No.490301

IS学園にもう一人男を追加した ~ エピローグ

rzthooさん

最後まで愛読してくださった方、本当にありがとうございます。

2012-09-30 09:18:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1976   閲覧ユーザー数:1905

一夏SIDE

 

 

[カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ・・・]

 

"あの時"から二ヶ月が過ぎ、現在、俺は机に向かう数少ない生徒と共に、補習を受けている。受けないと、進級できないってさ・・・何故?

いや、俺が予習復習を欠かしたのがいけなかったのは間違いない。シャルにも言われたし。

だからと言って、面と向かって・・・

 

千冬

『もう・・・ダメだな』

 

一夏

「"ダメ"って何だよぉっ!?」

 

先生

「織斑君」

 

一夏

「・・・すみません」

 

我が姉よ。せめて、お叱りの言葉を頂きたかった・・・

まぁ、俺の事はさておき、"あの時"から二ヶ月が経った事は最初に言ったが、その後について少し、補習プリントに集中しつつ説明しよう。

俺が迷い込んだあの基地、『亡国企業』の隠れ家の一つだった事は知っていると思うが、あの基地はすでに無くなっている。どうやら、島の下に作られた基地全体が支柱が崩れたように瓦礫・・・というより、塵の山となっていたそうだ。

"内部では爆発が起きたんじゃないか"と、誰かが言っていたような気がするが、外見から見た島はまったく変わりがない。まるで、"核兵器並みの爆発が基地内だけ被害を及ばした"ようだった。

一応、日本の政府と更識家、そして更識家とキョウダイ関係にある家柄が協力して、調査しているようだ。

 

一夏

(そういえば、楯無さんって、留年したんだっけ?)

 

千冬姉の命令を無視して、俺達は学園を飛び出したため、かなり重い罰則が与えられる・・・はずだったが、その罰を全て楯無さんが"会長責任"として受けたのだ。そのせいで、また2年生から・・・

 

一夏

(楯無さんと同級生・・・変な感じだな)

 

[ゴォー・・・]

 

その時、校舎の外・・・第3アリーナから爆発音が小さく聞こえた。

 

一夏

(まだ特訓してるのか。鈴も大変だな・・・)

 

特訓といえば、箒も毎日、竹刀を振るってるみたいだけど・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第3アリーナ】

 

「はぁ、はぁ・・・もう無理っ」

 

セシリア

「何を言っていますの? ほら、寝ていては一生、BT操作を取得できませんわよ」

 

「勘弁してよ・・・」

(って言っても、根を上げてたら、そこまでよね・・・この『甲龍』を完璧に扱えないと・・・)

 

セシリア

(わたくしは弱い・・・だからこそ、教える側に立って"弱さ"を学ばなければなりませんわ・・・そうしなければ、強くなれません!)

 

(限界を超えられない!)

 

「よしっ! 続きをやるわよ!!」

 

セシリア

「ビシバシ行きますわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【篠ノ之道場】

 

[ブンッ!・・・ブンッ!・・・]

 

「・・・足りない」

 

このままじゃ、いつまで経っても私は私を超えられない・・・そして、また・・・

 

「紅椿・・・」

 

お前はまた、私を狂わすのか・・・

 

「いや、私は変わる! そして───」

 

一夏の背中を守れる"奥ゆかしい女"になるんだ・・・!

 

 

 

[カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ・・・]

 

そういや、各地に潜り込んでいた『亡国企業』のエージェント達は、拘束されたって聞いたけど、まだ組織自体は完璧に壊滅してないんだよな・・・まっ、即戦力を失った組織じゃ、身を隠すのだけで精一杯だろうって、楯無さんは言ってたし気にしなくてもいいか。

気にするべきは捕らえられた"マドカ"と"もう1人のクローン"の処分だ。被害を受けたイギリス、ドイツがその処分を決めようとしたのだが、『亡国企業』の被害を受けた国は過去も含めて数知れず。2人の争奪戦が論説で始まった。

だが、その論戦はすぐに沈静化した・・・全国に"篠ノ之束"名義の脅迫状が届いたからだ。"騒いだら消すよ♪"の一文だけが・・・

でもまぁ、政府の全員はその一文にビビッたのだが、さすがにテロリストを野放しには出来ない。そこで名乗り出たのが千冬姉だった。

さすが『ブリュンヒルデ』とまで言われた戦乙女。千冬姉の言った事に全国の首脳達は文句も漏らさず、ただただ頷くだけ。それで2人の保護司が決まり、今では・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【織斑邸】

