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真・恋姫†無双~だけど涙が出ちゃう男の娘だもん~[第36話]

愛感謝さん

難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。

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2012-09-22 00:09:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5955   閲覧ユーザー数:5405

真・恋姫†無双~だけど涙が出ちゃう男の()だもん~

 

[第36話]

 

 

「それでは、失礼致します」

「うん、報告ご苦労さま。桃香に宜しくね」

 

ボクは自分の席につきながら目の前にいる関羽に労いの言葉をかけました。

劉備の不始末の一件以降、暫くギクシャクしていた応対も落ち着きを取り戻しているみたいです。

一礼して自身の陣営に戻って行く足取りが軽やかな関羽を見て、ボクはそのように感想を抱きました。

 

「愛紗も大分(だいぶ)落ち着いたみたいで御座いますな」

 

天幕内から出て行いった関羽を見送りながら、趙雲がボクと同じ感想を告げてきました。

 

「そうだね……。まあ、仕える主人が斬首されるかも知れない一大事だったんだ。気負ってしまうのも無理は無いだろうね」

 

ボクは趙雲を見るとも無しに彼女へ返答しました。

 

(あるじ)、今からでも遅くは無いかも知れませんぞ。桃香殿を斬首なされば愛紗が旗下に加わるかも知れませぬ。さすれば、主の望みも早く(かな)うのではないですかな?」

 

趙雲は人の悪い顔をしながら物騒な話しをしてきました。

 

「はあ~……。そう云うのはヤメにしてくれないかな? 星。別に確認しなくたって、今更どうこうする気はないんだから」

 

どういう経緯で交流していたのかは知りませんが、趙雲が劉備一行を助けたいと思っているのは感じられる。

だから、それとなく駄目押しをしてくる彼女に、その必要は無いと告げました。

 

「ふふふっ。申し訳ござらん。なにせ愛紗とは、いずれ腕試しを所望する心算(つもり)でありましたので、ここで死なれては目覚めが(わろ)う御座います」

「腕試し?」

「はっ。私と愛紗、いずれの武勇が勝っているか試すつもりでおりました」

「あっ、そう。……まあ、ほどほどにね?」

 

腕に覚えがある人達にとっては、己の武勇を認めた人物と(きそ)い合いたいモノなのかも知れません。

関羽は趙雲にとって、そんな人物の一人なのでしょう。

楽しそうに微笑しながら関羽の事を話す趙雲を見て、ボクはそのように感想を抱きました。

武人では無いボクにとっては、良く分からない心情ではありますが。

 

「でも、まあ。そうならないように星が頑張るんだね。君が監督して桃香に失態を起こさせなければ、それで良い話しなんだからさ」

 

ボクは挑発するような物言いで趙雲に告げます。

そんなボクの言葉を趙雲は、涼しげな顔をしながら是非もなしと云わんばかりの小憎らしい態度で受け取っていました。

 

 

 

 

劉備や公孫(さん)たちと初めて会談した件の後、ボクたちは休息をとって共同で冀州・広宗へと順調に向かっていました。

その間に何度か黄巾党の集団と出くわして、そのつど賊徒征伐を行なっていきます。

劉備や公孫瓚たちの軍の錬度がどの程度なのかを知る為に一番始めの戦闘で試させて貰いましたが、予想を裏切らずに低い錬度でした。

公孫瓚の正規軍には問題無いのですが、残り半数の義勇軍との連携に難がある。

劉備軍に至っては、関羽・張飛の武勇を頼みにした力押しといった具合だったのです。

だから、諸葛亮を始めとした軍師たちと相談して、趙雲・李典の軍に交替で(おとり)をやって貰いながら賊を引き込んで、そこを劉備・公孫瓚軍に猟師役で戦闘を行なうようにして貰って錬度を上げていきました。

さらに征伐した賊の食料や武具・防具などの物資を徴収して、劉備・公孫瓚軍の軍備を増強していきます。

その後、当初の計画通りに武装解除した賊を広宗の方へ放逐していく事を繰り返していきました。

 

劉備や関羽などは当初、野盗(まが)いの行為だと言って賊の武具・防具などを使う事に拒否反応を示しました。

でもボクは、劉備軍の将兵の錬度の低さと身の安全を説いて有無を言わせません。

そもそも槍や刀剣と云った武具では無く、(くわ)(すき)と云った農具で戦闘させること事態が可笑しいと思うのです。

人数を集める事を意識する余りに武具や防具まで気が回らなかったって、なんなんでしょうか?

