No.493055

真・恋姫†無双 ~我天道征~ 第14話

seiさん

町の住民を、そして華琳を守るため、一人戦いへと赴く一刀。
相手は黄巾党3万。
その強大な敵の前に、一刀は天の御遣いとして立ちふさがるのだった。

10/7 誤字・脱字を修正しました。

2012-10-07 00:02:48 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5778   閲覧ユーザー数:4625

 

 

 

 

 

 

 

注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。

 

   そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【語り視点】

 

「我、天の御遣いなり! 大陸に混乱と禍を齎す黄巾党どもよ。今すぐ悔い改めよ!

 さもなくば、天の御遣いの名において、天よりの裁きを下す!!」

 

辺り一面にそんな声が響き渡る。

 

それと同時に、黄巾党の中では大きな動揺が広がる。

黄巾党の大部分は元々ただの民であり、食いあぶれた者達が賊に身をやつしたに過ぎないのだ。

そして天の御遣いの噂は、そんな絶望した民達の間で広まり、大陸全土にまで知られるようになった名だ。

予言通りの姿で現れた天の御遣いが自分らに裁きを下すというのだ、動揺するなという方が無理である。

 

 

他の者たち程ではないにしろ、程遠志たちも動揺していた。

天の御遣いが現れたということもそうだが、なによりその存在により部隊が瓦解しようとしているためだ。

それを危惧した程遠志は、大声で叫ぶ。

 

「お前ら、騙されるんじゃねえ! あいつが天の御遣いのはずはねえだろ!

 もしそうなら、なんで俺らは今だ飢えに苦しみ、官の奴らに虐げられなきゃならねえ!!」

 

「そ、そうだ。」「もし本物なら、こんなことになってない。」「俺達も救ってみろ。」

「騙される所だった。」「この偽物が!」「よくも騙そうとしたな!」

 

程遠志は咄嗟の機転により、一刀を偽物だと糾弾した。

そんな程遠志の言葉を聞き、黄巾党の者達もだんだんと動揺が治まり、先程までの勢いを取り戻そうとしていた。

 

 

「ちっ。」

 

一刀は、軽く舌打ちする。

このまま戦わずに済むならそれが一番だと思っていたが、それもすんでの所で失敗した。

だが元々、上手くいったら儲けものぐらいで考えていたため、あまり気にはしていなかった。

それよりさっきのやり取りから、程遠志がこの部隊のトップだと推察できたことが大きいと考えていた。

 

(・・・あいつなら。)

 

一刀がそんなことを思っていると、向こうにも動きが見え始めた。

 

 

「我々を導いて下さった張角様達の為にも、この先の町とそこにいる官軍の奴らをみな潰すんだ!行けー!!」

「「「「「おぉぉぉーーーー!!!!!!」」」」」

 

程遠志の号令に、黄巾党の者達が再び前進し始める。

一刀としては、先程聞こえた張角達の真意を知りたかったが、今は無理だと諦め、意識を切り替える。

そしてそのまま、まっすぐに黄巾党達へと向かって走っていく。

 

今まさに、一刀 対 黄巾党3万の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

一方その頃、

 

 

 

 

【side 華琳】

 

(一刀は、もう戦い始めているのだろうか。)

 

太陽が中天にきてから、またしばらくの時が過ぎた。

私は黄巾党の伏兵や別働隊に注意を払いながら、陳留を目指し移動を続けている。

幸いそういった動きは見られず、今の所は順調にいっている。

 

 

「今の所、追手などはなさそうですね。」

「ええ、そうね。」

「これも、華琳様の策が功を成しているおかげですね。」

「・・・ええ、そうね。」

 

凪が後方を確認し、今の所追手の気配がないことを報告する。

その報告に、私は適当に相槌を打って返す。

 

 

(一刀は、無事なのだろうか。)

 

私の心は、一刀の心配で大部分が占められていた。

後ろを見ても、黄巾党達の姿は今だ見えない。

これこそ黄巾党達が足止めされている、つまり一刀が健在であるということを示す、何物でもない証だ。

私はそう、自分の心に言い聞かせる。

 

信じている。

信じているからこそ、送り出したのだが、やはり不安はある。

一刀自身が言っていたじゃない、戦場では何が起こるかわからない、と。

次に後ろを確認した時には、追手の姿が見えているのではないか。

それはつまり、一刀の敗北、死を現すことではないか。

そんな相反する感情が、私に何度も後方への確認をさせていた。

 