 

千冬

「お名前は?」

 

マドカ

「お、織斑・・・マドカ・・・です」

 

"大""小"が机を間に正座。どうやら、高校面接のシミュレーションをしているようだ・・・

 

千冬

「堅い。肩の力を抜け」

 

マドカ

「な、何故、私が、学校などに・・・」

 

千冬

「それが、条件だからだ」

 

マドカ

「くっ・・・」

 

千冬

「シミュレーションして、もう2時間か・・・未だに、名前の紹介から進んでいない」

 

マドカ

「うっ・・・な、なら、姉さんが見本を見せてください」

 

千冬

「っ・・・い、良いだろう!」

 

マドカ

「・・・」

 

千冬

(どうする・・・どうする! 面接なんてやった事ないぞ! IS学園には束のコネ的なもので入ったようなものだし・・・いやだが、ここで威厳を失っては・・・)

[ドキドキドキドキ!]

 

マドカ

「・・・はぁ」

(これは・・・期待できそうにない)

 

 

 

 

 

 

 

 

【シュヴァルツ・ハーゼ(仮)基地】

 

ラウラ

「ふぅ・・・」

 

『シュヴァルツ・ハーゼ』仮基地にて、明日、日本に発つラウラが準備に一息をつくため、軍服のボタンを2つ外し、休憩室に入る・・・

 

[ウィン・・・]

 

リリヤ

「た~いちょっ!」

 

ラウラ

「っ!? な、何だ、いきなり!?」

 

入った直後に、背後から気配を消して、共に室内に入ってきたリリヤに抱きつかれた。ラウラは驚き、後ろに気を向けていると、次は前・・・室内から多量のクラッカーの音が鳴り響いた。

 

ラウラ

[パチッ・・・パチッパチッ]

 

目をパチクリさせるラウラの頭に、クラッカーから飛び出した紐が乗っかり、広くもない休憩室にいる"『シュヴァルツ・ハーゼ』隊員全員"が一斉に・・・

 

全隊員

「ラウラ隊長ー!! 昇格おめでとうございまーす!!」

 

ラウラ

「え、あ・・・ありがとう・・・」

 

隊員1

「ほらほら、主役様はここに座ってください!」

 

ラウラ

「あ、ああ・・・って、クラリッサ! これは一体なんだ!?」

 

クラリッサ

「見ての通り、隊長のレセプションですが」

 

ラウラ

「た、確かにそうだが、こんないきなり・・・って、クラリッサだって昇格しただろ!」

 

クラリッサ

「チッチッチッ。何を言っているのですか? 今はそんな事はどうでもいいのです!!」

 

ラウラ

「はぇ?」

 

クラリッサ

「今は隊長の・・・ラウラ"中佐"の昇格パーティです!! 私がどれだけ、出番を惜しんで時間を懸けてきたか・・・」

 

ラウラ

「・・・もしかして、出番が少ないから見せしめに私を・・・」

 

クラリッサ

「そんな事はありません!! 私は隊長の活躍(萌え)を聞ければ、それだけで幸せです!!」

 

ラウラ

「そ、そう、か・・・すまない」

 

リリヤ

[ジ~~~]

 

隊員2

「? リリヤ、どうしたの?」

 

ラウラ

「え?」

 

リリヤはラウラの胸元・・・ボタンが外された軍服と肌の隙間を凝視していた。ラウラが振り向くと、リリヤは目を光らせて・・・

 

リリヤ

「おりゃ!」

 

ラウラ

「うひゃっ!?」

 

リリヤ

「あれ? ブラしてないんですか? 無防備すぎますよ、隊長~」

 

ラウラ

「や、やめっ───」

 

軍服の隙間から手を突っ込み、小柄な体躯に似つく胸を揉んだ。ラウラはリリヤの拘束を振り払うことが出来ず、ただただ愛らしい声を上げるだけ。

すると、周りの隊員達も抑圧されて、ラウラに群がっていった・・・

 

リリヤ

「あらら・・・」

 

その群れから持ち前の小柄さで抜け出したリリヤは、自分が招いた事に責任の影を一切見せず、ただラウラを哀れむだけ。そして、傍観に徹していたクラリッサの下へ。

 

リリヤ

「クラリッサ副隊長も昇格おめでとうございます」

 

クラリッサ

「ありがとう・・・そっちも"降格"おめでとう。リリヤ二等兵」

 

リリヤ

「お、おめでとうはちょっと・・・あはは~」

 

ラウラ

「ちょ、やめ・・・んんっ!」

 

クラリッサ

[ピクッ]

 

ラウラ

「ど、どこに、手をぉ・・・?」

 

クラリッサ

[ゴゴゴゴゴゴッ!]

