No.487507

リリカルなのは×デビルサバイバー As編

bladeさん

7thDay
救うための手段

2012-09-23 03:57:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1554   閲覧ユーザー数:1502

 

 カイトが一人市街地を歩いていると、携帯に通信が入った。

 

『カイトくん、カイトくん!?』

「なんですか、耳元で大声出さないで欲しいんですけど」

 

 通信相手――エイミィ・リミエッタにそう返すと「あ、ごめん」とエイミィが謝った。

 

『でも、なんでカイトくんがここに?』

「納得、いかないんですよ」

『へ?』

「訳の分からない力に振り回されるなんて、そんなのごめんだし、納得いくものじゃない!」

 

 叫ぶようにカイトは言い、爆発の起きている市街地へと近づいていく。

 

『よく、分かんないけど……それなら、一つ頼みたいことがあるんだ』

「頼みたいこと?」

『うん。カイトくんの近くに人の……多分、一般の人の反応があるんだよ』

「それ、危険じゃないか?」

 

 身を守る術がない一般人が、戦場にいるだけで、そこはかなり危険な場所となる。

 ビルなども倒壊するだろうし、戦いの余波で炎とかも飛んでくるかもしれない。

 しかし問題はそれだけではなくて、その一般人を守ろうとして、戦っている者が傷つく可能性だってあるわけだ。

 

『そうだね。だからカイト君でその人達を保護して欲しいんだよ。クロノくんも、なのはちゃん達も今、手が離せなくて。カイト君が接触したあとに、私達でその人達を保護するから』

「まぁ、それぐらいなら……。道案内お願いできます?」

『了解! 任せてよ!』

 

 エイミィの指示に従い走り続けるが、中々見つけることができないでいる。エイミィ曰く、彼等(?)もまた市街をところ構わず走り回っているらしい。現在の状況に恐怖し、ところ構わず走って、逃げ回っているのかもしれない。心情は理解することはできるが、追いかけているカイトからすれば、面倒でしかない。

 

『気をつけてっ! なのはちゃん達に……戦闘区域に近づいてる!』

「厄介だな……」

 

 戦闘区域に近づいていくのもそうだが、空を飛んだりしている人の姿を、普通の人間が見たらどう思うか? それが一番問題だといえる。人間、常識外の現実を見ると拒絶し、現実から逃げようとするものだ。それ自体は仕方ないことなのかもしれないが、その行動の果てに死が待ち受けているのなら、話は別だ。

 今までのカイトなら、どうでもいいと割り切っていただろうが、今は違った。

 

「悪魔の力は使わず、けれども、できるだけ急いでか。中々に大変だな」

 

 悪魔の力も当然、普通の人にとっては脅威だ。いきなり、化物の近くに居る人間に「助けに来た」と、そう言われて、素直に頷く人間がどれほど居るのだろうか?

 

 要救助者である、一般人を助けるために移動する間に、カイトはエイミィから近況報告を受けた。

 なのは達がシグナム達、つまりは闇の書の守護騎士達と戦おうとしたその時、割り込んだ人物達が居た。それは、仮面の戦士と名乗っている男だった(PT事件に登場した者とは別人である)途中の話を端折ることになるが、その仮面の男の行動により、守護騎士達は全員倒れ、はやては闇の書に飲み込まれてしまったのだという。

 

「その結果が、あれか」

 

 中に浮かぶ、一人の銀髪の女性。

 全身を黒い服装に身を包んだあの女性は、その圧倒的な力で、なのはとフェイト、ユーノとアルフを相手に、互角どころかそれ以上の力で圧倒していた。

 

 あれをどうにかしなければならないと考えると、中々に面倒だ。と、カイトが思った時、エイミィが少し大きな声を上げた。

 

「カイトくん! 次の別れ道を左に! そこに要救助者が居るはずだよ!」

「了解! 確保したらまた連絡をする」

「うん、よろしくね」

 

 携帯をポケットに突っ込み、エイミィに支持された通り、別れ道を左に曲がった。そこに居たのは……。

 

「あ!」

「え!?」

「月村さんと、バニングスさん!?」

 

