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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第49話

葉月さん

おまたせしました。
第49話投稿です。

そして、最後に久々の拠点投票がありますので、読んでみたい武将に投票してみてください。

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2012-10-21 01:40:18 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:7013   閲覧ユーザー数:5453

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第49話

 

 

 

 

【娘を思う母の決意】

 

 

 

《黄忠視点》

 

「あれれ?攻撃が止んできたからって安心しててもいいのかな?」

 

「っ!?」

 

安心したその瞬間、(わたくし)の背後から声が聞こえ、背中に刃物らしきものを当てられた。

 

「……」

 

一瞬にして喉の奥が乾く、この(わたくし)が背後から近づくのに気が付かないなんて、相当の手練のようですね。

 

「黄忠様!」

 

「おやめなさい!あなたでは敵わないわ」

 

「し、しかし!」

 

武器を構え(わたくし)を助けようとする兵を止める。

 

「ふ~ん。それくらいは分かるんだ」

 

「これでもここの守りを任されていますからね」

 

今、(わたくし)の得物は手元にない。一体どうすれば……

 

「しかし、一体どこから進入したのですか?守りは完璧だったはずです」

 

「苦労したよ~、兵に見つからないように進入するのに。まっ!一瞬の隙を突いてね♪」

 

「そうですか……それで、(わたくし)をどうするおつもりなのですか?このまま(わたくし)の首級でもおとりになりますか?」

 

「……あ~、別に背後からグサッ!とか、ブスッ!とかするつもりはないから安心してね。そんなことすると一刀君が悲しむから」

 

「っ!?い、今なんと?」

 

思いもよらぬ人の名前に(わたくし)は聞き返していた。

 

「ん?一刀君が悲しむから殺したりはしないっていったんだけど。大人しくしてくれるなら、背中に当ててるのどけるどけ」

 

「わかりました。あなたもいいですね」

 

「わ、わかりました……」

 

相手の条件に同意し、近くに居た兵にも武器を下ろすように伝えた。

 

「うん。それじゃ、いいよ」

 

(わたくし)はゆっくりと後ろに振り返る。そこに立っていたのは肩にかかるかかからないかくらいの綺麗な赤髪の少女でした。

 

「あ、あなたは一刀様の家臣なのですか?」

 

「違う違う。そうだったらどんなに嬉しいか」

 

「違うのですか?」

 

「ん~、まあ、今は家臣みたいなものかな」

 

家臣みたい……客将と言うことでしょうか。と言う事は、別にこの方の主が居ると言うことですね。

 

「それで、危険を冒してまで何をしに来たのですか?」

 

「ちょっとね、一刀君が心を痛めてるって云うあなたに会いに来たの」

 

「一刀様が……?」

 

敵である(わたくし)に心を痛めているだなんて……お人が良すぎですわ。

 

「ホント、優しすぎるよね、一刀君は。まあ、そこが良い所でもあるんだけどね♪」

 

少女はどこか自分の事のように嬉しそうに一刀様の事を話していました。

 

きっと、この方も一刀様の優しさや雰囲気に引き付けられたのでしょう。

 

「それで、(わたくし)に何か御用があるのではないのですか?」

 

「うん。御用って言うより、提案」

 

「提案、ですか?」

 

「そ、提案!」

 

(わたくし)たちよりも有利な状況で提案?このまま攻め続ければこちらが負けると言うのに……

 

笑顔で話す彼女に(わたくし)は警戒を強めました。

 

「悪い提案じゃないと思うよ、お互いね」

 

「敵であるあなたを信じろと?」

 

「そう言われちゃうと、言い返せないな~。だって、敵である私の出したものなんて信じられないでしょ?」

 

彼女は苦笑いを浮かべて頬を掻く。

 

「でも、あなただって、これ以上被害を出したくはないんじゃない?」

 

「それは……」

 

確かに、後ろ盾のない(わたくし)たちには今回の戦いは負け戦でしかない。

 

しかし、兵たちはそれでも民たちを守ろうと命をなげうって戦ってくれている。

 

「まあ、話だけでも聞いてみてよ。私が帰った後、それについて考えればいいからさ」

 

「確認しますが、これはお互い利がある提案なのですね」

 

