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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第十九話 祝福の風との再会(後編)

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-09-11 06:46:47 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:47885   閲覧ユーザー数:41948

 「ほんまに…ほんまにリインフォースなんか?」

 

 「はい、我が主」

 

 微笑みながら銀髪の女性、リインフォースは答える。

 しかしはやてはまだ目の前にリインフォースがいる事が信じられないのか

 

 「…痛い」

 

 自分で自分の頬をつねっていた。

 

 「夢やない…夢やないんや。でも、何で?リインフォースは確かにあの時…」

 

 「はい、私は確かにあの時消滅しました。ですが勇紀が私の残滓を集め、私を助けてくれたのです」

 

 はやてがこちらに顔を向けたのでとりあえず頷いておく。

 

 「今では新しい夜天の書の管制人格としてここに存在しています。プログラムのバグも勇紀が完全に直してくれたので暴走する事もありません」

 

 『ええっ!?』と言って驚いているアリサ、すずか、リイン以外の面々。

 何だ一体?

 

 「おい勇紀」

 

 不意に横から声を掛けられた。

 鉄槌の騎士(ヴィータ)だ。

 彼女とは温泉旅行の際に仲良くなり翠屋で原作組を名前で呼び合う事になった日以降、時々街中で遭遇する様になった。会った時に毎回アイスを奢っていたら『スゲーいい奴』と言われお互いに名前で呼び合う様になった(その時に敬語で喋るのも禁止された)。

 

 「ヴィータか。何?」

 

 「『何?』じゃねーよ!さっきリインフォースが言ってた『プログラムのバグを直した』って言うのは本当なのかよ?」

 

 「ああ、完璧に直しておいたぞ。流石に手こずったけど夜天の書の元のデータさえあればプログラムの何処がどんな風に改竄されたのか、どう修正すれば元に戻るかが分かったし。後は高速思考(ハイパーハイスピード)とアフロディーテ使って必死に処理していったからな」

 

 それを聞いた一同はあ然とした表情になっていた。

 

 「で、夜天の書は家にあったデバイスのパーツ使って作った。デバイスなんて初めて作ったけど結構骨が折れる作業だったわ」

 

 こういうのはやっぱ専門職の人に任せるべきだね。作り方を一回一回確認しながら作ってたから時間がかかってしょうがないわ。まあ作ったのが夜天の書だから当然といえば当然なんだがな。

 

 「しかし手作りのデバイスはまだしも、それが夜天の書とは…。しかもプログラムも完全に修復させたなんて貴方はどれだけチートキャラなんですか?」

 

 「ユウは頭良いよねー」

 

 「アホかレヴィ。ユウキがした事は『頭が良い』程度で出来る事ではないわ。第一そこの融合騎が消滅したのは一年も前の事だ。そんな奴の残滓がもう残っている筈無かろうが」

 

 「ディアーチェの言う通りですね。かといってユウキが一年前から残滓を回収してたとは思えませんし…。考えられるのは私達の知らないレアスキルを使って何かしたという所でしょうか?どうなんですかユウキ?」

 

 ユーリの質問と同時にあ然となっていた皆、そしてアリサ、すずか、リインの視線が再び俺に集まる。

 

 「ユーリの言う通りだぞ。リンスの残滓を回収、そして夜天の書を作るのに『時間施行(ラグナロク)』と『悪魔図書館(あくまとしょかん)』の2つを使った」

 

 「やっぱり私達の知らないレアスキルだったんですね。それはどんな能力なんです?」

 

 「ん?そうだな…」

 

 『時空航行(ラグナロク)

 

 その名の通り時間に関する能力でもし現状が、現状のままで進めば『どんな世界』になるかを見せるだけでなく実際に体験させる事も出来る効果と、過去や未来へ時間移動する効果を持つ。今回は後者である時間移動の能力を使用した。

 

 『悪魔図書館(あくまとしょかん)

 

