No.480257

fate/zero 〜君と行く道〜

駿亮さん

今回は説明回みたいになっちゃいましたね~

2012-09-05 23:05:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2783   閲覧ユーザー数:2678

3話 明かされる真相

 

悲劇とは誤解と勘違いの産物だ

ちょっとした価値観の違い

ほんの小さな恨みや妬み

それらが合わさる事で

悲しき物語は紡がれていくのだ

 

 

 

 

お嬢ちゃんが泣き止んだ所で、俺は自分の身体を形成するオラクル細胞を分離させて、ちょうどいいサイズの下着とスカートとシャツを作って手渡した。

我ながら器用なもんだ。

 

お嬢ちゃんは初めこそキョトンとしていたが、自分がぶかぶかのコートを羽織っているだけで他は全裸であることに気付いた途端、顔を真っ赤にして、服をひったくり、せっせと着替え始めた。

 

服を着終えた所で、まだ少しだけ顔を赤くしながらお嬢ちゃんはこっちを向く。

うん、どうやらサイズもちゃんと合っているようだ。

 

出来栄えに満足しつつ、俺は今更ながらも聞きそびれていたことを思い出した。

 

 

「そういや、お嬢ちゃん名前は?」

 

 

「ふぇ?」

 

 

「いや、だから名前。なんていうの?」

 

 

「さくら。まとう さくら」

 

 

「桜か。そんじゃぁ桜、いきなりで悪いんだけど。ちょっと失礼するよ。」

 

俺は桜の額に右手を置いて目を瞑る。

桜は一瞬身を強張らせるが、何も起きない事に今度は疑問符を浮かべた。

だが、今現在彼女の身体には大きな変化が起きているのだ。

 

それはオラクル細胞の侵入。

 

桜自身、何が起きているのかさえ分からない程、密かに俺の身体を構築する捕食細胞が桜の身体を巡っている。

そうする事で彼女の身体データを読み取っているのだ。

その過程で、俺は予想通りの物を発見した。

 

それはあの石部屋にいたのと同じ蟲だ。

体内のそこら中にあの蟲が侵入している。

それら一つ一つを、オラクル細胞捕食して分解していく。

そして、恐らく蟲が侵入した事による影響と思しき身体の損傷もゆっくりと修復していった。

 

 

「はい。お終い。」

 

大方の処置が終わり、手を話す。

オラクル細胞を回収した所で捕食した蟲の情報を解析していく。

 

オラクル細胞は捕食したモノの情報を吸収して更なる進化を遂げる自己進化能力を持っており、その過程で対象の情報を解析する機能を有している。

コンピューターを喰えばその中に保存されているデータを吸収し、人間を喰えばそいつの記憶を完全とは言えないが取り込めるのだ。

そして解析結果を脳裏に並べて行く。

 

 

名前は間桐 臓硯……否、マキリ・ゾォルケンか。

 

冬木聖杯戦争を創始した当事者の一人で、元々はこの世の悪を根絶するために第三魔法を再現しようとし、魂の物質化で不老不死になろうとしてたらしい。

その過程で蟲の身体で仮初の不老不死になり、目的の成就のために生き続けて五百年。

 

長い時の流れで御立派な理念も腐り果ててただの外道に成り下がったってわけだ。

同情出来なくもないけど結局の所ただのクソ野郎だ、早めに始末で来たのは幸運だったな。

 

しかも、こいつの記憶を吸収したおかげで結構な情報がいくつか舞い込んできた。

 

一つは今回の聖杯戦争に参加しているマスター三名の情報。

 

 

一人目は遠坂時臣、なんと桜の父親だ。

 

どうやら魔術師の家のしきたり云々で桜を養子に出さねばならず、その行為が何を意味しているのかも知らないまま間桐の家に桜を預けたらしい。

つまるところ、こいつこそが桜を地獄に突き落とした張本人ってわけだ。

本人はそんな事になるなんて知らなかったみたいだが、それはそれで罪だろ。

 

ただ聖杯御三家とかいう由緒正しい御家柄ってだけの理由でよく調べもせずにあんな悪意と害虫を押し固めて作った様な爺に桜をみすみす渡して行きやがった。

とりあえずこいつは敵だな。

 

 

二人目は時臣の弟子、言峰 綺礼。

 

聖杯戦争の監視役の息子で、対魔術師戦闘員「代行者」だ、それも凄腕の。

 

ていうかそれを差っ引いてもかなり危ない精神の持ち主の様に思える。

こいつは間違い無く人間を、物を壊すみたいな感覚で殺しまくれる種類の奴だ。

おまけに時臣の野郎とグル、監視役ともグル、この時点で聖杯戦争のルールもへったくれもあったもんじゃないな。

 

なにはともあれ、こいつは下手すりゃまっとうなサーヴァントよりも恐ろしい敵になりかねない。

まぁ蟲爺の記憶が正しければの話だが。

 

 

そして最後の一人、間桐 雁夜。

 

一応は桜の身内の一人で蟲爺の息子だ。

それなりに魔術の才能はあったそうなんだが、間桐の家の魔術、というよりも魔術そのものを嫌って家を飛び出していたらしい。

 

まぁ確かに記憶を解析してく内に魔術師って腕前上げてく毎に人間性が欠如していってるように感じるし、それを嫌がったのかな?

