No.496858

真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第56話

海皇さん

 この拙作をご覧いただいている皆さま、長らくお待たせして申し訳ありませんでした!!
 今回約二カ月ぶりの投稿となり、誠に深くお詫び申し上げます。
 今回ようやく56話、揚州攻略編の最終決戦といったところです。

 では、どうかお楽しみください。

2012-10-16 18:09:52 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2890   閲覧ユーザー数:2411

 

 奇襲から三日、今のところ劉繇軍からの襲撃は無く、順調に進軍は進んでいる。

斥候からの報告にも、劉繇軍の兵がいたというものは無く、恐らく劉繇軍は奇襲戦法を止めて総力戦を挑むつもりなのだろうと冥琳達は推測している。やはり敵も消耗が激しいのだろう。

 そして、進軍の途中で祭さん達の補給部隊が近付いてきているとの知らせが入ったため、現在俺達は祭さん達の到着を待ちながら小休止をしている。

 

 「やれやれ、本当に長い戦いだったわね」

 

 雪蓮は地面に座り込んで大きく息を吐いた。

 

 「雪蓮、だったってまだ終わってないだろ」

 

 「ん~・・・、確かにまだ終わってないけど、まだ最終兵器その二も使ってないし、祭達も合流するし、負ける要素なんてないんじゃない?」

 

 「だからって、戦場は何が起こるか分からないんだから、もう少し緊張感持とうよ・・・」

 

 雪蓮ののんきな態度に俺は溜息を吐く。確かにまだ焙烙玉には余裕がある。そして第二の新兵器もお披露目はしていない。だが、そもそも第二の新兵器は攻城戦で真の力を発揮するものだ。無論平地戦でも十分その力は発揮できるが、あまり過信は出来ない。

 

 「まあそうなんだけどね。でも冥琳も劉繇が奇襲してこないところを見ると、敵も相当ボロボロなんじゃないかって予想してたし、こっちも疲弊してるけど祭達の援軍と兵糧の補給もあるから勝機はこっちにあるんじゃないの」

 

 「確かに戦の流れはこちら側にありますが、それでもその流れが変わらない、という保証は無いのです。下手をしたらまたあの正体不明の軍勢に襲われかねません。決して油断の出来る状況ではありませんよ、雪蓮」

 

「む・・・・、まあそうだけど、ね・・・」

 

 愛紗の言葉に雪蓮も眉をひそめて口ごもった。

いくらのんきで楽天家の雪蓮といえど、あの正体不明の軍勢についてはさすがに頭を痛めているらしい。

  正直今でもあの黒い軍勢『八咫烏』について、俺達は何も把握できていない。

自分達の兵糧が襲われていたのを助けてくれたから、味方ではないにしても敵ではないと思っていたら突然自分達に牙をむいてきたのだ。

劉繇軍の味方でもない、かといって自分達に味方をするわけでもない。

どちらかが優位になったら優位な方に攻撃を仕掛け、不利な方に味方をする・・。

 

 「・・・まったく、烏というよりコウモリだな」

 

 「ですね・・・」

 

 俺の言葉に愛紗が苦々しげな表情で返事を返す。

どちらの味方もせずにあっちへふらふらこっちへふらふらとしている様子はイソップ童話に出てきたコウモリのようで俺自身あまりいいイメージが無い。

 

そして、その連中を操っている自称「天の御使い」についても謎のままだ。

 

俺と同じ世界からの来訪者なのか、もしくはただ騙っているだけの偽物なのか・・・。

 

もし本物なら一体どこの陣営で、何をしているのか・・・。

 

全くと言っていいほど見当がつかない。

 

 「でも一刀以外の天の御使いね・・・、正直言って私も初耳だったわ」

 

 「私もです。てっきり私とご主人様以外にはこの世界に来た人間は居ないと思っていました」

 

 「でも本物かどうか分からないじゃない。あの連中のはったりって可能性もあるわよ。実際他の勢力や朝廷にも間諜送って主だった将や軍師について調べてるけど、天の御使いらしい人間は居ないみたいよ?」

 

 「それはそうですが・・・」

 