その話しを聞いた時のボクは空いた口が(ふさが)りませんでしたよ。

ボクは、それらの問題点を淡々と説いて何とか劉備たちを納得させました。

ホント、疲れます。

 

劉備軍がと云うよりも、関羽が初めての会談での主君・劉備の失態を取り消したいと云う気負いを見せ、何かと功績を立てる事に執着する指揮をとる。

その為に錬度の低い義勇軍将兵の負傷が相次ぎ、無視出来ないものと成りました。

危惧を感じたボクは又もや軍師たちと相談して、それとなく気心が知れている趙雲に関羽へ助言して貰うように策を(さず)けます。

それだけでは足りないかも知れないと、ボクはそのまま趙雲に華陽軍との仲介や劉備軍の監督を頼みました。

その甲斐あってか、関羽は少しずつではありますが冷静さを取り戻していったようです。

史実での関羽は、身分の低い将兵たちを大事にするような人物であったと伝え聞いていました。

だから、気負いさえ無くなれば元の優れた武将に戻る事でしょう。

 

ボクたちは今現在、あと数日行軍すれば冀州・広宗に着く距離にあたる場所まで軍勢を進軍させていました。

陣営を築いて休憩を取っている間、敵状視察と情報収集を周泰に任せます。

だから、周泰の代役と劉備軍の錬度の向上ぶりなどを聞く為、趙雲にはボクの側に付いて貰っていました。

一通りの詳細情報を趙雲に聞いた後に関羽が報告に来たので、彼女の落ち着きを取り戻している状態を自身で確認出来たのは良かったです。

後は周泰が張角などの情報を持ち帰ってくれば最終決戦に及ぶのみと成り、全ての事項が何とか良い方向に向かい出している事に安堵しているボクでありました。

 

 

 

 

「ところで白蓮(ぱいれん)殿。先ほどから、そこで何をしておいでなのでしょうかな?」

「え?」

 

いきなり公孫瓚へ語りかけるような言葉を告げる趙雲に驚き、ボクは彼女の視線と同じ方向を向きます。

するとそこには、天幕の片隅(かたすみ)の方で(ひざ)を抱えるように丸まって座り込み、何やら地面に『の』の字のような図形を書いている公孫瓚がいました。

さらに泣きべそをかいている彼女は、ブツブツと「良いんだ。良いんだ。どうせ私なんて……」とか言っています。

本当に何をしているのでしょうかね? 彼女は。

 

「え~と、白蓮さん? そこで何をして居るのかな? ていうか、いつ来たの? 来ていたのなら声をかけてくれれば良いのにさ」

「うぐっ」

 

公孫瓚が居る気配すら感じていなかったボクは、不思議に思って彼女に問いかけました。

そうすると彼女は、いきなり片手で胸を押さえながら地面にもう片方の手と両膝をつき、まるで懺悔(ざんげ)しているような格好で何やら物凄(ものすご)い落ち込みようを(かも)し出します。

公孫瓚は、そのままの姿勢で何かに耐えるように小刻みに震えていました。

 

「……主。さすがに、それは(こく)と云うものでしょう」

「え? なにが?」

「白蓮殿は愛紗と共に来られて以降、ずっとこの場に居られましたぞ」

「え?! うそ?! 全然、気付かなかったよ?!」

 

趙雲は呆れ顔で話しかけてきましたが、理由が分からないボクは素直に自分の思っている事を彼女に話してしまいました。

その言葉を受けてか、公孫瓚は (もだ)えながら地面に横たわるように崩れ落ちて行きます。

ボクはそんな彼女の行動を見て、ある事に気付きました。

 

「ああっ、そっか! なに? もしかして白蓮は自分に存在感が無いのを気にしているの?」

「ふぐぉお?!」

「あっ、ごめん。つい……」

「……(ぐすんっ)」

 

地面に横たわって小刻みに震えている公孫瓚に、ボクは追い打ちをかけてしまったようです。

それに気付いて急いで謝ったのですが、彼女は沈黙して答えてくれませんでした。

 

(これはイケませんね。本当に気にしているみたいですよ?)