 

「華琳様。」

 

そんな私に、声をかける人物がいた。

流琉だ。

 

「あの、兄様の姿がどこにも見えないんですけど、知りませんか?」

 

流琉の口から、私自身が今一番知りたい人物の名前が出てくる。

 

「一刀には、後方での住民の移動を手伝わせているわ。だから、安心なさい。」

「そう、ですか。」

 

私は、流琉に嘘をつく。

もし流琉が一刀の元へ向かってしまえば、きっと一刀の足手まといになるだろう。

そしてそれは、一刀が望むことではない。

 

 

「流琉様には、御兄弟がいらっしゃったのですか?」

「いえ、本当の兄弟じゃないです。でも、とっても優しくて、頼りになって、本当の兄様みたいな存在です。」

「素晴らしい方なのですね。」

「はい。私にとって、とても、とても大事な人です。だから、もし何かあったら私・・・」

 

凪の質問に、流琉が答える。

初めこそ明るかったが、次第にその調子は暗くなり、仕舞いには完全に俯いてしまった。

 

流琉は聡い子だ。

きっと、何かしら気付いているのかもしれない。

それでもここにいるのは、私と同じく足手まといになるということを理解し、一刀を信じているのだろう。

 

 

「大変や、大変やー!!」

 

そんな時、真桜が声をあげてやってくる。

その様子に、ただ事ではないと緊張がはしる。

 

「どうしたの、真桜?」

「はぁはぁ、ぜ、前方に大量の砂煙があがってて、こっちに向かってきとるみたいなんです。」

「何ですって!所属は確認できたの?」

「いえ、まだ遠くて判別できんかったんですけど、まずは指示を仰ごうかと思って。」

「そう、なら私も前衛に向かうわ。流琉、ついてきなさい。」

「はい。」

「凪、あなたは引き続きこの場所を頼むわ。」

「御意!」

 

(援軍にしては、予想よりも早すぎる。 敵の別働隊か何かか?

いえ、考えるのは後ね。 まずは、状況確認が先。)

 

そう考え、私は流琉と真桜を引き連れ、前衛へと向かうことにした。

 

 

そこにつくと、確かに前方から何かがこちらに向かって来ている。

せっかく一刀が、大部隊を引きつけてくれているというのに。

私は最悪の事態も想定し、いつでも指示が出せるよう前方を見据える。

そんな私の耳に、何か声が聞こえてくる。

 

「・・・様ー!!」

 

誰かを呼んでいる?

 

「か・・様ー!!」

 

聞き覚えがあるような?

 

「華琳様ー!!」

「旗印見えました!夏侯、春蘭様です、華琳様!」

 

私は聞こえてきた声と、そんな流琉の報告に驚く。

これも予想外の事態だが、今はこの援軍を素直に喜ぼうと思う。

 

 

 

 

時は遡り、昨晩の陳留。

 

【語り視点】

 

桂花は、早馬で届けられた華琳からの知らせに目を通していた。

 

「さ、3万の黄巾党ですって。華琳様の部隊は、4千かそこらしかいないってのに。」

 

桂花はその知らせに驚き、思わず声をあげてしまった。

そしてさらに読み進めていく内に、どんどんと顔を青ざめさせていった。

 

そこには敵の規模、こちらの状況、またそれらのことから、華琳自身が足止め役となり、町の住民達を逃すしか

道はないだろうという予想が書かれていた。

この知らせは、華琳達が軍議を始めるより前にだされたもののため、実際の足止めは、一刀がしているということはまだ書かれていなかった。

 

 

全てを読み終えた桂花は持っていた竹簡を置き、一旦深呼吸する。

動揺してしまった心を、一旦落ち着かせるためだ。

そして、自分の心がいつも通りの状態になったのを確認し、思考へと入る。

 

(今すぐ出せる兵なら、1万ほどいる。 明日なら、さらに5千程捻出できる。

 そう、兵は問題ない。 問題は、その兵を率いる将よ。

 春蘭、季衣の二人は別の賊討伐に行ってて、今さら早馬を出しても帰ってくるのは明日になるだろう。

 秋蘭なら、急がせれば春蘭達よりは幾分か早く城に着くだろう。

 だけど、秋蘭は・・・

 

 いえ、そんなことを言っている時じゃないわ。

 本当に大事なのは、華琳様の御身。

 例えそれが、華琳様の意に反することだとしても!)

