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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第二十一話 大槻亮太のデビュー戦。亮太VS銀髪コンビ

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-09-18 06:00:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:48684   閲覧ユーザー数:43286

 あの後すぐに士郎さんが翠屋に戻ってきてくれた。どうやらコーヒー豆が切れたので買いにいってたらしい。

 

 それで俺達はすぐに店を出た。

 俺と亮太がギャーギャーやかましく自称・オリ主を名乗る銀髪コンビと闘う事になったからだ。

 しかし銀髪コンビはこんなに簡単に喧嘩打っていいのかね?

 西条は亮太、吉満に関しては俺と亮太が魔導師である事を確認もしていないのに。

 もし俺達が魔力を持っているだけの一般人だったらコイツらどうするつもりなんだ?

 いや…吉満はまだ管理局員じゃないらしいけど西条、テメエは間違い無く懲罰モノだぞ。

 まあ、コイツ等にそんな事を俺が言ったところで聞いてくれる筈は無いだろうしな。

 あ~、そうそう。どうでも良い事だが西条と吉満の違いについて一つ判明した。

 それは瞳の色が違っているんだ。

 西条は左目が赤、右目が青なのに対し吉満は左目が黄、右目が赤なんだぜ。

 ホンット~にどうでも良い事なんだがな。

 

 まあ、そんな事は置いといてだ。現在俺達はアースラにやってきている。

 何処で闘うか場所を探していたのだがフェイトがクロノに連絡を取ってくれ、アースラの訓練室を借りれる事になった。そこで一旦すずかの家に向かい(ちなみに亮太は歩きながら原作組に自己紹介をしていた)、エイミィさんがすずかの庭からアースラに転送用の魔法陣を展開してくれた。

 

 で、転送用の魔法陣に乗ってアースラに来た訳だが…

 

 「「~~♪~~♪////」」

 

 「「「「……………………」」」」

 

 現在、翠屋からはやてとすずかに抱き着かれたまま歩いている俺。

 そのすぐ背後から殺気をこっちに突きつけてくるシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリ。

 なのは達はそんな俺達を見ているだけで助けてはくれない。

 亮太は亮太でアースラの方に興味があるらしく、着いて来ながらも周りをキョロキョロ見渡している。

 そして銀髪コンビは

 

 「「モブテメエ!!自分の立場ってのが分かってねえみてえだな!!はやてとすずかが可哀相だろうが!!!さっさと離れやがれ!!!」」

 

 見事なシンクロ率を披露してくれながら俺に上から目線で命令してくる。

 

 「はやてさん、すずかさん、あっちの二人もああ言ってる事ですしそろそろ離れていただけませんかね?」

 

 「「嫌♪」」

 

 そう言って抱き着く力が強まる。後ろから発せられる殺気も強まる。

 

 「……クロノ、この状況何とか出来ないか?」

 

 「ハア~…二人共、勇紀からはn「「(ギラリッ!!)」」…済まない、やれるだけの事はやったんだが」

 

 「何もしてないよ!?説得すら出来てなかったよ!!?」

 

 クロノ…お前は年上だろう。もっと頑張ってくれよ。

 訓練室までこの状態が続くのかな?そう思うと気が滅入る。

 どうやってこの二人に離れて貰おうかと考えていたら

 

 「主はやて!」

 

 俺達の前方から声を掛けてくる人がいた。

 ピンクの髪をポニーテールにして凛々しい雰囲気を纏っている女性…

 シグナムさんだった。

 

 「シグナム?今日はお仕事休みやった筈やろ?何でここにおるん?」

 

 「折角の休暇ですが最近自己鍛錬を行っていなかったもので。少し訓練室で身体を動かしてました。主達は何故アースラに?」

 

 「勇紀君達の模擬戦を見る事になってなあ」

 

 「…ほう」

 

 あ、ヤバい。シグナムさんの目の色が変わった。

 

 「長谷川…」

 

 「…はい、何ですか?」

 

 「私と模擬s「シグナム!!」…っ!」

 

 シグナムさんが喋ってる途中に割り込んでくる声。

 西条だった。吉満の方は黙ってる。なんか不気味だ。

 

 「そんなモブとやるより俺と模擬戦しようぜ。俺の方が強いから良い経験になると思うぜ」

 

 「何故貴様などと………」

 