 

リリヤ

「副隊長?」

 

クラリッサ

「・・・ブホァ!」

 

リリヤ

「副隊長!? 副隊長ぉー!?」

 

 

 

・・・まぁ、仲良くやってるみたいだな。

 

先生

「はいっ、これで冬休みの補習は全て終わりました。また3学期に会いましょう」

 

いや~、終わった終わった・・・

 

女生徒1

「織斑君、お昼、暇?」

 

女生徒2

「一緒に学食行かない?」

 

一夏

「ん? おう、いいぞ」

 

"よしっ"とガッツポーズをする2人の女子。

そうだよな~、あんな長い補習受けてて、お腹が空かないはずがないよな・・・

 

一夏

「あ、わりぃ。教室に忘れ物が」

 

女生徒1

「う、うん。じゃ、先に席を取っておくから」

 

そう返してくれた女子達は先に学食へ小走りで向かっていき、俺は反転して教室に向かう。

 

一夏

(今年度は色々ありすぎたけど、来年度から蘭が中学以来の学友になるのか・・・)

 

どんな新入生が来るのだろう・・・できれば、面倒事が起こらなければいいけど・・・

 

一夏

("面倒事"って・・・獅苑のが移ったか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

【五反田食堂の上の階・・・蘭の自室】

 

「♪~」

 

新品同然のIS学園の制服を一足先に着た蘭は、立て鏡の前でクルッと一週回り、その姿にご満悦の様子。

その部屋の扉の隙間から、覗く二つの目・・・兄、五反田 弾が心配そうな眼差しで見ていた。

 

(一夏・・・頼むから、昔よりは感が鋭くなってくれよ・・・じゃないと)

 

「弾っ! 早く降りて来い!」

 

下の階から・・・食堂から男の声。

 

(じいちゃんが、始動するから・・・頼むっ!)

 

 

 

 

 

 

 

【フランス・・・ディディア邸】

 

シャルロット

「お世話になりました」

 

レーア

「そんな畏まらないでいいわよ。また、いつでもおいで」

 

ジュン

「またね、シャルロットさん」

 

シャルロット

「うん。ジュンもね・・・あと、レーアさん。"あの話"の答え、もう少し待ってくれますか?」

 

レーア

「そう・・・そうね。ゆっくり考えなさい」

 

そうレーアは微笑み返し、シャルロットはディディア邸を後にした。

静けさが戻ったディディア邸では・・・

 

ジュン

「"あの話"って?」

 

レーア

「養子の件。お母さんとお父さんに連絡したら、大いに喜んでくれたんだけど・・・まっ、そういうのは本人が決めるもんよね」

 

ジュン

「そ、そうだよね・・・」

 

レーア

「歯切れ悪いわね・・・どしたの?」

 

ジュン

「・・・姉ちゃん。相談があるんだ」

 

レーア

「恋路?」

 

ジュン

「違う」

 

バッサリと否定したジュンに、レーアはつまらなさそうに腕を頭の後ろにやる。

 

レーア

「な~んだ、つまんないの~」

 

ジュン

「俺は千冬様一筋だ」

 

レーア

「あっそ・・・それで、なに?」

 

本題に戻した途端、ジュンの表情は強張り始め・・・

 

ジュン

「俺を・・・俺をIS学園に入れさせてくれ!!」

 

レーア

「・・・」

 

ジュンの発言にレーアは面を喰って・・・おらず、逆にテンションが上がって───

 

レーア

「姉さんに任せなさい!! 丁度、ジョンに合う私のおさがりがあるから!!」

 

ジュン

「あっ、いや、出来れば女装は・・・って、聞けー!」

 

 

 

 

 

 

 

【アメリカ・・・留置所】

 

ナターシャ

「・・・ん? イーリ?」

 

壁にもたれかかっていたナターシャは、牢の向こう側から訪問してきたイーリスに声をかける。

 