 

桂花がそんなことを考え、伝令を呼ぼうとした時、

 

 

ガチャ

 

桂花の部屋の扉があけられ、予想外の人物が姿を現す。

 

「おい、桂花。 華琳様のお姿が見えないのだが、どこにいるか知らぬか?」

「はっ?」

 

春蘭だ。

あまりの事態に混乱する桂花だが、まずは目の前の問題を解決することにした。

 

 

「な、なんであんたがここにいるのよ、春蘭!」

「なぜだと、聞いてなかったのか。華琳様の姿が見えないから、捜しに」

「そうじゃないわよ、この馬鹿!」

「なんだと!」

「ふー、いいえ、悪かったわ。あんた賊討伐で、戻ってくるのは明日の予定でしょ。なのに、なんで今いるのよ?」

 

このままでは、またいつものやり取りになってしまうと考え、桂花は先に折れることにした。

 

「なんだ、そのことか。奴等、思ったよりも手ごたえがなくてな、予定よりも大分早く片付いたのだ。」

「それでも、早すぎるでしょ。」

「うむ。なにやら、華琳様が私のことを呼んでいる気がしたのでな、連いて来れるものだけを連れて、急いで帰って来たのだ。」

「ちょ、ちょっと、それじゃ残りの兵達はどうしたのよ?」

「ん?それならば、季衣が連れてきておるから心配ないぞ。」

「あ、あんたねー。」

 

春蘭は自信満々に答える。

そのことに桂花は、軽い頭痛がしてきた。

色々言いたいことはあるが、今回ばかりはこの暴走が良い方向に動いたと、桂花は考え直した。

 

 

「春蘭、詳しく説明してる暇はないわ。華琳様が、大変危機的状況に陥っているわ。

 帰ってきて早々悪いけど、すぐに出陣してちょうだい。」

「なんだと!なぜそれを早く言わんのだ!待って下さい、華琳様。この夏侯元譲、今すぐお助けに行きます。」

 

ドガンッ! ドドドドドッ・・・

 

そう叫んで春蘭は、扉をものすごい勢いで開け放ち、そのまま走り去ってしまった。

 

「ちょっと、待ちなさいよ、この猪!

 急げとは言ったけど、どこに行くかとか、せめて必要最低限な話くらい聞いてからにしなさいよ!!」

 

そしてその後を、桂花が必死に追いかける姿があった。

 

 

 

 

再び現在に戻り。

 

【side 華琳】

 

「―――と、いうことがありまして。」

「そう。」

 

春蘭の話を聞きながら、桂花からの書簡にも目を通し、この状況を理解する。

 

「まったく、普段ならお仕置きしなければならないのだけど、今回ばかりはお手柄よ、春蘭。」

「よくわかりませんが、ありがとうございます、華琳様♪」

 

春蘭の暴走がこんな形で役に立つなんてね。

さすがに、私も桂花も予測できなかったわ。

春蘭は、よくわかってはいないみたいだが、褒められたことは理解したらしく、嬉しそうにしていた。

 

 

「しかし、華琳様。確か桂花の話では、華琳様が黄巾党どもと対峙していると聞いたのですが。」

「それについては、後で説明してあげるわ。」

 

春蘭からの質問に、私はすぐに意識を切り替える。

 

「春蘭、連れてきた兵の数は?」

「はい、1万です。また、後から季衣が兵5千を連れて合流する予定です。」

 

兵1万。

数ではまだ3倍の差があるが、質ではこちらが圧倒的に上。

後に合流する季衣の部隊5千を加えれば、充分殲滅可能な数になる。

なら、することは決まっている。

 

 

「春蘭、このまま貴方が連れてきた兵1万で、私と共に黄巾党どもの殲滅に向かうわよ。

 季衣の部隊にも、そのまま進軍し私達との合流後、共に殲滅に当たるよう伝えなさい。」

「御意!」

「真桜、流琉。貴方達と、凪、沙和はこのまま町の住民の護衛にあたりなさい。

 私が初めに連れてきた兵は残していくから、もしもの場合は、流琉、貴方が指揮をとりなさい。」

「はい!」 「了解や。」

 

