No.495752

SAO~菖蒲の瞳~ 第六話

bambambooさん

六話目更新です!

なんというか、少しグダグダです…orz

攻略会議の後編になります。

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2012-10-13 19:24:32 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1685   閲覧ユーザー数:1519

 

第六話 ~ 第一層攻略会議・2 ~

 

 

【キリトside】

 

第一層のボス攻略のために開かれた会議。

 

俺はそこで、アスナとアヤメという二人と、あぶれ者同士で一時的なパーティ組むことになった。

 

アスナは俺と同い年くらいの少女。フードを目深に被っているためその容貌は分からないが、それだけでも美人と思えた。

 

もう一人のパーティメンバーのアヤメは、小学高学年から中学生くらいの少年で、変化の乏しい表情と見た目とミスマッチな落ち着いた雰囲気がした。

 

「…アヤメ、か…」

 

アヤメという名前に心当たりのあった俺は、思わず呟いた。

 

少し前にあるオンラインゲームで知り合った、チャット友達と同じ名前なのだ。

 

彼もSAOを買うと言っていたが、無事に買えたのだろうか。

 

まさか、こいつがアイツか?

 

「なんだキリト?」

 

「あぁ、いや。なんでもない」

 

さっきの呟きを聞き取ったらしいアヤメが声を掛けてきたが、俺はそれを適当に誤魔化した。

 

よく考えたら、アイツ大学受験がどうとか言ってたからこんな子供な訳がないか。

 

そんなことを考えていると、いつの間にか会議が進もうとしていた。

 

気持ちを切り替えて会議に臨もうとしたとき、一人の男が広場に飛び出てきた。

 

「ワイはキバオウってゆうもんや! ボス戦の前に一つ言いたいことがある」

 

キバオウという男の言いたい事とは、俺たち元ベータテスターに対する不満と謝罪の要求だった。

 

確かに、九千人のプレイヤーを置いて自分を強化したんだから、責められて当たり前のことだ。

 

いずれ非難されることは覚悟していた。

 

しかし、改めてハッキリ言われると、来るものがあった。

 

ふと、はじまりの街で別れたクラインの顔が頭をよぎった。

 

アイツはまだ生きているのだろうか。俺を恨んではいないだろうか。

 

そんな考えが頭を巡り、罪悪感押し潰されて自然と俯いてしまった。

 

「そいつは可笑しいんじゃないか?」

 

その直後だった。

 

アヤメが声を挙げ、キバオウの意見に真っ向から反対をしたのは。

 

 

【アヤメside】

 

「アンタと同じ素人だ」

 

「な、なんやて?」

 

俺がそう言うと、キバオウは信じられないとでも言うように聞き返してきた。

 

周りもざわついている。

 

そりゃそうだろう。さっきまで元ベータテスターと思っていた奴が、自分は素人だ、と宣言したんだからな。

 

「う、嘘や! 自分が元ベータテスターやから、自分を擁護するために嘘言ってるや!」

 

「そんな事どうでもいい。元ベータテスターだろうが素人だろうが、これは俺の意見だ」

 

少しだけ睨みを効かせて言うと、キバオウは押し黙った。

 

「先ず言わせてもらうけど、アンタは素人を置いてったのが許せないんだったな?」

 

「そうや」

 

「じゃあ聞くが、アンタは元ベータテスターたちにどうして欲しかったんだ?」

 

「そりゃレベルの上げ方とか、闘いのコツとかをやな……」

 

「元ベータテスター千人が、素人九千人にか?」

 

「うぐっ……」

 

「単純に考えて一人あたり九人。聞いただけじゃ簡単そうかも知れないが、右も左も分からない素人プレイヤー九人の命を一人で保障しながら戦闘のコツを教えることが出来るのか? 無理だな」

 

「そんなんやってみんと」

 

「いい年した大人があんな状態になったんだぞ? 平静ならともかく、あんな状態の人を九人同時に面倒を見ながら安全は保障する? 冗談は辞めてくれ。そんな事してる暇があったら自分を強化する」

 

吐き捨てる様に言い切る。

 