 異空間にある図書館で主であり管理者でもある俺のみが自由に出入り出来る場所。キーワードからありとあらゆる情報を検索する事が出来、過去、現在、未来、あらゆる並行世界に存在する情報を記録している万能図書館。自分が身に着けている者(デバイスやアクセサリー類)なら持ち込む事が可能。高速思考(ハイパーハイスピード)と同様に時間経過は現実世界では一瞬である。

 

 「……っていった効果があるんだ」

 

 俺は今回使ったレアスキルについて説明する。

 

 「えーっと、つまり?」

 

 まだ理解出来ていない様子のなのはのために

 

 「悪魔図書館(あくまとしょかん)で夜天の書の情報を検索。

        ↓

 情報を元に夜天の書を作成。

        ↓

 完成した夜天の書を持って時空航行(ラグナロク)を使い、リンスが消滅して少し経った時間に跳ぶ。

        ↓

 リンスの残滓を夜天の書に回収し、元の時間である現代に帰還。

        ↓

 回収した残滓に若干バグも混じっており新しい夜天の書を侵食しようとしたがアフロディーテで侵食を食い止め、高速思考(ハイパーハイスピード)を使いながらバグを直していく。

        ↓

 バグを完全に直し管制人格であるリンスを起動、現状までの流れを説明。

        ↓

 説明を終えた頃にはかなり時間オーバー。急いで翠屋に。

        ↓

 そして今の状況に至る。

 

 ……っていうのが一連の流れだ。理解したか?」

 

 分かりやすい様に説明してやったつもりだ。

 

 「な、何となく分かったの」

 

 何となくでも理解してくれて何よりだ。すぐ近くにいるレヴィは未だに理解出来ていない様子で、必死に理解しようとして頭から煙が噴き出ている様に見える。

 

 「まあ、とにかくさっきリンスが言った通りプログラムのバグはもう完全に直してあるから心配する必要は無いぞ。後ははやてが夜天の書の主として登録するだけだ」

 

 そう言って俺は踵を返し翠屋を出て行こうとする。

 

 「ちょ、ちょっと勇紀君!何処行くん!?」

 

 はやてが俺を呼び止めるが

 

 「帰るんだけど?もうほとんど誕生日会もお開きみたいだし、俺はちゃんとはやてにプレゼント渡したから目的は果たしたしな。何よりこの一週間ろくに寝てないから正直言ってかなり眠い。はやてには悪いが今日はもうゆっくり寝たいんだよ」

 

 言い終えると『ふあ~』と欠伸が出る。早く帰って寝たいな。家の布団が恋しいぜ。

 

 「もし聞きたい事があるならまた今度にしてくれ」

 

 「う、うん。引き留めてゴメンな」

 

 「気にするな」

 

 そう言って入り口の扉に手をかけ、翠屋を出る前に

 

 「勇紀!」

 

 また呼び止められた。今度はリンスだ。

 

 「お前には感謝している。私を助けてくれただけでなく、我が主や騎士達と共に過ごせる時間を再び与えてくれた事を。本当にありがとう」

 

 頭を下げ、礼を言うリンス。俺は振り返る事無くただ片手をヒラヒラと振って答える。

 

 ガチャッ……バタンッ

 

 扉をくぐり外に出ると再び欠伸が出て強烈な眠気が襲ってくる。

 

 「あー、駄目だ眠い…」

 

 「こんな所で寝たら駄目だよユウくん」

 

 「分かってるよダイダロス。ただ家まで歩いて帰れる自信がない」

 

 周囲に人がいない事を確認してから足元に魔法陣を展開させ、転移魔法の準備をする。

 

 「土足で家に入るのはまずいから玄関に座標を設定…っと」

 

 転移先の座標を玄関に合わせた所で魔法陣の中に誰か入ってきた。

 あれ?人がいない事は確認したはずなんだが…。そう思って魔法陣に入ってきた人物を見た。

 

 「どうかしましたか?」

 

 ユーリだった。

 

 「なんだユーリか。どうしたんんだ?」

 

 「どうしたって言われましてもユウキが帰るなら一緒に帰ろうかと。もう誕生日会も終わりですし。それにシュテル達もすぐに来ますよ」

 

 『ほら』と言われて翠屋の方を見るとちょうど中から出てきたシュテル達が俺の方に近付いてきた。

 