 雪蓮と愛紗はしきりに例の軍勢の言っていた『天の御使い』について議論を繰り返していた。

 確かに、俺と愛紗以外に『天の御使い』が居るとするのなら、孫呉の『天に選ばれた軍』という箔もかなり危うくなる。何しろもう一人、さらにあの黒装束の言う通りだとするなら俺達より以前からこの世界に降臨しているのだ。

 

 (下手をすれば自分が正統だとか言いだしてくるかもしれないし・・・、だけど・・・)

 

 この世界に俺達よりも先に来ていたのなら何故自分が天の御使いと名乗らなかったのか。

 まだ予言も流れていなかった時期だからそんなことを言っても詐欺師と思われるのが落ちだと思ったのか、それとも・・・。

 

 

 「・・・ご主人様!!ご主人様!!聞こえておいでですか!?」

 

 「・・・へ?あ、ああ愛紗、ごめん。なんだっけ?」

 

 耳元で愛紗の声が響いたために俺が横を向くと、そこには心配そうな表情の愛紗と雪蓮がこちらを見ていた。

 

 「何って、伝令から祭達が到着したって報告がきたから出迎えに行こうってはなしてたのよ?それで関平があなたに一緒に行くかって尋ねたんだけどあなたがボーってしてたから・・・」

 

 「ご主人様・・・、一体どうなされたのですか?何処か体がお悪いのでは・・・」

 

 「ああ、いや大丈夫だよ。ちょっと気になったことがあって考え事をしていただけだから」

 

 俺の返事に愛紗と雪蓮は訝しげな表情をしていたが、本当にそうなんだから仕方がない。

 

 「・・・そ、まあ何を考えてたか気になるけど、今は祭達を迎えに行きましょ」 

 

 「ああ、心配させてすまない、雪蓮」

 

 「私のことよりあなた自身のことを心配しなさいよ・・・」

 

 雪蓮は呆れたと言いたげな声で祭さん達の処に向かった。

 

 「ご主人様、雪蓮の言う通りでございます。少しはご自身をご自愛くださいませ」

 

 「いや、だから俺はただ考え事をしてただけで何処も悪くないって・・・」

 

 「ではいったい何を考えていらっしゃったかお教え下されてもよろしいではありませんか!!私とご主人様はこ、ここ、恋人同士ではなかったのですか!?」

 

 愛紗は顔を耳まで真っ赤にしながら俺を問い詰めてくる。恋人って自分で言ったことが恥ずかしかったんだろう。そういうところがまた可愛いんだが、まあそれはこれ以上言わないでおこう。

 

 「分かった分かった、言う、言うから愛紗、落ち着いて」

 

 「私は落ち着いています!!」

 

 いや、全然落ち着いて居ないでしょ、と突っ込みたくなったが、これ以上ややこしくしないために口を閉じた。

 

 「例の連中の言っている天の御使い・・・、まあ仮に天の御使いだとしよう。そいつが何で今の今まで目立たなかったのか、っていうのが気になってね」

 

 「目立たなかった、ですか・・・?」

 

 「ああ。自分が天の御使いだっていうんなら、そう触れ回るなりなんなりして独自に勢力を作ることもできたはずだ。少なくとも自分が天の御使いだって言うんなら、予言が囁かれ始めたころからでもそうしてもおかしくなかったはずだ。なのに何故そうせず今になって天の御使いを名乗りだしたんだ?」

 

 「・・・それは、やはり偽物だからなのでは?」

 

 「偽物ならなおさら予言が世の中に出回った時に名乗るべきだろう。今になって名乗っても精々偽物扱いされるのが関の山だ」

 

 俺の反論に愛紗も沈黙して考え込む。

 

 「・・・それに、これは俺が雪蓮達に話していないことなんだけど・・・」

 

 「・・・!!」

 

 俺の言葉に愛紗は表情を強張らせて俺を見る。俺はそんな愛紗を横目で見ると再び口を開く。

 

 「俺が雪蓮を庇って意識を失っていた時、夢の中で声が聞こえたんだ」

 

 「声、ですか・・・」

 

 「ああ、『正史から降り立った者は、お前だけではない』ってな」

 

 「なっ!?」

 

 俺の言葉に愛紗は驚愕の声をあげた。それはそうだろう。他ならない俺自身が「俺達以外に天の御使いがいる」と言ったんだから。

 

 「まああくまで夢の中での言葉だから何処まで本当かは分からないけどさ。でも可能性としては考えておいた方がいい」

 