 そこでシグナムさんの言葉が止まる。シグナムさんの視線の先には銀髪コンビ。

 そういや吉満は今日転校してきたばかりだったな。

 

 「あ、主はやて。私は疲れているのでしょうか?何故か奴が二人居る様に見えるのですが…」

 

 「気持ちは分かるけど二人おるんは事実やでシグナム。片方は今日聖祥にきた転校生や。しかも外見どころか中身も一緒やしな」

 

 「あ、あの手の輩が二人…ですか」

 

 表情を引き攣らせるシグナムさん。

 

 「初めましてシグナム。俺は吉満英伸って言うんだ。よろしくな」(ニコッ)

 

 ここで吉満が動いた。

 

 「…私は貴様に名乗った覚えは無いぞ」

 

 「さっきはやてがそう呼んでいたじゃないか」

 

 はやてが呼んでいたからってお前がすぐに呼んで良い訳じゃないだろ。

 …あ~あ、シグナムさんの表情が更に険しいものに。好感度が最底辺を突き破ってどんどん下がっているな。

 

 「ヒャハハ。やっぱりテメーが踏み台だったな。シグナムはテメーの事が嫌いみたいだぜえ」

 

 「お前こそシグナムの事ちゃんと分かってないみたいだな。シグナムは恥ずかしがっているだけなんだよ」

 

 「馬鹿かテメーは。恥ずかしがっている奴がそんな顔するかよ」

 

 「そういうテメーだってさっきシグナムに汚物を見る様な目で見られてたじゃねーか」

 

 「んだとオラア!!」

 

 「やんのかゴラア!!」

 

 お互いに罵り合いヒートアップしていく銀髪コンビ。

 何ていうかもうお前等だけで勝手にやっといてほしい。

 

 「…帰るか」

 

 「「「「「「「「「「帰るの!?(帰るのですか!?)(帰るのか!?)」」」」」」」」」」

 

 聖祥組とさっきまで殺気を飛ばしていた長谷川家の面々が一斉に口を開く。

 …一応言っとくけどシャレを言ったつもりは無いからね。

 

 「だって、このままだと闘う予定の二人がぶつかり合いそうだし」

 

 アイツ等がやり合ってくれるなら俺と亮太はここにいる意味無いし。

 

 「ならば私と模擬戦してくれないか?長谷川」

 

 「…シグナムさん、やけに俺と模擬戦したがりますね」

 

 「前回お前と闘った時は中途半端な状態で終わったから私としては消化不良なんだ」

 

 「消化不良って…」

 

 「それに以前お前が西条(ヤツ)とやり合った映像もテスタロッサから見せて貰った。私と同じで剣を振るう者同士、是非手合わせ願いたい!」

 

 凄く目が輝いてらっしゃるよこの巨乳ポニーさんは。

 

 「……分かりましたよ。やります」

 

 もう諦めた。この人断っても絶対俺と白黒つけるまで誘ってきそうだし。

 …なら早めに決着つけて出来るだけ誘われない様にしよう。

 

 「そうか!!では早速「「何シグナムに色目使ってんだモブ野郎!!!」」……」

 

 銀髪コンビが言い争いを止めてこちらの会話に横槍を入れてくる。

 そして俺を模擬戦に誘っていたシグナムさんは横槍を入れられた事に腹を立てているのだろう。

 メッチャ怒ってるもん。

 やっと俺と模擬戦が出来ると思った矢先の出来事だからな。

 

 「「さっさと来い!!テメーみてえなモブなんざオリ主の俺が瞬殺してやんよ!!!」」

 

 ……それにしてもコイツらシンクロし過ぎだろ。

 

 「…君も大変だな」

 

 クロノの同情が深く心に染みた………。

 

 

 

 で、訓練室の前に着いた。

 これから俺もこの中に入るので今までくっついていたはやてとすずかも離れてくれている。

 銀髪コンビは既に中に入っていったので後は俺と亮太が入るだけなのだが

 

 「勇紀、少し待ってくれないか?」

 

 中に入ろうとして亮太に呼び止められた。

 

 「彼等とは僕が一人で闘うよ」

 

 「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」

 

 俺だけでなく周りにいる皆も亮太の発言に驚いていた。

 

 「いや亮太、俺も一応巻き込まれてるしお前一人に任せるのは…」

 

