No.464991

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 250

soranoさん

第250話

2012-08-04 21:10:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1200   閲覧ユーザー数:1110

~メンフィル帝国・帝都ミルス・マルーダ城内・謁見の間~

 

「さて………ようやく皆に事前に通知した父上の婚礼の式について話せるな………」

エステルとミントが下がり、リフィアやアリア達も元の位置に戻った時、シルヴァンは口を開いた。

「………シルヴァンさん。最初に知らせをもらった時は驚きましたが、お父様の婚礼の式とはどういう意味ですか………?お父様は”あの方”以外は正妃にしないはずです。肝心のお父様に尋ねても”すぐにわかる”とおっしゃって、誤魔化しますし………」

シルヴァンの言葉を聞いたティアが申し出て、尋ねた。

「……ゼムリア大陸で活動し、時折父上達の元に帰省している姉上なら私が説明しなくても、おわかりではないかと。」

「え………?…………!!ま、まさか………!」

シルヴァンの言葉を聞いたティアは呆けたが、心当たりを思い出し、信じられない表情をした。

「リウイ!父の言葉の意味が皆にわかるようにイリーナ様と共にこっちに来たらどうだ!」

「……………フウ………イリーナ、いいか?」

「はい、あなた。」

リフィアに指名され、広間の端の方で見守っていたリウイは溜息を吐いた後、イリーナと共に玉座の前まで来た後、2人はシルヴァン達に背を向け、広間にいる全員に見えるよう振り返った。

「わあ…………イリーナだよ、セリエル!」

「ええ………!ついに蘇られたのですね………!よかった………!」

「はいです~………ご主人様も幸せそうで本当によかったです~……!」

美しい白の毛並みを持つ獣――獣人が多く住まう領、スリージ領の領家に仕える聖獣メルがはしゃぎながらイリーナを見て、またメルを両手で抱いていた獣人の女性――スリージ領の前領主にして、リウイの側室の1人、”神秘姫”セリエル・イオテールは嬉しさのあまり、涙を流してイリーナを見ていて、リスティも嬉しそうな笑顔で頷いた。また、事情を知るファーミシルスやルース等一部の人物達を除いた周りの人物達もイリーナを見て信じられない表情をして、ざわめき始めた。

「……見ての通り、我等メンフィルに伝わる伝説の妃にして父上の愛妻、イリーナ様がようやく現世に蘇った。……イリーナ様を知る者や、また私やカミーリのようなイリーナ様の事を父上達から教えられた私達子孫の者達にとって、これは驚き、そして喜ぶべき事だろう。……父上の婚礼の式とは他でもない、イリーナ様との婚礼の式だ。……私は民達にもイリーナ様が蘇った事を知らせる意味でも、そしてメンフィルの理想を掲げた2人を祝福する意味でも、婚礼の式をあげるべきだと思う。……反対の者はいるなら、遠慮なく意見せよ。」

シルヴァンは重々しい口調で広場にいる全員に伝わるように言った。そして少しの間、静寂に包まれた広間だったが

 

「フフ……誰が反対なんてするのよ!そんな人がいたら、あたしがブッ飛ばしてやるわ!」

「うふふ、エステルの言う通りね♪パパ達の幸せを邪魔する人はレンがこらしめてあげるわ♪」

エステルが笑顔を浮かべて、拍手をし、またレンも頷いた後エステルに続くように拍手をし、2人の拍手がきっかけに周囲の人物達も拍手をし、広間は大きな拍手の音に包まれた。

「フッ。まさかそんな光栄な式にこのボクが呼ばれるなんてね……う~ん、”演奏家”として腕がなるよ♪」

「………大丈夫かしら。果てしなく不安だわ。」

「あ、あはは………でも、喜ばしい事には違いありませんね。」

拍手をしながら呟いたオリビエの言葉にシェラザードは疲労感漂う様子で溜息を吐き、クロ―ゼは苦笑した後、リウイとイリーナを微笑ましい様子で見ていた。

「……………………」

一方プリネはどこか寂しい笑みを浮かべながらイリーナを見ていた。

「……マスター。もしかして寂しいのですか?」

「え?………そうね。寂しくないと言えば嘘になるけど、大丈夫よ。いずれこうなるとわかっていたし………それにツーヤはイリーナ様の分も含めて、私を支えてくれるのでしょう?」

「………はい。イリーナさんには色々教えて頂いた恩もありますから幸せになってほしいですし、あたしはマスターの傍を決して離れたりはしません。マスターこそ、イリーナさんみたいに早く好きな男性を見つけたらどうですか?あたし、マスターの子供のお世話とかもしたいですし……」