イーリス

「よぉ、ご機嫌は?」

 

ナターシャ

「良いわけないでしょ。毎日が退屈よ・・・まぁ、それも後三日で終わるんだけど」

 

イーリス

「そうか・・・もう逝っちゃうんだな」

 

ナターシャ

「違うわよ! 勝手に殺さないでくれない。"釈放"の方だから・・・それで、"あの子"は?」

 

イーリス

「やっぱ、"あの時"の貢献が良かったみたいでな、凍結は解除されるそうだ。当分は倉庫送りだが」

 

ナターシャ

「それでも良いわよ・・・"あの子"と会えるなら、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

【更識家別荘】

 

「ご飯ですよ~」

 

ラン・ルン・ロン

「ワンッ」

 

獅苑が本音に渡した"赤い勾玉と水色の小石のブレスレット"から、三匹の炎犬が飛び出し、簪が持ってきた小皿の上に乗せられたドックフードを庭で仲良く食べ始める。

 

(ナノマシンでも、ご飯は食べるんだ・・・)

 

そんな疑問を持つ簪だが、三匹の可愛らしさを見ていたら、全てが吹っ飛ぶ。

そして、三匹とも小皿に乗ったドックフードを綺麗に平らげて、三匹とも別の行動を取り始める。

 

ラン

「くぅ~ん」

 

ランは、縁側で腰掛けていた簪の膝の上で甘い声を出し、目を虚ろにする。人懐っこいランだが、この行動が取れるのも簪に対して心を開いてるからである。

 

ルン

「・・・」

 

ルンは、木の木陰に移動して、風で揺ら揺らと揺れる木の葉を眺めている。どうやら、ルンは猫と似ている部分があるらしい。

そして、ロンは・・・

 

「簪、散歩に出かけ───

 

ロン

「っ、がうっ!!」

 

「おっと・・・!」

 

襖から優が出てきた瞬間、気配を感じ取ったロンが飛び掛かり、避けた優は"またか"とちょっと嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「相変わらず、血の気が多いね・・・よしっ! やるか!!」

 

ロン

「がうっ!!」

 

例え、犬相手でも売られた喧嘩は買って出る優。"楯無"となった優とロンは、種族を超えた喧嘩をおっぱじめた。

 

「あらあら」

 

「あ、飽きないよね。ホント・・・」

 

ラン

「ワンッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

【ミヨー橋・・・(南フランスのミヨー近郊にある世界一の橋)】

 

オータム

「・・・んで、これからどこに行く?」

 

スコール

「そうね~・・・今度はどこに旅行しようかしら」

 

雲海より高い位置に敷かれた橋のレールをスポーツカーが駆けている。前席にサングラスをかけるスコールとキャップを被るオータム。そして後席には・・・

 

B

「有り余った財産を使うのはいいが、ここ空気薄くねぇか?・・・あむっ」

 

W

「・・・くも・・・あむっ」

 

一本の綿雨を2人で頬張る『B』と『W』。正確には、綿雨を持つ『B』が車から顔を出している『W』に差し出していた。

 

スコール

「"ヴィヴィ"、乗り出すと危ないから頭を引っ込めなさい」

 

W

「・・・[コクッ]」

 

スコール

「素直で良い子ね。で、次の目的地だけど・・・希望はある?」

 

B

「ないなら、日本に戻ろうぜ。"店"をほったらかしにしちゃマズイしな」

 

スコール

「あのお婆さんから譲り受けたパン屋さん? へぇ~、店長の責任ってやつ?」

 

B

「そんなところだ」

 

オータム

「こりゃ驚きだ。お前に"責任感"っていうもんがあったなんてな」

 

B

「うるせぇ・・・ほら、さっさと飛ばせ!」

 

スコール

「言われなくても!」

 

オータム

「おおぉ!!」

 

スピードメーターが300を振り切り、橋に残留する雲海の塵を吹き飛ばしながら加速する。

 

[ビュンッ!]

