No.466230

無表情と無邪気と無我夢中3-1

お待たせしました!主人公高町おうかにとっての最大事件発生です。
一応無印開始前のエピソードとしては最長のエピソードとなっております。

おうかは設定上30歳なのはが逆行した人物なんですが、自分のこの小説コンセプトが“年相応”なので……
一般の逆行物を期待している人、ごめんなさい!!

2012-08-06 22:51:48 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1801   閲覧ユーザー数:1773

【無表情と無邪気と無我夢中3-1】

 

 

 

 

 

 

おうかです。

 

 

いい夢を見ました。

 

 

なのはが子狐と一緒に草原で戯れている光景でした。

 

たまになのはが私に気付いて駆け寄ってくると子狐はなのはの後ろに隠れてしまいます。

 

人見知りなのかそれとも私、嫌われるようなことをしてしまったのでしょうか。

 

それでも最高に心地いい夢です。

 

 

 

 

 

 

なにせ両方共可愛いから!

 

 

 

 

 

 

その所為か今日はうっかり二度寝をしてしまっていました。

 

 

「にゃーーーーーー!!?」

 

 

叫び声が聞こえました。

 

その声に起こされた私は寝ぼけ眼をこすり、リビングへと降りていきます。

 

 

「どうかしましたか、なのは?」

 

「おうかちゃん!」

 

 

トテトテトテとなのはは何か紙みたいなのを持ちながらこっちに来ました。

 

 

「おはようございます」

 

「あ、おはようなの」

 

 

にも関わらず私は普通に挨拶をしていました。

 

何でパニックになっているかある程度感づいたからというのもあります。

 

そもそも礼儀でしょう。

 

 

「―――って違うの!これ何おうかちゃん!」

 

 

なのはは手に持った紙―――いや写真を私に向けてきます。

 

 

「これ!これ!これ!」

 

 

私はあえてじっくり写真を眺めます。

 

ああ、可愛いです。

 

 

「ああ、可愛いです」

 

「でしょ!」

 

 

……今会話おかしくありませんでした?

 

 

「狐さん可愛いの~また会いたいの~」

 

 

ああそういうことですか。

 

私はなのはが可愛いと言ったつもり―――というか零れて言ってしまった―――だったのですが、まあいいでしょう

 

 

 

「またあの神社に行けば会えるかもしれませんね」

 

「ホント?!」

 

 

思えばこの時こんなことを言ってしまったから、あんなことになってしまったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

珍しく今日はなのはと朝ご飯を食べられますね。

 

私が二度寝してしまったのもありますが、なのはがいつもより早く起きていたことが一番大きいです。

 

母が作り置きしてくれてあるおかずをレンジにかけ、ご飯を二人分お茶碗によそいます。

 

それをなのはがテーブルまで運んで、私は温め終わったおかずを持って行き、いただきます。

 

 

「おうかちゃん、いつもこんな早く起きてるの?」

 

「ホントはもう少し早いですけど。なのはこそ今日はいつもより早起きですね」

 

「にゃはははは……おうかちゃんと一緒に狐さんと遊ぶ夢を見てたらパッチリ覚めちゃったの」

 

 

なんと。

 

私と同じような夢を見ていたのですか。

 

ということは。

 

 

「もしかして私、狐さんに避けられてませんでした?」

 

「にゃ、何でわかったの?」

 

 

 

 

 

 

やっぱり。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「ああ、でもおうかちゃんを嫌ってる訳じゃないと思うの!きっと狐さんが人見知りなだけなの!」

 

 

そうであると信じたいです。

 

ですがフォローが一歩遅いですよ妹。

 

しかし、朝にこういう会話するのは久し振りですね。

 

二度寝したかいがあったもんです。

 

うっかりを都合よくとった訳ではありませんよ。

 

早くお父さんの怪我が治って元通りになりますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食器を片付けた私は日課であるランニングの準備を始めます。

 

