No.472251

乱世を歩む武人~第三十話~

RINさん

日常編。舞台と桂枝の話。

感覚的にも分量的にもずいぶん長くなってしまった・・・

2012-08-19 02:46:51 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5045   閲覧ユーザー数:4348

~一刀side~

 

天和

「む~・・・つまんないなー」

 

ここは舞台を3日後に控えた三姉妹の屋敷。唐突に天和がこういった。

 

一刀

「つまらないって・・・何が?」

 

天和

「荀攸のことだよー。あの時一回来てから後、一度も来ないじゃない。」

 

天和はそういって頬をふくらませる。

 

一刀

「桂枝か・・・あいつはいつも忙しいからなぁ。」

 

俺はお茶を飲みながらこう答えた。

 

たしかに桂枝が忙しいというのもあるが・・・実際のところはちょっと違う。

 

天和が桂枝を気に入ってるのとは逆に桂枝はどうやら天和が苦手らしい。

 

桂枝いわく「いや、天敵なんだよあの人。おそらく大陸に3人いるかいないかくらいの」とのこと。

 

いわれてみるとなるほど。桂花の教育のせいで姉属性に頭が上がらず、元来苦労性なのため強引に押されることに弱く、そして天和は気まぐれでフラフラするための全く行動が読めないと苦手意識を持つのに十分な条件は揃っている。

 

なので彼はアレ以降意図的にこっちに来ないようにしているようだ。

 

地和

「荀攸ってあの黒い格好の男よね?天和姉さんそんなに気に入ったの?」

 

天和

「えー?いいじゃん荀攸。結構かっこいいし、頭もいいんだよ?何より一目あった時にビビっときたの。この人は私と相性がいいなーって♪」

 

・・・ちなみに桂枝は彼女を見た時背筋が一瞬凍ったらしい。

 

地和

「ふーん・・・でも荀攸って今すごく忙しいんでしょ?武人と文官両方できる貴重な人材だって言われてるの聞いたことあるよ?」

 

人和

「そうよね、街でも滅多に見ないし・・・見たとしてもさっさと城に戻っちゃうからあれ以来話したことないわね」

 

一刀

「ああ、もともとあんまり喋らないやつだしな・・・接点作るのは難しいかもな」

 

避けられてる云々を除いても静かなやつだからな・・・まぁ天和ならそのあたりは一度でも会っちゃえば関係ないのだろうけどその一回が難しい。

 

天和

「えー、一刀ぉ。なんとかしてよ。なんかいつの間にか真名ももらってるみたいだしー。なにより私達の世話役でしょ?」

 

一刀

「いや、そんなことを言われてもだな・・・あいつのほうが役職一応上だったはずだし早々引っ張り出せないって。それこそ仕事にでもしないと多分ムリじゃないかなぁ・・・?」

 

やってやりたい気はするが難しいよなぁ・・・とそんなふうに考えていた。その時

 

人和

「仕事・・・もしかしたらできるかもしれない。」

 

人和がポツリとこう呟いた。

 

天和

「えっ?本当!?」

 

跳ねるような動きで人和に近づいていく天和。

 

人和

「ええ、わからないけど・・・一刀さん、こういうのは出来ないかしら・・・?」

 

こうして夜の作戦会議が行われたのであった・・・

 

 

 

~一刀side out~

 

 

 

 

 

桂枝

「とりあえず今日はコレ届けたらおしまいかな。このあとは張遼隊か・・・」

 

主人から早急にと頼まれた書類の整理を終え広間に届けにいこうとしている。

 

特に招集もなかったためいて姉か夏候姉妹のどちらかくらいだろうと思っていたのだが・・・

 

桂枝

「あれ?招集がかかったとは聞いてないんだけどな・・・」

 

先ほどの三人が全員揃っていた。

 

桂花

「あ、桂枝。ちょうどいい所に。」

 

桂枝

「すまない。招集かかってたの?」

 

夏候淵

「いや、そうではないのだが・・・ちょっとコレを見てもらえるか?」

 

そういって夏候淵さんが差し出したのは一通の手紙だった。

 