それに間桐の魔術は確かに色々とアレだから会得したくなくなるのも頷ける。

 

ただ、雁夜が間桐の魔術を受け継がなかったせいで雁夜の幼馴染で恋人だった遠坂 葵の娘である桜があの地獄に放り込まれたわけなんだが、いくらなんでも予測出来なかっただろうし、責めるのはお門違いってもんだ。

 

しかも雁夜は聖杯を得る事を条件に桜の解放を蟲爺に要求し、自分の命を削る代わりに蟲の魔術を行使出来るようにして聖杯戦争に参加したらしい。

 

と言う事は、雁夜の目的は俺の手で達成されているって事になる。

ならば、雁夜とはすぐにでも接触したい。

幸い時臣と綺礼の居場所は分かっている。

雁夜もざっくりとだがどの辺にいるのかは分かった、後で分体を放って探しておこう。

 

 

 

そして第二の情報、聖杯戦争の詳細だ。

 

なんでも、聖杯自体は実体を持たず、魔術回路を持つ存在を「器」として、サーヴァントの死によってその魂が溜まった「器」に降霊することで現われるんだとか。

 

ただし、器は願いを広義的に見て叶える「願望機」としての役割も確かに持っており、儀式の完成、つまりはサーヴァント5体以上の死亡によってもたらされる膨大な魔力を用いれば大抵の願いは叶えることが可能なのだという。

 

聖杯戦争の実施にあたっては、柳洞寺とかいう寺の円蔵山地下に隠された大聖杯と呼ばれる巨大な魔法陣により

冬木の土地の霊脈が枯渇しない程度に少しずつ魔力を吸い上げて儀式に必要な量を溜める必要がある。

 

 

要するにはこの大聖杯がある限り聖杯戦争は続くと言うこと。

勝利者に与えられる聖杯はさしずめ電話の子器の様な物か。

 

パッと聞いた感じだとよく分からないが、よくよく考えてみればとんでもないシステムを構築したもんだ。

願いを叶える、奇跡を強制的に起こすなんて代物をインターバルがあるとはいえ永続的に精製し続ける。

この仕組みを作った魔術師はどんな化物なのか想像もつかない。

 

だが、その名も知らぬ魔術師が作ったシステムも今や変わり果てているようだが……

 

 

 

三つ目の情報、一番ヤバイ事実が発覚した。

 

 

それは、聖杯が汚染されているということだ。

 

 

前回の聖杯戦争で、聖杯御三家の一角、アインツベルン家が勝利に固執するあまりにルールを破り、俺と同じような例外的なクラスでもう一体のサーヴァントを召喚した。

 

その名はアヴェンジャー、復習者の英霊。

 

その正体は拝火教を信じる古代のある村で、「この世全ての悪性をもたらしている悪魔を仕立て上げることで、人間全体の善性の証明とする」という身勝手な願いのために、この世全ての悪を体現する悪魔「アンリマユ」の名と役割を強制的に背負わされ、人々に心から呪われ蔑まれ疎まれ続ける中で「そういうもの」になってしまった、ただの人間。

 

サーヴァントとしては宝具も持たず力も人間並みという貧弱さで、当然のように真っ先にリタイアした訳だが、英霊としての彼の在り方が人々の“願い”そのものであったゆえに、敗れて聖杯に取り込まれた際に願望機がその願いを叶えてしまい、聖杯の中に邪神アンリ・マユの魂が宿ってしまった。

 

その「この世全ての悪」という“願い”は、大聖杯の中に留まりながら聖杯に満ちる「力」を養分に現界しようとしており、「器」に応じて「泥」「肉塊」そして「60億の人間を呪う宝具を持ったサーヴァント」として、それぞれ現われようとしている。

 

それにより聖杯が溜め込む「無色の力」は汚染されて「人を殺す」という方向性を持った呪いの魔力の渦と化し、それ以降、聖杯は人を貶める形でしか願いを叶えられない欠陥品になってしまっているのだ。

例えば大金を願えば、金持ちを殺しつくしその富を奪う、世界平和を望めば全世界の人間を殺し尽くして争いの元になる人間を根絶する等。

 

 

「なんだかなぁ……」

 

 

 

入手した情報を整理し終えて一息つく。

 

何せ五百年分の情報、それも密度の濃すぎる驚愕の事実ばかり。

俺の世界の常識に当てはめて処理出来たならもっと早く済んだだろうが、魔術とか言うものが根付いてる世界なんだからちょっとした観点のズレが生じることもある。

おかしな誤解をしないために慎重に分析しなければならなくないのだ。

まぁ、アラガミなんて化物が蔓延る俺の世界もこっちの世界からしてみれば大概なんだろうが。

 

 

ともかく方針は決まった。

桜を守りつつ聖杯戦争をとにかく生き残って聖杯を使用せずに確保。

そして、聖杯が使用される危険が無くなった所で今回の聖杯と大聖杯を残さず捕食する。

 

そんなことをすれば聖杯に溜め込まれた負の魔力の大津波をモロに浴びることになるだろうが、伊達に神と名のつく連中を喰い尽くして来ちゃいない。

人の悪意程度なら何とか受け止め切れるだろう。

 

だが、無傷で済むとも思っちゃいない。

相応のダメージを負う覚悟はしといた方が良さそうだ。

 

 

まぁかなりざっくりしてるが今はこんなもんで良いだろうか。

 

動き出すのは夜ってのがセオリーらしいので、俺は日が沈むまで桜と戯れる事にした。

あんな地獄を味わっていたとはいえまだ遊びたいざかりの少女なのだ。

 

 

「守ってやらないとな…」

 

「え?なにかいった?」

 

「いやいや。何でもないよ。」

 

聖杯に託す望みなんてこれっぽっちもありはしないが、この少女のために戦うってのも悪くはないかもしれないな。

 

そう、今までと同じだ。

自分が守りたいと思った人の為。そして何より自分自身の為。

 

 

 

俺はまた戦場に立つんだ。

 

 

 

 

 


 
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