第七十九技 意味があるという事
キリトSide
~約半年前~
俺は今、街はずれの広場に向かっている。俺の目的は広場にある芝生だ。あそこは昼寝には丁度良いからな。
今日のアインクラッドの気候は最高の気温と最高の気象設定だから体を休めるにはもってこいだ。
こんないい日に迷宮に入るなんて損だからな。俺は広場に着くと早速芝生に寝転がった。
それからしばらくしてからの事だった。
「あの!」
声を掛けられた。まったく、折角人が気持ちよく横になっていたのに。一体誰だ?
振り向くとそこにいたのは血盟騎士団の副団長、【閃光】の異名をもつアスナという少女だった。
他にも騎士団の人間が何人か居るが、何故か俺をみて震えている。
「こんなところで寝ている暇があったら、迷宮に入って攻略を進めてください!」
「断る……」
「なっ!?」
当たり前だ。こんな気持ちのいい日に迷宮に入るなんてお断りだ。
「今日はアインクラッドで最高の季節、最高の気象設定だからな。迷宮に潜るのはもったいない」
別に俺とてここでずっと寝るつもりもない。体を休めたら迷宮に入るつもりだ。
それにしても、コイツ酷い顔してるな。まるで何日も寝ていないようだ。
「酷い顔してるぞ。お前も寝ていったらどうだ?」
俺のその言葉に彼女はハッとしたような表情をした。なぜだか、俺の方をみている。
「……みなさんは先に行ってください」
彼女がそう言ったので騎士団のメンバー達は迷宮へと向かっていった。
彼女はというと俺の隣に来て芝生の上に寝転がった。すると、すぐに眠気が襲ってきたらしい。
今にでも眠りそうになっている。
「(クスッ)ついててやるから、寝ておけ…」
「(コクッ)………」
彼女は頷くとすぐに眠ってしまった。やはり、ほとんど寝ていなかったようだ。
もしかしたら彼女はこの世界に来てから碌に休んでいなかったのかもしれない。
聞いたことがある話だが、彼女はこのSAOの女性プレイヤーの中でも五指に入る程の美人らしい。
たしかに、今隣で心地よさそうに眠っている彼女の美しさは見事なものだ。
けれど、そんなことなど彼女にとってはどうでもいい事のはずだ。
誰も彼女の本音を、本質をみてはいない。誰も彼女の苦しみに気付いてなどいない。
なら俺はこの少女になにをしてやれるのだろう…。
「そうか…。俺は君に……」
―――心を奪われたのか…。
~現在~
そう。俺はあの時アスナと触れ合って、そして好きになったんだ。
「あの日、キリトくんとちゃんと出会ってから怖い夢を見なくなったんです。
そのかわり、寝ても覚めてもキリトくんの事ばかり思い出して…。
キリトくんの家を調べてからは、時間を作って会いに行って……。
わたし、恋をしているんだって、わかったんです」
そうか、俺だけじゃなくてアスナも。あの時から俺達は想い合っていたんだ。
「ニシダさん…。わたしはあの日、このゲームが始まった日。
きっと、彼と出会う為に、ナーヴギアを被ってこの世界に来たんだと思います。
だから、ニシダさんがこの世界にきた事にもちゃんと意味があるんだと思います。
ニシダさんがこの世界でやってきた事にも意味があるはずです」
アスナは自身の想い全てを伝えきったのだろう。俺の方をみて綺麗な笑顔を浮かべた。
俺もその笑顔に応えるように、アスナに微笑んだ。
「そう、ですな…。そうですな~。くっ、5mの魚を釣り上げたことだって、いい思い出です。
……ありがとうございます、アスナさん。キリトさんも…」
ニシダさんは涙を浮かべながら俺とアスナにお礼を言ってきた。
少しくすぐったかったけれど、ここは甘んじて受けておいた。
話しも終わり、俺達はグランザムへと向かうために転移ゲートに着いた。
ニシダさんは見送りをしたいと申し出てくれた。
「わたしではお二人の力になる事ができませんが、応援しております。頑張ってください」
「ハイ!」
「必ず、帰ってきます…。その時はまた…」
俺は竿を振る真似をして、ニシダさんもそれに答えてくれた。
「転移、『グランザム』」
その言葉を発して、俺とアスナはグランザムへと転移した。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
今回のニシダさんとの話はENDフラグにはなりませんw
本作は75層では終わりませんからねw
それでは次回でお会いしましょう・・・。
|
Tweet |
|
|
26
|
8
|
追加するフォルダを選択
第七十九話です。
今回でニシダさんとのお話は終わりですね。
どうぞ・・・。