No.469102

ロウきゅーぶ! Another Wing エピソード1 第一話 少女達との出会い

激突皇さん

エピソード1 第一話

2012-08-12 15:51:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2336   閲覧ユーザー数:2304

「・・・にしても、俺がコーチ、ねぇ」

俺、小鳥遊翼は今、自転車を走らせ慧心学園に向かっている

なぜかというと昨日偶然出会った篁 美星という人に女バスのコーチをやってくれと頼まれたからである

・・・やっぱ一度は諦めたと思っても諦められないもんなんだな、バスケ

三日間だがまたバスケに触れられるならこれが最後でも構わないかな・・・

「つーか結局来れたの俺だけなのな・・・」

俺の他にも親友の巧と優助も頼まれてたのだが家の都合とかで来れず俺だけが引き受ける形になった

「ま、別にいっか、んな大人数いたって邪魔なだけだろうし・・・ん?」

校門近くに着くとなにやら校門の前でキョロキョロしたり俯いたりと挙動不審な人がいた

「・・・なにやってんだ、この人?」

もしかしていわゆる一つの不審者ってやつか?

とりあえず声かけてみるか

「あの・・・」

「え?」

振り返ったその人は中性的な顔立ちで身長も俺より少し高い、パッと見高校生だった

「なにしてんすか、こんなとこで」

「い、いや俺は・・・そう、でかい学校だなってつい見蕩れてたんだ!」

・・・めちゃくちゃ怪しいな、この人

ほら、警備員の人もすげぇ不審そうな顔してるし

「じ、じゃあ俺はこれで!」

「ばかっ! いくじなし!」

そう言って引き返そうとするこの不審者(仮)に涙声を出しながら華麗な跳び蹴りをかます人がいた

「・・・いつから見てたんだよ」

「一時間三十分前からだ、待ちくたびれた」

「声かけろよ!」

不審者(仮)の質問に対しガムを噛みながらケロッと答えるこの人は俺にコーチを依頼した張本人

「美星さんの知り合いっすかこの人」

「おう、翼もいたのか。 こいつはあんたとコーチをやる私の甥だ」

美星さんの甥、か

「えっと、小鳥遊翼っす、ここでコーチやることになりました、よろしくです」

「え?あぁ、長谷川昴です・・・って俺以外にコーチいんのかよ!?」

自己紹介を終えると不審者、もとい昴さんは美星さんに怒鳴りかかる

「しゃあないだろ、昨日決まったんだから」

「だったらメールかなんかで連絡しろ!」

なんだ?なぜ昴さんは激怒してんだ?

「あの、俺迷惑でしたか?」

「あ、いやそう言うわけじゃ、むしろ大歓迎っていうか」

じゃあなんで怒ってんだ?わけわからん

「あの・・・篁先生?」

「んにゃ?」

「何度も申し上げた通り、校門前での揉め事は・・・」

何度も申し上げられてんのかよ

「あーごめんごめん、すぐ片付けるよ。 翼、着いて来な」

「ってこらやめろ!放せ!」

美星先生は昴さんの首根っこを掴みズルズルと引きずっていった

とりあえず着いて行っか

「篁先生!その方達は?」

「こいつらは女バスの臨時コーチだ、何度も来るからよく覚えておきな」

そう言って昴さんを引きずって行く美星さん

俺は警備員の人に頭を下げその後を着いて行った

 

 

 

 