「それに、元ベータテスターだって人間だ。あんな状況に立たされちゃ、自分が生き残るために利己主義に成るのも無理はない、と俺は思う」

 

完全に黙り込んでしまったキバオウ。

 

正に、ぐうの音も出ないと言った感じだ。

 

本当だったらここで辞めべきなんだろうけど、それは出来ない。

 

「でも、アンタの言うとおり俺や元ベータテスターが素人を見捨てた事は紛れもない事実だ。だから、その事に対して責任を持たなければならないとも俺は思う。だから、少なくても俺は最後まで《最前線》から退くつもりは無い」

 

こんな事言っておきながら、俺にはそれを完全に実行出来る自信はない。

 

極力は守るつもりはあるが、絶対には無理だと思う。

 

それでも俺は、こうでも言わないと償いにならないと思った。

 

と言うか、キリトを擁護するつもりが、いつの間にか自分の擁護にもなってるな。

 

何だかんだで、俺もシリカ以外を見捨てた事に罪悪感を感じていたようだ。

 

「何か文句は?」

 

「……別にあらへん。ゆうたからには絶対守れよ!」

 

「………」

 

無言で肯定を示す。

 

そうすると、キバオウは言うことが無くなったのか、もと居た席へと戻っていった。

 

ギスギスした空気がその場に残り、誰一人口を開く気配がなかった。

 

……強く言い過ぎたかもしれない。

 

「……発言、いいか?」

 

と、俺が反省していると、キバオウとは別の男性プレイヤーが手を挙げた。

 

無言を肯定と受け取ったのか、そのプレイヤーは立ち上がって落ち着いた声で話し出した。

 

「俺の名前はエギル。キバオウさん、アンタの言い分はよく分かった。それに、アヤメ君の言い分もよく分かる。俺はアヤメ君よりの考えだけど、あれは少し強く言い過ぎだな」

 

「…反省してる」

 

俺がそう呟いたあと、エギルは一冊の本を取り出した。

 

「キバオウさん。あんた、はじまりの街でこの『ガイドブック』を貰っただろ?」

 

「貰うたで。それがなんや?」

 

「これを配布していたのはな、元ベータテスターなんだ」

 

「なんやて!?」

 

その一言で、周囲がざわめいた。

 

全員、元ベータテスターが配布していたなんて思わなかったのだろう。

 

俺は存在自体知らなかったけど。

 

「つまり、情報は誰でも得ることが出来たにも関わらず、多くの人たちが犠牲になった。俺たちはその事を踏まえて、どうやってボス戦に臨むべきかを会議するべきなんだ。正直、仲間内でいがみ合ってる場合じゃないと思う」

 

そう言うと、エギルはチラリと俺の方を見た。

 

……全部お見通しってことか。この人、物凄い大人だ。

 

俺は席を立ち、キバオウの前へと移動した。

 

前に来たとき、キバオウは俺のことを睨んできたが、俺はそれに構わず、

 

「……ごめんなさい。一方的に言い過ぎました」

 

誠心誠意、頭を下げた。

 

一瞬驚いたような気配がしたが、その気配は直ぐに俺と同じ様なものへと変わった。

 

「ワイも、元ベータテスターや見捨てた側がどう思ってるかなんて考えたこともなかった。一方的に悪いとかゆうてすまんかった」

 

「……よし。それじゃ会議を再開しよう」

 

ディアベルの掛け声で、俺は頭を上げて自分の席へ戻った。

 

会議の妨げにならないようにするためだ。

 

「さっきエギルさんが言っていたガイドブックだが、その最新版がさっき配布された。その中に、第一層のボスの情報が載っていた」

 

再度ざわめきが起こる。

 

「大事なところだから静かに頼む」

 

ディアベルが手を叩きながら言うと、ざわめきが止み全員真剣な顔へと変わった。

 

「先ず、名前は《Illfang the Kobold Lord(イルファング ザ コボルト ロード)》という。装備は斧とバックラーの二つ」

 

ガイドブックを開き、そこに書かれた内容をみんなへ伝えていく。

 

「自分のHPが最後の危険域(レッド)に到達したとき、《タルワール》という曲刀に持ち替え戦闘パターンが変わるらしい。それと、《Ruin Kobold Sentinel(ルイン コボルト センチネル)》という取り巻きが一緒のようだ」