 「うん。でも僕は今怒っているんだ。何せこっちに引っ越してきて最初に出来た友達である君にあんな暴言を吐いていたんだ。流石に我慢できるものじゃない」

 

 亮太からは僅かだが怒気が発せられている。

 俺とシグナムさん以外のメンバーはその怒気に当てられ、少し冷や汗を流している。

 わざわざ俺のためにここまで怒ってくれているのか。

 …コイツは本当にいい奴だ。

 そんな友達であるコイツだからこそ非殺傷だと分かっていても心配はしてしまう。

 

 「でもな…《アイツら二人も転生者だぞ?俺は西条に一度勝ってるけど吉満に関してはまだ未知数だ。どんな能力があるかは分からない》」

 

 「大丈夫だよ。彼等程度(・・・・)の輩に負ける程僕は弱くないから。だから勇紀は観戦室でゆっくり観ててくれるかい?《やっぱり彼等も転生者なんだね?あの姿と言動から多分とは思ってたけど。でも本当に大丈夫だよ。僕の能力はおそらく彼らの切り札が何にしろ当てる事は出来ない(・・・・・・・・・)だろうから》」

 

 『彼等程度』。そう言い切った亮太の顔は自信に満ち溢れている。

 西条のランクはSS、吉満は西条よりもやや高く感じたからSS+って所か。

 対して亮太はAぐらい。

 魔力差はかなりあるがそれだけで勝負が決まる訳無いのは俺より魔力が上の西条を倒した俺自身が理解している。

 だけど差が大きいとそれだけ厳しいというのもまた事実。

 にも関わらずあそこまで亮太が念話で大丈夫と言い切れるという事はそれだけ強力な能力、又はレアスキルを転生の際に貰ったという事か。

 

 「……分かった。けどお前が危なくなったら俺はすぐにでも参戦するからな」

 

 亮太はニコリと一度微笑むと顔を引き締め訓練室に入って行く。

 それを見送った後、俺達は観戦室に向けて移動した………。

 

 

 

 「ユウキ、本当に亮太一人に任せて良かったのですか?」

 

 観戦室に着くなりシュテルが尋ねてくる。

 

 「本人が大丈夫って言ってたしな。何か勝算が有るんだろ」

 

 「ですが…」

 

 「まあ亮太がピンチになったらすぐに乱入するつもりだし。でも俺は亮太の事を信じるさ。『絶対に俺の助けなんて必要なく西条と吉満(アイツら)に勝てる』…ってな」

 

 「…そうですか」

 

 それから口を閉じ、これから始まる模擬戦に集中するシュテル。

 

 …っと、三人がバリアジャケットを展開する。

 西条は黄金の鎧、吉満は…青銅の胴鎧と緋色に染め上げられた分厚いマントを身に纏う。あれは『fate/zero』の征服王イスカンダルと同じ格好だな。

 そして亮太のバリアジャケットはストライプの入った黄色のスーツに『正義』の二文字が書かれた白いコートを羽織っている。うん、これは『ワンピース』の大将・黄猿と同じ服装だ。

 

 『おい!もう一人のモブはどうした?』

 

 『勇紀が手を出すまでも無いよ。君達の相手は僕がする』

 

 『おいおい正気か?モブと踏み台なんかじゃオリ主の俺の相手は務まらないぜ』

 

 『何言ってやがる!!踏み台はテメーだ!!オリ主はこの吉満英伸を置いて他にいねえんだよ!!』

 

 『???君達は手を組んで僕と勇紀の相手をするつもりじゃなかったのか?』

 

 『『誰がこんな踏み台と組むか!!勘違いしてんじゃねーぞモブが!!!』』

 

 「……こりゃ三つ巴だな」

 

 「……ですね」

 

 「ていうか西条君と吉満君の言ってる『オリ主』とか『モブ』ってどういう意味なのかな?」

 

 「あ、なのはも気になってたんだ?」

 

 「フェイトちゃんも?」

 

 「うん。彼等がよく使ってる言葉だし…。姉さんは分かる?」

 

 「何かの専門用語じゃないの?」

 

 「アイツらが使っとる以上、ええ意味の言葉とは思えんけどなあ」

 

 「そもそもアイツらを理解出来るとは思わないし、しようとも思わないわ」

 