 「・・・はい」

 

 愛紗は険しい表情のまま返事をする。俺はそれを聞くと雪蓮が歩いて行った方向に向かって足を進める。そして、愛紗は俺の後ろからつかず離れずについてくる。

 

 祭さん達に再会するまで、俺達は一言も口を開かなかった。

 

  

 劉繇side

 

 「現在の孫呉の状況は?」

 

 その頃劉繇軍は、会稽前の荒野において孫呉軍を迎え撃つ準備を行っていた。

その劉繇軍本陣において、劉繇は王朗に対して孫呉の状況を聞いていた。まだ孫呉に潜ませた密偵は何名か残っている。妨害がなければ既に王朗に伝わっているころだ。

 

 「・・・・黄蓋、程普率いる部隊と合流。兵糧と兵の補充をした様子」

 

 「・・・っち。やっぱり奇襲掛けて妨害しておくべきだったか」

 

 王朗の返答に劉繇は顔を歪めて舌打ちする。

兵糧と兵力を回復されたのはまずかった。たび重なる奇襲による損害を一気に無に帰されるようなことなど歓迎できるはずがない。

 

 「・・・こんなことなら多少無茶でも伏兵で奇襲加えておくべきだったかね・・・」

 

 「無茶言っちゃだめよ~。私達の軍にはもう割ける兵力そんなにないのよ~?」

 

 「・・・・終わったことはしょうがない。まだ策は残ってる。大丈夫」

 

 「・・・・ならいいんだがな」

 

 劉繇は厳白虎と王朗の言葉を聞きながら深く息を吐いた。

本来ならすでに敵を殲滅出来ているはずが、何故ここまで自分達の策が裏目に出ている?

自分の陣地に引き込み、補給線を絶ち、連中が弱ったところを叩きつぶす。これだけで孫呉軍は壊滅、その後連中の領土になだれ込む手筈のはずが完全に予定が狂っている。

 

 (連中の参謀が俺達より優秀なのか、それとも・・・・)

 

 王朗は優秀な参謀だ、それは自分も厳白虎も太史慈も認めている。

だが、孫呉には周喩、陸遜と参謀の数はこちらより上、だが国内防備もせねばならないであろうから軍師や将もそれなりに本国に留まらせているはずだ。だからそこまで数の有利は存在しないはず。

 ならば原因はやはり・・・。

 

 (・・・・あの黒鎧共か・・・)

 

 劉繇はその姿を思い出してギリリと歯軋りをした。

実を言うと劉繇軍は、今まで行ってきた奇襲、急襲攻撃以外にも孫呉に対する策は幾つか用意していた。しかし、其の事如くが実行前に何者かによって潰され、実行することが出来なかった。これらが実行されていれば、自領に潜入してきた孫呉など直ぐにでも殲滅できたはず、わざわざこんな自軍の本拠の目の前で待ち構えることなどなかったのである。

 作戦実行班の兵の生き残りに、何者に妨害されたか質問をしたところ、「黒い鎧の軍勢にやられた」と言っていた。最初は何なのか分からなかったが、今でははっきりと分かる。あの黒鎧の軍勢によって妨害されたのだということが。

 あの兵糧襲撃作戦の時もそうだ。あの時妨害を受けなければ兵糧全てを一掃出来て孫呉軍を干上がらせることも出来たというのに・・・。

 

 (・・・んで俺達が不利になったら恩着せがましく助けてやった、だと・・・?気に入らねえ・・・・)

 

 劉繇は親指の爪を噛みながら憎々しげな表情を浮かべる。

今の今まで邪魔をしてきたと思ったら自軍が危機になった瞬間に助けにくるなど恩着せがましいにもほどがある。連中には怒りを覚えこそすれ感謝の気持ちなど欠片もわかない。

 しかし、忌々しいが連中の助けがなかったら自分の命も無かったかもしれないのは事実、自分達はそれほどまでに追い込まれているのだ。

 孫呉を壊滅させるはずが自分達が壊滅の危機に追い込まれるとは・・・。劉繇の表情はみるみる暗くなってくる。自分達がここで滅びるかもしれないという考えが浮かび、彼の思考はどんどんネガティブな方向に向かっていく。

 

 「劉繇ちゃん、大丈夫?」

 