桂枝

「え~っと・・・読んでしまっていいものなのですか?」

 

夏候淵

「ああ、読めるのならば読んでくれて構わない」

 

桂枝

「読めるのなら・・・?」

 

文字が今更読めないわけでもないし・・・と思いつつ開いた手紙には

 

桂枝

「・・・コレは暗号文ですかね?」

 

文字とはいえない文字が書いてあった。

 

まるで人に読ませる気のない文字の羅列。書いた人間はきっと寝ながら書いたんじゃないかとも言える文章で読むには本気で観察しないとダメだろう。

 

桂花

「桂枝でもダメか・・・なんでも地和語とかいうものらしくてね。使いの者が華琳さまにと持ってきたのよ。私達じゃ読めないからどう報告しようかって話になってて・・・」

 

地和・・・たしかあの姉妹の真ん中だったかな?正直関わりたくないのだが・・・主人が関わるのなら仕方ない・

 

桂枝

「む・・・華琳さまに報告しなくちゃいけないのか。ちょっとまって」

 

そう思って本気で観察してみることにした。

 

桂枝

「地和語ってことは多分地和さんが書いたということだから・・・流石に最後には地和って書いてあるはずだよね・・・これか。」

 

夏候淵

「確かに「地和」とかろうじて読めるな」

 

何やら変な印の前にかろうじて「地和」と読めなくもない文字を発見。これを1として一つ一つ解読してみよう

 

桂枝

「コレと同じ文字が・・・あった。じゃあ癖のある形でも適当じゃないのか。この癖から逆算してって・・・ここが「元気」かな?前の文にもこの文字はあるから・・・」

 

夏侯惇

「おお・・・ひょっとして読めるのか?」

 

桂花

「頼むわよ桂枝・・・アンタにかかってるからね」

 

それから十分程度色々と検証した結果・・・

 

桂枝

「?????。地和で・・・す?だよなこれ。お元気ですか?地和はとってもとってもとーっても元気です。実は明日の・・・なんとか歌謡天国に華琳様たちを招待します。一番の席を空けておくのでみんなで来てね。地和より。」・・・こんな感じかな?」

 

夏侯惇

「ところどころ読めてないではないか!」

 

桂枝

「いや、読めてもわからないものはさすがに無理ですって・・・」

 

どうつないでも意味がわからないものがチラホラあったためこうなってしまった。私はきっと悪くないだろう。

 

桂花

「要するに招待状だったってことよね?」

 

夏候淵

「ああ、そうなるな・・・だが内容があっているという保証は?」

 

桂枝

「ん~・・・最初の「地和」時点で間違えてなければ大丈夫だと思いますよ。」

 

夏候淵

「しかし確定していないのに報告するというのも・・・」

 

そんな議論を交わしている時だ

 

一刀

「おや、4人揃って難しい顔してどうしたんだ?」

 

季衣

「あれー?皆集まってどうしたんですか?春蘭さまー。」

 

流琉

「なにかありましたか?秋蘭さま?」

 

三人がトテトテとこちらに歩いてきたのは。

 

どうやらこの季衣と流琉には地和語が完璧に読めるらしい。おおまかな内容は「明日のぎゃらくてぃか☆大☆歌謡天国に華琳さま達を招待するので来てください」というおおよそ私の言った内容通りの結果だった。

 

夏候淵

「見事だな荀攸・・・ほとんど解読したそのままではないか。」

 

桂枝

「ええ。流石に「ぎゃらくてぃか」などという単語に心当たりがなかったんで読めませんでしたが招待状ではありましたね・・・」

 

そりゃ手紙に口語や天の国の言葉を書かれたら解読なんてできるわけがないだろう。とりあえず・・・

 

桂枝

「招待だということは分かりましたし、あとはお任せしてしまって大丈夫ですかね?」

 

明日は非番の私には関係のないことなのでさっさと主人に書類を届けに行く事にしようと判断した。

 

夏候淵

「ああ、私から華琳さまには伝えておこう。助かったぞ桂枝。」

 

桂枝

「いえいえ、では私はこれで」

 