 「「「「「「「「「「それもそうなの(そうだね)(そうね)(そうですね)(そうだな)」」」」」」」」」」

 

 銀髪用語について討論してたがアリサの『理解したいと思わない』という意見に皆納得し、頷いていた。

 

 『…そろそろ始めてもいいのかな?』

 

 『瞬殺してやるよ!かかってこいやモブ!踏み台!!(ここで俺様がコイツらを瞬殺したらなのは達は更に俺にメロメロになるだろうな)』

 

 『現実ってヤツを教えてやるよモブ!踏み台!!(なのは達を俺の虜にするチャンスだな。モブと踏み台の相手なんざチョロいもんだぜ)』

 

 『じゃあ、僕から仕掛けようかな。ああ、そうそう君達はさ…』

 

 『『あ”?』』

 

 『光の速度で蹴られた事はあるかい?』

 

 そのセリフと共に亮太の姿が消え

 

 ドゴオン!!

 

 何かが壁にぶつかった音が訓練室に響いた。

 音の鳴った場所には壁に背中をつけている西条。

 そして西条の立っていたすぐ側に何かを蹴飛ばしたと思われる姿勢をした亮太がいた。

 

 「「「「「「「「「「………え?」」」」」」」」」」

 

 一瞬、何が起きたのか分からず疑問に思っている観戦しているメンバーと

 

 「……………………」

 

 声こそ出さなかったものの、驚いた表情をしている俺、シグナムさん、クロノがいた………。

 

 

 

 ~~亮太視点~~

 

 さて、勇紀にああ言った以上は僕一人であの二人と闘う訳だが

 

 「おい!もう一人のモブはどうした?」

 

 彼は西条君だったな。勇紀の事を尋ねてくるが

 

 「勇紀が手を出すまでも無いよ。君達の相手は僕がする」

 

 この二人相手なら僕と勇紀が組むまでも無いと確信していた。

 確かに彼等の魔力は僕や勇紀より上だ。

 でも今日の昼休み、屋上で会話した時に知った勇紀が王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を使える事、更に本人が望んだ事でないとはいえ宝物庫の中にある全ての宝具を真名解放出来る事。この反則なまでの条件を揃えた勇紀が彼らに後れを取る筈が無い。現に勇紀は以前に一度西条君に勝ったらしいし。

 それに僕だって転生の際に貰ったこの能力ならあの二人の魔力がどれだけ高かろうが、又どれだけ強力な切り札を持っていようが無意味(・・・)な筈だ。

 

 「おいおい正気か?モブと踏み台なんかじゃオリ主の俺の相手は務まらないぜ」

 

 「何言ってやがる!!踏み台はテメーだ!!オリ主はこの吉満英伸を置いて他にいねえんだよ!!」

 

 「???君達は手を組んで僕と勇紀の相手をするつもりじゃなかったのか?」

 

 「「誰がこんな踏み台と組むか!!勘違いしてんじゃねーぞモブが!!!」」

 

 …しかしホント自分勝手な人達だな。しかも西条君は管理局員だった筈。

 協調性がここまで無いと何らかの作戦を行う場合なんか絶対に足を引っ張るタイプだなあ。

 管理局もこんな彼を矯正しようとは思わないのだろうか?

 まあ、今の僕にはそんな事気にしてもしょうが無いし…

 

 「…そろそろ始めてもいいのかな?」

 

 彼等とこんな事するより勇紀達と話してる時間の方が僕は好きだ。

 だからさっさと終わらせよう。

 

 「瞬殺してやるよ!かかってこいやモブ!踏み台!!(ここで俺様がコイツらを瞬殺したらなのは達は俺にメロメロになるだろうな)」

 

 「現実ってヤツを教えてやるよモブ!踏み台!!(なのは達を俺の虜にするチャンスだな。モブと踏み台の相手なんざチョロいもんだぜ)」

 

 「じゃあ、僕から仕掛けようかな。ああ、そうそう君達はさ…」

 

 これが僕の転生デビュー戦。そして…

 

 「「あ”?」」

 

 「光の速度で蹴られた事はあるかい?」

 

 大切な友達を侮辱した報いを僕が与える!!

 

 ドゴオン!!

