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IS インフィニット・ストラトス ~転入生は女嫌い!?~ 第四十五話 ~赤に染まる銀~

Granteedさん

第四十五話です。
ついさっき、自分の作品を一話から見直してみたんですが、文章がもうヒドイのなんの。
いっその事、最初から書き直したくなった今日このごろです。

2012-08-20 22:14:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8090   閲覧ユーザー数:7716

≪一夏、もう一度だ!!≫

 

「分かってる!!」

 

クロウが離脱してからこれで何度目だろうか、俺と箒はタイミングを合わせて福音に攻撃を続けているが一回も当たらない。せめて射撃武器があれば良かったんだけど、生憎白式にそんな物ついてないし、箒の紅椿も言わずもながだ。長期戦になるかもしれないと判断した俺は、途中から節約の為に一旦零落白夜を解除して攻撃している。とにかく一発位攻撃を当てなきゃと思ってたんだが、それすらも当たらない状況だった。

 

≪箒、お前のS・E(シールド・エネルギー)はどれくらい残ってる!?≫

 

≪私はまだまだ大丈夫だ!攻撃を続けるぞ!!≫

 

そう言って空中で加速してもう一度斬りかかる箒、俺も合わせて飛び出して雪片を振るうが、また紙一重で避けられてしまう。

 

≪貴様、戦う気が無いのか!?≫

 

≪落ち着けって箒!とにかく攻撃を当てなきゃ話にならないんだ!!もっと落ち着いて──≫

 

箒を落ち着かせようと声をかけたけど、爆音が聞こえてきて俺の言葉は途中で途切れてしまった。爆音が聞こえた方向を見ると、黒い煙が遠くに見える。その方向はさっきクロウが飛んでいった方向だった。出撃前にクロウに言われた言葉が脳裏によぎって一瞬体が固まる。

 

『それに今回ばかりは何か嫌な感じがするんでな』

 

その言葉を聞いた時、はっきり言って実感が湧かなかった。ISを使っていると言っても命の危険がある実戦とかは無かった、でもあの爆発を見たとき唐突に理解したんだ。

 

(ここは、戦場(・・)なんだ)

 

そう考えると、頭の中が一気に冷える。そしてクロウが飛んでいった方向と爆発が起こった方向が一致している事に気づくと一気に怖くなった。

 

≪箒、あれを見ろ!!爆発が!!≫

 

箒にはその爆発を見て俺と同じく冷静になって欲しかった。俺が冷静になれたんだから箒もなれると思ってたけど、返ってきた返事は驚くものだった。

 

≪それがどうした!!攻撃を続けろ!!≫

 

箒は今なんて言った?“それがどうした”? クロウが巻き込まれているかもしれないのにお前は何でそんな事を言えるんだ?

 

≪どうした一夏!早くしろ!!≫

 

「くっ……」

 

でもクロウは“任せろ”と言ってた。確かに俺なんかがクロウの心配するよりも、今は目の前に集中した方がいい。

 

「うおおぉぉ!!」

 

雪片を握り直して、俺は再び福音に突撃していった。

 

 

 

 

 

爆炎の前で一機のISが無言で宙を眺めている。煙が晴れた時、ISが眺めている先には一機のISが宙に浮いていた。

 

「はっ、はっ」

 

それはクロウ・ブルーストだった。あの爆発に巻き込まれても生きていられるのはブラスタの性能か、本人の能力か定かではないがとにかく生きていた。しかし爆発の結果、ブラスタは満身創痍だった。

 

「はぁっ、なんだこりゃ」

 

クロウはブラスタの装甲を見る。所々がひび割れていてもう使い物にならないのは一目で分かったが、疑問に思ったのはそこではなかった。

 

「……これは、針か?」

 

先程の球体と敵機に仕込まれていたのだろう、ブラスタの装甲にはハリネズミのように何十本も針が刺さっていた。クロウが左腕に刺さっている針を右手で引き抜く。それは長さが30cm程で真ん中に小さい円盤がついていた。しかも針を外した今でも円盤がチカチカと光っていてクロウは一抹の不安を覚える。しかしいつまでも構っていられないので、最後に残った敵機と再び相対する。

 

「さて、待たせたな」

 

バンカーも先程の爆発で所々刃がかけていて使えるかどうかは怪しいところだった。しかも右手にあったEAGLEはいつの間にか収納されていた様でどこにもない。取り敢えずEAGLEをもう一度呼び出そうとするクロウだったが、そこでクロウの目が驚愕で見開かれる。

 

(何っ!?武装が取り出せないだと!?)