「うん」

 

「……わかりました。お話だけでもお聞きしましょう」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

少女は(わたくし)が頷いたことに嬉しそうにしていた。

 

そして、少女は(わたくし)に提案の内容を告げ、劉備軍へと戻って行きました。

 

《愛紗視点》

 

「なに!?優未殿が単独行動を!?」

 

「は、はい」

 

私の驚きの声にすまなそうに頷く朱里。

 

「星、これはどういうことだ!」

 

「ん?ちょっと野暮用と言ってどこかへ行ってしまった」

 

「なぜ止めなかった!」

 

「止める理由がない」

 

「あるだろうが!」

 

「まあまあ、愛紗。落ち着いて」

 

私の怒りの声にご主人様は怒りを抑えるようになだめて来た。

 

「しかしですね、ご主人様」

 

私がご主人様へ話し出そうとしたその時だった。

 

「一刀君、たっだいま~♪」

 

「ゆ、優未!」

 

手を振り笑顔で戻ってきた優未殿はそのままご主人様の腕へ抱きついた。

 

「優未殿!」

 

「はへ?どうしたの、愛紗。そんな怖い顔して」

 

「どうしたの、ではありません!今までどこに居たのですか!」

 

「どこって……あそこ」

 

「なっ!?」

 

優未殿の指を差す方向に私は唖然とした。

 

「何を考えておいでか!戦っている最中の敵城に忍び込むなど!」

 

「え~、別に良いじゃんよ~」

 

「よくない!そうですよね、ご主人様!」

 

「え?あ、うん。そうだね」

 

「ご主人様!そんな曖昧な返事では示しがつきません!」

 

「もー、愛紗って冥琳と同じくらい硬いな~。別に良いじゃん、こうして無事にここにいるんだから」

 

ご主人様の曖昧な返事に注意をすると優未殿が口を尖らせて文句を言ってきた。

 

「そう言う問題ではない。いくら呉の将だとしても今は我々の客将なのだ、勝手に行動されては困る」

 

「あー!あー!き~こ~え~な~い~~~!」

 

「なっ!」

 

優未殿は耳を押さえ大きな声で私の声を掻き消した。

 

「~~~っ!ご主人様!」

 

「まあまあ、あとで俺から言っておくから、ここは抑えて、ね?」

 

「……本当ですね?」

 

「あ、ああ……」

 

苦笑いを浮かべながら頷く、ご主人様。

 

はぁ……この調子ではきっと優未殿には強く言っていただけないだろうな……

 

「わかりました。この件はご主人様にお任せします」

 

「えへへ~♪ありがとうね、一刀君♪」

 

「っ!ゆ、優未殿……戦況報告中だ。私語は謹んで欲しいのだが……」

 

「私、固っ苦しいの嫌いなんだよね~」

 

「ゆ、優未。今は大人しくしておこう、ね?」

 

ご主人様は私が我慢をしているのが分かったのか、優未殿を説得していた。

 

「ん~、一刀君がそう言うなら我慢するね」

 

……ご主人様の言うことならすんなりと聞くのだな……

 

優未殿の態度に拳を強く握り締める。

 

「愛紗ちゃん、私も同じ気持ちだよ!」

 

「桃香様……」

 

私の考えていることが分かったのか突然、桃香様は私の手を取り同意してきた。

 

「あとで、ご主人様の天幕に行こうね」

 

「と、桃香様!?」

 

誰にも聞こえないように桃香様は私の耳元で話しかけてきた。

 

「ん?どうしたんだ二人とも」

 

「んふふ~♪何でもないよ、。ね、愛紗ちゃん」

 

「は、はい!ほ、報告を続けましょう!」

 

「う、うん。それじゃ、続けようか」

 

ご主人様は私の態度に不審に思って居るようだったが、会議を再開させた。

 

「えへへ……慌てる愛紗ちゃん、可愛い♪」

 

桃香様はニコニコと微笑みながら私を見ていた。

 

まったく……こんな時に何を言っているのだ……ご主人様の天幕へ夜に行くなど……よ、夜!?