 

 西条君のすぐ側まで移動し、光の速度で渾身の蹴りを叩きこむ。

 回避はおろか防御すら出来なかった西条君はそのまま壁に激突。

 でもまだだ。

 僕は指先に光を集めつつ指先を西条君の方に向け、

 

 「やあっ!」

 

 ピュン!

 

 収束した光、レーザーを放つ。

 

 ズムッ!!

 

 西条君を飲み込むレーザー。

 最初の蹴りを受けた時点で意識は既に無くなっていたのか障壁も展開しないままレーザーの直撃を受ける。

 

 「な…」

 

 その横では今の一連の攻撃に驚いてる吉満君がいた。

 

 「まずは一人…かな?」

 

 「ち…調子に乗るなよモブが!!!」

 

 彼に背を向けたまま呟く僕に吉満君が

 

 「オラアッ!!」

 

 腰に掛けていた大剣を抜き、僕に切りかかってくる。でも…

 

 スカッ

 

 「……は?」

 

 その一撃は無駄に終わる。

 何故なら彼の一撃は僕の身体をすり抜けていったから(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 「ど、どうなってやがる!?」

 

 彼は僕を切ろうと何度も大剣で僕に攻撃してくるが

 

 スカッ…スカッ

 

 当たらない。全て攻撃はすり抜けていく。

 

 「ちいっ!!何故当たらねえ!?」

 

 明らかに焦りの表情を浮かべている。

 

 「っ!?そうか!!目の前にいるテメエは幻か何かだな!!?なら俺の攻撃が効かないのも頷けるぜ!!」

 

 一旦距離を取って自分の考えを口にする吉満君。

 

 「残念だけどその答えは間違っているよ」

 

 「んだとおっ!?」

 

 「僕が使える魔法は飛行魔法と結界魔法、それに念話ぐらいでね。攻撃魔法や防御魔法、バインドや幻術のようなものは未だに上手く使えないんだよ」

 

 「ああ゛!?フカシこいてんじゃねえぞテメエ!!ならさっきの砲撃魔法は何なんだよ!!?」

 

 どうやら西条君に放ったレーザーを砲撃魔法だと思ってるみたいだね。

 確かに大きめに放ったからそう見えなくもないけど。

 

 「それは僕の…」

 

 喋りながら光の速度で彼に接近し

 

 「!!?」

 

 「能力(・・)さ」

 

 バキイッ!!

 

 正面から思いきり吉満君を蹴り飛ばす。

 

 ドガアッ!!

 

 西条君同様に訓練室の端まで吹っ飛び壁に背中を打ち付ける。

 

 「ぐっ…ゴホッ…ゴホッ…」

 

 西条君みたいに意識は失わなかった。

 …優秀なデバイスだ。僕の攻撃がいつ来てもすぐに障壁を展開出来る様、準備していた。

 おかげで多少ダメージが軽減され彼の意識を奪えなかった。

 

 「クソが…クソがクソがクソがあっっっ!!!俺はオリ主だ!!!モブなんざにやられるわけが無えんだよおおおおっっっっ!!!!」

 

 大声で叫びながらゆっくりと立ち上がる吉満君。

 だが膝はガクガク震え立つのがやっとという感じだ。

 

 「ぶっ殺す!!テメエだけはぶっ殺してやるぜモブウウウウウッッッッ!!!!!」

 

 吉満君は完全にキレてしまったみたいだね。言葉遣いが物騒な事になっている。

 彼が叫び出したのと同時に大量の魔力が放出される。

 

 ゴウッ!!

 

 そして吹き荒れる熱風が僕の頬を撫でる。

 ……熱風!?室内である訓練室なのに何故風が!?

 疑問に思う僕だがその答えはすぐに分かる事になる。

 

 吉満君を中心に少しずつ訓練室の風景が変わっていく(・・・・・・・・・・・・・)

 まるで侵食されていく様に。

 これは…………まさか!!?

