第四十八技 明かす正体 キリト編
キリトSide
「俺は……『嘆きの狩人』の一人にして創設者であり、リーダー。
『
俺はただそういった。
アスナはさっきよりも顔を青ざめさせている。
俺が『狩人』の一人であった事にショックを受けているのだろう。
けど、むしろ俺は彼女が俺を恐れているのではないかとそちらの方が気になってしまう。
覚悟は決めていたはずなのにな。
「あ…え……。うそ、だよね…? キリトくんが…、嘆きの…狩人、って…」
「……嘘じゃない」
俺はさらに現実を突きつける。例えこれでアスナが俺から離れてもだ。
「俺は約一年半前に黒衣衆のみんなでレベル上げの為に迷宮に入ったんだ。
それで迷宮の奥についたところでほかのギルドの奴らにあってな。
そいつらと一緒にレベル上げのついでにアイテムの収集をやったんだ。
人数が多ければドロップ率も上がるからな。
そんな時だった。俺達が
奴らは俺達と他のギルドの奴らを分離させた。
もちろん俺達は応戦してギルドの奴らも抵抗した…。
けど、ギルドの奴らは全滅した…。一人を残してな」
そう、あの中でたった一人だけ生き残った、いや生かされたんだ。
それは紛れもなく…。
「それって、もしかして……」
「ああ。そいつは内通者だったんだよ……。その後は、凄まじかった…。
みんなは相手を殺さないようにしてたけど、俺はみんなが殺されそうになる度に、剣を振るって殺して……。
俺が五人くらい殺したところで奴らは逃げていったよ」
アスナはカタカタ震えながらもしっかりと聞いているようだ。
かなり辛いはずなのにな…。
「……にげ、た…。プレイヤー達は…、どう…なったの…?」
「……当時奴らのリーダーだった奴は、その後一気に勢力を拡大させたよ」
「っ!? まさ…か、その……
どうやらアスナは思い至ったらしい。
前にアスナも奴を見たことがあるからな。
「……PoHだったよ、そいつは…」
「そんな……」
「あの時、俺が奴らを……せめてあいつだけでも殺せていたら…、
今回のこともましてや、『ラフコフ』の勢力が拡大する事はなかっただろうな……」
俺は自嘲気味にそう言った。
そうだ、あの時奴を取り逃がさなければ『
しかし、奴らが逃げ延びた事で『ラフコフ』は肥大化し、そのせいで何人もの犠牲者が出てしまった。
「だから俺は……狩人の群れを…、『嘆きの狩人』を結成したんだ……。
少しでも余計な犠牲者を増やさないために。例え俺がなんと言われて思われても。
自分の欲望のために人を殺していい筈がない…!」
アスナは困惑気味に話を聞き続けている。体はずっと震えたままだ。
多分、聞いているのもつらいはずだ。
だが、ちゃんといわなければならないことだから…。
「だからって、俺が言えることじゃないな……。
結局は俺も自分の望みの為に殺しているんだから、
奴らと大して変わらな「そんなことない!」っ! アスナ?」
いきなり声を荒げたアスナに俺は少し驚いた。
アスナの顔を見てみると……泣いていた。
「キリ、ト…くんは…(ヒッ)、あんな…(ヒック)、あんな奴らなん、かとは…、ちがうよ……」
涙で顔をくしゃくしゃにして、震える声でゆっくりとだが言葉にしていく。
「キ、リトくん、は…(ヒク)、やさしくて…(ンク)、みん、なのことを……、ちゃんと…(グスッ)、想ってる…。
だって、キリトくん……」
少しずつ、少しずつ…アスナは自分の想いを口にする。
そして椅子から立ち上がり、アスナは俺の前に来てから俺の両頬を両手で優しく包んだ。
「泣いてるよ……」
「え?」
アスナが俺の目元を指でなぞると彼女の指には一滴の涙がのっていた。
「そうか…。俺、泣いてたのか…。はは、この世界に来て初めて泣いたな…」
「そうだよ…。キリトくんは、人を想って泣けるんだよ…」
さっきまで話をしていた時は心がすごく重かった。
だけど、いまは心が軽くなった。
全部話したからなのか、アスナが俺を想っていてくれたからなのかはわからない。
いや、どちらともなんだと思う。
「ありがとう……、アスナ…」
アスナは満足げに頷いてから涙で濡れている顔を笑顔に変えた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
キリトの告白にアスナは真正面から受け止めました。
ご都合主義ですね・・・・・・。
まぁ結局のところアスナはキリトが大切だということです!
ちなみに『ラフコフ』の前身組織は第2層ボス攻略戦の時からあったみたいですね。
その時からPoHは動いていたらしいですから。
ではまた・・・。
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第四十八話です。
キリトが語る自身の正体にアスナは何を思うのか・・・。
どうぞ・・・。