 

「はう!?」

 

「ん?愛紗、どうかしたのか?」

 

「へ!?い、いえ!な、なんでもありません!よ、夜になんて考えていません!」

 

「夜?」

 

「~~~~っ!?な、なんでもありません!話を続けてください!」

 

「は、はいぃ!」

 

私の怒鳴り声に背筋を伸ばして返事をするご主人様。、

 

うぅ……顔が熱い……なんて恥ずかしい事を……これではしばらくご主人様の顔を真面に見られないぞ。

 

自分で墓穴を掘り、顔を赤くする。

 

このあと、私は心ここに在らずな状態になり、戦況報告の内容を全く覚えていなかった。

 

はぁ……穴があったら入りたい……

 

《桃香視点》

 

「あ、愛紗ちゃん、元気出して」

 

「桃香様……私は……もう駄目です」

 

愛紗ちゃんは天幕の柱に手を添えて肩を落としていた。

 

「だ、大丈夫だよ!ご主人様、気が付いてなかったみたいだし!」

 

落ち込む愛紗ちゃんをなんとか元気付ける。

 

「良いのです……私なんかを慰めなくても……」

 

「そんなことないよ!愛紗ちゃんは大事な仲間なんだから!愛紗ちゃんが悲しい時は慰めるし、つらい時は応援するよ!」

 

「はぁ~~」

 

ああ、これは相当落ち込んでる愛紗ちゃんだ……ここまで落ち込んでると中々戻らないんだよね……

 

「げ、元気出して、愛紗ちゃん」

 

なんとか元気付けようとするけど、一向に愛紗ちゃんは元気になる様子が無かった。

 

やっぱり愛紗ちゃんを元気付けるにはご主人様が一番なんだけど……

 

「愛紗、いるかい?」

 

その時だった。天幕の外からご主人様の声が聞こえてきた。

 

「ご、ご主人様!?……っ!」

 

「あ、愛紗ちゃん!」

 

愛紗ちゃんはご主人様の声が聞こえたと同時に簡易寝具に飛び込み、頭からすっぽりとかぶってしまった。

 

「入るぞ……あ、桃香も居たんだね」

 

「あ、はい。それで、どうかしたんですか、ご主人様?」

 

「うん、ちょっとね……なんだか報告の時、愛紗の様子がおかしかったからさ。具合でも悪いのかなって思って……それで、愛紗は?」

 

「えっと、愛紗ちゃんは……」

 

私は何も言わずに膨らんでいる簡易寝具の方へ視線を向けた。

 

「愛紗、具合でも悪いのか?」

 

「っ!い、いえ……なんでもありません、お気づかいは無用です」

 

「そうは言っても……」

 

ご主人様は隠れる愛紗ちゃんを心配そうに見ていた。

 

「とにかく顔だけでも見せてくれないかな?」

 

(ぶんぶんぶんっ!)

 

愛紗ちゃんはご主人様のお願いに全力で首を振ってるみたいだった。

 

「……と、桃香~」

 

「えぇえ?!そ、そこで私に振られても……」

 

困り果てたご主人様は私に助けを求めてきた。

 

う、う~ん……どうしよう……っ!そうだ!良い事思いついた!

 

「ん?な、なに?」

 

私はあることを閃いて、ご主人様を見た。

 

「あのね、ご主人様。実は愛紗ちゃん、すっごく重たい病気にかかってるの」

 

「な、なんだって!?ど、どうして教えてくれなかったんだ、愛紗!」

 

「あ、いえ。別に病気というわっ」

 

「そうなの!しかも治せる人がたった一人しかいない、すごく珍しい病気なの」

 

愛紗ちゃんの言葉を遮って話を続ける。

 

「そ、それで!このまま放置するとどうなるんだ!」

 

「え?あ、うん。うんっとね~……あっ!そうそう!死んじゃうんだよ!」

 

鬼気迫るご主人様の態度に私は嘘と言えなくなり、さらに嘘を上塗りした。

 

「な、なんだって!?ど、どうして早く言わなかったんだ!」

 

「い、いえ、だから。私はっ」

 

「と、兎に角、治療しないと!それで、治せる人ってどこに居るんだ!」

 

ご主人様は私の言ったことを信じてすごく慌てていた。

 

ちょっと大事になっちゃってるけど、いいな~愛紗ちゃん。こんなにご主人様に心配されて……私の時もこんなに心配してくれるのかな?