 

一通り指示を出し終えた私は、そのまま馬に跨る。

するとそこに、流琉が近づいてきた。

 

「華琳様。兄様を、お願いします。」

 

そう言って、私に頭を下げる。

 

「ええ、まかせなさい。行くわよ、春蘭!」

「はい。皆の者、我らに続け!!」

 

私はそれだけ言って、馬を走らせる。

目指すは、一刀と黄巾党が闘っている場所。

 

(待ってなさい、一刀。すぐに助けに行くわ。 だから、それまで勝手に死んでは駄目よ。)

 

 

 

 

 

【語り視点】

 

そんな一刀はといえば、黄巾党達との激闘を繰り広げていた。

すでに千人程倒したであろうか、地に伏している黄巾党の者たちの姿が、所々に見られる。

一刀は、迫りくる無数の刃を逸らし、避け、その隙間を縫う様に刀で斬りつけていく。

 

「ぎゃっ」「うわっ」「ぐがっ」

 

斬られた者達は、小さな呻き声をあげて倒れ、そのまま動かなくなる。

 

ここで一刀は何かに気付き、敵を斬りながら進行方向を横へと変える。

一刀本来の目的は、足止めである。

そのため一刀は、自分を無視して先へと進もうとする部隊を発見し、その足止めへと向かったのだ。

 

「ひ~」「な、なんでここに」

 

その部隊の先頭までくると、いるはずのない人物の登場に驚く、黄巾党達の顔があった。

一刀はそんなのを無視し、戦闘からその部隊を削っていく。

ある程度削り、敵の足が止まったのを確認すると、また同様に別の部隊へと向かう。

一刀は、そんな八面六臂な働きをしていた。

 

 

そして、そんな一刀の戦いぶりに黄巾党の中では、先程以上の動揺が広がっていた。

 

「程遠志様、前線の部隊がまた動揺してきました。本当に天の御遣いなのではないかと。」

「くっ、あの馬鹿どもが。せっかく、この俺が喝を入れてやったというのに。」

 

そんな報告に、程遠志はイライラして様子で文句を言う。

 

「しかし、あいつは本当に何者なんでしょう。まさか、本物の(ザシュ)ぎゃっ!」

「黙ってろ!他の奴らも、今度下らねえこと言ったら、こいつと同じになるぞ!」

 

報告していた部下を切り捨てた程遠志は、声を張り上げて周りの者に告げる。

その様子を見ていた周りの者たちは、ただ声を殺して了解の意を伝える。

 

 

「何が天の御遣いだ。あんな噂に踊らされやがって。

 ・・・いや、だが使えるな。くくくっ」

 

初めこそ、一刀の存在に怒りを現していた程遠志だが、何かを思いついたのか、嬉しそうに笑う。

 

「おい、お前。」

「は、はい。」

「今いる前線のやつらに、そのままあいつを倒すよう伝えろ。」

「しかしいくら戦っても、奴らでは無駄死にするだけでは。」

「聞こえなかったのか、俺は命令を伝えてこいって言ったんだ。それとも、お前もあいつみたいになりたいか?」

 

渋る部下に対し程遠志は、地面に転がっている先程の部下をさす。

 

「い、いえ、わかりました、すぐに伝えてきます。」

 

そのことに怯えた部下は、一目散に駆け出して行った。

 

「はじめから、そうしていろ。 くくく、それに無駄死ににはならんさ。

 あいつらの死は、この俺が有効に使ってやる。」

 

 

程遠志のそんな命令が伝えられた後も、一刀は黄巾党達を倒していった。

2千、3千と、その数は増えていく。

黄巾党達は先程の命令があるため、それでも一刀へと向かっていき、次々と倒されていく。

そんな一刀の快進撃は続くと思われたが、黄巾党の被害が4千を超えたあたりで異変が起きる。

 

シュッ

 

「くっ、このっ。」

「ぎゃー。」

 

一刀の顔に、小さいが切傷がつけられたのだ。

 

「ぜーはー、ぜーはー。」

 

よくみると、一刀は肩が大きく上下しており、息もあがっていた。

さらに顔には、滝の様な汗がとめどなく流れている。

それでも、黄巾党の攻撃の手は緩まない。

 

「撃てー!!」

 