そういって主人の執務室へと向かおうとしたのだが・・・

 

一刀

「ちょっと待った」

 

北郷に頭巾部分を掴まれて止められた。

 

桂枝

「・・・何か用か?北郷」

 

一刀

「ああ、お前この日予定あるか?」

 

・・・あ、すごく嫌な予感。

 

桂枝

「予定はないな・・・非番だしゆっくり休んでいようと思っていたし。」

 

一刀

「じゃあさ・・・もう霞には頼んであるんだけど張遼隊の一部に舞台公演の警備の手伝いお願いしたいんだ。いいかな?」

 

桂枝

「警備?お前の所の三羽烏はどうした?」

 

一刀

「そりゃあもちろんあいつらもつけるけどさ。流石に華琳が来るっていうのに警備隊の新兵上がりだけでは不安が残るだろ?だからうちの軍で最も速い張遼隊にも少し出てもらいたいなーって思って・・・ダメかな?」

 

微妙に視線が泳いでいるが・・・まぁ理にかなっているか。

 

桂枝

「わかった。ならばこちらで適任を選出しておけばいいな。今日中にやって報告させてもらう」

 

うちの部隊にも彼女たちを好いている者は結構いるし人手には困らないだろう。そうと決まればさっさと決めておかないと・・・

 

一刀

「え?あ・・・ちょっと待って!それじゃあ意味がないっていうか」

 

桂枝

「意味がない?こちらの部隊から選出しろと言ったのはお前だろう?」

 

一刀

「いや、そうなんだけど・・・えーとどうやって説明しようかな。」

 

ウンウンと北郷がうなり始める。・・・なんなのだろうか。

 

華琳

「桂枝に部隊の指揮をお願いしたいっていってるのよ。一刀は。」

 

いつの間に現れたのか、主人が当然のように話に割り込んできた。

 

桂枝

「華琳さま。いつの間にこちらに?」

 

華琳

「ついさっきよ。話は聞いていたわ。桂枝、あなたが警備隊の指揮をとりなさい。」

 

桂枝

「はい?私がですか?」

 

唐突にきたと思ったら唐突になかなか面倒な事を仰られるなうちの主人は・・・

 

華琳

「ええ。招待された以上、理由もなく断るのは礼儀に反するわ。一刀には私達の側にいてもらうとして他の三人も張遼隊の兵を指揮をするのは腰が引けてしまう可能性がある。霞にも行ってはもらうけどだいぶ人数が多いみたいだし・・・アナタにも来て欲しいのよ。いいかしら?」

 

・・・なるほど。そう言われては仕方ない。主人が来るというのならば色々と万全にしておくのが当然というものだろう。

 

桂枝

「そういうことでしたら・・・分かりました。明日の公演では私も警備側につかせて頂きます。」

 

華琳

「お願いね。あと念のため言っておくけど公演中の殺生は禁止するわ。最悪の場合はやむなしだけど不審な輩はなるべく生かして捕らえるように。」

 

桂枝

「御意。では私は人員の選抜にかかりますのでこれで失礼致します。それとコレは依頼されていた急ぎの書類です。後でご確認お願いいたします。」

 

そういって当初の目的を終えた私はさっさと人員の選抜のため部隊の招集に準備かかかるのであった・・・

 

 

 

 

 

~一刀side~

 

一刀

「・・・というわけでなんとか桂枝を公演に連れてくることには成功した」

 

天和

「やったぁ!ありがとう一刀!」

 

そういって手を握ってブンブンと振り回してきた。

 

既にわかっているとは思うが警護に張遼隊を使いたいというのはただの名目であり、実際はここに桂枝を引っ張ってくるのが目的だ。

 

危うく連れて来られないかとも思ったが華琳の助け舟によってなんとか成功。どうやら華琳もそれを察してくれていたようで貸し一つとあとで言われてしまったがOKだ。

 

ただ問題があるとすれば一つ・・・

 

地和

「それで、荀攸はどこにいるのよ?一刀の回りにいるようには見えないんだけど」

 

一刀

「いや、実はな・・・俺にもわからないんだ。」

 

