No.470165

~貴方の笑顔のために~ Episode 9 大号令とは裏腹に

白雷さん

桔梗を中心とした部隊が白帝城へ攻撃を開始した頃、星たちは五胡兵を迎えるため、長坂にきていた。
しかしそこで彼女たちをまちうけるものとは

2012-08-14 21:45:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:11817   閲覧ユーザー数:9579

~長坂~

 

雛里たちが白帝城を攻略するなか、星、鈴々、朱里、翠、たんぽぽは

長坂あたりにいるという、五胡兵のもとへと向かっていた。

敵の情勢を抑えるべく、一刻ほど前、朱里は先行させて細作部隊を出したのだが、

いっこうに連絡がなかった。

 

「朱里ー!さっきから伝令が一人も帰ってこないのだ。

 どうしてなのだ?」

 

「はぅ、おそらく敵にやられたのではない、かと。

 なにせあの鄧賢さんの細作部隊を全滅させたんですから・・・

 私の判断が間違っていました・・」

 

細作部隊を送ると命じた朱里は自分のせいでやられてしまった

と落ち込む。

 

 

「でもでもっ、なんか変なのだ。五胡兵ってなんか変な感じが

 するのに全然そーかんじないのだ!」

 

「ふむ・・・鈴々もそう思うか・・・」

 

「どういうことですか?星さん」

 

「いやなに、先ほどから敵は見えているのですが、

 全く動く気配がかんじられないのですよ・・・・

 それに鈴々もいっていたが、五胡の感じではないような・・・・」

 

「対応が遅れているということはありませんし・・・

 やはりなにかの策でしょうか?」

 

「ふむ・・・ですが軍師殿、こうひらけた野戦で

 策がありましょうか?」

 

「はぅーそうなんですよね・・・」

 

 

というように話がすすまない蜀陣営。

 

一刻程前、敵を前方に確認し、

陣形を整えたのだが、一向に相手の反応がない。

 

「はわわーどうしましょうか・・・・」

 

と朱里の声とともに皆黙りこんでしまう。

 

 

しかししばらくして、しびれをきらしたのか、

将の一人である馬超こと翠が口をひらいた

 

「あーもうっ・・・なんか難しいことは私にはわかんないけどさ・・

 要は敵の動きをつかめばいいんだろ?

 ならこっちから動いちゃえばいいじゃないか」

 

「もぅお姉さまったら・・・それじゃあ相手の策に

 はまっちゃうかもしれないから

 みんな考えてるんでしょっ!」

 

「うぅ・・・・」

 

 

そして、またしばらく皆は沈黙する。

 

 

 

「・・・・・ふむ」

 

「どうしたんですか?星さん」

 

「いやなに、翠の意見も一理あると思いましてな。

 翠はもともと魏へ救援を要請しに行く身。

 策にはまってしまった場合、初めは被害が

 おおきくでるやもしれぬが、

 魏の援軍により状況は変わる、

 それにこのままいても士気が低下するだけですしな

 あり、かと」

 

「・・・・そうですね」

 

すこし、考えてから肯定する朱里。

 

「うわっ!翠の意見が通ったのだ!」

 

「なっ!?そっそれどういうことだよ鈴々!」

 

「えーもぅお姉さまったら・・・それは脳筋だからだよー」

 

「・・・・・っ!!たんぽぽ・・・ナニカイッタカナ?」

 

「・・・・・えっ!うっううん・・・なにもいってないよお姉さま・・・・」

 

そんな、やりとりに朱里がこほんと咳をおき、周りは静かになる。

 

 

「では、魏への救援要請を一としますね。

 私たちは敵の策に備え被害を抑えるために、

 全体的に迎撃の陣をとります。

 第一陣のみ突破することを考え突撃陣をとります。

 

 まず翠さん蒲公英ちゃんは騎馬隊をひきいて

 魚鱗陣の中央部に。

 その左翼に星さん、右翼に鈴々ちゃんを配置します。

 敵の第一陣と衝突後、星さんたちは両側に広がり、

 中央にみちをつくってもらいます。

 翠さんたちは道ができたら一点突破をしてください。

 その後左翼、右翼ともに両側にひろがった形のまま

 後退し、本隊と合流。

 輪型陣をつくり敵を迎撃します。」

 

 

「承知」

 

「わかったのだ!」

 

 

蜀軍が敵を確認してからニ刻後、

決戦の火蓋はおとされた。

 

 

 

「蜀の将兵よ!我が朋友たちよ!我々はこれまで命をかけ家族のため、

 友のためそして平和のために戦ってきた!

 しかし今、この我々が築き上げた大地を無法にも侵さんとする敵がいる!そんなものは断じて許さない!

 五胡兵はたしかに屈強な兵であろう、だが我々はいくつもの死地を

 くぐりぬけてきた!慢心はするるな!されど恐れる必要もない!

