No.493362

恋姫無双 小ネタ集 外伝 『がんばる! 雛里ちゃん!』

活動を休止していた雛里役の声優さんが復帰なされたとのこと。
……本当に良かった。

そんな思いを込めた小文です。

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2012-10-07 20:05:13 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1809   閲覧ユーザー数:1587

「ひ、ひなりぱんち!」

 

 ひと気のない、武器庫の裏手のちょっとした空地。

 可愛らしい声に合わせ、小柄な少女が虚空に拳を振るう。

 表情は真剣、というか、なんか泣きそう。

 動きも「パンチ」よりは「ねこじゃらしにじゃれつく猫」に近い。

 まぁ、あの動きを「猫パンチ」とか表現したりもするから、間違ってるわけではないのかも。

 着ている服は「学校の制服です」と言ってもぎりぎり通用しそうなデザインだが、その腰の部分に水色の帯を巻き、さらにそれを体の左側で大きなリボンみたいに結んでいるのでやはり無理があるかも知れない。

 

「ひ、ひなりきっく! ……あわわっ、あわわっ!?」

 

 続けて右足をぴょこっと上げて、その勢いで倒れかけたもののなんとか踏み留まる。

 これも「キック」というより、フォークダンスの振り付けと言われた方がまだしっくり来るものだ。

 しかし今度は踏みとどまった拍子に、もともと目深に被っている大きな帽子――これは魔女帽、としか言いようのないつば広の三角帽子――がずれ、顔が完全に隠れてしまった。

 そのまま両手をぱたぱた動かし始めたのは、たぶん突然目の前が真っ暗になり慌てているんだろう。

 

「さ、最後に、ひなりビーム!」

 

 ようやく、帽子を元の位置に戻す、という当たり前な解決策を実行した彼女が次に口にしたのはそんな言葉。

 そして目から謎の光線が……出るはずもなく、「グー」にした左手を腰、「チョキ」にした右手を目の横に当てた恰好で、動きを止める。

 

 そこで初めて、俺こと北郷一刀はそんな一連の怪行動をとっている鳳統こと雛里に声をかけた。

 

「やあ、雛里。さっきから一人で何やってるんだ?」

「あ、あわわっ!? ご、ご主人さまっ!? ……も、もしかして今の――」

「うん。超見てた」

「あ、あぅ……」

 

 そう言って、真っ赤に染まった顔を魔女帽で隠す雛里。

 帯と同色でたぶん同質の素材でできた帽子のリボンが、心なしか力なく垂れたように見える。

 うんうん、気持ちはわかるぞ。

 恥ずかしい、確かにさっきの雛里はとても恥ずかしい。

 

「で、何やってたんだ?」

「な、なんでもないでしゅ! た、ただの体操でちっ!」

 

 そんなカミカミになりながら否定されても、全然説得力がない。

 おまけにいくらなんでも体操ってのは無理がある。

 

「ほ、ほんとにほんとに、なんでもないんでしゅ!」

 

 けど、雛里があまりにも必死なもんだから、俺はそれ以上追及する気にもならなかった。

 

「ふむ。ま、ほどほどにして屋敷に戻るんだぞ。最近涼しくなってきたし、風邪でも引いたら大変だからね」

「は、はい。ありがとうございます。……でも、もうちょっとだけ。私、頑張るって決めたんですっ」

「うん。なんだか良くわからんが、頑張るのは良いことだ! ……じゃ、俺は行くよ。あんまり無理はするなよ?」

「……はいっ!」

 

 ぐっ、と両手に力を込めて良い返事をする雛里の頭を軽くなで、俺はその場を立ち去った。

 

「……えへへ。ご主人さまに、あたま、撫でられちゃったよ。……えいっ、ひなりぱんちっ! ひなりきっく! ひなりビームっ!」

 

 ……と、見せかけて、そのまましばらく倉庫の陰から見守った雛里は、さっきよりも動きがするどくなっているような気がした。

 ――後に。

 俺はこのときの雛里の行動が、総監督・曹孟徳、技術監督・李曼成による史上初の「活動写真」、『鳳雛ヒナリの冒険えぴそーど00』撮影に向けての練習だったと知ることになるのだが……それはまた、別の話だ。

 

                                           ―完―

 

 

【以下、コメント返し】読んでくださった皆様、ありがとうございます。

 

<劉邦柾棟さん

 その通りっ! ですw

  って言いますか、↓の親衛隊コール(で、良いのでしょうか? 微妙に新参なので呼び方が…)やっていただけるとは思いませんでした。普通に嬉しいwww

 

<summonさん

 雛里の必殺技「おめめからひなりんビーム」の効果音は「ひっなり~ん♪」。

 とても可愛いのです。

 

<グリセルブランドさん

 ……摘発てwww

 せめて個人的に閨へ連れ込むくらいで勘弁してくださいませんか、華琳さま……。

 

<TAPEtさん

 そうなのです。

 ……いや、実は書いてるときは特に何も考えてなかったんですが、結果的にそうなってる感じですw

 無意識に二人を重ねたのかもですね。ちょっとだけ性格とか似てなくもないような気もしますし。

 

<ゆぎわさん

 『あわわ・・・封印されし右手が疼き始めた・・・』!?w

 絵を想像したら、異常に面白いのですがwww

 そう言えば、某無双の鳳統、ビームこそ出ないですがあちらも魔道師(妖術師?)風な格好ですね。

 キャラデザとかの参考にしたのかも……いや、知らないんですがw

 

<メガネオオカミさん

 それはきっと、声が似ているからでしょうw

 あと、ちょっとだけ性格も。

 ただ体型は全然違っ『あわわ。あたまもげろ』……なんでもないです、はい。

 

<三楽斎さん

 ああ、雛里に毒を盛られたんですね。

 『萌え』と言う名の毒を。

 作者的にはしてやったりですw


 
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