「もう、ツーヤったら……………恋すらしていない私に子供なんて早すぎるわよ…………(…………レーヴェ………………)………」

ツーヤの言葉に苦笑したプリネは物思いにふけった。

「マスター?どうなされたのですか?」

「……ちょっと……ね。それよりツーヤ、貴女も結婚式で祝いの言葉を言うんだから、今の内から考えた方がいいわよ?」

「フフ……そうですね。結婚式で言う祝いの言葉を考えるなんて初めてですけど……絶対にいい言葉を考えて見せます。」

プリネに言われたツーヤは苦笑した後、微笑みの表情でイリーナを見ていた。

「やれやれ……まさか、そこまで大規模な式を考えていたとはな……」

「フフ……いいではないですか、あなた。それによく考えれば私達は式はあげていないのですから………」

溜息を吐いているリウイにイリーナは優しい微笑みをリウイに向けた。

「フフ……そう言えば式を取り仕切るのはあなただそうね?ペテレーネ。」

「はい。……本当ならティアさんの方が適任と思うのですが、イリーナ様がどうしてもとおっしゃるので……」

一方その様子を見守っていたカーリアンはペテレーネに尋ね、ペテレーネは苦笑しながら答えた。

「まあ、聞く所によるとティアも一緒に取り仕切るそうじゃない。最高の式になるよう、期待しているわよ♪」

「はい!リウイ様とイリーナ様がお幸せになる為にも最高の式にして見せます!」

カーリアンに笑みを向けられたペテレーネは笑顔を見せて頷いた。

(フフ……私がする事も、もうないようなものね………式が終わったらリウイの事はイリーナ様にお願いして、私は旅に戻りましょ………)

ペテレーネの笑顔を見たカーリアンは懐かしそうな表情で自分に近付いて祝福するリスティやセリエル、ティア等かつて”幻燐戦争”で共に戦った仲間達やその子孫達とリウイと一緒に会話をしているイリーナを寂しげな笑みを浮かべて見ていた。

 

その後自分達にも近付いて来て挨拶等をされたエステル達は挨拶の対応等した後、謁見の間を出た。

 

~メンフィル帝国・帝都ミルス・マルーダ城内~

 

「は~……プリネ達の親戚の人達に挨拶とかされて、本当に緊張したわ~……メンフィル皇女のプリネ達の親戚って事は要するにみんな皇族だし………」

謁見の間から出たエステルは安堵の溜息を吐いた。

「よく言うわよ……あんた、お姫様みたいに自分に話しかけて来るプリネさん達の御親戚の方達にまるでお姫様が話すような作法でそつなく対応していたじゃない。」

安堵の溜息を吐いているエステルを見て、シェラザードは呆れた表情をしていた。

「フフ、そうですね。むしろ私より立派な作法で挨拶をされていましたよ、エステルさん。」

シェラザードの言葉を聞いたクロ―ゼは苦笑しながらエステルを見た。

「あはは……ラピスとリンは王女だったからね……受け継いだ記憶の中にあった2人の王女としての作法で対処しただけよ~。」

「む~……ママもツーヤちゃんもずるいよー……ツーヤちゃんもママやクロ―ゼさんみたいな作法でプリネさん達の親戚の人達とお話していたし……ミントだけ恥ずかしい思いをしたんだよ~。」

苦笑しているエステルにミントは頬を膨らませて言った。

「あはは……ごめんね、ミント。でもみんな気にしていなかったじゃない!」

「フッ、確かにそうだったね。エレボニアの貴族は作法とかにうるさいからねぇ……少しは彼等を見習ってほしいものだ。」

苦笑しながら話すエステルの言葉にオリビエは頷いた。

「エレボニアの貴族共も一般的なエレボニア人の印象をぶち壊すお前にだけは言われたくないだろうーよ。」

「ハハ……だが、俺らみたいな平民にも親しく接していた所を見ると、メンフィルの皇族というのは懐が広いみたいだな。」

呆れた表情で呟いたアガットの言葉にジンは笑いながら頷いた。

 

「そういえば、お姉ちゃん、ミントちゃん。さっきもらったマントとか付けていないみたいだけど、何で?」

「へ?……ああ。アリアさん達からもらった大事なものだし、無くしたらいけないから普段は付けないようにして、マントとかは大事にしまってあるわ。その代わり、首飾りはずっと付けておくわ。」

「ミントも。ママに言われて、メンフィルの貴族として公式な場に参加する以外は付けないようにしているんだ。」

ティータの疑問にエステルは一瞬首を傾げたが、すぐに答え、ミントも頷いた。

「フフ……それにしてもこれからはエステルさんとミントちゃんの事を”ファラ・サウリン卿”や”ルーハンス卿”とお呼びした方がいいかもしれませんね。」

「や、やめてよ~……そんな呼び方されたら別人みたいに感じるんだから……」

「そうだよ!ミントはミントなんだから、いつも通りに呼んでね!」

クロ―ゼが言った言葉にエステルは慌てて答え、ミントはエステルの言葉に頷いた。

「……リフィアやプリネの言う通り、やっぱり全然変わらないね、エステル。」

その時エヴリーヌが広間から出て来てエステル達に近付いて来た。

「パーティーまでまだ時間あるけど、エステル達はどうする?」

「へ?う~ん……そう言えば今日までずっとミントの看病とかで身体を全然動かしていないから、思いっきり身体を動かしたいわ!さっきっもらったこの剣の感触も掴んでおきたいし。……後、せっかくご馳走が食べられるんだからお腹もすかせておきたいし。」

「ミントも!」

エヴリーヌに尋ねられたエステルは悩んだ後恥ずかしそうな表情で答え、ミントも頷いた。

「あんたねえ……仮にも貴族になったんだから、そんなはしたない真似、よしなさいよ……」

シェラザードは呆れた表情でエステルを見ていた。

「フーン………そんなに身体を動かしたいならいい場所を案内してあげるよ。」

そしてエヴリーヌはエステル達と共にどこかに転移した……………

 

 

 


 
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