「なんかすごい学校だな」

「そうっすね、うちの中学とはえらい違いだ」

絶対に逃げないという条件の下、なんとか解放された昴さんの言葉に俺も頷きながら答えた

「え?小鳥遊君って中学生だったの?」

「はい、中二っす。 それと翼でいいっすよ、俺も昴さんって呼びますから」

つーか既に勝手に呼んでるけど、と心の中で付け加える

「判った、よろしくな翼」

「はいっす」

「あ、あのっ」

そこですれ違った生徒に声を掛けられ振り返る

「あ、お前は昨日の」

「はい、その、昨日はありがとうございました」

昨日助けたヤツの一人がいた、そいつは俺を確認すると礼と共に頭を下げた

「知り合い?」

「はい、昨日絡まれてるところを助けたんっす」

「そんでその後私が通り掛かり、コーチに勧誘したってわけ」

俺の言葉に美星さんが付け足した

「え?ってことは本当にコーチやるんですか」

「あぁ、頼まれたからにはやらないわけにはいかないからな、それに・・・」

「それに?」

おっと、余計なことは考えるな、俺。 今は関係ないことだ

「いや、なんでもねぇよ。 そういやお前の名前聞いてなかったな、なんていうんだ?」

「あ、えぇっと中等部一年、春野(はるの) 琴葉(ことは)です」

「俺は小鳥遊翼、ヒノ中二年だ。 よろしくな、琴葉」

「えっ?琴葉って・・・」

「ん?なんかまずかったか?」

「あ、いえ!そんなことないです。 よろしくお願いします、翼さん」

自己紹介も済んだところで琴葉が思い出したようにハッとする

「って早く部活行かなきゃ!それでは失礼します」

「おう、またな、琴葉」

そして琴葉は走り去っていった

「んじゃ、さっさと行くぞ、あいつ等も待ってんだ」

「はい」

俺達もまた体育館へと歩き始めた

 

 

 

 

さて、ようやく体育館前に到着したわけだが

「なんつーいい加減な顧問だ・・・」

「まさか放置されるとは・・・」

美星さんは教師の仕事だとかで俺と昴さんを置いて行ってしまい、体育館の前に取り残されてしまった

「さて、どうするか・・・」

昴さんは扉を前に考え始める

「いや、開けて入りましょうよ」

「いや、心の準備というものがだな・・・えぇい、悩むだけ無駄だ、行こう」

そう言ってドアノブを握り扉を引き開け・・・

 

 

『お帰りなさいませ!ご主人様!』

 

 

すぐに閉じた

・・・なんだ、今の

「・・・今のは、俺の幻覚だよな」

「いえ、俺にも見えました・・・」

開けた途端、五人のメイド姿の少女がいたのだ、幻覚と思いたくなるのも無理はない

「・・・今度は俺が開けてみます」

とりあえず俺が試してみる、無論そこにいたのは・・・

『お帰りなさいませ!ご主人様!』

五人のメイド姿の少女達だった

・・・どういうバスケ部だここは

「・・・前途多難だな、こりゃ」

かくして、俺のコーチ生活一日目は始まったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-交換日記(SNS)-

まほまほ『みーたんからまたメールきた! もうひとりコーチついかだって!』

湊 智花『もう一人?どんな人だろう』

  沙希『みーたんが連れて来るから変な人じゃないと思うけど・・・バスケ経験者かしら?』

まほまほ『とにかく、これでしょうりにいっぽちかづいたぜ!』

 あいり『またおとこの人かな・・・』

  沙希『うーん、どうなの?真帆』

まほまほ『そこまでかいてないや、でもアイリーンになにかするようだったらあたしがまもってやる!』

 ひなた『おー。 ひなもおまもりする』

 あいり『真帆ちゃん、ひなちゃん・・・ありがとう』

湊 智花『とにかくいよいよ明日、みんな頑張ろう!』

 みんな『おー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お帰りなさいませご主人様、扉を開けてまず聞こえたのはそんな言葉だった

いきなりそんなことを言われたって何がなにやらわからんわけだが

『・・・・・・・・』

彼女達は俺達に熱い眼差しを向けるだけなのでその真意を知るのは困難だった

どうすりゃいいんだよ、そう思っていると昴さんは非常に申し訳なさそうな顔をしていた

「申し訳ない! みほね・・・篁先生が無茶言ったみたいですまない!」

昴さんはそう言って彼女達に頭を下げる、美星さんの策略なのか、これ?

なんて思っていると彼女達は不思議そうな顔をしていた

「えっとー、何のことですか?ご主人様」

「え?」

昴さんの謝罪にニカっと笑いながら一人が答えた

「えぇっと、篁先生に無理やりやらされたとかじゃないの?」

「違いますよ、これはご主人様への歓迎の表れですよ、ね、もっかん?」

「・・・・・はぃ」

栗色の髪をした少女にもっかんと呼ばれた濃いピンクの髪の少女は蚊の鳴くような声で答えた

・・・絶対嫌がってんな、この娘

「・・・あの、ご主人様。 初対面ですし、とりあえず自己紹介とかしませんか?」

すると水色のロングヘアーの娘がそう提案してきた

「あぁ・・・そうだね、そうしよっか。 じゃあまずみんなの名前とか聞かせてください」

その娘の提案を昴さんは承諾し、彼女達の名前を聞く

すると彼女達はすばやくアイコンタクトを取り

『かしこまりました、ご主人様!』

声を合わせてそう言った、ってまたかよ

「あのさ、ご主人様っつーの止めてくんないか?別に俺、君達の主ってわけでもねぇんだし」

俺がそう言うとしばしの沈黙の後、円陣を組んでなにやら話し始めた

なんの考えでこんなことしてんのか判らんがああいうのは勘弁して欲しい、ムズムズする

そして会議が終わったのか円陣を解いてこちらを向いて

『わかりました、お兄ちゃん!』

思わずずっこけてしまった、何一つ解決してねぇじゃねぇか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、長谷川昴、十五歳、高校一年です。 バスケ暦は・・・」