 「ユウ、何やってんの?」

 

 「見て分からんか?歩いて帰るのが面倒だし早く寝たいから転移しようとしてるんだ」

 

 「なら我等も一緒に転移しても構わんな?」

 

 「まあ断る理由は無いし帰るところも同じだからな。一緒に転移するなら早く魔法陣に入ってくれ」

 

 俺が促すと三人はすぐに魔法陣の中に入ってきた。

 そして四人がちゃんと魔法陣の中に入ったのを確認して俺達は家に転移した。

 転移し、家に着いた俺は何も食わず風呂に入るだけの気力も無かったのですぐさま自分の部屋に戻り布団の中に潜り込むと同時に意識を手放していた………。

 

 

 

 次の日、昼過ぎに目が覚めた俺は昨日風呂に入ってない事を思い出し風呂に入り、部屋に戻ってパパッと着替えてリビングに顔を出した。リビングにはテレビを見ているシュテルがいた。

 

 「おはよう~」

 

 「…ユウキ、もうお昼過ぎですから『おはよう』とは言わないと思いますよ」

 

 「あ~、それもそうだな」

 

 「しかし今まで寝ていたのですか?」

 

 「ああ。流石に疲れが溜まっていたみたいだ」

 

 「あまり無茶はしないで下さいね?」

 

 「分かった。心配してくれてありがとな」

 

 俺の体調を心配してくれるシュテルの頭を撫でてやる。

 

 「あ…………//////」

 

 シュテルの顔が徐々に赤くなってくる。恥ずかしいのかな?

 そう思って俺はシュテルの頭から手を離す。

 

 「あ…………」

 

 すると今度は少し残念そうな表情になる。

 ホント何なんだ?

 

 「そういえばレヴィ、ディアーチェ、ユーリは?」

 

 三人の姿が見えない。家の中からも三人の魔力は感知出来ないし、どっか行ったのか?

 

 「レヴィはアリシアと遊ぶ約束をしていたらしいので遊びに行きました。ディアーチェは図書館、ユーリはその辺を散歩してくると言ってました」

 

 成る程な。三人共もう今日の予定は立てていたのか。

 

 「それでユウキ。昼食は食べますか?」

 

 「いただきます」

 

 『分かりました』といってキッチンに向かいすぐに昼食を持ってきてくれる。

 その後、シュテルの持ってきた昼食を綺麗に平らげシュテルがテレビを見ている傍ら、俺もリビングでのんびりくつろいでいた………。

 

 

 

 「シュテル、ちょっと外に出て来る」

 

 「何処へ行くのですか?」

 

 「駅前にある東雲堂。何か無性にあそこのアイス食いたくなってきた」

 

 俺はシュテルと会話しつつ立ち上がり外出する準備をするため、部屋に戻ろうとする。戻るといっても財布を取りに行くぐらいだが。

 

 「私の分もお願いしていいですか?」

 

 「いいぞ。何味にする?」

 

 「ストロベリー味でお願いします」

 

 「了解」

 

 シュテルに返事をして部屋に戻る。

 財布を持ち玄関を出るとちょうど散歩を終えたのかユーリとバッタリ遭遇した。

 

 「ユウキ、何処かへ行くのですか?」

 

 「おかえりユーリ。東雲堂にアイス買いに」

 

 「東雲堂ですか!?…あの、私の分もいいですか?」

 

 東雲堂に行くと聞いて瞳をキラキラ輝かせた後、遠慮がちにお願いしてきた。

 

 「別にいいぞ。シュテルにも頼まれてるし買うアイスが一個増えても問題無い」

 

 「本当ですか!?じゃあオレンジ味でお願いします。お金は後で返しますから」

 

 「別に奢ってやってもいいんだが…」

 

 「うっ、魅力的な提案ですがユウキに甘え過ぎて迷惑を掛けるわけにはいきません」

 

 一瞬悩んでいたが断ってきたユーリ。

 

 「別に気にしなくてもいいのに。…まあいいや、オレンジ味だな?」

 

 「はい!お願いします!!」

 