パジャマからジャージに着替え準備運動をして。

 

ちゃんとメモは残しておきます。

 

そうしないと誰か帰ってきたとき私がいないことだけで心配かけてしまいますから。

 

 

「おやおうかちゃん、おはよう。今日はいつもより時間が遅いね~」

 

「はい、おはようございます。ついうっかり二度寝をしてしまいまして」

 

「珍しい。色々キッチリしているイメージなのにね」

 

「たまにはこんな日もありますから」

 

「そうかい。こりゃ近々嵐が吹き荒れるかな」

 

「おばさん!」

 

 

この人は私がいつもランニングで通りかかると話し掛けてくれる、家から数軒隣に住んでいる優しいおばさんです。

 

ちょっと前まではお姉ちゃんやなのはと一緒にここへ遊びに来て、色んなお話を聞かせてもらってました。

 

特にお姉ちゃんはおばさんの旦那さんとの恋愛話に興味津々でしたね。

 

その間私となのはは家の中を探検したり物置を漁って本やおもちゃを発掘したりしてました。

 

 

「また妹と遊びに来ますから今日はこれで」

 

「うん。楽しみにしてるよ」

 

 

 

 

 

 

別れを告げてランニングを再開します。

 

朝からああだったので予定が大幅に遅れています。

 

いつもは海岸公園を通ってから神社を折り返して戻ってくるのですが、この後の予定が狂わぬようコースを変えまし

 

ょう。

 

神社までいかず海岸公園で折り返すとします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 

 

……返事がありません。

 

 

 

おかしいですね?

 

いつもTVを見ているなのはが「おかえり」と返してくれるのですが。

 

 

 

早起きしたせいで寝てるのでは?

 

 

 

私は早く汗を洗い流したかったのでその微妙な違和感を気にせずそのままシャワーを浴びにいきました。

 

 

 

 

 

 

サッパリした私は早速なのはを起こそうと考えてました。

 

もちろん私自身が色んな意味で楽しむためでもありますね、ふふふ。

 

 

「なのはーどこですかー?」

 

 

最初はリビングのソファーでうたたねしているのかと思っていたのですが、その予想は外れました。

 

 

「もう……なのはー」

 

 

 

なのはの部屋、私の部屋、兄の部屋、姉の部屋。

 

 

 

いません。

 

 

 

父と母の部屋にもいませんでした。

 

おや、どこにいるのでしょう。

 

 

 

「なのはー?」

 

 

 

縁側、庭、道場。

 

 

 

あれ、あれあれあれ?

 

 

 

「なのはー!」

 

 

 

だんだん焦ってきてます私。

 

 

 

探します、探します、探します。

 

 

 

いない、いない、いない。

 

 

 

どこでしょう、どこにいるのでしょう。

 

 

 

「かくれんぼですかー?私の負けですから出てきてくれませんかー?」

 

 

 

本当に。

 

 

 

出て来てほしい。

 

 

 

少しずついやな予感が大きくなってきている。

 

 

 

不安が大きくなる。

 

 

 

胸が締め付けられていく。

 

 

 

「なのはー!!」

 

 

 

家の中を隈無く探しましたがどこにもいません。

 

家の中じゃない?

 

ふと私は玄関に向かいました。

 

 

 

靴は……ない。

 

 

 

ということは外に出た?

 

なのはがメモを残してないか、それをさがします。

 

 

 

しかしメモもありません。

 

 

 

これじゃ、これじゃ、これじゃ。

 

 

 

「どこ行ったか、わからないじゃ、ありま、せんかぁ……」

 

 

 

小さく嗚咽が漏れ始めます。

 

 

 

こんなに不安で、こんなに寂しくて、冷静さなんてもうないに等しい。

 

 

 

「さ、さが、さがしに……」

 

 

 

もう無我夢中すぎて私はTシャツとハーフパンツというラフな格好のまま家から飛び出していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――『高町なのは行方不明事件』―――

 

 

 


 
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