 

B・W

「あ・・・」

 

『B』が『W』に差し出した綿雨が『W』の目の前で棒から抜けて、空に舞い上がった・・・

 

W

「・・・うぅ」

 

スコール

「オータム! ISで取りに行って!」

 

オータム

「はい!?」

 

B

「さっさと行け! 泣かれたら、取り返しが付かなくなるぞ!!」

 

W

「う・・・ひっく・・・!」

 

オータム

「わ、わぁったよ! 私が行けばいいんだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【???】

 

「う~ん。やっぱり行き詰るな~・・・もう休憩!! くーちゃん、お茶~!」

 

くー

「どうぞ。束様」

 

どことも知れぬ、謎の室内。そこで束はテーブルに腰掛け、くーが出したお茶を啜りながら、先まで研究していた"コア"の情報を脳内で再生する。

 

(う~ん・・・やっぱり、"原石"を持ち出してこないと、先に進めないのかな? 今の私ならピュッピュピュ~イ!なんだけどなぁ~)

 

くー

「束様。通信が入ってます」

 

「ん? げっ! "イカレポンチ"からだ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

【とある喫茶店】

 

山田

「それにしても、博士はずっと研究室に篭りっきりだけど、ご飯はどうしてるんでしょうか?」

[キュッキュッ]

 

ユウキ

「ん~・・・別段、気にしなくてもいいんじゃないんですかー?」

[ピコピコ]

 

山田

「そうは言っても、博士だって人なんだし・・・あと、客席に座ってないで吹き掃除を手伝ってくれません?」

 

ユウキ

「働いたら負け」

 

山田

(・・・失業者)

「そういえば、ユウキさんって僕が博士の助手に就いた後に来ましたけど、博士とは随分と仲が良いですよね。前からお互い知り合いみたいな感じで」

 

ユウキ

「まぁ・・・祖父だし」

 

山田

「あ~、なるほど・・・」

[キュキュッ・・・キュッ]

「ぇ・・・」

 

パリィンッ・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【生徒会室】

 

楯無

「はぁ・・・来年度はこの資料の山と向き合わなきゃならないのか~。虚ちゃんも一緒に留年しない?」

 

「しません。会長にはちゃんと会長らしくやっていただけないと」

 

楯無

「あ~あ、来年に良い後輩が来てくれたらなぁ」

 

駄々をこねる楯無は、会長席から立ち上がり、窓の向こう側を見つめながら、窓際に置かれた"氷中花"を撫でる。

 

「その氷、全然とける気配がないですよね・・・どこで手に入れたんですか?」

 

楯無

「ん? どこって・・・"あの時"よ。"あの時"」

 

 

 

[ガラガラ・・・]

 

一夏

「あっ」

 

本音

「オリムーだぁ」

 

教室に戻ってくると、誰も居ないはずの無人の教室に、何故か机を運んでいたジャージ姿の のほほんさんがいた。その机は、以前まで居たもう1人の男子生徒 獅苑の席があった場所に置かれた。

 

一夏

「何してたんだ?」

 

本音

「綺麗にしてたぁ!」

 

垂れた両袖を振り上げた のほほんさん。机を見れば、窓から入る日光を反射して、その綺麗さをものがたっている。

 

本音

「よいしょっ・・・」

 

のほほんさんは、どこかしらから取り出した30cmぐらいの氷柱を机の上に置いた。その氷の中に一輪の淡い青紫色の花が咲いていた。

これは・・・

 

一夏

「紫苑花?」

 

本音

「そうだよぉ~」

 

"獅苑"に因んで"紫苑"ねぇ・・・ダジャレかいっ

突っ込みの代わりに、その氷中花に触れる。

 

一夏

(そこまで冷たくない・・・)

 

氷のヒンヤリさがなく、ガラスに触れているような感覚。

 

一夏

「でも、こんな物を置いたら、不吉じゃないか?」

 

本音

「だいっじょーぶ! 先生から許可はもらったからぁ!」

 

一夏

「いや、そういう意味じゃ・・・だいたい、どうして急にこんな事を?」

 

本音

「紫苑花の花言葉ってな~んだ? 4つぐらいあるんだけどぉ」

 

花言葉?・・・紫苑花の花言葉って何だ?

俺が知識のないものを脳内で手探りをしながら考えていると、獅苑の隣の席(のほほんさんの席)に座り、氷中花を見つめて膝に頬杖をつく。

 

本音

「でも、本人が居ないとつまんないよねぇ~」

 

一夏

「・・・」

 

急にしんみりとした雰囲気に、俺も口をつむぐ。だが・・・

 

本音

「その分、オリムーには"面倒事"を起こしてもらわなくっちゃ♪!」

 

一夏

「ええぇ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獅苑

「クシュン・・・さむっ」


 
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