No.462847

外史を行く喧嘩師 十一幕

荒紅さん

反董卓の起こりと馬家との絡みです。

2012-07-31 15:56:22 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2660   閲覧ユーザー数:2355

「賈クっち、終わったで。」

 

「そう・・・ごめんね、汚れ仕事を任せちゃって。」

 

「気にするな。私達は武人だからな。こういう仕事は私達の領分だ。

 小難しい事は出来んから、そういうのは賈クや陳宮の仕事だがな。」

 

「あいつ等、月に手を出そうとした。狼鬼と約束。恋が守るって。」

 

今僕達のいる、洛陽。

噂ではかなり酷い状況と聞いていたが、現状はもっと酷かった。

 

民を守るべき兵が、民から物を奪い。

生活を守るべき文官には賄賂が横行していた。

月には街に出ちゃ行けないと言った。

「街はまだ危ないから。」とは言ったが、こんな状況の街を月には見せられなかった。

 

そして、最も厄介なのは十常侍だった。

劉弁様を押す何進。劉協を押す十常侍の権力争いで洛陽は疲弊しきっていた。

 

十常侍は僕達が洛陽に着く前に何進を暗殺し、奴等はそれを自殺と言い張った。

そして、何くわぬ顔で僕達に近づいてきた。贈り物に、相国という地位。

何が何でも僕達を仲間にするためになんでもしてきた。

 

僕達はそれを何とか断ってきた。

 

だけど。

 

「まさか、月を人質にしようとするとわね・・・」

 

自分達の言うことを聞かせる為に月を誘拐しようとしてきた。

月の世話をしている侍女を買収し、月の食べる食事に睡眠薬を入れさせた。

その侍女は口封じに殺された。

 

食事を食べた月は眠ってしまい十常侍に捕まってしまった。

 

「あの時恋が気づいてくれなかったらと思うと、ゾッとするな。」

 

あの時、

 

「変な臭い。月の部屋の方からする・・・月っ!」

 

そう言って走り出した恋は部屋の前で月を抱えた男達を見つけ、

月の様子がおかしかったらしく、恋はその男達を切った。

身元を調べると十常侍の段珪と韓悝だった。

 

僕達は月の警備を強化し、十常侍の悪事の証拠を集めた。

そして今日、証拠をもってしてあいつ等を処断した。

 

「これで内部の埃は落とした・・・けど。」

 

これで僕達は国の都市、帝に一番近い相国という地位。

この国を牛耳る事が出来る立場となった。

 

「すまぬな、入るぞ。」

 

「劉協様!」

 

そう言って入ってきたのは、劉協。

まだ皇帝ではない。

四人はすかさず、頭を下げようとするが

 

「止めてくれ、皇帝なんて名ばかり。自分の身に巣食う虫も潰せない愚かな人間だ。

 それに、皆には、助けれてばかりだからの。」

 

そう言う劉協様。見た目はまだ幼さの残る少年と言った所。

 

「いえ、私たちは当然の事をしたまでの事。」

 

「・・・して、十常侍共は?」

 

「っはっ!賄賂に人身売買、その他諸々の証拠を突きつけ、処断いたしました。」

 

「そうか。これで兄の無念も少しは晴れるであろう。」

 

兄。劉弁様の事だろう。劉弁様は、十常侍によって殺された。

順当に行けばどう考えても後継者は劉弁様だった。

それを良しとしない十常侍は劉弁様を暗殺。そのまま何進も暗殺された。

 

僕個人の感想だけど、劉協様はマトモだと思っている。

皇帝として育てられ、普通の人間より豊富な知識。

その中には僕の知らない様な物もあった。

 

そして何より、この人柄。

自分の力をしっかりと理解していて、誰にも威張らない。

中々にいい人だと僕は思っている。

 

「それでは、そろそろ街の復興にも力を入れていこう。

 今までは証拠集めに奔走していて、十分に出来ていなかったからの。

 余も手伝おう。」

 

「「「「御意っ!」」」」

 

狼鬼、こっちは何とかやってるわ。

 

十常侍処断から二ヶ月。

袁紹からとある檄文が流された。

 

「幼い帝を傀儡とし、洛陽で暴政の限りを尽している暴君董卓打ち破るため、

 ここに反董卓連合を結成する。」

 

 