 

クロウが驚いている間に敵機が突撃すると同時に右手からレーザーを放ってきた。クロウはそれを必死で避けつつも、距離を取ろうと動き始める。

 

「くそっ、何で取り出せねえ!?……まさか!?」

 

先程からEAGELを呼び出そうとしても目の前のモニターに表示されるのは“Error”の文字。原因を考えていたクロウだが、ふと装甲に刺さっている針に目を向ける。

 

(機体チェック……くそ、やっぱウイルスかよ!!)

 

相手の機体にウイルスなどを流し込んで動きを麻痺させる手法は何度か見たことがあった。ブラスタの状態をチェックするともう既に何箇所かがウイルスに侵されており、武装面にも影響が出ているためか武器の呼び出しが行えない。SPIGOTも呼び出そうとするが、同じくモニターに“Error”の文字が浮かんだ。

 

「全く、この状態で戦えってか?ハンデにしては度が過ぎてんだろ」

 

ふざけた口を叩きつつも、クロウは思考を止めない。この状況を打破する為に出した結論はこの状況下においては禁じ手に近しい物を使用することだった。

 

(だがスフィアを使ったらどうなるか分からねえ、ただでさえブラスタがこの状況だ。しかもまだ一夏達の援護も残ってる……)

 

しかし考えていても埒があかない、事態はもう既に最悪に近い所まで進行している。満身創痍のクロウに加えて謎の敵IS、更には情緒不安定気味の箒。このトリプルコンボの状況下でクロウがとる手段は一つしかなかった。

 

「くっそおぉぉぉ!!」

 

空中で叫びながらスフィアを起動する。その叫びは己の不甲斐なさに向けられたものかは分からないが同時にクロウの瞳が金色に変わり、針が刺さっているボロボロの装甲が光を纏い、胸のクリスタルが輝き出す。その光景を見て、敵が一気に距離を詰めてきた。

 

「一撃で終わらせてやる!!」

 

そう言うとクロウは欠けているバンカーを構える。そしてスフィアの出力を利用して背部スラスターを思い切り吹かす。一瞬でブラスタは肉眼では捉えられない程のスピードを叩き出し、そのまま敵機に突撃をかける。敵も突撃の最中に左腕の大剣を刺突の形で前に出す。

 

「うおおおおっ!!」

 

そして両者の剣は互いの体を貫いた。数瞬、そのままの体勢で静止するが片方がゆっくりと体を重力に任せ、落下していく。そのまま海に落ちるのを空中で見ていたのは、

 

「……やったか」

 

クロウだった。敵機の大剣がクロウの体を貫いた様に見えたのはすんでの所でクロウが体をずらし、敵の攻撃を体と右腕の間で挟み込む様にして避けたからだった。

 

「ぐっ、早く一夏達の所へ行かねえと」

 

そう言って通信しようとするがまるでジャミングがかかっているが如く、通信が遮られる。恐らく先程のウイルスの影響だろうと考えたクロウは急いで一夏達の所へ向かおうとする。傷ついたブラスタでは普段の三分の一くらいの速度しか出すことが出来ないが、焦らずに空中を飛行するクロウ。その間に先程の戦闘で引っかかった事を考え始める。

 

(……さっきのは何だ?スフィアを発動していたはずだが、俺は確かに自分であの攻撃を回避した)

 

そう、先程スフィアを発動させた時のクロウの意思は“目の前の敵を倒す”という物だった。スフィア発動中はその意識に支配され、目的を達成するまで自分の意思とは関係なしに体が動く、はずなのだが──

 

(最後の一撃、俺はあれを確かに自分の意思で回避した。“敵を倒す”だったら食らってもおかしくはないはず)