天和

「えー!?連れてきてくれたんじゃないのー?」

 

一刀

「いや、間違いなく公演には来てるはずだ。あいつはそういう所真面目なやつだから。ただどこに配置されてるとかっていうのは聞いてなくてさ・・・」

 

実際兵を指揮するといっても対応できる場所に配置したらあとは暴動でも起きない限り動くことはない。

 

霞にも一応聞いたけど「今回の部隊のことは桂枝に一任しとるからなぁ。わからんわ」と言われてしまったため桂枝がどこにいるかは全くわからないのだ。

 

天和

「なによそれー!お話できないんじゃ意味ないじゃない!もぅ、役に立たないんだから!」

 

そういって頬を膨らまして拗ねてしまった。コレでも精一杯だったんだけどなぁ・・・

 

人和

「姉さん、いつまでも拗ねてないで。私達なら舞台の上からでも人を見分けることができるし今日の舞台を荀攸さんが気に入ったら今度はお客さんとして来てくれるかもしれないでしょ?」

 

地和

「そうだよ!ちぃ達の歌声を聞いてメロメロにならない男なんていないんだから!」

 

いや、あいつは騒がしいところに好んでくるタイプの人間じゃないからなぁ・・・口には出さないけど。

 

天和

「そっか・・・そうだよね!よ~しお姉ちゃん頑張っちゃうぞー!」

 

なんとかヤル気を出してくれたみたいだしOKだろう。後は何事もなく終わってくれればいいんだけどなぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ俺の人生にそんな都合のいい展開が早々あるわけがなく

 

地和

「ええい!皆の者、やれ、やれーーーーーーーーい!やってしまえーーーーーーーーっ!」

 

観客

「ほわぁああああああああああああああああああっ!」

 

一刀

「地和のバカーーーーーーーーっ!」

 

すごく大変なことになってしまった。

 

 

 

 

 

 

最初は何も問題はなかった。

 

桂花が余りの歓声に気絶したり春蘭達が錯乱したりとありはしたがライブ自体は問題なく進行していたのだ。

 

だが突然地和が混乱しているこちらをターゲットに定め歓声を要求。俺や季衣、流琉とは違い華琳や秋蘭達が大声で奇声をあげるなんてできるわけはなく来ていたファンたちから反感を買う結果になってします。

 

それにキレた春蘭達がどこかの副将軍のように名乗りをあげたのだが地和がソレに乗っかり観客が暴徒と化してしまったのだ。

 

夏侯惇

「本当に襲ってくるぞ!こいつら」

 

華琳

「ふん、この曹孟徳に楯突こうなどという身の程知らずには灸をすえてあげないとね。春蘭、秋蘭。構わないからやっておしまい!」

 

夏候淵

「はっ!」

 

夏侯惇

「季衣、流琉!私に続け!」

 

季衣・流琉

「「はい!」」

 

そういって彼女たちは華琳を守るよう綺麗に四方に走りだしファンたちに立ち向かう。打ち合わせもないのに息はぴったりだ。

 

俺もとりあえず気絶中の桂花を始めとする軍師達の間に入り壁となってい入るが・・・まぁ大丈夫だろう。あの4人だけでも問題ないのに丁度頼んでおいた張遼隊の皆さんが抑えを手伝ってくれている。

 

一刀

「まぁ・・・これなら安心していいの・・・かな?」

 

それにしても地和め・・・あとで覚えていろよ・・・とそんなことを考えている俺には気づかなかったのだ。

 

舞台の上から天和が消えていたこと。そしてこの騒動に紛れて舞台袖の方へ移動する少数の人間のことに・・・

 

 

~一刀 side out~

 

張三姉妹は舞台の上からこの乱闘騒ぎを楽しんでいた。

 

 

 

地和

「アッハッハッハッハ!!見てみて!!あそこで人が飛んでる!」

 

人和

「もうっ!舞台めちゃくちゃじゃない!」

 

地和

「でもでも!これで舞台は大成功だよね!」

 

人和

「その後の後片付けも考えてよ!」

 

二人がキャイキャイいっている最中天和だけがキョロキョロとあたりを見回していた。

 