 

「……愛紗ちゃんが治るならご主人様は何でもしますか?」

 

「もちろん!」

 

ご主人様は考える間もなく頷きました。

 

「なら……」

 

「へ?」

 

私は愛紗ちゃんが隠れる寝具の方へご主人様の背中を押してた。

 

「それじゃ……愛紗ちゃんを可愛がってあげてくださいね、ご主人様」

 

私は笑顔でご主人様に告げた。

 

「えっ……ど、どういうこと?」

 

「で、ですから、私は病気などではないのです」

 

困惑するご主人様に愛紗ちゃんはモゾモゾ隠れながら説明していた。

 

「そ、そうなの?」

 

「はい。先ほどから何度もお伝えしようとしていましたが、すべて無視されていました」

 

「……あっ」

 

愛紗ちゃんの説明に心当たりがあったのかご主人様は小さく声を上げた。

 

「でも、それじゃ、なんで隠れてるんだ?」

 

「そ、それは……」

 

「ご主人様、何でもするって言いましたよね?」

 

「い、言ったけど……」

 

「約束は守ってくださいね♪」

 

「で、でも……」

 

「守ってくださいね♪」

 

「……はい」

 

笑顔でご主人様に迫ると、快く頷いてくれた。

 

「それじゃ、あとはよろしくね、ご主人様」

 

「と、桃香様!?お待ちください!」

 

「愛紗ちゃん、頑張ってね!」

 

私は両手を胸の前で握り締め愛紗ちゃんに向かって勇気づけた。

 

「それじゃ、あとはよろしくね、ご主人様」

 

「お、お待ちください、桃香さっ、あう!」

 

「あ、愛紗、大丈夫か?」

 

天幕から出ると同時に後ろから私を呼び止める愛紗ちゃんの声の後になにか落ちる音が聞こえ、ご主人様が愛紗ちゃんを心配する声が聞こえてきた。

 

「もう、愛紗ちゃんたら、慌てん坊さんなんだから」

 

私は思わず微笑んじゃいました。

 

「おや、桃香様。随分とご機嫌ですな」

 

「あ、星ちゃん!うん、まあね」

 

自分の天幕へ戻る途中、夜回りをしていた星ちゃんと出会った。

 

「なにかございましたかな?」

 

「ちょっとね、愛紗ちゃんの天幕にご主人様を置いてきたの♪」

 

「なるほど、(いくさ)中は兵などに指示を出すことで忘れていたようだが、その前は凄い落ち込み様でしたから」

 

「うん。まあ、自業自得だったんだけどね、すごく落ち込んでるから」

 

「愛紗はご主人様にご執心ですからな」

 

「それは私もだよ」

 

「はっはっは。桃香様は言いたいことを素直に言いますからな。それにひきかえ、愛紗は内に秘める傾向がありますからな」

 

「そうなんだよね~。愛紗ちゃんももう少し自分の気持ちに素直になればいいのにね」

 

「おや、よろしいのですか?愛紗が言いたいことを言うようになると、おそらくは主を独り占めし始めますぞ?」

 

「それは困っちゃうけど……でも、愛紗ちゃんが少しでも素直になって欲しいのは本当の事だし」

 

星ちゃんの意地悪な質問に逃げ笑いを浮かべる。

 

「まあ、主の事を好きな者は皆、独り占めしたいと思っているでしょうが」

 

「星ちゃんも?」

 

「どうでしょうな」

 

私の質問に星ちゃんは含みを持たせて微笑むだけだった。

 

「さあ、桃香様。月も大分上ってきました、明日も激戦が予想されます。体力を回復するためにお早目に天幕でお休みください」

 

「うん、そうだね。あっ、星ちゃんもあんまり無理しないで早く休んでね」

 

「承知しました。ではもう少し見回りをしたら休むと致しましょう」

 

「うん。明日も宜しくね、星ちゃん」

 

「はっ」

 

私は星ちゃんと別れた。

 

「……明日でこの戦い、終わってくれるかな……」

 

そして、一人になった私は夜空を見上げてそんなことを呟いていた。

 