とまぁいろいろあったがまず彼女達の自己紹介から始まり、その後昴さんが自己紹介を始めた

昴さんは俺と違ってかなり前からバスケをやってるらしい、そういや高一ってことはあの人と同い年なのか、今頃どうしてっかな・・・

「---ということで、これから一週間という短い間ですが、よろしくお願いします」

っと、次は俺か

「あー、小鳥遊翼、小鳥遊って字は小鳥に遊ぶで小鳥遊な。 十三歳、中学二年だ。 バスケは中一の頃からしかやってねぇけどそこそこ自信はある。 どんだけみんなの役に立つかわかんねぇけど一週間よろしく」

まぁこんな感じでいいだろ、俺の自己紹介が終わると栗色の髪をした娘、真帆が昴さんの腕に抱きついた

「そろそろ敬語とかやめよーよ、普通に話そっ、ね?」

「わ、わかったからとりあえず離してくれ、真帆さん」

「真帆さんなんて呼び方やー、真帆かまほまほって呼んでっ。 それとみんなのこともさんづけ禁止ー」

「---ま、真帆、離してくれっ」

「はーい、お兄ちゃん!」

という謎のやり取りが俺の目の前で繰り広げられていた、初っ端から人気だなぁ昴さん、やっぱバスケ暦が物を言ってんのかね

「えっと、それじゃあみんなのことは呼び捨てにさせてもらい・・・もらうからその代わりお兄ちゃんって呼び方止めてもらえるかな?」

「えー、妹系メイドとかグッと来ない?ねぇ、お兄ちゃん」

そこで俺に振るか

「いや、俺も普通に名前で呼んでくれ、その方が親しくなれんだろ」

「うーん、まぁそうかもしれないけど・・・じゃーじゃー、おにい・・・じゃなかった、すばるんとつばさっちのツボってどの辺?」

おいおい、話が変な方に行ってるぞ、てかつばさっちってなんだ

「あぁもう真帆、ちょっと下がってろ。 ・・・ごめんなさい長谷川さん、小鳥遊さん。 こいつ張り切りすぎて空回りしちゃってるんです」

すると水色のロングヘアーの娘、沙希が間に入って謝ってきた

「いや、良いんだ、ただ驚いちゃっただけで別に気を悪くしたわけじゃないから」

「あぁ、歓迎されて悪い気はしないしな」

「だったらよかったです」

沙希は俺達の言葉を聞いて少しホッとしたようだ

「---長谷川さん、小鳥遊さん。 ・・・あの、早速で申し訳無いのですが、今日からもうご指導をお願いしてもよろしいでしょうか? ・・・すいません、不躾に」

そこに濃いピンクの髪の娘、智花が申し訳なさそうにそう言ってきた

「いや、元々そのつもりで来たんだ、んな畏まらなくたっていいぜ」

てか不躾なんて小六がよく知ってんな、礼儀正しいし結構厳しく育てられてんのか

「あぁ、そうだよ。 それじゃあ練習を始めるからみんな着替えてきてくれる?」

「えーっ!なんでぇ?」

・・・なんで不満なんだよ

「何でって、その服で練習するつもりだったの?」

「うん」

まさかの即答

「いや、それはマズいだろ・・・」

「んなヒラヒラした格好で練習したらいろいろ大変だぜ」

スカート踏んでこけたり、足もそんなに広げられねぇから動きにくいだろうし

「ん?パンツなら心配ないよ、ほら」

「んな!?」

言うや否や真帆は自分のスカートの裾を持ち上げる

そっか、スカートが捲れる心配もあったのか・・・ってそうじゃねぇ!

