No.499332

万華鏡と魔法少女 第二章 少女と忍

沢山の血を流し、同じ一族を手に掛けた一人の男


彼は唯一の弟と対峙して命を散らせた。

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2012-10-23 02:44:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6771   閲覧ユーザー数:6186

 

すいません(苦笑)最近、色々と忙しく顔が出せずにいるパトラッシュです(;;)

 

 

 

今回、謝罪しなければならないのですが万華鏡と魔法少女ではやてとイタチが出会った話を入れ忘れていたことに気づきました

 

 

誠に申し訳ありません、これが今回、事実上の第二章の一話目となります。ではどうぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜天に輝く星、

 

 

俺が家族を手に掛けたあの夜もまた幾つもの星が輝いていた

 

 

子供もいた、女性もいた

 

 

知り合いも恋人も実の親である父も母もいた

 

 

大切な人間を殺して、俺は絶望の淵に立たされた

 

 

空を見上げれば、愚かな自分が殺した全てを見ている星々達がただ光を放ち天空に輝いているだけ

 

 

何故だろう…

 

 

涙が止まらない…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

うちはイタチは何かに魘される様にその場から飛び起きた

 

 

先程まで見ていたあの忌まわしい夜での出来事

 

 

軽く自身の頬からは伝う様に汗が流れ落ちるいる

 

 

悪夢から魘され、飛び起きた彼はすぐさま辺りを見渡す

 

 

何処か見知らぬ家の中、

 

 

彼の周りには看病する為に濡れたタオルや計温器が置いてあった

 

 

イタチはその場からゆっくりと立ち上がり顔を洗うべく近くにあった洗面所に足を踏み入れる

 

 

冷水を顔につけて両手で擦り、モヤモヤと霧がかかった意識をはっきりとさせるイタチ

 

 

だが、顔を洗い終えたイタチが眼の前にある鏡に顔を写すと信じられないものが写っていた

 

 

「……何…だと、」

 

 

そこに写し出されていたのは若返っている自分自身の姿

 

 

歳は恐らく、見た目からして18か17前後と考えていいだろう

 

 

しかも、写輪眼も無事に開く事が出来る、何も身体に支障は無い

 

 

だが、眼を覚ましたばかりのイタチは信じられない事の連続で頭の中が混乱していた

 

 

アルハザードで巨大な門から差し込む光に包まれた自分はあの時、意識を手放してしまった

 

 

その後、自分の身体が一緒にどうなったなど知る由も無い

 

 

そんな彼の元に聞き覚えの無い声高い幼い声が聞こえて来た

 

 

「おや、起きてらしたんですね…」

 

 

洗面所で顔を洗っていたイタチは咄嗟に眼だけ声がした方にへと向ける

 

 

そこにいたのは、車椅子に座った可愛らしい少女の姿だった

 

 

どうやら、意識がなかった自分を看病してくれていたのはこの少女らしい

 

 

そうイタチは自分が起きて来た事に安心した様な声を溢す彼女の様子から察する事が出来た

 

 

顔を洗い終えたイタチは早速、自分を看病してくれたであろう彼女にお礼を述べる

 

 

「…その口振りから意識が無かった俺を看病してくれていたのは君か…ありがとう」

 

 

「…え? いやいや!そんなに畏まらんで下さい、私も星を見に出掛けた公園で偶々、倒れていた貴方を看病しただけですから!」

 

 

律儀に年下である自分に頭を下げてお礼をしてくるイタチに慌てた様に否定する少女

 

 

すると、車椅子に座る彼女とイタチは互いにとりあえず自分の名前を教え合う事にした

 

 

流石に助けてもらっておいて名前を知らない者同士ではなにかと気まずいというものだ

 

 

「…えーと、あの私は八神はやてって言います」

 

 

「…うちはイタチだ」

 

 

イタチはそう言うと、彼女の側にへとゆっくりと近づき優しく微笑む

 

 

握手代わりか、彼女に向かい自分の右手を前にへと差し出すイタチ

 

 

彼女は彼のその行動にキョトンと眼を丸くしながら、自分に向かい差し出された右手を静かに見つめる

 

 

「…あぁ、これは…」

 

 

イタチは自分のとった行動に義理の妹であったフェイトと初めてあ会った時もこの様に握手を交わした事を思い出していた

 

 

イタチは自分が差し出した右手を見て、眼を丸くしている彼女に丁寧に説明し始める

 

 

「…互いに挨拶を済ませたから…よろしくという意味だ」

 

 