地和

「ん?どうしたの天和姉さん?何か面白いものでもあったの?」 

 

天和

「んー・・・逆かなー。荀攸どこかなーって。」

 

彼女達くらいに舞台慣れしてくると奥にいる観客の表情や視線までなんとなくだが感じ取れるようになる。特に知りあいの視線ならば分からないということはまずないくらいに。

 

だが彼女がずっと意識していたのにもかかわらず桂枝の視線を彼女が感じることはなかった。

 

地和

「荀攸ぅ~?そういえばこっち見てる感じはしなかったよね。人和は?」

 

人和

「私も感じなかったかな・・・本当に来ているの?」

 

天和

「ん~・・・一刀は今日来るって言ってたし・・・来てるとは思うんだよねー。荀攸って真面目君だし。」

 

地和

「真面目っていうか・・・ちょっと暗くない?あの人。」

 

人和

「実は・・・私もちょっとあの人苦手。」

 

天和

「ぶー。それは荀攸の外側しか見てないからそう思うのよ。もういいもん。」

 

そういって天和は背を向けてどこかに行こうとする。

 

地和

「ちょっと天和姉さん!どこいくのよ!まだ舞台終わってないのよ!」

 

天和

「ちょっとお水飲んでくるだけ!すぐ戻るから!」

 

そう言ってさっさと舞台袖に引っ込んでいったのだった・・・

 

 

 

天和

「んっ、んっ、んっ・・・ふぁぁっ・・・うん!美味しい!」

 

舞台袖にある水筒の水を飲み干し人心地つく天和。

 

そのすぐ右には兵士が二人並んで外の見張りをしていた。

 

天和

「見張りご苦労様☆」

 

なんとなく気が向いた天和は兵士二人にねぎらいの言葉をかけてやることにした。

 

兵士1

「ててててて・・・天和ちゃん!?お疲れ様ッス!もう舞台は終了したんですか!?」

 

ピシっと背筋を伸ばして最敬礼で彼女に応える。

 

天和

「ううん。まだ終わって無いよ。ちょっとお水飲みに来ただけ。そっちの人もご苦労様☆」

 

反応せずに生真面目に外を向いているもう一人の兵士にもねぎらいの言葉をかける。もう一人の兵士は外を向いたまま一礼をもって返した。

 

天和

(あれー?あの人どこかで見たような・・・?)

 

そんなことを考えていたせいか表情がちょっと暗くなったのを察して兵士がフォローを入れてきた。

 

兵士1

「すいません。生真面目な方なんで・・・気にしないで欲しいッス。」

 

天和

「え?ううん!怒ってないよ。大丈夫。」

 

一般兵士に知り合いなんているはずのない・・・そう考えた天和はそこで考えを打ち切った。

 

兵士1

「それにしても舞台のほうは騒がしいっすね・・・何かあったので?」

 

天和

「ちょっと地和ちゃんがはしゃいじゃってね。大丈夫。もうすぐ収まるから。」

 

兵士1

「そうっすか・・・・・ならいいんスけど。」

 

彼女たちがそんな会話をしていたその時、20人程度の連中がこちらに向かってきた。

 

兵士1

「ん?なんだろう・・・天和ちゃんはここで待ってて欲しいっス。おい、お前ら!こっちは関係者意外立入禁止っスよ。」

 

そう言いながら歩み寄る兵士。しかし・・・

 

???

「・・・ふっ!」

 

兵士1

「ぐはっ!」

 

その兵士は一撃で昏倒してしまった。

 

天和

「え?なになに?一体何なの?」

 

何やらただごとではないと思いひょっこり顔を出してしまった。向こうの連中がその顔をみて一瞬固まった後短刀を引きぬいた。

 

隠しもせずに殺気をまとってきているこの連中。狙いは確実に張三姉妹だろう。

 

兵士2

「・・・」

 

その様子を見ていたもう一人の兵士が前に出た。そのまま天和を背に出入口の真ん中を陣取る。

 

工作兵らしき連中はその兵士の周りを囲んだ。

 