 この瞬間、僕と吉満君は熱風が駆け抜ける平野に位置関係すら覆され二人の距離は訓練室の時より更に引き離されていた。

 そして彼の側に一つ、また一つと影が現れ少しずつ実体化していく。

 実体化したソレらは……一人一人が吉満君の容姿、バリアジャケットと全く同じ。

 …瞬く間に吉満君による群れが出来上がっていた。その数およそ200人。

 

 「クハハ…。これが俺様のレアスキル『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』だ!!モブ、テメエもこれで終わりだなあ?」

 

 吉満君は先程と一転し、余裕そうな口調で喋り出す。

 

 「テメエはここで無様に地べたへ這いつくばらせてやるぜ」

 

 喋り終えると吉満君達は全員が一斉に空の一点に向きニコッと微笑む。……不気味だな。

 

 「全軍…かかれええええええっっっっっ!!!!!!」

 

 「「「「「「「「「「クハハハハハハハハハハハハハハハ」」」」」」」」」」

 

 笑いながら襲い掛かってくる吉満君の群れ。

 …これは怖いね、ある意味で。

 吉満君の群れはあっという間に覆されていた距離の差を無くし僕に詰め寄るが…。

 

 ブンッ…スカッ…ブンッ…スカッ…。

 

 吉満君本体と同じ様に大剣で切りかかってくる物理攻撃しかしない。

 当然僕の身体を大剣はすり抜ける。

 …とりあえず彼の切り札も僕には意味を成さなかった。

 もういいや、さっさと彼を倒してしまおう。

 この手の類の力は本体より偽物の方が若干弱い筈。

 そう思って魔力を見比べて彼の本体を探すが…。

 この偽物の吉満君も本体と同じ魔力量を持っているみたいで本体が特定出来ない。

 本物と偽物を見極められないという点は評価出来るね。

 ならばもう一つの解決策。

 本物も偽物も全て吹っ飛ばす!!

 僕は光速で空中に飛び上がり両掌を眼下にいる吉満君の群れの方に突き出し親指と人差し指で輪を作る。その輪から

 

 「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)!!」

 

 ピュピュピュピュピュピュピュピュンッ!!

 

 無数の光弾を発射する。

 

 ドドドドドドドドドッ!!

 

 吉満君の群れに光の雨が降り注ぐ。

 光弾が命中した偽物の吉満君は消えて行き、また当たらなくても地面に光弾が触れた際砂煙が舞い上がると同時に起こる爆風に吹き飛ばされ、倒れると同時に消えていく。

 やがて光の雨が止み、砂煙が晴れて行くとそこには…

 

 

 

 無数の数のクレーターとうつ伏せで倒れ完全に意識を失っている吉満君がいた………。

 

 

 

 ~~亮太視点終了~~

 

 観戦室は静まり返っていた。

 何が起きたのか誰にも分からなかったのだ。

 気付けば亮太は西条の側にいて奴を蹴り飛ばしていた。

 その事実しか理解出来なかった。

 

 「……誰か今の動き見えた?」

 

 観戦室の沈黙を破ったのはアリサだった。

 その問いに皆は首を左右に振るだけ。

 

 「転移魔法…じゃないかな?」

 

 「でもなのは、彼から魔力反応は無かったし魔法陣も展開されてなかったよ?」

 

 「そう…だよね」

 

 皆は亮太が一瞬で移動した方法について討論しているが

 

 「(亮太のバリアジャケットと能力が共通してるのなら…)」

 

 俺は下を向いて一つの可能性に思い当っていた。

 

 ピュン!……ズムッ!!

 

 突然聞こえてきた轟音に反応し、顔を上げ訓練室を見るとプスプスと煙を上げている西条、そして…

 

 『まずは一人…かな?』

 

 亮太の声が訓練室にまで届いていた。

 

 「砲撃魔法!?」

 

 「いや違うぞシュテル。亮太の奴からは魔力を放った反応自体無い」

 

 「じゃあ、何なの?ディアーチェ」

 

 「我が知るか!!」

 

 シュテル、ディアーチェ、レヴィは亮太の攻撃を見た様で何やら騒いでいる。

 

 『ち…調子に乗るなよモブが!!!』

 

 そこに吉満の声が聞こえ自分の剣で亮太に切りかかったが

 

 スカッ

 

 『……は?』

 

 その攻撃は亮太の身体をすり抜けていった。

 

 「「「「「「「「「「えええええええっっっっ!!?」」」」」」」」」」

 

 一斉に声を上げる俺とシグナムさん、クロノ以外の観戦組。

 シグナムさんとクロノは信じられないものを見た様な表情をしている。

 

 「い、今吉満君の剣が大槻君の身体をすり抜けていったの!?」

 