乱世の足音が、少しずつ近づいて来た・・・

 

 

<狼鬼サイド>

 

俺は今武威に居る。

ここに滞在する事早三ヶ月。

洛陽の方から時々連絡がくるが、何進が暗殺されてたり、劉弁も死んでたり、

十常侍に月が攫われそうになったりと、かなり危ない状況の様だが何とかやっている様だ。

 

そして俺はとある一報がここに流ない事を祈って、武威の街に滞在してる。

 

だが、その一報は武威の街を駆け抜けた。

 

「袁紹が檄文を出した。」

 

俺はその事を飯屋のおっさんから聞いた後、直ぐ様城に向かった。

 

「すまない、馬騰に会いたい。」

 

「名前と要件を言え。」

 

「董卓の使いの神崎だ。来度の檄文についてと馬騰に伝えてくれ。」

 

袁紹の檄文が届いているのか、門番はかなり驚いた顔をし。

 

「・・・少しお待ちを。」

 

そう言った門番は、駆け足で城の中に入っていった。

 

 

待つこと数十分・・・

 

 

「こちらにどうぞ。」

 

戻ってきた兵に連れられ、謁見の間へ。

そこにはとてつもない覇気を放つ、かなり長い茶髪をポニーテールにした女性と、

黒の長髪を下ろしただけの、クールな感じの女性。

そして、覇気を放つ女性に似た少女二人がいた。

 

「お目通り叶って感謝してる。馬騰殿。俺の名は姓が神崎、名が狼鬼だ。

 字は無い。」

 

「儂が馬騰じゃ。字は寿成。こっちが韓遂。あっちが娘の馬超と姪の馬岱じゃ。

 それで、何の用じゃ?」

 

「何の用、か。あんたの所にも来てるんだろ。袁紹から。」

 

袁紹から檄文が届いた時点で馬騰に会う。

ここが肝だからな。

 

「・・・何故それを知っている。時期的に有り得ない。今月は洛陽に居る、

 ここに檄文が届いたのは二日前。どんなに急いでも着くわけがないじゃろう。」

 

「そりゃそうだろ。俺はここに三ヶ月前から居るんだから。

 そして、檄文が届いたのを確認してあんたに会いに来た。」

 

そう言うと馬騰と韓遂は俺の言葉の意味を理解したらしく、驚愕の顔をしているが、

残りの二人は頭に?が浮かんでる。 

 

「成程。この檄文、どうやらきな臭い様じゃ。話を聞こうじゃないか。

 話してみるがよい。」

 

「ここからの話は他言無用で頼む。

 俺は、多分天の御使い、或いはそれに近しい人間だ。」

 

それを言うと、今度は四人とも驚く。

 

「天の御使い。流星に乗りやって来て、この大陸を平和に導くと、管路が予言したあの、ですか?」

 

「いや、俺はそんないい奴じゃねぇよ。分かりやすく言うなら、別な世界から来た人間だ。

 俺のいた世界には、董卓や馬騰、それに馬超などが歴史上の人物として登場していた。

 そして、俺はそれを知識を知っていた。だが、俺の世界の董卓や馬騰は男なんだよ。」

 

「儂が男・・・はっはっはっは!儂が男か!くっはっはっは。」

 

・・・なんだかよく分かんねぇが大笑いしてんぞ。

 

「飛翠(ひすい)、笑ってる場合じゃないわよ。もしこの人の言っている事が本当なら、

 この人は未来を知ってる事になるわ。そうなれば三ヶ月も前からここに居たという事も

 辻褄が合うわ。」

 

「・・・なぁ、何が何だか分かんないんだけど。」

 

「翠。お前に話しても理解出来ないから後にしろぃ。」

 

そう言って落胆する馬超。

 

「おいおい、こいつがあの錦馬超かよ・・・」

「「っ!」」

 

ん、俺何か言ったか?