そんな叫びと共に、空から無数の矢の雨が降り注ぐ。

一刀はそれを必死に弾くが、肩、足と矢が掠り、破れた服の隙間から血の筋がのぞく。

そしてついに一刀は、片膝をついてしまった。

持っていた刀を杖代わりにして、なんとか倒れることは防いだが。

 

「はー、はー、はー、はー」

 

一刀の息は、さらにあがっていた。

 

 

 

そんな一刀を囲っていた黄巾党の一部が開け、その奥から程遠志が姿を現した。

一刀はその姿勢のまま程遠志のことを睨むが、相手はそんな一刀の姿に一瞬だけ笑みを見せた。

 

「聞け!この腐敗しきった大陸に、本当の安寧を齎すのは、我らが首領張角様達だ!

 その証として、張角様達の一の家臣であるこの程遠志が、天の御遣いを討ち取ってみせよう!!」

「「「「「・・・うおおおぉぉぉーーーー!!!!!」」」」」

 

そんな演説の様な発言に、一瞬あたりが静まりかえるが、すぐさま熱を取り戻す。

辺りからは、歓喜の様な雄たけびが湧きおこる。

そんな茶番劇に、一刀は露骨に嫌悪感を出す。

そんな一刀に気付いた程遠志は、一刀だけに聞こえる声で話しかける。

 

 

「くくくっ、悪いな。貴様を天の御遣いとして殺した方が、俺の名に箔がつきそうだったんでな。」

「はーはー、だから、はー、今、頃、はー、になって、はー、でて、きたの、はー、か。」

「他の奴らに殺されたのでは、まずいんでな。この俺が、正々堂々1対1で戦って勝つことに意味がある。」

「正々、はーはー、堂々、だと、はー、部下、はー、を、はー、捨て、はー、駒に、はー、した、くせによ。」

「くくく、なんのことやら。たまたま、貴様が疲れているだけだろう。」

「はーはーはーはー」

 

話すのも辛いのか、一刀は途切れ途切れになりながらもなんとか言葉を紡ぐ。

程遠志はそんな一刀の姿が楽しいのか、一刀が恨みごとを言うたびに、どんどんと調子づいた。

 

 

「さて、では始めるとしようか。」

 

程遠志が手に持っていた戟を構える。

 

「はーはー、くそっ。」

 

一刀もなんとか構え直すが、膝はわらい、剣先は震えていた。

 

「ははは、なんだその構えは。武器とは、こう扱うのだ!」

 

ギンギンギンガギン

 

そんな一刀に対して、程遠志の容赦ない攻撃が繰り出される。

一刀はなんとかその攻撃を避け、裁いていくが、次第にその数は減り、受け止めてしまう回数が増える。

 

ガギンギンガギンガギン

 

「なかなか粘るな。」

「くっ、うっ。」

 

 

そしてついに、その時がくる。

 

ガギーン

 

「(ガクッ)しまっ」

「もらったー!」

 

攻撃の重さに耐えられなかったのか、膝が曲がってしまいバランスを崩す。

その隙を程遠志は見逃さず、一刀の体を薙ぎ払うかのように戟を振るう。

 

ガギィーーーーーン!

 

「く、う、うあぁーーっ!」

 

ザスッ ゴロゴロゴロゴロゴロ・・・

 

一刀は咄嗟に刀を構えて直撃を防ぐも、その勢いに負けて吹き飛ばされる。

手から離れた刀は地面に突き刺さり、一刀自身も地面を転がりなんとか止まる。

一刀はなんとか体を起こすが、刀は手元になく、体力の限界なのか立つこともできずにいた。

 

 

程遠志はそのままゆっくりと一刀へと近づき、目の前に戟を突き付ける。

 

「これで終わりだな、天の御遣い。」

「はーはーはーはー」

「せめてもの慈悲だ。何か言いたいことがあれば、言わしてやろう。」

「はーはーはー、な、なら」

 

勝利を確信した程遠志は、そんな余裕を見せる。

その言葉を受け、一刀はゆっくりと口を開く。

 

 

「お、お前たちの、はーはー、首領、は、はー、本当、はー、に、はー、張角たち、はーはー、なの、か?」

「ふん、今さら何を。そんなこと決まって「嘘だ!」ん?」

「はーはー、天和、たち、はー、が、こんな、はーはー、こと、はー、する、わけ、はー、ない。」

 