工作兵

「・・・そこをどけ。我らが用があるのはそこにいる女のみ」

 

兵士はまるで言葉が聞こえないかのようにそのまま抜刀・・・しようとして止める。そのまま素手での構えを取った。

 

工作兵

「素手・・・?意図はわかないが・・・すまないがジャマをするなら死んでもらう。」

 

そういって工作兵は目の前の兵士に向かって短刀を突き刺そうとした。

 

天和

「あ、危ない!」

 

先ほどの兵士を昏倒させる動きといい今回の動きといい明らかに訓練されたものの動き。彼女自身も黄巾党をやっていた時代に色々な人を見てきたためなんとなくだかそれがわかる。

 

だから思った。あの兵士はここで殺される。その後もしかしたら自分も危ないかもしれない。と、彼女はそう思っていたのだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー目の前の兵士が鮮やかな右ストレートでその工作兵をぶっ飛ばすまでは

 

 

 

 

 

天和

「・・・え?」

 

 

 

 

あっけにとられていたのは天和だけではない他の工作兵達にも動様が走っている。

 

数メートルは飛ばされ昏倒している工作兵を一瞥した後その兵士はポツリと何かを呟いた後構えを取りなおす。

 

 

 

そのつぶやき声は

 

 

 

 

 

 

 

桂枝

「あと20人ちょっとか・・・殺しちゃいけないって面倒だよなぁ。本当に。」

 

 

 

 

 

 

彼女が今日一日探していた人物の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桂枝

「さて・・・全員倒したはいいが・・・どうしようか?」

 

先程襲ってきた計23人の工作兵を丁寧に気絶さてた私はその処遇に悩んでいた。

 

私が今日受けた仕事は「舞台の警護」確かに主人たちを護るのも重要なことだが、聞いてみると主だった将のほぼ全てが主人の周りを固めているという話。

 

ならばと思い公演を見れる部下を増やしかつ私自身も騒がしいところにいなくても良い控え室の警護を選んだのはいいがまさか本当に襲撃に会うとは思っていなかった。

 

色々とやることは多いがとりあえず・・・

 

桂枝

「ふっ!」

 

兵士

「はうっ!」

 

気絶させられていた兵士を起こしてやることにした。背中から氣を少しおくりこみ無理やり覚醒させる。

 

兵士

「あれ?俺一体・・・うぉ!これ全部荀攸様がやったんスか!?」

 

兵士はキョロキョロと辺りを見回した後、倒れている連中をみて驚いた。

 

桂枝

「他に誰がやるんだよ・・・とりあえずこいつら連行しないと行けないから人を呼んできてくれ。外も静かになってきているし何人か来れるだろう。」

 

兵士

「了解ッス!お役に立てずに申し訳ありませんでした!」

 

桂枝

「構わん。それなりに手だれだったし警備隊の新兵上がりだろう?これから先頑張れ。」

 

兵士

「ありがとうございます!じゃあ急いで応援を呼んで来ます!」

 

そういって思いっきり駆けていった。気絶から立ち直ってすぐあれだけ動ければ充分だろう。

 

桂枝

「さて・・・とりあえずコレで一区切り「つっかまーえた♪」っ!?」

 

天和

「久し振りだね、荀攸!」

 

桂枝

「・・・どうも、天和さん。」

 

ほんの少し気の緩んだところを抱きつかれた。背後にいるのはわかっていたはずなのに・・・

 

天和

「荀攸ずっと来ないんだもん、お姉ちゃん寂しかったなー。」

 

桂枝

「用事がありませんでしたので・・・ちょっと離れていただけませんか?」

 

丁度人を呼んだ所だしこんな姿見られたらただじゃすまない。主に姉的な理由で。

 

天和

「ヤダ」

 

桂枝

「嫌だって言われましても・・・」

 

天和

「だって次いつ会えるかわからないんだもん」

 

だもん。って言われてもなぁ・・・もうあっちの騒ぎも大方片付いてるみたいだし舞台に彼女がいないとなったら非常にまずい。

 

桂枝

「・・・分かりました。逃げません、逃げませんから。とりあえず舞台に戻りましょう?」

 

