No.460464

無表情と無邪気と無我夢中2-1

2-1と書いてありますが、実質第1話となります。
シュテル・ザ・デストラクターっぽいのはモデルにしてるからなのですが、筆を進めるごとにかけ離れるというか……

2012-07-27 19:30:53 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2445   閲覧ユーザー数:2407

【無表情と無邪気と無我夢中2-1】

 

 

 

―――『高町姉妹』―――

 

 

 

 

 

 

おうかです。

 

あ、私の今の名前“おうか”っていいます。

 

双子の姉妹の姉をやっています。

 

 

 

生まれ変わった、ということでしょうか。

 

あの時私は青い空と緑の草原に囲まれて死を迎えたはずでした。

 

だからこの場を最初は夢だと思い、求めていたものがそこにあったのでそれはそれは素直に甘えていました。

 

いつか醒めてしまって無くなってしまうのかと思えば泣き出して家族を困らせていました。

 

 

 

それが続いて、今私は5歳児をやっています。

 

あの嵐を呼ぶ少年と同じ歳ですね。

 

家族内では私は笑顔はあまり見せないが大きく泣く姉であり、妹は逆に大きく笑いますが泣き顔をあまり見せません。

 

それでも私は妹の笑顔が大好きです。

 

大好きなのですが。

 

 

 

ここ最近の妹の笑顔はいつものとはちょっと違うように思います。

 

 

 

それもそうでしょう。

 

つい先日、父が仕事先で重傷を負ったらしく長期入院することになってしまうという事件がありました。

 

母は経営している喫茶店がちょうど波に乗ってきた時期でもあり、私達の少し歳の離れた兄と姉もそっちの手伝いに入りと家の中が寂しくなってしまってます。

 

 

 

私は二度目の人生なのでそれなりにやってますが妹はそうもいかないみたいです。

 

やはりこの寂しい空気を人一倍感じてることでしょう。

 

母も朝早く家を出て帰ってくるのはもう私達は寝てしまっている時間だったりします。

 

 

 

私もかつて妹と同じおもいをしていましたら気持ちはわかりますし、さらに言うとそんな気持ちになっている妹を見ているのは心苦しく思います。

 

 

 

だから、私は―――

 

 

 

「なのは」

 

 

 

日課のランニングをサボって―――

 

 

 

「え?」

 

 

 

ソファーで絵本を読んでいる妹に―――

 

 

 

「お散歩しに行きましょう」

 

 

 

そう言って遊びに誘っていました。

 

 

 

 

 

 

最初に来たのは海鳴海岸公園です。

 

妹は「海だー!」と叫んで浜辺まで走って行ってしまいました。

 

転ばないように気を付けてください、と言おうとした矢先に妹は「うにゃ!」 と変な声をあげて転びました。

 

 

 

「な、なのは!?」

 

 

 

私はすぐさま駆けつけました。

 

 

 

「大丈夫ですか、怪我してませんか?!」

 

 

 

珍しく慌ててます。

 

はて、昔の私はこんな性格でしたでしょうか。

 

 

 

「にゃはは……だ、大丈夫だよ……ぺっぺっ」

 

「すぐ公園の水道で洗いましょう。立てますか?」

 

「う、うん」

 

 

 

いくら砂浜の上だったとはいえ少し痛かったでしょう。

 

私は妹の服の砂を払いながら連れて行き、水道で腕やら足やらを洗ってあげました。

 

どうやら靴の中にも砂が入ったらしく妹が口の中を洗っている間に落としてあげてました。

 

 

 

「本当に大丈夫ですか……って、やっぱり怪我してるじゃないですか」

 

 

 

視線を落としたら右膝を擦りむいてました。

 

私は一応常備している絆創膏を貼りながらふと思い出します。

 

 

 

 

 

 

あれは私が死んでしまう10年前のこと。

 

 

私の娘が正式に娘となる前に、今の妹と同じ様に転んだことがありましたっけ。

 

 