 「え!?げ、幻術でも使ったの!?」

 

 「有り得ないよフェイト!!大槻は魔力を一切使ってない!!」

 

 「どど、どうなっとるんや大槻君は!?」

 

 「ちょっと勇紀!!アイツ実は幽霊なんてオチじゃないでしょうね!?」

 

 「「「「「「「「「「幽霊!!?」」」」」」」」」」

 

 ますます混乱するなのは、フェイト、アリシア、はやて。

 そして亮太が幽霊じゃないかと疑い始めるアリサ。

 

 「少しは落ち着けよお前等。そもそもアリサ、亮太が幽霊だとしたら何で西条を蹴り飛ばせるんだよ?」

 

 「知らないわよ!!」

 

 何故か逆切れで反論された。

 それから訓練室に視線を戻す。

 何度も吉満は切りかかるが攻撃は全て亮太の身体をすり抜けるだけ。

 そして亮太は吉満の正面に光速移動し、吉満を蹴り飛ばしていた。

 

 「また吹っ飛んだ。…これで決まったのかな?」

 

 「そうでもないぞレヴィ。亮太の蹴りが当たる直前に障壁が展開された。おそらく吉満のデバイスが展開させたんだろうが…」

 

 障壁のおかげで致命的な一撃は避けた筈。

 そんな俺の予想通り吉満は西条と違い、意識を保っていた。

 

 『ぶっ殺す!!テメエだけはぶっ殺してやるぜモブウウウウウッッッッ!!!!!』

 

 …キレてるなアイツ。憤怒の表情で亮太を睨みつけてるし。

 だが吉満が大量の魔力を放出した瞬間、

 

 吉満の展開した結界が訓練室を包んでいく。

 亮太は吉満共々結界の中に消えて行った。

 観戦室の窓からは何も見れなくなってしまっている。

 

 「結界!?」

 

 「っ!?エイミィ!!結界の中の様子を映像に回せるか!?」

 

 『ちょっと待ってクロノ君!!…………うん、いける!映像を回すよ!?』

 

 「頼む!!」

 

 クロノがエイミィさんに指示を飛ばしエイミィさんが結界の中を映し出した映像を観戦室にも回してくれる。

 訓練室を直接窓から見ていた俺達は今度は空中に出されたモニターの映像に注目する。

 …………オイオイ、マジかよ。

 おそらくこれは吉満の切り札なんだろうな。よりによって固有結界とは。

 

 『固有結界』

 

 自分の心象世界を侵食させることで、一定範囲内を現実世界とは異なる法則の支配する異界に変える、魔術や能力。個々の術者の心象世界がそれぞれに異なる以上、発現の仕方もさまざまである。世界からの修正を常に受け続けるため、その展開と維持には莫大な魔力が必要になり、人間の術者にはせいぜい数分程度の維持しかできない。最も魔法に近い魔術で、魔術師たちの目指す到達点の一つ。

 

 「何だこれは!?こんな結界見た事が無いぞ!!」

 

 『結界内の風景を変えるだなんて…』

 

 皆驚いてるな。まあ確かに『リリなの』世界の一般的な結界は周りの風景を変えるなんて事は出来んし。

 結界内の風景は見渡す限り平野であり亮太と吉満の立ち位置が結界に閉じ込められる前と変わっている。

 そして吉満の側に現れる影が徐々に実体化し始める。

 右に吉満、左に吉満、正面、後方に吉満…と実体化したソレらは全てが吉満英伸本人であった。容姿、バリアジャケットと何一つ違う事無く全く同じ。

 …瞬く間に吉満の大群が出来上がった。

 

 その光景をみた俺達は

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 全員顔を引き攣らせていた。

 

 『クハハ…。これが俺様のレアスキル『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』だ!!モブ、テメエもこれで終わりだなあ?』

 

 『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)

 

 『fate/zero』原作においてライダーの切り札となる、ランクEXの対軍宝具。

死して「世界」に召し上げられてなお、ライダーに忠義する伝説の勇者たちを現界させる固有結界。

遮蔽物のない砂漠の荒野へと敵ごと引き込み、大軍によって圧倒する。

魔術師でもないライダーがこの世界をカタチにできるのは、彼を含めた勇者たち全員が同じ心象風景を共有しているため。

その軍勢の1騎1騎がサーヴァントとしての力を持っており、それぞれがランクEマイナス相当の「単独行動」スキルを保有している(吉満の『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』は神様に頼み多少アレンジしてもらっている。その内容は吉満本人と全く同じ容姿、性格、身体能力、魔力を持った自分自身を結界内で創作するというモノ)。

 

 吉満…。追い込まれてた時と違って今は余裕綽々って感じだな。

 切り札がただの固有結界じゃなく『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』ってのには俺も驚いたが何故召喚されたのは全員お前なんだ?