天和

「本当に?」

 

桂枝

「ええ、本当に。」

 

もとより任務の途中だったし逃げる気はなかったが。

 

天和

「終わったらご飯ごちそうしてくれる?」

 

・・・断ったら離れないんだろうな。絶対。

 

桂枝

「ふぅ、わかりましたよ。なのでとりあえず離れてください。」

 

天和

「やった!約束したからね!」

 

そういってようやく離れてくれた。・・・精神的にキツイな。やはり。

 

桂枝

「一応聞いておきますが・・・何を食べる予定ですか?」

 

天和

「え~っとね・・・私シュウマイが食べたい!」

 

シュウマイか。この前食べに行った所が好みだと考えると・・・大丈夫かな。

 

桂枝

「はい、了解しました。ではまた舞台が終わったらお会いしましょう。」

 

天和

「いい!絶対だからね!」

 

そういって手をブンブンと振りながら舞台へと戻っていった。

 

桂枝

「さて・・・面倒が増えたな」

 

一人になり思わずこぼれた言葉。その言葉が出た丁度後になって

 

楽進

「荀攸様!刺客が現れたとの報告をうけました!」

 

楽進が数人の兵を率いてやってきた。

 

桂枝

「楽進か、すまないがそこにまとまって転がってる奴らを拘束して連行してくれ。」

 

楽進とは仕事上の話しかしないが私も雑談は得意ではなく、真面目な性格のため話がすぐに通って非常にやりやすい。

 

楽進

「はっ!荀攸様はこのあとどうなさるおつもりで?」

 

桂枝

「本来ならばこの場で任務の続行・・・の予定だったのだが急用ができた。悪いが後は頼んでいいか?」

 

楽進

「はい!今日は手伝って頂きありがとうございました!」

 

彼女も私が非番の中手伝ってくれなおかつ侵入者まで撃退したこともあり何も言わずに通してくれた。

 

桂枝

「ああ、お疲れ様。」

 

そう言い私はこの場を去るのであった。さて、食材揃うかな・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~一刀side~

 

天和

「もー!なんでいなくなってるのよ!」

 

プンプンという擬音が聞こえそうなくらいむくれている天和がそこにいる。

 

地和

「どこにもいないと思ったけど・・・まさか舞台袖にいたとはね。」

 

人和

「最初からずっといたってことよね?全然わからなかった・・・」

 

あの一連の騒動にまぎれて舞台袖に工作兵が現れていたらしい。しかもかなり大規模で手だれ揃いだったという。

 

ちゃんとそこまでに配備していたはずの兵士数名が一瞬でやられてしまっており実際絶体絶命のピンチだった。

 

その中で実は舞台袖の警護をしていたという桂枝がそいつらを撃退。ソレを見ていた天和につかまり夕飯をごちそうする約束をしたというのだが・・・

 

地和

「でもさ・・・本当にいたの?普通そんなことしたらちぃたちのこと待ってそうなものだけどいなかったじゃない。」

 

一刀

「いや、凪が姿を確認してるから間違い無くいたと思うよ。ただ約束したのに逃げるっていうのがちょっとわからないけど・・・」

 

公演が終わって舞台袖に言った時にはすでに桂枝はいなかった。急用ができたといって去ってしまったときいてるんだけどあいつが約束をしてそのまま逃げるとは思えない。

 

天和

「約束してくれたから離したのに・・・見損なっちゃったよ荀攸。」

 

天和が見るからにがっかりしている。いくら苦手とはいえ嘘をついてまで逃げるか?たかだか一回夕食をごちそうする程度で・・・

 

一刀

「・・・なぁ天和。桂枝にどこに食べに行くとか言ったか?」

 

天和

「言ってないよ。一報亭か満漢全席のどっちにしようかなーとは思ってたけど・・・」

 

なるほど、それなら納得だ。おそらくアイツのことだから・・・

 

一刀

「なぁ、天和・・・あいつ多分逃げてないんじゃないかな?」

 

天和

「え?でも実際探したけどどこにもいなかったよ?」

 