慌てて目を逸らそうとしたがその心配は要らなかった

「え・・・スパッツ?」

「そーそー、もっかんとサキも履いてるよ」

いやまぁ、確かにそれならそこは安心かもしれんが・・・

「ちなみにミニの下はブルマ」

「---きゃあ!!」

すると今度はこのメンバーの中で一番・・・あんまり女にこういうこと言っちゃいけないんだろうけど一番背が高い娘、愛莉のスカートを捲り上げる

・・・つーかブルマなんて初めて見たぞ、絶滅危惧種のはずなのに

なんてマジマジと見ていると愛莉は顔を真っ赤にしてへたり込んでしまった、やべ、デリカシー無かったな俺

「ね、心配ないでしょ?」

「・・・心配ないでしょ?じゃねぇよ」

ホント、前途多難だわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は初日だし総合練習だけやって終わりにしよう」

愛莉が復活したのでようやく練習開始となった

といってももう時間もほとんどないので軽い練習だけになるだろうが

「今日のところはオフェンスを二人、デフェンスを三人、それぞれ交代でやっていこう」

「ねーオフェンスってなに?」

ってそこからかい、見ると智花以外の娘もよく判ってない顔をしていた

「オフェンスっつーのは攻撃の事だ、んでデフェンスは守り」

「まぁ判らないところはその都度教えていくよ、質問があったら遠慮なく言ってね。 ・・・えーっと、じゃあ智花と真帆は攻め、沙希とひなたと愛莉は守りで始めようか」

「おっけーい!」

昴さんの言葉に真帆が元気良く返事をする、他の面子も異議はないようだった

「---ね、愛莉、ちょっと良いかな?」

そこで昴さんが愛莉に声を掛けた

「ひ、ひゃい!な、なんでしょう?」

対して愛莉はビクリと肩を震わせてから振り向いた、ふむ、愛莉は臆病みたいだな

「あのさ、愛莉って背が高いよね、だから・・・」

「っ!」

「・・・え?」

「あちゃー」

昴さんがそう言うと愛莉は固まり、それに気付いた昴さんも言葉を止める、てか他の面子もヤバイという顔をしていた

「う、う・・・うわぁぁぁぁぁああん!!やっぱり!お、おおきいんだ!デカ女なんだわたし!ふぇぇぇぇぇぇええん!!」

その刹那、愛莉はまるで赤子のように泣き出した・・・いや、赤子でもここまで泣くのはそうないだろ

「アイリーン!違うぞ!アイリーンは四月生まれだからちょっと成長が早いだけだもんな!」

「そうよ愛莉!愛莉は少し早熟なだけ、中学になればみんな同じぐらいになるよ!」

「おー。 あいり、ティッシュあるよ?」

真帆と智花、そしてこの面子の中で最も小さく、淡いピンクの髪の娘、ひなたが愛莉に駆け寄り慰め始めた

わけもわからず立ち尽くす俺と昴さんに沙希が隣に来て説明する

「愛莉は高身長なのがコンプレックスなんです、ちょっとでも背のこと言われるといつもあんな感じになっちゃって」

なるほど、よく聞くよな、身長がコンプレックスの娘って。 愛莉もその一人なのか

「そうだったのか、悪いことしちゃったな・・・」

「あ、あまり気にしないで下さい、正直初日はこうなるんじゃないかって薄々予感してたんで」

とはいうが気にするなというのも無理があるだろ、あんな泣き方じゃ

「長谷川さんと小鳥遊さんもちょっと声を掛けていただけます?四月生まれだとは知らなかったんだとか言っていただければ落ち着くと思うので」

・・・いいのか、それで

まぁ何もしないというわけにもいかんだろうしとりあえず行くか

その後、愛莉が落ち着いたのは終了時間の十五分前だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局今日は全く練習できず、今は最後のモップ掛けをしている

昴さんと愛莉はお互い謝り合っている、まぁあっちはもう大丈夫だろう

なんて思ってると智花がボールを持って俯いていた

「よっ」

「小鳥遊さん・・・」

チラリとこちらを向いた後ボールを持ってとぼとぼと歩き出したので俺もそれに着いていく

「バスケ、好きなんだな」

「はい・・・」

今日バスケができなかったのがよっぽど残念だったのか

「ごめんな、今日は大したことできなくて」

「いえ、小鳥遊さんのせいじゃありません、気にしないで下さい」

・・・と話しているといつの間にかフリースローラインにいた、そして智花は持っているボールを構え、ワンハンドのジャンプシュートを放った

「っ!」

その瞬間、身体に電気が走ったような感覚に陥った

俺の視線は放たれたボールではなく、智花のフォームに釘付けだった

ボールが地面に落ちた音で我に帰り、俺は思わず智花の両肩を掴んだ

「智花!」

「ふぇっ!」

 

 

「今の・・・今のシュートもう一回見せてくれ!」

 

 

智花だけでなく、体育館にいた人に注目されていたであろうが俺には全く気にならなかった

俺は彼女の・・・智花のジャンプシュートの虜になっていたのだった


 
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