 暗い表情を浮かべる劉繇を厳白虎が心配そうに話しかける。その隣では王朗も口には出さないがいかにも心配そうな表情を浮かべている。そんな二人を見て劉繇は苦笑を浮かべた。

 

 「心配ねえ、厳白虎、お前の気味の悪い顔見てたら不安も何もかも吹っ飛んだ」

 

 「まっ!!失礼ねっ!!」

 

 「・・・元気そう、よかった」 

 

 劉繇の悪態に厳白虎はむっとした表情をしながらも何処か安心したような表情になっていた。その隣で王朗も、一見すると分かりにくいが、何処か安心したように微笑んでいた。

 

 「・・・っは、俺としたことが、弱音を吐くなんてらしくねえぜ・・・」

 

 劉繇の表情は、いつもの状態に戻っていた。

戦っていない状態から負けると決めるなど、何を考えているのだろうか。

まだ勝機はある。まだ終わってはいないのだ。

まだ逆転の手は残されているのだ。

 

 「劉繇様!!孫呉軍が此処から約一里の地点に現れました!!」

 

 と、突然劉繇の天幕に、太史慈が飛び込んできて焦った声で報告する。それを聞いた劉繇はにやりと不敵な笑みを浮かべ、立ち上がる。

 

 「ようやく来たか・・・。なら睦月!!直ぐに作戦を開始しろ!!これ以上連中のいいようにさせるな!!」

 

 「御意!!」

 

 劉繇の命を受けた太史慈は直ぐに天幕から飛び出していく。それを見届けた劉繇は、王朗、厳白虎に視線を移すと再び笑みを浮かべる。

 

 「勝つぞ、お前ら」

 

 劉繇の言葉を聞いた二人は、一度顔を見合わせるとコクリと頷き、

 

 「・・・・御意」「合点承知よん♪」

 

 しっかりした声で、そう返した。

 

 一刀side

 

 俺達は祭さん達に合流し、兵糧と兵を補充すると直ぐに会稽に向かって進撃を開始した。

兵力、兵糧共に補充され、兵達も十分に休息を取ったため、現在我が軍の士気は上々といったところだ。なお、この戦ももう終局ということで、兵糧運搬部隊も孫呉軍に加わることとなった。若干連携とかに不安が残るけど、祭さんと六花さんがいるから大丈夫だろう。

 ちなみに加わったのは祭さん、六花さんに霞と恋の四人である。

正史では呉の人々に泣く子も黙ると恐れられた張文遠と呉とは接点も特に無かった天下無双の豪傑呂奉先の二人の英傑が加わっている時点で負ける気がしない。

 

 「・・・しっかしウチ等が居ない間随分手酷くやられたみたいやな~。そんなに強かったん?劉繇軍は」

 

 「強いというより狡猾と言った方が正しいな。奇襲やら兵糧強奪やらとまともに正面から戦ってくることは殆ど無かったからやりにくいことこの上なかったぞ・・・」

 

 「成程のう。確かにわし等の兵糧を分捕りに来た時も何とも厄介な奇襲攻撃を仕掛けてきたしの。あの時恋達の援護がなければ兵糧は全滅してたやもしれん」

 

 行軍の最中、乗馬した状態の霞、祭さんが華雄と話をしている。どうやら、自分達がいない間、孫呉と反孫呉連合との戦について聞いているらしい。敵軍の情報は出来る限り得ておきたいのだろう。ちなみに六花さんは冥琳のところへ、恋は俺と一緒に馬に乗っている。背中に何か柔らかいものがくっついてくるからマジで理性がヤバい。

・・・あと後ろの愛紗さんの絶対零度の視線が痛い・・・。冗談抜きで痛すぎる。まさに針の筵と言った感じだ。

視線で「もし恋を襲ったら・・・分かってますね?GO☆SYU☆JI☆N☆SA☆MA?」って言っている・・・。

これはもし恋を押し倒したらヤバい、確実に殺られる。敵じゃなくて恋人に殺されるなんてなんて間抜けな・・・、いや、俺は恋を押し倒す気はありませんよ?全く・・・。

 

・・・本当だよ?