 上機嫌でユーリが家の中に入ったのを見送ってから俺は再び歩き出す。

 どうせだからレヴィとディアーチェの分も買うか。仲間外れにしたら後が怖いし。

 レヴィにはチョコ、ディアーチェはグレープでいいだろう。

 俺はバニラにしようかな。

 そんな事を考えてから20分程歩き、駅前に着いた。

 

 目的地である東雲堂の方を見ると相変わらず人がかなり並んでいる。

 ここのアイスは雑誌に取り上げられるぐらい美味くて隣町どころか地方から買いにくるお客さんがいる程だ。

 値段は多少張るがそれでも買って食べる価値は十分にある。

 列の最後尾に並び順番が来るのを待つ。

 

 「あ、勇紀君や」

 

 突然俺の名前を呼ばれたので声のした方に顔を向けたらこっちに近付いてくる集団がいた。

 はやてと守護騎士にリンスとリイン、八神家の面々だった。

 リインは昨日の姿と違い、普通の子供と同じぐらいのサイズになっている。

 

 「今日はまた大所帯だな」

 

 「リインフォースとリインの服を買いに行ってたんや。勇紀君は何してるんや?」

 

 「東雲堂のアイス買いに来た」

 

 『アイス』という単語に過剰な反応を示す者が2人程いた。ヴィータとリインである。

 

 「あ、納得や。確かに東雲堂のアイス美味しいもんなー」

 

 「その分値段は高いがな。…それにしてもリンスとリインの服っていう割には随分買い込んでないか?」

 

 見るとそれぞれが手に荷物を持っている。

 

 「もうすぐ暑くなってくるやろうからちょっと早いけどわたしらの分の夏服も買ったんや」

 

 「納得」

 

 はやての答えに頷いていると

 

 「はやて…」

 

 ヴィータが会話に加わってきた。

 

 「どうしたん?ヴィータ」

 

 「アタシもアイス食いたい」

 

 「はやてちゃん、私も食べたいですぅ」

 

 八神家の子供組はアイスをご所望のようだ。

 

 「アタシは子供じゃねー!!」

 

 「うお!?どないしたんやヴィータ?」

 

 「ビックリしたですぅ」

 

 「いや、なんかそう叫ばなきゃいけない気がして…」

 

 「「???」」

 

 はやてとリインは首を傾げている。

 感が鋭いなヴィータよ。

 

 「それよりはやて、アイス買ってほしい」

 

 「はやてちゃん、お願いしますぅ~」

 

 「…しゃーないなあ。じゃあ並ぼか」

 

 『わーい』とはしゃぐヴィータとリイン。そんな二人を見て苦笑しながらはやてが俺の後ろに並び、ヴィータとリインがその後ろに並ぶ。…がリンスを始め残りの騎士達は並ばなかった。

 

 「???シグナム達は並ばんの?」

 

 「はい、我々は先に帰りますので」

 

 「そっか。ならシグナム達の分も買って帰るな?」

 

 「主の心遣い感謝します。では主達の荷物は先に我々が持って帰りますのでこちらに渡して頂けますか?」

 

 「わかったわ。じゃあコレ」

 

 はやて、ヴィータ、リインがシグナムさん達に紙袋を渡し、受け取ったシグナムさん達がはやてに一礼して去って行った。

 

 「はやて、早速リンスと…というか夜天の書に主として登録したんだな」

 

 さっきリンスからはやてとの魔力の繋がりを感じた。

 

 「そうや。勇紀君が帰った後すぐに登録したんや」

 

 笑顔ではやてが言う。

 

 「あの後のはやてちゃんは泣いたり笑ったり大変だったんですよ~。お姉様もアワアワってしてました~」

 

 「ちょ!?リイン、余計な事言わんでええんや!」

 

 リインの発言で顔を真っ赤にしたはやてが声を荒げる。リインは『ひゃう!』なんて可愛らしい悲鳴を上げてヴィータの背中に隠れる。

 

 「…ってリイン、お姉様っていうのは?」

 

 「リインフォースお姉様の事ですぅ」

 