 

 『テメエはここで無様に地べたへ這いつくばらせてやるぜ』

 

 何やら亮太に向かってほざいてるが…。あ、吉満の大群全てがこっち見た。その光景に俺、シグナムさん、クロノ含め思わず後ずさる観戦組。そして一斉に

 

 ニコッ

 

 「「「「「「「「「「ひいっ!!?」」」」」」」」」」

 

 微笑んだ吉満達に悲鳴を上げてしまう。

 その表情は恐怖に染まり俺、シグナムさん、クロノ以外皆若干涙目だ。

 

 『全軍…かかれええええええっっっっっ!!!!!!』

 

 『『『『『『『『『『クハハハハハハハハハハハハハハハ』』』』』』』』』』

 

 笑いながら亮太に向かって突撃していく吉満の大群。

 この光景をモニター越しとはいえ見ている俺達は

 

 「「「「「「「「「「う、うわああああああんんんんんっっっっっ!!!!!」」」」」」」」」」

 

 遂に恐怖を我慢しきれずガチ泣きしてしまう俺、シグナムさん、クロノ以外の皆。

 …いやこれ怖過ぎるってマジで!!!同じ顔の集団が笑いながら突撃してくる……。

 精神崩壊させるのにこれ以上の技なんて無いぞ。

 唯一泣いてない俺達三人も恐怖で身体が震えている。

 そんな吉満の大群は亮太に近付き攻撃を開始する…が、

 

 ブンッ…スカッ…ブンッ…スカッ…。

 

 先程と同様に大剣で切りかかるだけ。

 …吉満、お前は学習能力が無いのか。

 俺はもう呆れる事しか出来なかった。

 さっき物理攻撃が効かなかったんだから魔法使ったりして別の攻撃しろよ。

 っと、亮太も動いたな。光速で空中に飛び上がり何やらポーズを取ったと思ったら

 

 『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)!!』

 

 テニスボール程度の大きさの光弾を吉満の大群に向けて発射する。

 

 ドドドドドドドドドッ!!

 

 光弾の大きさとは裏腹にその威力は相当なモノだ。偽物の吉満は一撃で消滅していく。また直撃しなくても爆風で吹き飛んだ偽物も消滅していく辺り、耐久性はかなり脆いみたいだ。

 しかし亮太の能力はこれで完全に確信したな。

 『光速移動』『レーザー』『攻撃がすり抜ける身体』そして『八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)!!』。闘う前に本人が言っていた『当てる事は出来ない(・・・・・・・・・)』という言葉の意味。

 そりゃあ普通の攻撃で当てる事が出来ないのは当然(・・)だ。あれは『ワンピース』原作に登場する大将・黄猿と全く同じ能力。体を原形を留めない自然物に変えることで、通常の物理攻撃を受け流し無効化できる。その絶対的な防御力と、広範囲に及ぶ自然現象さながらの攻撃力から、三種の中でも最強種とされる悪魔の実『自然(ロギア)系』の中の一つ、『ピカピカの実』で得られる能力だからだ。

 この世界ではまず『覇気』なんて存在しないだろうからあらゆる物理、魔法攻撃も『光人間』である亮太には全く意味を成さない。それにバインドを始めとする捕縛系の魔法でも亮太を捕えるのは無理だろうな。光を縛るなんてまず出来ないし。

 …亮太、この世界においてはお前も大概のチートキャラだな。

 

 徐々に砂煙が晴れて行くと視界に映るのは無数の数のクレーターとうつ伏せで倒れ完全に意識を失っている吉満。

 こうして俺を除いた転生者だけの戦いは亮太の一方的な勝利で幕を閉じた………。

 

 

 

 

 

 

 

 後は未だにガチ泣きしてる皆をどうやって泣き止まそう?

 


 
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