 自分の誇りとともにその剣を振るうのだ。

 明日の笑顔のために!

 全軍突撃ーーー!!」

 

 

「「「「「「おぉぉぉおおおおお!!!!」」」」」」

 

こうして、星の号令と共に蜀軍は雄叫びを上げ、五胡兵に突撃を開始した。

 

 

 

 

 

~朱里視点~

 

 

敵に初撃をあたえてから予想以上に前線が混乱してます・・・・

これは、なにかあったのでしょうか?

このままではだんだんと時間が経ってします・・

翠さんたちに何かあったのでしょうか?

 

 

そう私が不安そうに考えていると、

私がいた本陣に

星、翠、鈴々、蒲公英が戻ってきた。

 

 

「はわわーっ!!どっどうしたんですか?」

 

こんなところに、主要な将が全員もどってきて何をやっているんだろう

と私は考える。

 

「朱里ー、敵はもうやっつけたのだ!」

 

しかし、聞こえたのは、鈴々ちゃんのそんなふぬけた一言

 

「・・・・・えっ!?」

 

「鈴々よ、それはだいぶ言葉が抜けてるぞ。」

 

ちょっと、まってください・・

五万の大群です・・それにあの五胡兵ですよ・・

なにをいっているのでしょうか・・

 

「敵を倒したとはどういうことですか?星さん・・・

 相手は五万の大軍ではなかったのですか?」

 

「ふむ・・・それがな軍師殿、敵は千騎で横一列に

 広がり後方はすべて藁人形だったのだよ・・・」

 

・・・

 

「・・・・えっ!?偽兵の計・・・ですか」

 

「ふむ・・・どうやらそうらしい・・・

 しかし、なぜこの状況で・・・・奇襲もないですしな・・

 どうにも腑に落ちませんな」

 

たしかにおかしい・・野戦においてその策をとるのは伏兵あってこそ。

しかし、その伏兵は、星さんたちがここに戻る途中、油断している時に出さなければ意味がない。

しかし、敵にまったくそんな動きはない。

 

「そんなの白帝城にいくやつを少なくしたんじゃないのか?星」

 

鈴々ちゃんが言ってることも考えた。けど、それもおかしい・・・

 

「・・・・ふむ、それだけならいい気がするんだがな・・・

 でもな翠よ、どうにもいやな予感がするのだよ」

 

 

そうです。確かに星さんのいうようにこの状況で、偽兵の計

 をとるのは変です。

 白帝城にしても、この計を知るのは時間の問題・・・

 その間に桔梗さんたちが負けるわけありませんですし・・・

 しってしまったら、私たちという大軍がいる・・・

 で、あるならば、なんでしょう敵の狙いは・・・

 

 

 それよりも、なぜ私たちは、ここにいるのでしょうか?

 それは、あの伝令さんが必死の思いで、つたえてくれたから、です。

 ・・・おかしく、ないですか・・

 なぜあんなに必死で伝えた伝令さんの言葉が偽り、なのでしょうか?

 そもそもわたしたちはなぜ・・・・はっ!!

 まさかっ!!

 

「星さん!冷苞さんはどこですか?」

 

私は、自分のよみが当たらないことを願って、そう星さんに尋ねる。

 

「それが先ほどから兵たちが探しているのですが

 見当たらないようなのですよ」

 

・・・・っ!!

やっぱり・・・

 

そんな思いとともに私は拳をギュッと握りしめる。

 

 

「どうしたのですかな、軍師殿、さきから慌てているようすですが」

 

大変です・・わたしの甘さでした・・

このままでは、このままでは・・・

 

「みなさん、すぐに成都に向かってください!

 このままでは桃香さまがっ!!」

 

「ふむ、朱里よ、それはどういうことだ?」

 

「玉座の間に駆け込んできた伝令です!」

 

「・・・っ!!そっそうか、やられた・・・

 翠、鈴々、蒲公英、すぐに成都に向かうぞ!

 このままでは桃香様の身が危うい!」

 

星さんはその言葉でわかってくれたようです。

とりあえず、今は本当にありがたいです。

説明している時間がありません・・

 

「・・・・ふぇ?なんでそこに桃香様がでてくるんだ?

 わかるかたんぽぽ?」

 

「ぶーー、お姉さまのいじわる!たんぽぽが

 わかるわけないじゃん!

 ねー星お姉さまっ、どーゆーこと?」

 

「すまぬが今は説明している時間も惜しい。

 いまはとにかく急ぐぞ!」

 

「んーなんかよくわかんないけど、星がいうならそうなのだ。

 今すぐ行くのだ。」

 

まにあってください、間に合ってください、

今いきます、桃香様。

 

 

 

 

敵の偽兵の計、このことから敵の策の全貌をしる朱里と星。

 

ふたりの額には冷たい汗がつたわっていた。

 


 
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