 

ボクはそう思い、この後どう弁解しようかな? と頭を悩ませていると、趙雲が公孫瓚の側に向かって歩いて行きました。

 

「白蓮殿。大丈夫で御座いますよ、私はちゃんと気付いて居りましたぞ」

 

趙雲は地面に片膝をつきながら、公孫瓚に優しく話しかけていきました。

その言葉を受けてか、公孫瓚は死体状態から少し復活してムクリッと顔を持ち上げます。

 

「……本当か?」

(しか)り」

「そっ、そうか。やはり星だな、お前だけは気付いてくれていると信じていたぞ」

「ふふふっ。当然でござる。この趙子龍。例え白蓮殿の側を離れようとも、一度交わした友誼(ゆうぎ)を忘れは致しませぬ」

「ううぅっ、星~。お前だけだ、私を気遣ってくれるのは」

 

公孫瓚は感無量な思いを抱いたのか、幼子のように趙雲の胸に(すが)って泣き始めます。

そんな公孫瓚を趙雲は母親のようにアヤしながら慰めていました。

なんでしょうね? この三文(さんもん)芝居は。

ボクは高い見料を払って場末の芝居小屋でも演らないような劇を見せつけられたみたいな、そんな何とも言えないビミョ~な感想を抱きました。

 

「それにしても。別に報告だけなんだから、いつも白蓮が来なくても部下に任せて良いんだよ?」

 

ボクは椅子から立って公孫瓚の方へ歩いて行き、暫く彼女が泣き止むのを待ってからそう告げました。

賊征伐を広宗に向かう道すがら何度か行なっていますが、その度に公孫瓚みずから報告にくるのです。

だからボクは、彼女を気遣って報告ぐらい配下に任せても良いと告げたのでした。

公孫瓚はボクの言葉を聞くとピタリッと泣き止み、小さい声で呟くように話してきます。

 

「……いんだ」

「え? なに?」

 

公孫瓚の言葉が良く聞こえ無かったので、ボクは彼女に問いかけました。

 

「……居ないんだ」

「なにが?」

「部下が居ないんだ」

「……はあ?」

 

最初ボクは公孫瓚の言っている事が良く分かりませんでした。

だって、彼女が告げる言葉の内容が突拍子(とっぴょうし)もなかったからです。

でも、次第に何を言われたのかを理解し始めて、間の抜けた声を出してしまったのでした。

 

疑問に思ったボクは公孫瓚に詳しく話しを聞いてみる事にしました。

彼女の話しによると、公孫瓚軍は(ほと)んど彼女一人で切り盛りしているらしく、自分と同等かそれ以上の能力を持っている人材が居ないそうでした。

その為、部下に任せて失態を起こされるよりも自分でした方が確実という事らしいです。

趙雲たちが客将として働いていた頃は何とかやっていたそうなのですが、彼女たちが抜けた後は政務や軍務も手が付けられない状態に(おちい)ってしまったらしい。

それでも頑張って政務の方は何とか終わりが見えそうに成った頃に朝廷から賊徒討伐の(めい)が下り、その命を 律儀(りちぎ)に守って出陣する為に軍勢を整えようとしたら、今度は間の悪い事に有望な将兵たちは劉備の義勇軍に参加した後だったらしくて思うように集まらない。

募集水準を下げて何とか人数は集めてみたものの、正規軍の将兵とは能力が離れ過ぎてしまって連携に齟齬(そご)が生じてしまう。

義勇兵を教練して錬度を上げたかったが、政務に追われて時間が取れない。他に任せられる人材も居ない。

そうこうしている内に出兵の期日が来てしまったので、無理を承知で出陣せざるを得なくなった。

 

幽州から冀州へと軍を進軍させてみると、劉備軍が傭兵として働くから代わりに糧食を希望してきた。

共同戦線を張って居た盧植先生が無実の罪で更迭されてしまったらしく、糧食にこと欠く在りさまと言われては無碍(むげ)にする事も出来ない。

その後、劉備軍の面倒を見るように成ったが義妹・張飛は大食いらしくて糧食が見る間に減って行く。

その事を気にした劉備は他の諸公に身を寄せる事を検討し出し、その甲斐あってか運良く曹操と云う人物と出会う。

しかし、曹操は受け入れを拒否したらしくて一件落着とはゆかず、代りに華陽軍の劉璋と云う人物を紹介される。

風聞で伝え聞く劉璋は西方の崑崙(こんろん)から皇帝の嘆願(たんがん)を聞き届けて出張って来た仙女とか云われている人物で、しかも好き(この)んで金色の鎧を(まと)っていると噂される変態趣向の持ち主。