 同級生である、アリサと、すずかの両名だった。

 学園指定の制服を着ていることから、はやてをお見舞いした後の塾帰りに、結界に囚われてしまったということなのだろう。

 

「は~、良かった……」

 

 アリサはそう言うと、その場に座り込んでしまった。すずかも同様に座り込んでいる。

 

「良かった?」

「だって、いきなり辺りの様子がおかしくなったと思ったら、辺りに人が居なくなって……。それに、ビルがいきなり崩れたりもするし。漸く人に、それも知り合いに会えたんだもの……」

 

 何時ものツンツンとした様子は鳴りを潜めている。それだけこの状況が怖くて、知り合いに会えて安心したということだろう。

 

「って、そんな座り込んでる場合じゃないだろっ。さっさと避難するぞ」

 

 カイトはそう言うと、二人の手を取り立ち上がらせる。それと同時に、カイトのポケットにある携帯が震えた。 アリサの手を掴んでいた右手を離し、携帯を手に取る。

 

「はい」

『カイトくん、要救助者は?』

「あ~……。少々、厄介なことになってて」

『厄介なこと? え? ちょっとまって、気をつけてカイトくん! そっちにスターライトブレイカーが!』

「スターライトブレイカー? なんだそりゃ」

 

 携帯を耳に当てたまま周りを見渡すと、例の銀髪の女性がとても大きな光を集めていた。

 

「え? 何あれ」

 

 だが、そこまでは別にいい。問題は、その光がカイト達の方へと向いているということだ。

 

『気をつけて! それでフェイトちゃんは、なのはちゃんに負けたんだよ!!』

「気をつけろって言われても……!」

 

 カイトは自身の後方……すずかとアリサを見る。一人ならともかくとして、この二人を守るとなると話は別だ。

 そして、その二人も目の前にある、ピンク色の光に気がついていた。

 

「何、あれ……?」

「光が……」

 

 呆然と立ち尽くす二人を見てから、声を荒げる用にカイトは言う。

 

「エイミィさん! 早く月村さん達を転送してくれっ!」

『……駄目! あの、集束魔法のせいで、座標がどうしてもずれちゃうんだよ!』

「くっ……。って、おい待てよ……」

 

 眼前に、白い服を着たツインテールの少女と、黒い服装を纏った、金髪の少女がカイト達のいる方へと、やってくるのが見えた。その人物達は間違いなく、なのはとフェイトだ。

 

「エイミィさんっ! 二人が……」

『わかってるよっ。でも、通信も遮断されてるんだよっ!』

「なんだってー! って、どうして電話は通じるのか」

『魔力で電波は妨害できないし、今張ってる結界は人払い用でしかないから』

「なんともまぁ……だが、やるしかないかぁ」

 

 カイトはCOMPを取り出し開いた。

 

「ハハ……。出来れば、非日常なんて知らないほうが、幸せなんだけどなぁ」

 

 カイトは二人を庇うように、前に立ち何も持っていない、右手を前に向ける。

 

「ちょっとあんた! 危ないってば!」

 

 アリサがカイトの腕を引っ張ってこの場から移動しようとする。そんなアリサの行動を止めたのは、カイトではなくてすずかだった。

 

「大丈夫だよ、アリサちゃん」

「すずか? 何言って……まさか、コイツも?」

 

 何かを悟ったのか、アリサは訝しむようにカイトを見る。カイトはカイトで、先ほどのアリサの言葉から、数日前に出した一つの結論があっていることが分かってしまった。

 

「まぁ、非日常は意外と近くにあるものか」

 

 銀髪の女性の視線が、カイト達へと向けられる。そして、女性の口がとある言葉を紡ぐ。

 

 

 "スターライトブレイカー"と。

 

 

 後にカイトはこう語る。

 

「えぇ、ピカーッと光ったんですよ。えぇ、えぇ……多分100M以上離れてたはずなんですけどね。一気に距離を詰めて、ピンク色の光が司会を覆ったんですよ。えぇ……そうですね。あのあとなのは達の行動を知ったんですけど、フェイトやユーノ達が速攻で逃げた気持ちがよくわかりましたよ。直撃受けたら、死にそうですもん。フェイトには同情しましたよ。ていうか、なんなんでしょうね? 非殺傷機能って」