《黄忠視点》

 

「……」

 

(わたくし)は部屋の窓から夜空を見上げていました。

 

「あの言葉を信じても良いのでしょうか……」

 

ぽつりと呟くがその答えに答えてくれるものはこの部屋には誰も居ませんでした。

 

それは夕刻前、砦に忍び込んできた劉備軍の将の事でした。

 

……

 

…………

 

………………

 

「……わかりました。お話だけでもお聞きしましょう」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

少女は(わたくし)が話を聞いてくれると分かり、嬉しそうにしていました。

 

「それで、提案とはなんでしょうか?」

 

「うん。あなた……えっと、黄忠、でいいんだよね?」

 

「ええ」

 

「黄忠はこれ以上、兵を犠牲にしたくないんだよね」

 

「そうですね」

 

「それは一刀君も同じなんだよね。一刀君は優しいからさ、敵でも見方でも人が死ぬのは見たくないんだって」

 

「甘いお考えなのですね……」

 

心にも無いことを言ってしまい、少し後悔をしてしまった。

 

「あっ、やっぱりそう思う?私もそう思うよ」

 

そんな中、彼女は(わたくし)の言ったことに同意していました。

 

「でも、そこが一刀君の良い所だと私は思うんだよね。今時、そんな考えの人って早々居ないでしょ?」

 

確かに、一刀様の様な考えを持っているお方は殆ど居ないでしょう。

 

それは益州の王、劉璋を見れば明らか……自分の事しか考えず、民に重税を()いている。

 

そして、内乱で苦しんでいる民を救おうとしない。(わたくし)は彼以上に、民から嫌われている人は居ないと思っています。

 

「っと、話がそれちゃったね。それで、提案なんだけど……一騎打ちなんてどうかな?」

 

「一騎打ち、ですか……」

 

「そ!一騎打ちすれば、兵達は傷つかなくて済むでしょ?」

 

確かにこの不利な状況下で現状を打破するには一番の上策ではあります……ですが、これは大きな賭けでもあるのです。

 

勝てば、兵を減らさずに敵を退けることが出来る。ですが逆に負けてしまえば、いくら兵が居ようとも砦は占拠されてしまいます。

 

そして、当然負けてしまえば、(わたくし)の命の保証もありません。

 

それに、一騎打ちを提案してくると言うことはそれなりに自信がおありなのでしょう。

 

「そんないかにも『怪しい、何か裏があるかもしれない!』見たいな顔しないで欲しいな。ちょっと傷ついちゃうな~」

 

「あらあら、それは申し分かりません。ですが敵将である者から提案を出されれば、誰しも疑うものではないかしら?」

 

「あっ、それもそうだね」

 

惚けているのか、本当に忘れていたのか、少女は思い出したように納得をしていました。

 

「でも……そうだよね~。そう言われちゃうとこっちも対等な一騎打ちだって言えないなぁ。うむむ~」

 

少女は腕を組んで何かを考えているようでした。

 

「よし!なら、私の真名に懸けて誓っちゃおうかな!」

 

「ええ!?そ、そんな簡単に真名を懸けてよろしいのですか?」

 

あまりにもあっさりと言うので逆にこちらが戸惑ってしまいました。

 

「良くないよ?」

 

「で、でしたら……」

 

「信じてくれるにはこれしかないかなって思って」

 

「……」

 

屈託無く笑う少女に(わたくし)はなぜそこまでできるのかわかりませんでした。

 

「どうしてあなたはそこまでするのですか?」

 

「え?そりゃ、一刀君を悲しませたくないからね」

 

「では、なぜ悲しませたくないのですか?」

 

「え?う~ん……なんでだと思う?」

 

「い、いえ。そこで(わたくし) に振られても……(わたくし)が効いているのですから」

 

「ああ、そだよね。う~ん……なんでだろう」

 

少女はまた腕を組んで悩み始めました。

 

「……あっ、そっか。私、一刀君の事が好きなのかも」

 

「は?」

 

「そっかそっか~。だから一刀君の事をこんなに気にかけてるんだな。うん、納得!うんうん♪」

 

「……」

 

ご自身で言ったことに納得し、得意げに何度も頷いていました。

 