 

「錦馬超。羌族の間で呼ばれてるその名称、何故お前が知っている?」

 

「まぁ、これも天の知識って奴よ。どうだい、信じてもらえたかな?」

 

かなり道がそれたな。

 

「信じる他無いな。真琴(まこ)、お前はどうじゃ?」

 

「私も同感ね。ここまで知っていると、気味が悪いわね。」

 

「さて、ここからが本題だ。今回のその檄文、薄々気づいてると思うが嘘っぱちだ。

 今回俺達は何進に恩賞を渡すと言われ、洛陽に向かったが。

 何進は暗殺されていて、なんとあの劉弁も殺されていた。」

 

「なんじゃとっ!劉弁様が!」

 

腐っても漢民。そりゃそうか。

 

「ああ。二人共、劉協を皇帝にしたい十常侍にな。そして、そおの十常侍は月にも手を出そうとした んで、殺したがな。」

 

「権力争いがそこまで激化しているとは、思ってもいませんでしたね。」

 

俺達もだけどな。

 

「そこで月は今、洛陽の復興に力を入れている。劉協も一緒にな。

 だが、ここでそれを心良く思わねぇ奴が出てきた、それが。」

 

「袁紹というわけか。

 ・・・お前はここまで読んでいたのか?」

 

「歴史の流れとしてなら、起こるかもしれないとは分かっていた。

 だが俺の世界の董卓は本物の暴君だったが、月はそんな奴じゃない。

 それはあんたも知ってるだろ。」

 

「そうじゃの。月は底無しの優しさを持っている。そんな事しないとは分かっていたがね。

 それで、あんたは私らにどうして欲しいんじゃ?」

 

「月を助けて欲しい。」

 

「・・・状況が分かって言ってるのかい?今あんた達の味方になるってことは、

 連合の敵になる。それにもはや月は暴君として大陸に知られている。どうするんじゃ?」

 

たしかにそうだ、だがな。

 

「風評に関しては問題ない。もう手は打った。

 連合は、あんたらが居れば勝てる。」

 

「・・・本気で言ってんのかい。」

 

「ああ、本気だよ。勝つんじゃねぇ。勝たなきゃならねぇんだ。こんな所で月は終わる様な

 奴じゃねぇ。

 だから頼む!俺達に力を貸してくれ!」

 

そう言って俺は頭を下げる。

 

「・・・あんた、いい男じゃな~。こんなにいい男に会ったのはウチの旦那以来じゃ。

 真琴。」

 

「ええ、私は構わないわ。」

 

「翠、蒲公英。あんた達は?」

 

そう言うと二人は。

 

「あたしはよく分からなかったが、こいつが本当の事を言ってるのは分かった。

 あたしの槍は、偽りの大義の為なんかに使わない!」

 

「蒲公英もいいよ。おば様の言うようにこの人かっこいいし。」

 

そう言った二人を確認して、俺に向き直る。

 

「狼鬼って言ったか?お前の頼み聞いてやろう。我等の力は利よりも義の為に有る。

 だから、月の為に我等はこの力を貸す。」

 

「ありがとよ、感謝するぜ。」

 

これで、馬騰軍の騎馬が使える。これなら何とかなる。

 

「そこで、条件が有る。」

 

「何だ?」

 

態々不利な方に着けって言ってるんだ。

俺の出来る事なら命以外ならやるぜ。

 

「儂と勝負しろ。お前から氣が溢れ出ている。こんなのを前にして大人しくしてる

 なんて無理じゃ。」

 

「いいぜ!俺もここ最近退屈してたんだ。槍の名手、馬騰が相手してくれるってんだ、

 断る理由もねぇ!」

 

そうして、俺達は中庭に移動した。

「準備はいいか?」

 

「勿論だよ。」

 

「じゃあ、蒲公英が審判やるね。それじゃ、始め!」

 

その言葉と共に、馬騰が槍で突いてくる。

 

その一撃は俺の頬を掠めていった。

 

「ほう、よけるか。」

 

あっぶね~なんだ今の速さは。

 

「ほれほれ行くぞ!」

 

そして、霞の突きなんて目じゃない程の速さで突いてくる。

 

「クソっ!速さは霞よりも上か!なら力で行くまで!」

 

紙一重で突きを躱しきり、そこに渾身の右ストレート。

だが、それを簡単に左手で受け止める馬騰。

 

「いい拳だ。じゃがな、儂を倒したければもっと力を入れんかい!」

 

そう言って右手を放す馬騰。

 

「そうかい、なら本気で行くぜ。」

 

最近完全に制御出来るようになった、内氣功。

体の中に氣を貯めて身体能力を向上させる技。

 

「ほう、氣を会得しているか。最近は翠だけじゃ退屈していたんじゃ。

 こちらも本気で行くぞ。」

 