イタチの言葉にやっと意味を見出せたはやては納得した様に頷き彼の差し出した右手を左手で掴み、互いに握手を交わす

 

 

ひとまず、悪い人では無い様だ…

 

 

イタチと握手を交わしたはやては先程から律儀な彼の行動を見てそう感じた

 

 

一昨日の晩、公園で倒れていたのを見捨てられずに他の人を呼んで家まで運んだが、彼が極悪人だったらどうしようと内心彼女は不安だったのだ

 

 

だが、彼は自分の予想をだいぶ外れ、とても律儀でそして礼儀正しい

 

 

イタチを握手を交わしていたはやては嬉しそうに彼に微笑む

 

 

「公園で倒れていた時はビックリしたんやけど、大事じゃ無くてよかったです」

 

 

「いや、こちらこそ看病してくれて感謝している…それより、先程から君のその喋り方? 緊張しているなら別に変えなくても大丈夫だぞ、はやて」

 

 

先程から、コロコロと変わる彼女の話し方に無理にそうしているのでは無いかと察したイタチは彼女にそう告げる

 

 

多分、方言というのだろう、イタチが生前、忍の里に住んでいた頃もよく任務などで地方に赴く際、地方によって話し方が異なる地域が存在していた事が何度かあった経験がある

 

 

恐らくは彼女もまた、緊張からかその方言を無理に変えていると感じたイタチはそれを解くように彼女に促したのだ

 

 

「あらー、やっぱバレとったんか、ホンマはこっちが素なんです」

 

 

イタチに見破られたはやては先程から慣れない言葉からやっと開放させられ、にっこりと微笑み告げる

 

 

彼女はなんというかイタチが以前あったフェイトとはまた違う雰囲気の少女であった

 

 

とりあえず、イタチはその後、直ぐに彼女から、自分が今いる場所と情報を聞き出した

 

彼が今いる場所それは前と場所は同じく海鳴町という事

 

彼女、アルハザードに居たアリシアが言った通りの場所にイタチは辿り着いたのだ、

 

 

イタチは取り残した彼女の事を思い出し、罪悪感からかその視線を下にへと落とし、自身の拳を強く握りしめる

 

 

(…俺は何故…生きている…)

 

 

イタチは自分が許せなかった、生きている事も少女一人すら救えない非力な人間だという事も…

 

とりあえず、イタチは眼の前の彼女、八神はやてに両親に合わせてくれと願い出る

 

 

それはそうだ、自分は見知らぬ人間にも関わらず家に招き入れ看病までしてもらったのだはやての両親にもお礼を述べるというのが人間として当然である

 

 

すると、先程まで明るかった彼女の表情が暗く重いものに変わる

 

 

何故、そのような表情を彼女が浮かべているのか…すぐさま、イタチは理解する事が出来た

 

 

「…私、独りだけやで、親はおらへん、ここに独りで住んでるんや…」

 

 

「すまない…考えてものを言うべきだったな」

 

 

イタチは自分が口走った失言に対して、直ぐにはやてに謝罪した

 

 

こんな家に独りきりで住んでいる彼女にイタチは助けられなかったアリシアを重ねてしまった

 

 

アリシアの様に彼女もまた孤独…

 

 

だが、違うのは彼女は死んだアリシアと違いちゃんと生きている

 

 

自分の身の上話…という訳では無いがイタチもまた自分の事を彼女にへと語り始める

 

 

「…俺も両親はもういない、二人とも死んでしまったからな…」

 

 

「…え?」

 

 

イタチの語り出すその話にはやては不意に間の抜けた声を溢す

 

詳しく話せば死んだ、では無くイタチが二人とも殺した

 

 

愛を与えてくれた母を、気高いうちはの誇りを教えてくれた父を自分が裏切り殺した

 

 

彼女と同じで自分もまた孤独…彼の場合は報いという意味でだが、

 

 

すると、彼女はイタチに弱弱しく微笑み掛ける、それは彼もまた孤独だというのを知ったからだろう

 

 

「私と似たもん同士なんやね…、独りはやっぱり寂しいな…」

 

 

「…そうだな、」

 

 

彼女の言葉を肯定する様に頷き答えるイタチ、

 

 

孤独とは辛く…堪え難いものだ

 

それをこんな幼い少女が独りで背負うなど、イタチは痛々しく心が締め付けられた

 

 

この孤独な彼女を見捨てて、フェイトに会いにゆくのか?

