリゴンとなって砕け散った。

 

「格闘スキルでスイッチ狙うなんて無茶するなよな……」

 

「俺の筋力値(STR)じゃ硬直させるまでの威力が出ないからな。敏捷値(AGI)依存の蹴り系統のスキルを使ってみた」

 

「ある意味凄いよ……」

 

「そんな事より!キリト君、アヤメさん。ボスのHPが赤くなったよ!」

 

「ここからが本番だな」

 

情報通りなら、ここで《タルワール》に持ち替えるんだが……。

 

ボスは後ろへ跳び距離を開けると、持っていた斧を投げ捨て、腰に挿されたもう一つの武器を抜いた。

 

それはタルワールほど刀身の湾曲した武器ではなく、それよりも明らかに細い曲刀だった。

 

……いや、違う!

 

「あれは《ノダチ》!? 何で第一層で《カタナ》が!?」

 

ここ一番というところで、イレギュラーが起きた。

 

 

【アヤメside】

 

キリトの同様具合からして、イレギュラーが、それもヤバめのモノが起きたらしいと想像できた。

 

「全員下がれ! ソイツが持ってるのは《タルワール》じゃない!」

 

「全員退避!」

 

キリトのその叫び声に一瞬だけ動揺が生まれたが、ディアベルの指示で全員が動き出した。

 

「キリト君。アレはなんなの?」

 

アスナがキリトに尋ねた。

 

「アイツが持ってるのは《カタナ》って種類の武器でな、本当ならもっと上の層で出るはずのモノなんだ」

 

キリトが説明した後、コボルト王は今まで見たことの無い構えを取り、飛び上がった。

 

そして、そのまま天井を縦横無尽に飛び回り続ける。

 

その事に驚いたらしい一人が立ち止まってしまった。

 

「ばっ…立ち止まれば狙われるぞ!」

 

キリトは叫びながら走り出した。

 

その直後、立ち止ったプレイヤーに狙いを定めたコボルト王が、天井から一直線に飛び降りてきた。

 

「させるかぁぁああッ!!」

 

間一髪、それに間に合ったキリトはボスの刀を受け止める。

 

そのまま鍔迫り合いが続く。

 

「アスナ」

 

「はい!」

 

俺とアスナは素早くボスに接近し、その横腹にそれぞれ剣技を繰り出してボスを吹き飛ばした。

 

「キリト君、大丈夫?」

 

「もうちょっと遅かったら押し負けてたかな……?」

 

「無茶してるのはどっち…だッ!」

 

起き上がり、飛びかかる体勢を取ったボスに投げナイフで牽制する。

 

「でも、カタナスキルの剣技を知ってるのは俺くらいだから、俺が積極的に前に出るしかないだろ」

 

「……分かったよ」

 

じゃあ、俺は出来る限りの援護をしますか。

 

「アスナはどうする?」

 

「パーティメンバーを置いて一人で逃げるなんて出来ません」

 

強い子だな。

 

「そう言うわけだ。援護は任せて存分にやって来い」

 

「ああ。任せときな!」

 

 

オリジナル剣技

《ホウィスク》

・片手直剣下級技

・半円を描く右袈裟切り

 

《ヴァーナル・フーフ》

・アヤメが取り巻きに使った技

・格闘スキル下級技

・相手を跳ね上げる様な回し蹴り

 

 

オリジナル強化オプション

《暗視》

・暗闇でモノを見やすくする。

 


 
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