一刀の口から出た、「天和」という言葉に程遠志が反応する。

 

「ほう、あいつらの真名を知っているか。なら、教えてやらねばな。確かにお前の言うとおり、我らの首領は別にいる。」

「はーはー、やっぱ、り。」

「あやつらは、あくまで神輿だ。」

 

程遠志は、ぺらぺらと天和達のことを話す。

 

「な、んで、はー、彼女たち、を。」

「奴等の歌さ。」

「歌?」

「あいつらの歌は、人を集めるのに都合が良かったからな、利用させてもらったのさ。」

「彼女たちの歌は、そんなことのためのものじゃない!」

「知ったことか。それにあいつら、大陸一の歌姫になりたいとか夢物語をほざいていたからな、そんな叶わぬ夢がこうして叶うのだ、さぞ喜んでいるだろう。」

「てめえ。」

 

程遠志の言葉に、一刀は怒りをぶつける。

 

 

「良かったな、最後に聞きたいことが聞けて。

 俺も忙しいんだ、貴様を殺して、すぐにもう一人を殺さないといけないんでな。」

(ピクッ)

 

程遠志の言葉を聞き、一刀の体が僅かに反応する。

しかし程遠志は、そんな一刀の反応に気付かず、独り言のようにしゃべり続ける。

 

「陳留の刺史を殺せとの命令がきてるのでな、すぐさま追いかけないといかんのだ。

 話に聞くと、見た目は幼いが美しいらしいからな、殺す前に楽しませてもらいたいものだ、くくくくっ。」

「・・・・・」

 

一刀はもう何も言わず、ただ俯いていた。

その様子を見た程遠志は、そろそろとどめをさそうと戟を高く掲げる。

 

「この天の御遣いの命と共に、蒼天は終わりを迎える。そして、われら黄天の時代が幕を開くのだ!」

「「「「「おぉぉーーーー!!!!!」」」」」

 

そんな芝居掛かった口調で、あたり一面に宣言する。

まわりもそれに魅せられたかのように、歓喜の声をあげる。

そして

 

「さらば、天の御遣いよ!」

 

程遠志の戟が、そのまま一刀へと振り下ろされる。

 

 

 

 

 

【side 華琳】

 

春蘭と合流した私は、馬をとばし一刀の元へと急ぐ。

私の横には春蘭がおり、後方からは兵達がついてきていた。

 

「しかし、北郷がそのようなことになってるとは。」

 

春蘭が、心配そうな顔で話しかける。

移動中、私は春蘭に町であったことや、一刀についての話をした。

 

「いくらあやつが強いとはいえ、3万もの数が相手では。」

「ええ、だからこそ急いでかけつけなければならないの。」

「わかりました、華琳様。 皆の者、さらに速度を上げるぞ!

 ついてこれぬ者は置いていくぞ!しっかりと我らについてこい!!」

「「「「「おぉぉーーー!!!」」」」」

 

春蘭の檄とともに、後方の兵達が返事をかえす。

それを確認した私達は、さらに行軍速度をあげるのだった。

 

 

そして、一刀が足止めしているであろう地点の近くへと到着する。

 

「春蘭、もうすぐ一刀のいる地点に着く筈よ。兵に指示を!」

「はっ! 皆の者、もうすぐ戦闘に突入する。各自抜刀しておけ!」

「「「「「おぉぉーーー!!!」」」」」

 

そのまま私達は、小高い丘の上へと陣取る。

予想通り、その丘の下の方に黄巾党達はいた。

しかし、

 

「う、そ・・・」

 

私は指示も出せず、呆然としてしまった。

自分の瞳に映る光景が信じられず、ただ立ちつくしてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

sei 「う、うう、うううう、

   ううううおおぉぉぉぉーーーーーーーっしゃあああぁぁぁーーーーーー!!!

   逃げ切ったぞ、こんちくしょーーーーーー!!!