「あ、それで、どうかな?提案に乗ってくれる?」

 

「……もう一度お伺いしますが、他意は無いのですね?」

 

「うん!だからそれを証明する為に真名を」

 

「いいえ。そこまでしていただかなくても信じましょう」

 

「えっ、そうなの?」

 

「はい。あなたが一刀様の為に本当に一生懸命になっているとわかりましたから」

 

「そっか!それじゃ、私はこれで戻るね。これ以上ここに居ると一刀君が心配すると思うし、それに何より、怒ると怖い愛紗が居るからね」

 

「ふふふ、あらあら」

 

少女は両手の人差し指を立てその手を耳に当て怖い顔をしてきました。

 

「それじゃぁね~♪よっと」

 

「なっ!?」

 

少女はそう言うと城壁の上に立ちそのまま飛び降りてしまいました。

 

「……あ、あら」

 

急ぎ城壁から身を乗り出し下を見ると少女は笑顔で手を振り、そのまま駆け出していきました。

 

「一体、どうやって着地したのかしら……」

 

元気良く駆けている少女を見て思わずつぶやいてしまった。

 

外を見つめながら彼女とのやり取りを思い出す。

 

確かに、彼女の言う提案を受ければ被害は最小限に防げるでしょう。

 

「うっ……ん~~」

 

「あらあら」

 

聞こえてきた声に振り向くと寝返りをして毛布から抜け出てしまった最愛の娘である璃々を見て微笑む。

 

「……(わたくし)が負けてしまえば璃々はどうなってしまうのでしょう」

 

毛布を掛け直しながら呟く。

 

(わたくし)の知る限りではあの方々が酷いことをするとは思えません。

 

「ですが、あれはもう随分と前の話……今でもあの方々がお会いした時のままとは限りません」

 

人は少なからず環境に影響されるものです。特に地位や権力を得た者達は欲に溺れる傾向にあります。

 

「あなた様はどうなのですか、一刀様……」

 

益州に来てから一刀様の活躍はあまり耳に入らなくなってきていました。

 

洛陽から遠いと言う理由もありますが、何より益州の治安が悪くここまで来る旅の商人が少ないのです。

 

「……えへへ、おにいちゃん……もっと、あそ、ぼ……すー、すー」

 

「璃々……」

 

お兄ちゃん……一人っ子である璃々が言うお兄ちゃんとは一人しか居ません。あの時、盗賊から助けてくれた一刀様ただ一人だけです。

 

「夢の中で一刀様と遊んでいるのね、璃々……」

 

頭を撫でながら眠る璃々に話しかける。

 

「……ふぅ、悩んでいても仕方ありませんわね。どのみち、彼女の提案を受けなければ兵や住人の安全を守れないのですから」

 

(わたくし)は立ち上がり、立てかけていた自分の得物である弓、颶鵬を手に取る。

 

「全ては明日……」

 

颶鵬を力強く握りしめ、窓際を照らす月を見上げた。

 

……

 

…………

 

………………

 

「良いですか、手出しは無用です」

 

「し、しかし……」

 

翌朝、(わたくし)は兵たちに一騎打ちを行う趣旨を伝えました。

 

「相手から提案してきた一騎打ちだと聞きました。これは罠です!お止め下さい、黄忠様!」

 

兵たちは行かせまいと門の前で(わたくし)を足止めしてきました。

 

「我々は黄忠様の為ならこの命、惜しくはありません!」

 

「それはいけません」

 

「なぜですっ!」

 

「あなた方にも家族がおいででしょう。残される者の悲しみを考えたことがありますか?」

 

「そ、それは……」

 

少し意地悪な質問だったかもしれません。なんせ、その戦場に立たしているのは(わたくし)なのですから。

 

「さあ、そろそろあちらが攻めてくる時間です。さあ、白旗を掲げてください」

 

「……」

 

「大丈夫ですよ。ただでやられるつもりはありませんから」

 

(わたくし)は兵たちを安心させるために微笑んだ。

 

「……わかりました。ですが、伏兵には十分お気を付け下さい」

 

「ええ、わかりました。後の事はお任せしますが……よろしいですか?」

 

「はい。お任せください」

 