 

 

 そんな馬鹿な話は置いとくとして、スターライトブレイカーのピンク色の光は、カイトたちを消し去らんと迫ってきたいた。

 なのはがフェイトに対して放ったSLBは、非殺傷ということもあり、命に別状はなかったらしい(このSLBを見る限り、疑わしいものである)だが、今回は違う。非殺傷なんて存在しない、あくまで殺すための光だ。

 

「……来い」

 

 カイトが右手を前に突き出した時、黒い穴が空いた。その穴は悪魔を召喚する際に開く、異界の穴のように思えた。

 その穴の中に、一つの光が見えた。巨大な人の目……その穴をもっと見てみると、なにか筒のような形のものに、無数の目がついているのが分かった。

 

「現状じゃこんなものか。だが十分だ、相殺しろ……バビロンの大罪」

 

 黒い穴から閃光が放たれる。強大な魔力を帯びたその一撃は、SLBを相殺するどころか、押しのけ……銀髪の女性へと向け押し進むっ!

 

 そして、爆音が鳴り響いた。

 

 カイトの一撃は間違いなく、銀髪の女性に当たった。女性の安否を確認する前に、再度携帯を手に取り、エイミィへと連絡をとる。

 

「エイミィさんっ!」

『わかってるよ! 二人をアースラに退避させる!』

 

 携帯をしまうと、カイトはすずかとアリサの方へと向き直る。

 

「カイトくん、あんた……」

「話は後で。アリサ、多分お前が一番知りたいであろうことも、直ぐに分かるさ」

「それって……?」

 

 話は、それで終わりだった。

 すずかとアリサの足元に、光り輝く方陣が現れる。そして、その光は二人を包み込むようにして暫く経つと、二人の身体は薄くなり、そして最後には消えていった。

 

「これで一先ずは終わりか……」

 

 二人が安全な場所へと、アースラへと移動した事を確認すると、未だ煙が払われぬ、空へと目を向ける。

 

「カイトくん!」

「悪魔、使い……」

 

 なのはとフェイトが、カイトの近くに降り立った。先ほどのカイトが放った光を見て、ここにやってきたのだろう。

 

「今の光は……?」

「一応俺がやったが、あれで終わるほど、甘くないんだろうなぁ」

 

 煙を払うために、マハザンを放つ。ダメージとしては、極小なものでしかないが、マハザンダインを使えない以上、煙を払う方法としては、これが一番だろう。

 

「やったって……もし今ので、あの人が死んだらはやては!!」

「さっきの一撃を避けようともしなかった。これだけ距離が離れてるんだ。避けるぐらい造作も無いはずなのにな? その事からあの一撃を耐え切る自信があった。そうだろう?」

 

 煙の中から一人の女性が現れる。所々服が破けているが、目立った外傷は無さそうだ。

 

「その力……悪魔使いか」

「……やっぱり知ってるのな。悪魔使いって存在をさ」

 

 その女性を睨みつけるように、カイトは言う。古の時代から存在する闇の書の意思が悪魔使いを知っているのだ。確かに、悪魔使いという存在は居たのだろう。

 

「闇の書の意思さん! もう、やめてくださいっ。私たちは、はやてちゃんを傷つけたい訳じゃないんです!」

「……っ」

「(ん……?)」

 

 闇の書の意思。そう言った時、確かに目の前の女性は、顔を歪めた。まるで、その名で呼んでほしくない、とでも言うように。

 だが、そんな表情をしたのも束の間、先ほどのような無表情に戻ると、カイトを見た。

 

「悪魔使い。そして何より、主が大切に思う友人の一人。できうるならば、傷つけたくはない。殺したくはない……」

「なら! 矛を収めろ。んでもってはやてを返せば、それで終わりだ」

「そうはいかない。主の幸せこそが、私の幸せであり役目だ」

 

 闇の書の意思は、その手に黒い球体を形作る。

 

「闇の中で、主とともに安らかな眠りについてくれ。あの、すずかという少女とともに……」

 