 ヴィータの背中に隠れながら俺の質問に答えてくれる。

 

 「ああ、リンスの事か。言われてみれば確かに姉妹だな」

 

 「…そう言えば勇紀君はリインフォースの事を『リンス』って呼んでるんやね?」

 

 「まあな」

 

 「わたしも今日からそう呼んだろかな?」

 

 「呼んでやれば?リンスも喜ぶだろ」

 

 「うん、そうするわ。あ、後な。そのリンスが言ってたんやけど夜天の書に勇紀君のリンカーコアが入ってるらしいんやけど?」

 

 「確かにあるぞ。俺以外の誰かが夜天の書の重要なプログラムを勝手に触れようとすると中のリンカーコアが反応して第三者の干渉を強制的に遮断する様にしてある。これははやてみたいに夜天の書の主でも例外無く反応するから」

 

 また闇の書みたいに暴走させられたらたまらんからな。はやてに限ってそんな事は無いだろうけど。

 

 「分かったわ。気を付けとく。でも勇紀君のリンカーコアが使われてるなら勇紀君とリンスはユニゾン出来んの?」

 

 「試してないけど多分出来るだろうな」

 

 ユニゾンか…やったらどんな姿になるのかちょっとは興味あるな。

 

 「てゆーかこんな所でそんな話しててもいいのか?普通の人も結構いるんだぞ?」

 

 ヴィータの意見は尤もだ。だけど…

 

 「問題無いぞ。はやてたちが並んだ直後に認識阻害の魔法使ってるし」

 

 今ここで会話してる内容は一般人には伝わっておらず、小学生らしい会話が聞こえる様になっているからな。

 

 「魔法使ってたん!?気付かんかってんけど…」

 

 「勇紀さんすごいですぅ~」

 

 驚くはやて、賞賛してくれるリイン。

 

 「ありがとなリイン、…っと、そろそろだな」

 

 話している間も少しずつ列は進んでいたのでもうすぐ店前に着く。

 俺はポケットから財布を取り出して順番が来るのを待っていた………。

 

 

 

 「「~~♪~~♪」」

 

 アイスを買い家路に着く俺、はやて、ヴィータ、リイン。

 俺のすぐ横にはやてが並んで歩きヴィータとリインは俺達の少し前を歩いている。

 アイスを買ってもらえたのが余程嬉しいのだろう。二人で鼻歌を歌っている。

 

 「ホント嬉しそうだな?」

 

 「まあヴィータはアイス好きやからね。リインは昨日の誕生日会でアイス食べた時にえらい気に入ってもーてな」

 

 「だからか。ヴィータはともかくリインがあそこまで喜んでいるのは」

 

 「しかも今日はあの東雲堂のアイスやからなあ。ヴィータが喜ばん筈ないし、そんなヴィータの様子を見たリインも期待しとるんやろ」

 

 「二人共、そんなに食いたいなら先に帰って食えばいいだろうに」

 

 ヴィータが大事そうに抱えているアイスの入った箱をヴィータとリインはチラチラと箱をみては前を向き、また箱を見るという動作を繰り返していた。早く帰って食べたいというのが丸分かりだ。

 

 「ヴィータ、リイン。アイス食べたいなら先に帰って食べててもええよ?」

 

 「な!?何言ってんだよはやて!!アタシははやての騎士だぞ!!もそアタシがいない所ではやてが危ない目に遭ったらどうすんだ!?」

 

 「そうですよはやてちゃん!はやてちゃんが怪我でもしたら皆悲しむですぅ」

 

 「大丈夫やって。すぐ隣には頼りになるボディーガードもおる事やし」

 

 ふーん。頼りになるボディーガードねえ……って

 

 「俺かよ!?」

 

 思わず大声で聞き返してしまった。

 

 「勇紀が守ってくれんのか?それならまあ、安心だけどよ」

 

 「勇紀さん、そんなに強いんですかぁ~?」

 

 「勇紀君は強いでリイン。西条(アイツ)にも無傷で勝てるぐらいなんや」

 

 「アイツって誰ですかぁ~?」

 