「頼みましたよ……さあ、扉を開けて頂けますか?」

 

「はっ!」

 

(ギギギギギッ)

 

鈍い音を立てて門が開く。

 

そして人一人が通れるくらいの隙間を(わたくし)は通り抜ける。

 

「ご武運を……」

 

「ええ」

 

門を通り抜けると後ろから声を掛けられ振り返り笑顔で返事をした。

 

(ギギギギギッ)

 

そして、また鈍い音を立てて門は閉じ始めた。

 

「……さあ、行くとしましょう」

 

(わたくし)は砦から離れ、ある程度進んだところで立ち止まった。

 

振り返ると砦では城壁の上から大きく白旗が触れれていました。

 

「ありがとうございます、兵のみなさん」

 

ここからは(わたくし)が頑張る番ですね。

 

「……我の名は黄漢升!劉備軍の将に一騎打ちの決闘を申し付ける!」

 

(わたくし)は背筋を伸ばし、顔を上げ、お腹に力を入れて今出せる大きな声を出し、決闘を申し込んだ。

 

《To be continued...》

葉月「はい!という訳で!いよいよ本格的に出てきた黄忠さんでした!」

 

愛紗「……」

 

葉月「さてさて、次回はどんな展開になるんでしょうか。気になりますね、愛紗」

 

愛紗「……」

 

葉月「愛紗?」

 

愛紗「……えへ♪」

 

葉月「うわ、キモ!」

 

愛紗「っ!ご、ごほん!なにがキモ!っだ、失礼な!」

 

葉月「いや、だって。呆けていたと思ったらいきなり笑うんですもん」

 

愛紗「そ、それはだな……そ、そんな恥ずかしい事言える訳が無いではないか♪」

 

葉月「いっ!?!?!?そ、そんな力強く背中を叩かないでください!」

 

愛紗「あ、す、すまん。ついな」

 

葉月「ついで内臓破裂が起こりそうなほどの平手打ちを背中に当てないでくださいよ」

 

愛紗「内臓破裂なんて起こせるか。まあ、手形くらいは付きそうではあるが」

 

葉月「それでも十分な力ですよ……っと、話がそれましたが。ご機嫌斜めだった愛紗も一刀に愛されてご機嫌になったようで何よりです……え?にゃんにゃんシーンを書けと?それは無理!なんて言うか……誰でも読める場所であれを書くのは如何なものかと」

 

愛紗「すでに書いているくせに。今更怖気ついたのか?」

 

葉月「いやいやいや!確かに書きましたけど……か、書いた方が良いのかな?」

 

愛紗「知らん」

 

葉月「なんて投げやりな……ま、まあこの話はいずれ考えましょう。お気に入り限定とかにしても少しは規制できると思いますし……気休めですけどね」

 

愛紗「そんな事より、今日はあれをやるのだろ?これ以上、尺を使っても良いのか?」

 

葉月「ああ、そうでした!ではでは、お待ちかねの?『はわわ!?第四回、拠点争奪!人気投票!』~~~!ドンドンドン!パフパフ!」

 

愛紗「まったく。何話からやって居なかったと思っているのだ」

 

葉月「えっと……ああ、28話からやってないんですね。そっか~もう21話も前の話だったんですね。いや~、結構前ですね」

 

愛紗「そう、結構前なのだ……一年もな!」

 

葉月「そう言われても……白蓮が逃げ落ちて着たり、袁紹に攻め込まれたりで大変だったじゃないですか」

 

愛紗「そ、それはそうなのだが……しかしだな!」

 

葉月「はいはい。もっと一刀に愛されたいと思う愛紗の気持ちも今から行う投票で実現しますから」

 

愛紗「なっ!べ、別に私はご主人様からご寵愛を頂こうなどと!」

 

葉月「だれも、そんなことまで言ってないですよ」

 

愛紗「なっ!?あ、あああぁぁぁあああああっ~~~~~~!」

 

葉月「一人悶絶している愛紗は放っておいて、投票参加者の紹介と意気込みでーーーす!」

 

 

『はわわ!?第四回、拠点争奪!人気投票参加者』

 