槍を構え直す馬騰。そして。

 

「ふっっ!!」

 

一閃。

俺はそれを拳で受ける。

手甲と槍がぶつかり合い火花を散らす。

 

そこから連打の打ち合いとなった。

馬騰は俺の拳を躱しながら突きを繰り出し、俺はそれを躱しながら殴る。

 

「このままじゃ埒があかねえ、オラっ!」

 

拳の中に蹴りを混ぜてそのまま槍にあて、反動で後ろに下がる。

 

「狼破っ!」

 

気弾を放つ。

だが、馬騰は怯む事無く突っ込んできて気弾にぶつかる。

そのまま馬騰は気弾の中を突っ切って来る。

 

そのまま二人は一気に間合いを詰めて、渾身の一撃を放つ

 

「「はあああぁぁぁっ!!」」

 

二人の氣がぶつかり合って砂埃が立ち上がり、姿が見えなくなる。

そして、砂が落ちたとき、俺の喉元には槍の先があった。

 

「えっと、おば様の勝「待ちな蒲公英。よく見るのじゃ。」え?あっ。」

 

俺の拳も馬騰の顔の前で止まっていた。

 

「これは、相打ちだから。引き分け!」

 

馬岱がそう宣言すると、二人は構えを解く。

「やはりいい男じゃな、この儂に引き分けるとは。」

 

「いい男っつーのはよく分からんが、あんたもかなりやるな。」

 

正直恋以外なら負ける気はなかったが、認識を改めた方がよさそうだな。

 

「ふむ、謙虚な所も魅力的じゃな。

 ・・・よし、儂は決めたぞ。狼鬼、儂と結婚しろ。」

 

「「「「はぁ?」」」」

 

こいつ何言ってるの?

 

「ちょ、かあ様!な、な、何言ってるんだよ//!」

 

「何じゃい翠。これしきの事で顔を赤くしおって。

 そういう所だけは歳相応なんじゃが。」

 

「いや、話が全く読めないんだが・・・」

 

「有り体に言えば、お前に惚れたんじゃよ。これ程武を持った男など、

 そうそうおらんしのぅ。」

 

惚れた?俺に?・・・そんな事言われたの初めてだぜ。

 

「ありがとな。そういうの初めて言われたぜ。」

 

「なんじゃ、女子に思いも打ち明けられた事も無いのか?」

 

「無いな。」

 

皆俺にはあんまし近づかない様にしてたしな。

 

「で、どうなのじゃ?儂の求婚受けるのか?」

 

「話が唐突過ぎて返事もクソもねぇよ。会って半日も立ってねぇよ。」

 

俺が困っていると、韓遂が助け舟を出してくれた。

 

「飛翠、止めなさい。貴方が誰を好きになっても構わないけど、今は董卓ちゃんを助けに

 行くんでしょ?」

韓遂さん、ナイスだ。

 

「そうじゃな、なら儂の真名を預けよう。儂と引き分けたのと、

 未来の旦那じゃからの。真名は飛翠じゃ。よろしくのぅ、旦那様。」

 

旦那様って、勘弁してくれ・・・

 

「はぁ~飛翠、あまり巫山戯るなら怒るわよ。

 私の真名は真琴(まこ)です。よろしくお願いします。」

 

「あたしの真名は翠だ。よろしくな。」

 

「はいは~い。蒲公英だよ。おば様と結婚するの?」

 

「まだそんな事分かんねぇよ。まぁこんな美人に言われて悪い気はしないけどな。

 あと、俺の事は狼鬼でいいぜ。」

 

飛翠と真琴もかなりの美人だし、翠と蒲公英は美少女の部類に入るだろう。

 

「まぁ何にせよ、ありがとな。

 お前らの御陰で勝てる見込みが出てきたよ。」

 

「気にするでない、旦那様。」

 

・・・・・・

 

「旦那様は止めてくれ・・・」

 

あとがき

 

こんにちは荒紅です

 

今回は洛陽でのお話と武威でのお話をお送りしました。

馬騰さんは豪快な感じで、祭さんを少し行動的にした感じの人にしました。

韓遂さんは冥琳の様な苦労人です。

 

それではご感想などコメしてもらえるとありがたいです。

んじゃ


 
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