 どうやらリインは西条の事を知らない様だ。まあ、当然か。生まれて間もないし昨日の誕生日会には呼ばれてなかったし。

 

 「ああ、一人アタシらの知ってる奴で最っ低な奴がいるんだよ。とんでもねー勘違い野郎ではやてもアタシらも迷惑してんだ」

 

 「むう~、はやてちゃんに迷惑掛けるなんてリインはプンプンですぅ~」

 

 頬を膨らまし、両手をブンブンと振っているリイン。『私怒ってます』とアピールしている。

 

 「今度アイツがはやてに変な事したらアタシらでブッ飛ばすぞリイン!!」

 

 「はいです!!」

 

 ヴィータの誓いにリインも頷く。

 

 「頼もしい騎士達だな」

 

 「そやろ?わたしの自慢の騎士達で家族やもん」

 

 「ああ、その自慢の家族が側にいるならボディーガードなんていらないよな。じゃ…」

 

 そう言ってこの場を離れようとするが…

 

 「何処行くんや?」(ガシッ)

 

 笑顔で俺の手を掴む。

 

 「いや、あの二人がいたら俺いらんでしょ?それに俺も早く帰ってシュテル達にアイス渡さないと…」

 

 「まだ大丈夫やろ?アイスだって箱の中にドライアイスがたっぷり入っとるからすぐには溶けんやろうし。わたしはもう少し勇紀君とお話したいんやけど?」

 

 お話ねえ…。

 

 「ヴィータ、リイン。わたしの事は勇紀君が守ってくれるらしいから先に帰ってアイス食べとっても大丈夫やで!わたし達はゆっくり歩いて帰るから」

 

 「って、ちょっ!?」

 

 俺が答えてもいないのにはやてが俺の今からの行動を勝手に決めやがった!

 

 「はやてがそこまで言うなら…。勇紀!アタシの代わりにはやてをちゃんと守ってくれよ?」

 

 「勇紀さん、はやてちゃんをお願いしますぅ~」

 

 俺の意見を聞く事も無くヴィータとリインが先に走って帰ってしまった。

 

 「ほな、わたし達も行こか?」

 

 「俺に拒否権は「無いで♪」…ですよねー」

 

 すぐに帰るという選択肢を諦め、俺ははやてに同行せざるを得なくなった。

 俺の手を引きはやては歩き出す。

 最初ははやてに手を引かれていたがはやての歩幅に合わせるためすぐにはやての横に並んで歩く。

 しかし手を離してはくれない。手を離したら俺が逃げるとでも思っているのだろうか?

 

 「いや~、男の子と一緒に歩くのって新鮮やわ~」

 

 「そうなのか?クロノとかユーノみたいに知り合いの男子ぐらいいるだろ?」

 

 「こうやって肩を並べて歩いた事はクロノ君ともユーノ君とも無いんよ」

 

 「じゃあ西条は?」

 

 「…わたしがアイツと一緒に歩きたいと思うん?」

 

 「まず無いだろうな」

 

 原作組や長谷川家に嫌われまくっている西条だ。まず一緒に歩きたいなんて思ってる奴はいないだろう。

 

 「だから勇紀君はわたしの隣に初めて並んで歩いてる男の子やで。嬉しいやろ?わたしみたいな美少女と一緒に歩けて嬉しいやんな?」

 

 「ん?そうだな…はやては確かに美少女だろうし一緒に歩ける奴は役得だな」

 

 「…………////////」

 

 「???どうした?」

 

 なんか顔を赤くしてこっちを見てるし。

 

 「な、何でもあらへんよ(即答されてもうた。しかも美少女って言ったんも否定されんかったし…)///」

 

 「そうか?」

 

 「う、うん。あ…そこの道左に曲がってな」

 

 「分かった」

 

 だが道を曲がった瞬間

 

 「おおっ!!はやてじゃねえか!!」

 

 少し前の会話で出てきた銀髪イケメン君が反対側から歩いてきていた。

 向こうははやての姿を見ると笑顔になり逆にはやてはあからさまに嫌そうな表情になる。

 

 「こんな所で会うなんてきぐ…う……」

 