 闇の書の意思は、球体をカイトへと投げつけた。しかし、カイトもそれを黙って食らうはずはない。

 

「召喚っ、セイリュウ!」

 

 青き龍を召喚し、その背に乗ることで回避をする。セイリュウは全力を持って、空へと駆け上がっていく。

 

「気をつけてっ、球体が追っていってる!」

 

 なのはの言葉を聞き、カイトは後ろを振り向くと、確かに球体はカイトを追うようにして、迫っていた。

 

「メギド」

 

 右手を突き出し、メギドの魔法を放つ。球体はメギドにより、消滅する。

 

「気をつけろ、サマナー! あの黒い球体、なにか嫌な予感がするぞ!」

「わぁってる! さっきのあの女の台詞も気になるからな、用心することにこしたことはないさ!」

 

 気にするべきは、「殺したくない」という言葉と「眠りについてくれ」という言葉である。後者だけであれば、眠り=死という図式も成り立つが、前者の言葉もあるため、その図式は成り立たない。だとすれば、先ほどの言葉の意味を知る必要がある。

 

「……」

 

 カイトが後ろを振り向くと、先ほどまで戦っていた、なのはとフェイトを無視して、闇の書の意思はカイトを追いかけてきていた。恐らくは、カイトを眠りにつかせる事を、優先しているのだろう。

 闇の書の意思を警戒しながら、逃げ続けている時、再び携帯に着信が来ていた。

 

「はい!」

『カイトか! そのまま、海の上へと移動するんだ! そうすれば、被害も最小限になるし、ビル群が行動を妨げることもないはずだ!』

「分かった、セイリュウ!」

 

 クロノの指示に従い、カイトは海上方面へと移動していく。それに続くように、闇の書の意思、フェイト、なのはの順で移動する。

 だが当然、移動中も唯では済まない。なのはとフェイト達の攻撃を払いながらも、隙を見てはカイトに対して攻撃を仕掛け、あの球体も飛ばしてくる。それも的確にだ。

 

「中々の強敵だな。戦闘経験という意味では、主を上回るか」

「いや、一週間そこらの奴と比べても……戦闘経験の数なら、クロノにも負けると思うし。密度なら勝つ自信はあるけどさ」

 

 ザンにジオの魔法を放ちながらカイトはそう言った。

 

「全盛期なら、戦闘経験とか関係なしに勝てるだろうが……っ!?」

 

 紅い短剣のようなものが、カイトの頬をかすり、かすった場所から血が垂れた。眠りにつかせるためなら、どんな方法も厭わない、ということだろう。

 血を拭い、ディアを唱えて傷を癒しながら、牽制をすることも忘れはしない。

 

「さて、どうするかな? はやてを助けるには、あの闇の書の意思をどうにかしなければならないが、かといってやりすぎると、はやて共々消滅させることになる。かといって、うまく倒しても、どうやってはやてを救出するか……」

 

 思いつくのは、イザ・ベルを撃退した時のような感じの方法を取るのが一番なのだろうが、ぶっちゃけ救出する方法がない。

 

「……」

「……」

 

 その事に対して、頭を悩ませていたが、ふとカイトがこう言った。

 

「とりあえず倒そう。いつもそうやって成功してたし」

「サマナー……いいのか、それで」

「いやまぁ、なんとかなるだろ。うん、きっと」

 

 とてもあれな会話をしている間に、海上へと移動したのを見計らい、百八十度ターンをして、闇の書の意思と対峙をする。

 

「一つ聞きたいことがある」

「なんだ?」

 

 カイトの問いかけに答えつつ、闇の書の意思は攻撃をやめない。

 

「会話中は攻撃をやめて欲しいんだけどなぁ!」

「これが今の私だ。全てを破壊するまで、破壊を止めない。それが一であり、全だ」

「くだらないな……っ」

 

 護りの盾で攻撃を防ぎつつ、移動による攻撃回避も忘れない。端から見ると3Dのシューティングゲームのようである。

 

「それに、目的を果たすまでは、眠りになんてつくわけにはいかないんだよ!」

「ならば、力で言うことを聴かせることにしようか……」

 