あの時は今ほど心配もせず、地面が柔らかいから怪我をしていない“はず”だから自分で立ち上がれる“はず”と。

 

 

駆け寄りもせず涙するその子に遠くから声を掛けるだけ。

 

 

薄情、と言われて当然のことをしていたのかもしれませんね私。

 

 

 

 

 

 

「おうかちゃん?」

 

「え、ああ……これで大丈夫です。ちょっとあのベンチで休みますか」

 

 

 

そこで私達は色々話しました。

 

 

私が兄から教わっている武術についてとか、ランニングしているときに出会う人達のこととか。

 

 

つい最近だととある空き地に置かれている土管の上でふんぞり返る女の子がいたことですか。

 

 

下僕にしたと思われる男の子に土下座をさせ随分と偉そうにしていました。

 

 

まるで王様ですね、と呟いたら聞こえたらしく「なに見てんの?!」と返されてしまいその瞬間ダッシュで逃げました。

 

 

「待ちなさい!」と追いかけられましたが、私の脚力なめないでください。

 

 

ランニングを日課にしてる分前世とは違うのですよ前世とは。

 

 

当然振り切りました。

 

 

 

妹は兄や姉が学校の図書館から借りてくる本でどんなことを知ったかとか、こんな面白い本があったよとか。

 

 

あと最近デジタルカメラに興味を持ち始めたとか。

 

 

今もポーチの中に入れて持ってるそうです。

 

 

そういえば喫茶店のメニューを撮影するために母が買い、メニュー表に採用されたのが全部妹が撮ったやつだったから家族全員悔しがってましたね。

 

 

私ですか?

 

 

メニュー表の表紙にあるお店の写真は私が撮りました。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで私達はまた歩き始めました。

 

今度は妹が勝手に走り出さないように手を繋いで。

 

なんか、手を繋ぎ始めてからずっと笑顔なんですが妹。

 

こっちが恥ずかしくなります。

 

 

 

「おうかちゃんおうかちゃん」

 

「なんですかなのは」

 

「今度はどこいくの?」

 

「そうですね……この上です」

 

 

 

見上げたそこはちょっと長めの石の階段。

 

上の方をよく見ると鳥居が見える。

 

ちなみに私達が歩いているのは私のランニングコースだったりします。

 

あ、妹絶句してますね。

 

普通の5歳児だったら普通に登りきれる階段ですが、うちの妹は運動神経切れてますからね。

 

 

 

「行きますよ」

 

「え、待って待って」

 

 

 

最初はよいしょよいしょ言っていた妹は途中から掛け声がにゃっにゃっという感じになり、それが聞こえなくなった時私は足を止めました。

 

 

 

「…………休みますか」

 

 

 

そのままへたり込んだ妹の隣に座りました。

 

妹の回復を待ちながら私は今後のことを考えてました。

 

ジュエルシードと闇の書。

 

せめてこの2つだけはなんとかしないと地球が危ないのだ。

 

武術を習い体力をつけているのもそれに備えて。

 

私は“高町なのは”ではない。

 

双子の姉で私の記憶には存在しない“高町おうか”なのだ。

 

時にはなのはのサポートに回り、時には前線で動けるように。

 

 

 

「ぎゅっ」

 

「ほへ?」

 

 

 

自分の世界に浸っている私を呼び戻すかのように、何の前触れもなくなのはが抱きついてきました。

 

 

 

「ど、どうしましたかなのは?」

 

「こっちのセリフだよおうかちゃん。なんか難しい顔してるし……」

 

「…………」

 

 

 

やはりそういう空気はバレてしまうのですね。いけません。

 

私は気持ちを切り替えてすくっと立ちました。

 

事件発生までまだ4年弱あるのですから今から気負う必要はありません。

 

やれるだけのことをやりながら準備だけは怠らぬよう、かつこの二度目の人生を楽しむとしましょう。

 

 

 

「行きましょう、なのは」

 

「うん、おうかちゃん!」

 


 
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