 突然言葉が止まり西条はある一点を凝視している。

 視線の先にあるのは俺とはやての繋がれている手だった。

 

 「テメエ、何してやがる!!はやてが嫌がってんじゃねえかああっっっっ!!!」

 

 相変わらず勘違いモード全開だ。

 

 「さっさとその手を離せモブ野郎!!」

 

 正直コイツの命令なんかに従う義務なんて無いんだがこれ以上絡まれて時間を無駄にしたくは無いな。

 俺が手を離そうとするとはやてが手を強く握りしめてくる。

 おかげで離す事が出来ない。

 

 「人の話を聞いてんのか!?その手「ええかげんにしいや!!」を……はやて?」

 

 西条が喋ってる最中にはやてが大声を上げて怒鳴り、西条の言葉を遮る。

 …完全にキレてるなはやて。

 

 「別にわたしが誰と手を繋ごうとわたしの勝手や!!それにアンタが勇紀君に命令出来る権利なんて無い筈や!!」

 

 「なっ!!?」

 

 はやてに言い返されたのが西条にとっては予想外だったのか驚いた表情で固まった。

 

 「勇紀君!早よ行こ!!」

 

 「お、おう…」

 

 そんな西条を無視して俺の手を引っ張りながら西条の横を通り過ぎる。

 俺達が通り過ぎても固まったままの西条は身動き一つせず追いかけて来る様な事は無かった………。

 

 

 

 「最悪や、アイツに会うなんてホンマ最悪や…」(ブツブツ)

 

 西条と遭遇してからというもの、一向に機嫌が戻らないはやて。

 

 「なあ、はやて。いい加減機嫌直せって」

 

 「無理や」

 

 即答で否定された。

 

 「大体勇紀君は何とも思わんの?」

 

 「言い返してもアイツが俺の意見聞くとも思えないし、相手にするだけ時間の無駄だろ?無視するのが一番だ。まあ家族の事でも馬鹿にされたら流石の俺でも黙っちゃいないけど」

 

 前回はそれでキレちゃいましたし。

 

 「…無視出来るだけでも大したもんやと思うわ。あんな自分勝手な思い込みで変な事ばっか言う奴わたしには絶対我慢出来ひん。特に仲の良い人の悪口とか言われたら尚更や」

 

 「ホント苦労してるな。お前等聖祥組は」

 

 「そう言うならアイツ何とかしてくれへん?」

 

 「学校違うから無理。それに自分から進んで関わりたくない」

 

 「……はあ~」

 

 西条に出会ったせいで不機嫌になったはやて。空気が重いなあ。

 …とりあえず話題でも変えないと。

 

 「もうアイツの事は放っといてだ。はやて、俺と話がしたいって言ってたけどどんな話がしたいんだ?」

 

 「あ、うん。お話っちゅうかお礼が言いたかったんや」

 

 「お礼とな?」

 

 「うん……夜天の書を直してまたリンスと一緒に居られる様にしてくれてありがとう」

 

 俺の手を離し身体をこっちに向けたはやてがお礼を言い頭を下げる。

 

 「お礼ってその事か?なら気にしなくていいのに。リンスを直してプレゼントにしたのもお前のビックリする顔が見たかったっていう個人的な理由だし…」

 

 「それでもや。もう二度と叶う事の無い筈の夢を勇紀君は現実にしてくれた。また家族皆で笑って過ごせる現実を与えてくれた。いくら感謝してもし足りひん。だから何度でも言わせて下さい。本当にありがとう」

 

 そう言って顔を上げたはやて。

 その表情はお世辞抜きで本当にいい笑顔だった。

 

 「…うん、やっぱはやてはブスッとした表情より今の表情の方が似合うぞ」

 

 俺は思った事を口にしていた。

 

 「なっ!?なな、何言うてんの勇紀君!!こんな時にお世辞なんか言わんでええって!!///」

 

 「お世辞じゃないけど?実際さっきの笑顔だったら海小(ウチ)の男子のほとんどは堕とせるな」

 

 特に担任(ロリコン)はヤバいかもな。絶対に理性が保たないだろうし、はやてが拉致されかねん。

 

 「じゃ、じゃあ勇紀君はどうなん?他の子みたいに堕ちるんか?///」

 

 「俺?どうだろ?海小(ウチ)の男子共みたいに小学生の内から恋人が欲しいとまでは思って無いからなあ。もっと大きくなればどうなるか分からんが今は無い…かな」

 

 「そ、そうなんや…今は無いんやね……(て事は大きくなったら可能性は有る……って何を考えてるんやわたしは!?)////」

 

 何だ?