 

「んでもさっき輸送した時は襲撃無かったで?なんでや?」

 

「敵に奇襲用の兵を送る余裕がなかったか、あるいは一度やったから二度目は効かないと感じたのだろう」

 

「なるほどのう、確かに奇襲戦法は大抵が一度限りの代物じゃ。何度も何度も使えるような策では無い。種がばれたらもう使わぬということかのう」

 

祭さんはそう言っているが、実際には劉繇軍は結構な頻度で奇襲攻撃を仕掛けてきている。その中には同じようなパターンのものも多く存在した。

いくら対策があると言っても、何度も夜討ち、奇襲を受け続ければ、いつ奇襲が来るか分からないという心理的な圧迫が起きる。無論、雪蓮や冥琳のような歴戦の将や軍師ならそれくらいはどうとでもなるんだろうが、並みの兵士達にとってはかなりのストレスになり、それが士気の低下に繋がっている。

 

が、今のところ劉繇軍からの奇襲攻撃は無い。兵糧部隊も襲われなかったところを見ると、どうやらもう奇襲攻撃を行わないようだ。祭さんの言っていた通り、いい加減敵も学習していると感じたのか、それとも、もう奇襲を行うだけの兵がないのか・・・。

 

 

「・・・申し上げます!会稽の前に広がる荒野において敵が集まっているとの報告が入りました」

 

「本丸の前か・・・、ついに連中も追い詰められたということか・・・」

 

「敵も此処で総力戦挑む気みたいやな」

 

「それだけ敵も追い詰められているということじゃな」

 

伝令の兵の報告を聞いて、祭さん達は再び会話を始める。

敵も追い詰められているか・・・。確かに今の今まで奇襲も何も行ってこなかったんだからそう考えても仕方がない。実際敵の兵力も結構削られているだろう。

 

 だけど窮鼠猫を噛む、ってことわざもある。追い詰められた相手は油断も何も無くなる。突然とんでもない反撃を繰り出してくることも当然あるのだ。俺は以前訪れた三国志の世界の戦場で、そんな場面に何度か遭遇したことがあった。

 

 さらに忘れているかもしれないがここは敵の本拠地。敵のホームグラウンドだ。敵には地の利があることを忘れてはいけない。こうやって油断していると・・・。

 

 ジャーン!!ジャーン!!ジャーン!!

 

 と、突然けたたましい銅鑼の音が響き渡った。

 

 「ぬっ!?何事じゃ!?」

 

 「どうやら劉繇軍の奇襲攻撃のようだな!!」

 

 「だ~!!今まで何もなかったと思ったらこれかいな!!」

 

 さっきまで雑談をしていた三人は、直ぐに武将の表情になって銅鑼の音が聞こえた方角に視線を向けている。

 

 「・・・ご主人様」

 

「ん?恋、どうした?」

 

「・・・迎撃、行ってくる」

 

「迎撃行ってきてくれるのか?」

 

「・・・・(コクリ)」

 

恋は黙って頷くと馬から飛び降りて方天牙戟を一振りする。そして一度愛紗の方に顔を向ける。

 

 「・・・関平」

 

 「・・・ご主人様の身は必ずお守りする。安心して暴れてこい」

 

 「・・・・」

 

 愛紗の言葉に安心したのか、恋は再びコクリと頷くと直ぐに剣戟の交わされる音と鬨の声、そして絶叫の響き渡る戦場へと飛び込んで行った。

 

 「・・・遂にはじまったね、愛紗」

 

 「はい、恐らくこれが、劉繇軍との最後の戦いになるでしょう」

 

 俺は愛紗と共に、目の前で繰り広げられる軍勢同士のぶつかり合いを、黙ってみていた。

 

 

 

 

此処に、揚州攻略戦最後の戦い『会稽の戦い』が幕を開けた。

 

 

 

あとがき

 

まこと遅れて申し訳ありません!!

 

毎日の仕事で忙しくてとてもとても更新している暇がなかったもので・・・。

 

何とか書き終わりましたので早速投稿させていただいたしだいです。

 

今回は揚州攻略戦最終章、合肥の戦いです。

 

まあ史実ではこれ以外にも他に色々あったんですが、今回はこれのみということで・・・。

 

 次回も合肥の戦い編、大体あと二三回で終わらせるつもりです。簡単に終わらせるにはもったいないですし・・・。

 

 では次回もどうか見捨てずに見守っていてください・・・。

 


 
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