 

“敵を倒す”の意思ならばいくら体に重大なダメージが残りそうな攻撃でも回避せずに目的に向かって一直線となってもおかしくはないはず。しかしあの時確かにクロウはスフィアの効果を維持しつつ、自分の意思で回避したのだった。

 

(しかもスフィアを発動したのに体がまだ動く。素直に考えるとすれば俺の体とブラスタがスフィアに慣れたって所だとは思うが……)

 

更に今クロウとブラスタが飛行しているのも問題だった。過去二回、スフィアを起動した時は例外無くクロウの意識が無くなり倒れてしまっていた。しかし今はかろうじてとはいえ、しっかりと活動が出来ている。前の世界での他のスフィア所有者達を見る限り、こんな事例は無かったのだが。

 

(今考えても仕方ねえ、後でじっくりと考えるとするか。それより今はあっちだ)

 

思考を切り替え、少しブラスタのスピードを上げる。すると、空に三つの点が見えてきた。しかし一夏達を見た瞬間、クロウの顔色が変わる。

 

(マズイ!!)

 

一夏と箒はまだ敵がいるにも関わらず、空中で停止していた。しかも箒の方は刀を取り落とし、それが光の粒子へと変わる。刀が消えたという事は既に箒のISにはエネルギーが残っていない事を表していた。更に福音が箒の背後に周り、装甲の一部を展開する。数々の戦いで培ってきたクロウの直感が警報を鳴らす中、一瞬で状況を把握したクロウは最後の力を振り絞って一気に加速する。

 

「頼むブラスタ!!踏ん張ってくれ!!!」

 

クロウが加速している最中一夏も福音の動きに気づいた様で、箒を庇う為に瞬時加速(イグニッションブースト)で箒と福音の間に割って入ろうと動き出す。

 

「La♪」

 

「一夏!」

 

「箒っ!!」

 

箒も福音の動きに途中で気づいたのか、回避行動を取ろうとするが間に合わない。しかも

既に福音の準備行動は終わっていて何時でも攻撃ができる状態だった。

 

「箒!!一夏ぁぁぁ!!!」

 

クロウが一夏達を庇うため、驚くべき速度で間に割って入ると同時に福音から光弾が発射された。頭部から生えている白い綺麗な羽から発射される光弾は次々とクロウの体に着弾していく。

 

「La~~~♪」

 

「ぐあぁあぁあぁあ!!!」

 

連続で発射される光弾をクロウはその身を持って受け止めた。箒と違い、いくらエネルギーが残っていると言っても爆発と針により装甲はボロボロ、先程まで自分の体に負担のかかるスフィアを発動していたのだ。威力を殺しきれずに光弾はクロウの体に突き刺さっていく。

 

「ク、クロウ!!!」

 

一夏が悲愴な叫び声を上げるも、クロウは決して動かない。数秒後、福音の攻撃が終わる。

 

「クロウ、クロウ!!」

 

全弾を受けきったクロウは空中に静止していた。ゆっくりと一夏達の方を振り向き、微笑みを浮かべる。しかしその顔はクロウ自身の血で真っ赤に染められていた。全身から血を流しながらゆっくりと口を開く。

 

「お前ら、無事だったか。良かっ……た……ぜ──」

 

嬉しそうな言葉を漏らすと、ゆっくりと落下する。ロウソクが最後に激しい炎を灯すように、先程の急加速がブラスタとクロウの最後の輝きだったのだろう。クロウは意識を失った様に四肢から力が抜けた状態で落下していく。

 

「クロウ、クロウっ!!!」

 

一夏が手を伸ばすもその手は掴みたい物を掴めなかった。虚空に伸ばされた手はクロウに向けられたまま、一夏は叫び声を上げるだけ。そして激しい水しぶきを上げてクロウが海に落ちた。箒はまるで感情が壊れてしまったが如く、途切れとぎれの声しか上げない。一夏は何度も自分達を守ってくれた人物の名前を呼び続けた。

 

「あ……ああ……」

 

「クロウ、クロウ!!クロウゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

 


 
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