一刀

「いやな。あいつの「ごちそうする」っていうのはおそらく・・・」

 

地和

「姉さん!なんかうちからいい匂いがしてるんだけど!」

 

とそこでちょうどよく三人の屋敷にたどり着いた。地和のいうように食欲をそそるいい匂いがしている。

 

人和

「本当・・・姉さん達なにか頼んだの?」

 

天和

「え?知らないよ?」

 

地和

「ちぃも頼んでないよ。」

 

人和の質問に対し二人は首を振って否定した。ただ俺だけはなんとなく予想がついていて・・・

 

人和

「まさか不審者・・・?でも警備の人は特に何も言ってなかったし・・・」

 

一刀

「大丈夫。心あたりがあるから。」

 

そういって屋敷の扉を開けて広間へと移動する。そこには・・・

 

 

 

 

桂枝

「む・・・北郷か。案外早かったな。まぁ丁度出来上がったところだ。三姉妹はどこに・・・ってもういるのか。」

 

 

 

 

 

エプロン姿でテーブルに皿を乗せている桂枝の姿があった。

 

 

 

天和

「荀攸!どうしてここにいるの?」

 

その姿を確認した天和が前に出てくる。

 

桂枝

「どうしてって・・・ごちそうしてくれって言ってましたよね?だから先に来て食材揃えて調理してたんですけど。」

 

一刀

「やっぱりそうか・・・」

 

こいつにとっての「ごちそうする」は外食ではなく自分で振る舞うことだったのだ。

 

警備の場から離れたのも天和から逃げたわけではなく単に食材を揃えて調理しに行ってただけということだ。

 

地和

「なになに?荀攸って料理なんて作れたの?」

 

桂枝

「まぁ人並みですけどね。味見してみますか?」

 

そういって盛り付けてあるシューマイを箸でつかみ地和の前に差し出した。

 

地和

「え?いいの!?じゃあ頂きまー「はむっ」あー!」

 

天和

「むぐむぐ・・・あっ!一報亭のシューマイの味!?」

 

桂枝

「好きだと聞いていたので味付けをそっちよりにしてみたのですが・・・味は大丈夫ですか?」

 

天和

「うん!すっごく美味しい!ありがとう荀攸!」

 

地和

「もうっ!姉さんばっかりズルイ!ちぃも食べるんだから!」

 

そういって二人は机に座って食事を始めてしまった。

 

人和

「姉さん達!もう・・・すいません荀攸さん。でもどうやってここに入ったんですか?」

 

一刀

「あ、そういえばそうだよ。誰にも話さないできたのにどうやって門の前の兵士に話しつけたんだ?」

 

桂枝

「難しいことだったのか?警備兵に「荀攸だが天和さんに頼まれた。通してくれ。」と言ったらすぐに通してくれたぞ?」

 

たったそれだけで?いくら文武官とは言えそれだけでここに入れるわけ無いと思うんだけど・・・

 

天和

「あ、それ私が頼んでおいたの。荀攸が来たら通しておいてねって。」

 

人和

「また勝手にしらない指示だしちゃって・・・」

 

人和は呆れ顔で天和を見た。流石にアイドルの家にやすやすと人を通すのはどうなんだと俺も少し思う。まぁ桂枝だからそのあたりの心配をする必要はないだろうけど。

 

一刀

「まぁまぁ。桂枝なら大丈夫だって。それより食べちゃおうぜ。早くしないとなくなっちゃうし。」

 

人和

「ふぅ、それもそうね・・・じゃあすいません荀攸さん。頂きます。」

 

桂枝

「ええ、どうぞ。」

 

 

 

 

こうして裏も表も騒がしかった今日という日はちょっとした宴会で締めくくりとなった。

 

華琳ですら時に認める桂枝の腕を三姉妹が喜ばないはずもなく量、質ともに大絶賛。

 

 

 

 

おかげでますます天和に気に入られた桂枝は宴会中ずっと絡まれており、身内以外にくっつかれることが苦手な桂枝はますます天和が苦手になったという。

 

 

 

 

 

この咬み合わない連鎖はいつまで続くのだろうか・・・それはきっと誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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