 

 

俺はそんな事はもうしたくは無い、

 

アルハザードに置いて来たアリシアも救う事が出来なかった自分は眼の前にいるこの少女だけでも、孤独から開放さしてやるのが義務では無いのか?

 

 

イタチは眼の前にいる車椅子に座るはやてと同じ目線になる様に屈み、彼女にこう告げた

 

 

「…だが、俺は自分みたいに君の様な女の子を独りにさせたくは無い、良ければ暫く…君の住むこの家に一緒に置いて貰えないだろうか…?」

 

「…え?」

 

 

思ってもみないイタチの願に間の抜けた声を溢すはやて

 

 

自分の側に置いて欲しいと願い出る彼と同じで、はやてもまたイタチにこの家にいて欲しいと思っていたのだ

 

 

はやてはイタチのその言葉に嬉しそうににっこりと明るい笑みを溢す

 

 

「…ホンマに!イタチさんが私と一緒に居てくれるんか!?」

 

 

「…あぁ、」

 

 

イタチはそう言うと嬉しそうに微笑むはやての頭にゆっくりと右手を添えて撫でる

 

 

彼女はイタチの提案が心から嬉しかった、孤独にいままで住んでいたこの家に家族が増える

 

 

独りで毎日を過ごしていたはやてはそれだけで心が踊っていた

 

 

そんな彼女にイタチは自分が告げた言葉を肯定する様に静かに頷き語り出す

 

 

「…君が許してくれるのなら、だが?」

 

 

「な、何言うてるん!?そんなの嬉しいに決まってるやん!」

 

 

はやてはイタチの言葉に嬉しかったのか明るい笑みを浮かべて照れる様にそう答えた

 

 

 

独りだけで過ごして来た毎日に色が付いた様なそんな感覚…

 

彼女はイタチが共に居てくれるという嬉しさで心が満たされていた

 

はやてはイタチににっこりと微笑んだまま、嬉しそうに彼の手を握った

 

 

「それじゃ、イタチさんは今日から私のお兄ちゃんやね! イタチお兄ちゃんやから…今度からイタ兄って呼ぶ事にするわ!」

 

 

そう言って彼女は握ったイタチの手を上下に元気良く振る

 

 

イタチが思っていたよりとんとん拍子に随分と展開が早い気がするが彼はこの際気にしない事にした

 

 

眼の前の彼女がこんな自分が共にいる事を喜んでくれるなら、それだけで充分だ

 

それより、妹か…

 

 

イタチはふと、義理の妹のフェイトの事を思い浮かべた

 

 

彼女は今も元気にしているだろうか?

 

 

食事や睡眠はちゃんととっているのか、学校やプレシアとは上手くいっているんだろうか…?

 

 

残して来た彼女の事が気がかりだ、心配し過ぎだとは思うが

 

 

イタチは自分の事を兄さんと呼ぶ、この少女を見ているとそんな不安が心の中に過ってしまったのだ

 

 

なにはともあれ、自分はまたこうして妹が増えてしまった、

 

 

弟一人に妹二人、よくもまぁこんなに沢山の兄妹が自分に出来たものだ

 

 

イタチはやれやれと言わんばかりため息を吐き、これから居候する事になったはやてを真っ直ぐに見つめ優しく微笑む

 

 

そして、彼女に改めて自分を留まらせてくれた事に感謝する様にこう告げた

 

 

「…では、今日からよろしく頼む、はやて」

 

 

「こちらこそよろしくな!イタ兄!」

 

 

そうして、彼女とイタチは一つ屋根の下で日々を共に過ごすこととなった

 

 

だが、イタチは一つだけ腑に落ちない事がこの時一つだけあった

 

 

それは、彼女が自分を呼ぶ時ににつけたあだ名の事である

 

 

なんだろう、イタ兄と聞くと何か人間的に痛い人(例、全身緑タイツの熱血師弟等)の様に聞こえるのは気のせいだろうか?

 

 

イタチはそのことだけが頭の奥底で引っかかっていた

 

 

まぁ、大して気にする程のものでもないとは思うが、

 

最悪…あの人達と同列な扱い方をされるのだけは勿論、御免蒙る

 

 

彼はそんなどうでも良さげな事を心の内に秘めながらも、はやてと握手を交わした

 

 

夜天の少女と月読みを持つ忍

 

 

彼らはこうして共に出会い、忍は再び宿命への道を歩み始める

 

 

 

忍に待ち受けるのは血に塗れたの運命か…

 

 

それとも、彼が全て背負う罪が許された事により、訪れる幸せか…

 

 

それは、まだ誰にも分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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