 

なるほど。

 

基本的な攻略法は、取り巻きを出来る限りの少数で抑えながらボスを大勢で攻撃する、と言ったところか。

 

それにしても、ガイドブックとやらはそこまで細かい情報が書いてあるのか。今度貰いに行こう。

 

「何か質問のある人はいるか?」

 

「あの…ちょっといいか?」

 

ディアベルが質問が無いかと尋ねると、キリトが手を挙げた。

 

「先ずは名前を教えてくれ」

 

そう言われ、キリトは立ち上がった。

 

「名前はキリト。えーと…ソロで、元ベータテスターだ」

 

広場全体が驚愕で染まった。

 

俺もこの時は驚きが表情に出ていたと思う。まさか、自分から打ち明けるとは思っていなかった。

 

「経験値とコル、あとアイテムの分配はどうするんだ?」

 

その質問に対し、何人かのプレイヤーは、あっ、とさっきまで忘れていたかの様なリアクションを取っていた。

 

ボス攻略ばかりに意識が行ってしまい、そっちまで気が回らなかったのだろう。

 

「それならこっちで決めてある。経験値はいつも通りでコルは自動分配割り、アイテムは獲得した人の物とする。異存はあるか?」

 

「いや無い。それともう一つ」

 

「なんだ?」

 

「そのガイドブックの情報、あてにし過ぎない方がいいと思う」

 

今までで一番大きなざわめきが起きた。

 

「……どういうことだ?」

 

「モンスターと戦闘していて気付いたんだが、ベータテストの時と少しだけ違う攻撃パターンをして来るヤツがいるんだ」

 

「なんだって!?」

 

「おそらく、情報がある割に犠牲者が多いのはこれが原因だと思う」

 

「分かった。みんな、イレギュラーが発生する場合もあることも頭に置いておいていてくれ!」

 

それだけ言うと、キリトは直ぐに座った。

 

「他にあるか?」

 

全員無言。どうやら無いようだ。

 

「では、攻略会議はこれで終了とする。出発は明日の朝十時だ。それまでに、各自ボス戦に向けての準備をしっかりとしておくように。……解散!」

 

なんだ、今から行く訳じゃないのか……少しガッカリ。

 

さてと、それならこれからどうするかな……。

 

「……キリト、アスナ」

 

「なんだ、アヤメ?」

 

「これから暇か?」

 

「俺は大丈夫だけど……アスナは?」

 

「これからフィールドに出るつもりよ」

 

なら丁度いいな。

 

「どうせ行くなら、三人で行かないか? 明日の戦闘の練習を兼ねて」

 

俺がそう提案すると、二人は少しだけ思案したあと、二人とも賛成の意を述べた。

 

 

俺たち三人がフィールドへ向かう途中、俺はあることを思い出した。

 

何気ない感じでキリトに話し掛ける。

 

「そう言えばキリト。はじまりの街の武器屋の情報はありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「半額は驚きだった」

 

「だろ? 俺もベータテストのとき見つけたときは……って、何でアヤメがそのことを!?」

 

「そのツッコミを今入れることに驚きだ」

 

ノリツッコミとかいうヤツか?

 

「二人は知り合いなの?」

 

俺とキリトの様子を不思議に思ったらしいアスナが尋ねてきた。

 

「まあな。これとは他のオンラインゲームで知り合ったチャット友達だ」

 

「ふ~ん…」

 

聞いた割にはどうでも良さげな反応だった。

 

「お前…本当にアヤメなのか?」

 

「そう言ってる」

 

「じゃあ、高校生ってのは嘘だったのか?」

 

「事実だ」

 

「……え?」

 

「……こんな容姿だけど、俺は(まご)うど無き高校生で、現在十七歳だ。お前より年上なんだぞ?」

 

「「嘘ッ!?」」

 

これにはさすがのアスナも驚いたようだ。非常に不満である。

 

と言うか、お前らなんだかんだで息ぴったりだな……。

 

このパーティ、最初からなかなかのチームワークである。


 
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