だから、劉備に何をされるのか心配なので、せめて人柄を確認する為に同行を希望した。

華陽軍へ合流すべく南下して行った時に不意を突かれて賊の奇襲を受けてしまう。

何とか態勢を整えて全滅する危機は脱したが、その後は膠着(こうちゃく)状態に(おちい)って勝利を得るまでには至らなかった。

そこに新たな軍が現れて万事休すかと思われた時、その軍は旧知の趙雲が率いていた為に九死に一生を得る。

趙雲が華陽軍の将軍になった事を聞いて、会談をすべく紹介して貰う事を要請したそうでした。

その後の事は、ボクが知っている通りだという事らしいです。

 

 

「そうか……。本当に大変だったんだね」

 

ボクはそう言って、片膝を地面に付けて公孫瓚と視線を合わせながら彼女の肩をポンッと一叩(ひとたた)きしました。

公孫瓚から詳しい話しを聞いて、ボクは心の中で涙を流さずには居られませんでした。

だって、人として(はげ)ませずには居られないですよね? 文句を言わずに頑張っている痛ましい姿を見れば。

しかも、なんて不幸な体質なのでしょうか? 踏んだり蹴ったりな人生ですよ。

それにも負けずに頑張る健気(けなげ)さ、本当に素晴らしい。

史実で公孫瓚と云う人物は、部下を見殺しにした事が原因で袁紹に滅ぼされたと伝え聞いていました。

だから援助を申し込んでいても、心の底では少し警戒もしていたのです。

でも、この世界の彼女は、とても義峡心に(あふ)れる人物だと知る事が出来ました。

彼女と出会えて本当に良かったです。

これからも公孫瓚とは仲良くして行きたいと、ボクは思わずには居られませんでした。

 

「ねえ、白蓮」

「うん? なんだ?」

「君は凄い頑張り屋さんで、とても篤い義峡心の持ち主なんだね。ボクは感動したよ」

「そっ、そうか? いやぁ~照れるなぁ、そんなこと言われると」

 

ボクは優しく公孫瓚に話しかけました。

人に褒められる事に慣れていない所為(せい)なのか、彼女はボクの賛辞に(ほお)を少し赤らめてしまいます。

こう云うところは、ちょっと可愛いなと思いました。

 

ボクは彼女の健気な性質には好感を持ったし、不幸体質には同情も禁じ得ない。

一人でも頑張っている姿勢に至っては、感動すら覚えました。

でもね、公孫瓚。

ボクは男だから仙女と言われるのは(はなは)だ不本意だし、まして好き好んで黄金の鎧を纏っている変態でもない。

今迄そのようにボクを思っていた事だけは減点対象にせざるを得ない。

だから、その誤った認識についてだけは、キッチリ“お・は・な・し”して解決しようね?

それが精神衛生上の観点から、お互いにとって好ましい事だと思うんだ。

 

「どっ、どうしたんだ、刹那? なんか雰囲気が可笑しくなっているぞ?」

「うん? そうかい? 別に、いつも通りのボクだよ? うふふっ……」

「い、いやっ。あきらかに変だろう?! 目が()わっているんだから!」

「いやだなぁ~白蓮。そんな事ないだろうぉ~?」

 

ボクの雰囲気が言葉とは裏腹な事に気付いたのか、公孫瓚は少し恐れを感じ始めたようでした。

彼女は口端を少しヒクつかせながら逃げ腰になって、ボクとの距離を取ろうと後ずさりしているのです。

でも、そんな程度で逃がすボクではありません。

すかさず彼女との距離を縮めて逃げ場を無くして行きました。

そもそも、彼女の後ろには天幕の布があって逃げ場など始めから無いのです。

 

(むふふっ……。逃がさないよ、白蓮。観念してね?)

 

背後に黒いオーラを醸し出しながら黒い微笑をしているボクは、両手に(にぎ)りコブシを作って教育的指導をすべく公孫瓚の方へとニジリよって行きました。

ここは()が非にも彼女が(みずか)らの過ちに気付いて心の底から改心し、二度と変な考えを持たせないようにしなくてイケません。

それが人として、いや(おとこ)として、しなければならない崇高な義務だと思うのです。

 

心情が少し暗黒側(ダークサイド)(かたむ)いている所為(せい)か、ちょっと変な興奮を感じて違う世界へ()っちゃっているボクでありました。

 


 
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