 そういうと闇の書の意思は、それまで以上のスピードでカイトに近寄る。

 

「くっ、うわ!?」

 

 セイリュウは確かに、移動速度はかなり高いと言える。しかし、その巨体通り小回りはきかない。今回はそれが裏目に出た。

 カイトとセイリュウに近寄ると、紅い短剣でセイリュウを牽制し、動きを制限すると、接近戦に持込、カイトを攻撃し始めた。

 

「記録通りか。やはり、接近戦を苦手としているな?」

「記録通り……? そうか、古代ベルカにも悪魔使いが!」

 

 その事に気づき、『厄介だ』と思い、次の瞬間には嬉しそうに笑い始めた。

 

「何が可笑しい?」

「可笑しい? ちがうなっ、欲しい情報を持っている奴が、目の前に居る。それが嬉しいんだよっ!」

 

 そう言った時、闇の書の意思を狙い、ピンク色の砲撃が撃たれた。

 

「むっ」

「うわっ!?」

 

 カイトをも巻き込むかと思われたその一撃は、カイトと闇の書の意思の一撃により、相殺された。

 

「なぁのはぁぁぁぁ! 何をしやがる!」

「ごめんなさい! でも、カイトくんならどうにかなるかな? って」

「んなことは……むっ?」

 

 闇の書の意思の横から、金色の刃が通る。その一撃は当然、フェイトが行ったものだ。

 

「避けられた……?」

「だが隙はできた。ジオダイン!」

 

 豪雷が闇の書の意思に向かい、身体に直撃はしなかったが、回避しきれず、右手を燃やした。

 

「グッ……!」

「なるほど、な。確かに強いが、耐久力はそれほどでもないのか。なら、戦い方はいくらでもあるか」

 

 COMPを開き、新たな悪魔を召喚しようとした所、携帯に再び着信が入った。

 

「はい、どちら様でしょう」

『カイトか、分かったぞ! あの子を助ける方法が! その為にも、あの闇の書の意思を倒すんだ!』

「どういうことだ?」

『八神はやては、あの闇の書の意思に囚われている。なら、その拘束力を弱めて、こちら側に引きずり出してやればいい』

「なるほど……でも、倒すって言っても中々に加減が厳しいんだがな」

 

 携帯で会話しつつ、闇の書の意思の攻撃を回避する。本来であれば、回避するのも一苦労だが、それを可能にしているのは、なのはとフェイトのおかげだ。

 両者の攻撃のお陰で、闇の書の意思もカイトに攻撃を集中する事が出来ずに居る。その為に、カイトもこうしてクロノと会話が出来ているわけだ。

 

『戦闘不能程度でいい。拘束力を弱めるんだ、そして……カイト。キミと、月村すずかがはやてに対して呼びかけるんだ。そうすれば、八神はやての精神が目覚めて、闇の書の意思の呪縛から開放されるはずだ』

「俺と、月村さんの呼びかけ……?」

『八神はやては孤独だったと"聞いた"。それを救ったのが、守護騎士達であり、キミであり、月村すずかだ。切掛は単純なものだったかもしれない。しかし、彼女にとってはとても大きな、大切なものだったはずだ。そう、両親が死に、新たな家族が出来たとはいえ、初めて出来た友人だったんだ』

 

 クロノにそう言われて、カイトは納得していた。ヴィータは、かつてこう言っていた「ずっと携帯の前で返信待ってるんだぞっ!」と。あれは比喩でも何でもなかったわけだ。

 そもそも携帯の前で返信を待つとか、初めて彼氏、彼女でも出来たのか? とかいう、話しである。

 

『月村すずかには、もう説明済みだ。あとは、キミ達が準備を終わらせるだけだ』

「すずかはともかく、俺はやらなくて良いような気がするけど、まぁいい。やって見る価値はあるか」

 

 通話を切って、手に持ったCOMPを操作して、新たな悪魔を召喚する。

 

「さて、やろうか。後悔を出来るだけしないように」

 

 闇の書の意思に向き直り、カイトは言った。

 どうやら、カイトの中でもはやての存在は中々大きいようだ。


 
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