 はやての奴、何か考え込んだのかと思ったらいきなり顔を赤くして頭をブンブンと振り回し始めた。

 

 「…っと、はやて。お前の家ってあそこか?表札には『八神』って書いてるけど…」

 

 「ほえ!?う、うん。そうやで!あそこがわたしの家や」

 

 どうやら無事にはやてを送り届ける事が出来た。

 良かった。もしはやてに何かあったら別れる前に約束したヴィータとリインに会わせる顔が無くなる。

 

 「じゃあ、俺は帰るからまたな」

 

 「もう少し色んなお話したかってんけどしゃーないな。気を付けて帰ってな」

 

 「おう」

 

 じゃあ家に帰ってアイス食いますか。

 俺はシュテルとユーリが待ってるだろうと思い、手に持っていたアイスの箱を王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)に収納すると走って帰る事にした………。

 

 

 

 ~~はやて視点~~

 

 勇紀君に送ってもらってからかなり時間が経ち、もう時計は夜の10時を指していた。

 わたしは今自室のベッドで横になっている。

 

 「はあ~~~……何であんな事聞いてもうたんやろ」

 

 思い出すのは帰宅途中の会話。特に…

 

 『ん?そうだな…はやては確かに美少女だろうし一緒に歩ける奴は役得だな』

 

 『…うん、やっぱはやてはブスッとした表情より今の表情の方が似合うぞ』

 

 『お世辞じゃないけど?実際さっきの笑顔だったら海小(ウチ)の男子のほとんどは堕とせるな』

 

 勇紀君が言うてくれた言葉と

 

 『じゃ、じゃあ勇紀君はどうなん?他の子みたいに堕ちるんか?///』

 

 「っ!!?っ~~~~~//////」

 

 と、自分から彼に聞いた事。

 さっきからこの辺りの言葉が頭の中で再生されては顔を赤くして手足をバタバタさせてるわたし。

 ようやく落ち着いた途端に、また一連の言葉が流れて手足バタバタ…っと行動がループしよる。

 

 それから30分程経ち、何とか脳内ループ再生を止める事が出来た。でも…

 

 「これってやっぱそういう事なんやろなあ…///」

 

 自分の気持ちに確信出来たわたしがおる。

 

 「ホンマ、毎日一緒におる王様達が羨ましいわ」

 

 一緒に家を出て学校へ登校して授業受けて下校して家で過ごす。そんな王様達を思い浮かべると少しイラッとしてまう。

 完全に嫉妬しとる。勇紀君と一緒におる時間が多い王様達に。

 

 「王様達は勇紀君の家族やからなあ…。当たり前言うたら当たり前なんかもしれんけど」

 

 それでもこの差は大きい。ただ…

 

 「勇紀君鈍感やから王様達やすずかちゃんの気持ちには気付いて無い。ならわたしにもまだチャンスはある」

 

 今からでもまだ遅くない。もっとアピールしてわたしの事意識するようになってもらわんと。

 

 「後から好きになって王様達やすずかちゃんには悪いけど…」

 

 わたしにとっての初恋。絶対に実らせたい。

 

 「よっしゃ!!明日から気合入れて頑張るで!!」

 

 明日会えるなんて保証は無いんやけどな。

 …っと、気合入れたら睡魔が襲ってきよった。今日は結構歩いたから思ったより疲れてたんやなあ。

 とりあえず今日はもう寝よう。全ては明日からや。

 そう思い、わたしは部屋の電気を消しゆっくりと瞳を閉じていった………。

 

 

 

 ~~はやて視点終了~~

 


 
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