1.桃香「わわわっ!久しぶりだからなんだか緊張しちゃうよ!えっと、みなさんよろしくお願いします!」

 

2.愛紗「あ、あぁぁああ!こ、公共の場で私はなんてことを……はっ!ご、ごほん!み、みなの一票をきたっ」

 

3.鈴々「うにゃーーー!今度こそ鈴々が一番なのだーーーー!」

 

4.朱里「はぅ~、また参加者が増えちゃったよ……そ、それでも!が、がんばりましゅ!……はぅ~」

 

5.雛里「あ、あの……その……票を入れてくれないと……え?一年前にも同じこと言った?……あわわ、恥ずかしいでしゅ」

 

6.星「ふっふっふ、久々だな華蝶を愛する者どもよ!私に一票入れた暁にはまた華蝶仮面の活躍が見れるかもしれないぞ!」

 

7.雪華「ふぇ~……やっぱり、緊張しちゃいます……その……もし宜しければ一票入れてください。お願いしま(ごんっ!)ふえ!つ、机に頭ぶつけちゃったよぉ」

 

8.月「がんばってご主人様にご奉仕しちゃいます!」

 

9.詠「ふん!良い?ボクは負けるのが大っっ嫌いなの。どんなことでもね!だからボクに票を入れなさい。わかった?!」

 

10.白蓮「な、なんだかてれるな……ごほん。皆の清き一票に期待するぞ……ふ、普通って言うな!」

 

11.恋「…………………………票入れて。そうしたら、恋嬉しい」

 

12.音々音「ふん!別に票なんか興味は無いのです。ネネは恋殿と一緒に居られればそれだけで幸せなのです!」

 

13.翠「はえ!?も、もう(あたし)の番なのか!?うぅ~、何も考えてなかったぜ……と、兎に角!みんなの一票待ってるぜ!」

 

14.蒲公英「やほ~!蒲公英だよ!蒲公英にみんなの一票入れてくれたら良いことしてあげるね!え?良い事って何かって?それはまだひ・み・つ♪」

 

15.菫「あらあら、(わたくし)の様な者も出していただけるのですね。では、よろしければ、皆様の大切な一票を入れて頂けると嬉しいです」

 

16.美羽「なんじゃ?ここで何を話せば良いのかえ?面倒なのじゃ、七乃!あとは頼んだぞ!妾は蜂蜜水を飲んでおるのじゃ!」

 

17.七乃「ああん!趣旨を理解していない美羽お嬢様。なんて可愛らしいのでしょう!これは永久保存級ですね!ああ、票は適当にお嬢様に入れておいてくださいね~♪」

 

18.優未「おお?私にも枠があるんだ!無いと思ってたから正直嬉しいな!それじゃ、みんなの一票待ってるよ!」

 

19.?「いっぱい、い~っぱい。ひよ……ひょ、うをいれてね!おかあさん、いえたよ!」「はい。偉いわね」「えへへ~♪」

 

 

葉月「とまあ、凄い大所帯になってきていますがもちろん。この中で拠点を得られるのは上位五名までです!これは決まりです!」

 

愛紗「前回からの結果を見る限り、上位は殆ど決まっている気がするのだが……」

 

葉月「さあ、どうでしょうね。何気に美羽とか人気があるんですよ。だから、まさかの大番狂わせが!」

 

愛紗「むむむ……そんな強敵が」

 

葉月「さて、投票のルールですが、いつもの代わり在りませんが初めての方が居るかもしれませんので説明させてもらいます」

 

投票参加説明

 

1.参加者は一人五票を所持

 

2.参加者は見たい拠点の武将の番号をコメントに書き込む

 

3.票の振り分けは自由(例:1.桃香に5票。2.愛紗に2票、4.朱里に1票、5.雛里に1票、7.雪華に1票。など...)

 

4.集計をしやすくする為に、[番号.名前]で書き込んでいただけると助かります。

 

葉月「こんな感じですね。さてさて、今回は誰が拠点の座を得られるのか!締め切りは次回投票までです」

 

愛紗「皆の投票を待っているぞ」

 

葉月「さて、今日はこの辺でお開きといたしましょう。では、みなさん。また次回お会いしましょう!」

 

愛紗「さらばだ!」


 
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