   はあはあはあはあ、前回のあとがきを見てない人は、なんのことかわからないと思うので、気にしないで下さい。

 

   ふぅ。さて今回の話ですが、一刀と黄巾党の戦いを書いてみました。

   チート一刀のはずなのに、好調なのは前半だけで、後半はボコボコでしたね。

   前話で書かなかったけど、一刀結構死亡フラグを連発してましたよねー。

 

   と、独り言は置いといて、ゲストを紹介しましょうか。

   まあ、流れから誰かはわかると思いますが、この方です。」

 

沙和「はーい、今回は沙和がゲストなのー♪」

 

sei 「はい、ということで、魏の鬼教官サワーマン軍曹こと沙和です。」

 

沙和「ぶー、沙和は鬼じゃないのー。」

 

sei 「でも新兵100人に訓練についてアンケートとったら、58人が鬼のようだったと答えてましたよ。」

 

沙和「あの玉なしウジ虫野郎ども、今度の訓練さらに厳しくするのー。」

 

sei 「まあ残りが、「ご褒美です♪」「新しい自分に気づけました」「もっと、もっと罵ってください」と、

   紳士な方々ばっかだったのですが、黙っておきますか。」

 

 

沙和「それじゃ、話を進めたいと思うの。

   あの程遠志って、秘密っぽいことペラペラしゃべっちゃてるけど、それっていいの?」

 

sei 「ああ。裏設定として、調子に乗りやすいってのがあって、勝利を確信したことで口が軽くなってしまったんですよ。」

 

沙和「ふーん、つまり、おしゃべり下衆野郎ってことなのー?」

 

sei 「ま、まあ、間違っちゃいないんですけど、その表現はどうかと。」

 

沙和「当たってるなら、全然問題ないのー。

   それより、今回の話って場面転換多くって、時間経過がわかりづらかったと思うのー。」

 

sei 「えーと、それについてはすいません。

   色々と細かく考えてはいるんですが、下手に書くとボロが出そうなので、そこは曖昧にしてます。

   なので読む時は、そこら辺はなんとなくで流して下さい。」

 

沙和「ウジ虫にも劣る、とんだびち糞野郎なの。

   そんな糞野郎は、お母さんのお腹に戻って、前世からもう一回人生やり直した方がいいの!」

 

sei 「ううう、そこまで言わなくても」

 

沙和「返事は、サーイエッサーなの!」

 

sei 「サーイエッサー、ううう・・・」

 

 

沙和「そんなどうしようもないびち糞野郎にも、ありがたいコメントがたくさんきてるの。」

 

sei 「ハイ、ソウデスネ、モッタイナイクライデスネ。」

 

沙和「あとがきについてのコメントが結構目立つの。」

 

sei 「ええ、皆さんのありがたい応援のおかげで、漢女道に目覚めてしまう所でしたよ。」

 

沙和「あはは、新境地の開拓なの。」

 

sei 「勘弁して下さい!

   まあ、こういったノリは嫌いじゃないので、今後もそういったのがあれば、遠慮せずコメントして下さい。

   自分も、十分楽しませてもらってます。」

 

沙和「ええー!!sei さんって、苛められて喜ぶ変態さんだったの!?」

 

sei 「あれ?かなりひどい曲解されてる? あの、沙和さん・・・」

 

沙和「近寄るんじゃないの、この変態ドM作者!!」

 

sei 「ちがーう、誤解だー!どっちかっていったら、ドSでって、何をいってんだ自分もー。」

 

沙和「そういう趣味はこんな公の場じゃなく、もっとひっそりとするものだと思うのー!」

 

sei 「だから、違うのに・・・ orz 」

 

沙和「ちなみに、ネタにはしっていない感想や真面目な意見も、もちろん嬉しいから、あまり気にせずどしどしコメントしてほしいのー♪」

 

 

sei 「ううう、今回はこれで終わりにしたいと思います。

   そしてこのまま、引きこもりたいです。」

 

沙和「それは好きにしていいから、とっとと次回予告するの。」

 

sei 「あの、私一応作者な」

 

沙和「返事は、サーイエッサーなの!!」

 

sei 「サーイエッサー! 次回は、戦いの続きとなります。

   一刀はどうなってしまうのか、戦いの行方は、果たして約束を守れるのか、でお送りしたいと思います、サー!」

 

沙和「よーし、よくできたの!この調子で、早くウジ虫くらいまでに昇格して見せるの!!」

 

sei 「サーイエッサー」

 

沙和「それじゃみんな、次回もちゃんと見てほしいのー。答えは、サーイエッサー、なの。」

 

 

sei 「もう、こんな役回りばっかヤダ・・・」

 

 


 
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