No.450684

IS〈インフィニット・ストラトス〉 ~G-soul~

ドラーグさん

一夏の行方は・・・・・

2012-07-10 21:54:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1072   閲覧ユーザー数:1048

「楯無さん!」

 

「あ、瑛斗くん! こっちよ!」

 

一夏がいなくなったと聞いた俺は、楯無さんの指定した場所に急行した。そこには、完全に焦りの表情になっている楯無さんが待っていた。

 

「虚と本音は?」

 

「言われた通り『こっちの荷物が抱えきれなくなったらしい』って理由をつけて俺だけ来ました。二人はまだ材料探しをしてるはずです」

 

「そう・・・・・。助かったわ。あの二人を危ない目に遭わせたくないもの」

 

「はい。それより、一夏がいなくなったって・・・・・」

 

「そうなの。捜しても見つからないし、電話にも出ない。おまけに彼の白式の所在特定信号もキャッチできないわ」

 

「キャッチできない・・・・・、それって―――――」

 

「ええ」

 

楯無さんは俺が考えていたことを短く肯定した。

 

所在特定信号は発信をオフにすることはできるが、基本的には滅多なことが無ければ常にオンの状態になっているはず。それが消されているということは一夏がなんらかのトラブルに巻き込まれている可能性が高い。それはつまり―――――――――――

 

「誘拐よ」

 

ビュウ・・・・・

 

冷たい冬の風が俺と楯無さんの髪を撫でた。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・う、うぅ・・・・・・ん?」

 

目を覚ました一夏は目の前に広がる景色に混乱した。

 

「どこだ・・・・・? ここ・・・・・?」

 

そこは真っ暗な空間だった。目が慣れていないためか、はたまた本当に何も無いのか、ただ暗黒の空間が一夏を包んでいる。

 

(俺は・・・アイツに・・・・・織斑マドカに気絶させられて・・・・・・・)

 

前後の記憶を思い出しながら横たわっていた体を起こす。

 

ジャラ・・・・・・

 

「?」

 

体を起こすと同時に重い鎖の音がした。見れば、手錠をかけられて柱に括り付けられている。

 

(手錠か・・・・・。なら白式を展開すれば・・・・・!)

 

展開して手錠を壊そうとするが、白式はガントレット状態のまま、うんともすんとも言わなかった。

 

「そんな・・・・・。どうして―――――――」

 

ガラガラガラ!

 

「うっ!?」

 

突然、重たい扉が開く音がして、外から光が漏れて一夏の網膜を刺激した。

 

「・・・・・気がついたようだな」

 

「お前は・・・・・・・」

 

一夏の前に立っているのは、姉である千冬と全く同じ顔をした少女。織斑マドカだった。

 

「ISを展開しようとしても無駄だ。組織が開発した待機状態のISを展開できなくさせる作用を持った手錠だ。・・・・・・・・その分だと、もう効果は知ったらしいな」

 

動けない一夏を鼻で笑い、マドカはコツコツと靴音を響かせて近づいてきた。

 

「抵抗するなよ」

 

短く言って、マドカは小型拳銃の銃口を一夏の顎に押し当てた。

 

そして一夏のズボンのポケットを漁り、携帯電話を取り出した。

 

「俺を攫ってどうするつもりだ?」

 

「さあな。私の任務は貴様の捕縛だ。後のことは聞かされてはいない」

 

「そうか? ならなんで俺の携帯を取った? まだ何かするつもりなんだろ?」

 

「ふん・・・・・・・」

 

マドカは一夏の携帯のカメラ機能で動けない一夏の姿を撮った。

 

そして今度は携帯を操作し、どこかに電話をかけた。

 

十数秒待つと、相手は電話に出たようだった。

 

「・・・・・貴様の弟は預かった。助けたければ、今すぐに街の廃工場まで来い」

 

マドカの『弟は預かった』という言葉に一夏は目を見開いた。

 

「! まさか、千冬姉に!?」

 

「・・・・・言っておくが、これは悪戯でもなければ脅しでもない。来なければ弟は死ぬぞ」

 

電話を切り、マドカはさらに携帯を操作して、そして一夏に携帯を返した。

 

「良かったな。助けが来るぞ?」

 

「・・・・・・・・なんで千冬姉を呼んだ?」

 

一夏の目は、完全に怒りに燃えていた。

 

「さあ? 何故だろうな」

 

「俺をからかってるのか!?」

 

ジャラララッ!

 

一夏は立ち上がるが、手錠で柱と繋がれているのでそこから動くことができない。

 

「・・・・・・・・クソッ」

 

悔しそうに呻き、一夏は再び座った。

 

「いきなり怒鳴って悪かったな。・・・・・って、誘拐犯に謝るのも変か」

 

そう言って、一夏はマドカの顔を見つめた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

マドカも、それから目を逸らさず、一夏を睨み返す。

 

「なあ、どうしてお前はそんなに千冬姉に似てるんだ?」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

一夏の問いに、マドカは返答を寄越さない。

 

「あの時、どうして俺を殺そうとしたんだ? お前は一体―――――――――」

 

「エム」

 

「?」

 

「・・・・・私のコードネーム。それが私の二つ目の名前だ」

 

「二つ目・・・・・・・?」

 

一夏は、マドカの不可解な言動に首を捻った。

 

「特別に教えてやろう。私という存在を・・・・・・・・」

 

マドカの目に、哀しみがよぎった。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

時間は戻り、IS学園。その地下特別区画で、千冬はあるものと対峙していた。

 

それは物言わぬ無人展開のIS。

 

「・・・・・、少々悪ふざけが過ぎるぞ。束」

 

『あはは~。厳しいこと言うねぇ、ちーちゃん。一応はちーちゃんの新しい機体なんだけどな』

 

物言わぬはずの無人展開状態のISが人間がそうするように肩を竦めた。その肩にはスピーカーのようなものが取り付けられている。

 

「頼んだ覚えはない。それとその状態で話すな。幽霊と話しているようで薄気味が悪い」

 

『えぇ~? せっかく組み込んだ『束さんの動きトレースシステム』だよ~? もっと褒めるとかないの~?』

 

そう言ってIS(束)はポーズを決める。

 

「そんなことも頼んではいない」

 

千冬はハァと額に手をやって呟いた。

 

「ねぇねぇ、ちーちゃん」

 

ポーズをとるのをやめたIS(束)はあぐらをかいて座った。

 

『《暮桜》って、どこにあるの?』

 

「・・・・・・・・・・・」

 

聞いていた千冬の眉がピクリと反応した。

 

千冬がブリュンヒルデの座に着いた時に使用していた機体、《暮桜》。無類の強さを誇った機体だが、千冬の引退後、その行方を知る者は少ない。

 

「・・・・・・・フッ。そんなことを言って、本当はもう分かっているんじゃないのか?」

 

『およ? 何を根拠に?』

 

「それは―――――――――――」

 

言いかけた千冬の携帯に着信が入った。

 

発信相手を見て、千冬は首を捻る。

 

「一夏から? 何だ?」

 

『・・・・・貴様の弟は預かった。返して欲しければ、街の廃工場に来い』

 

「何・・・・・? お前は誰だ? ウチの生徒にこんな質の悪い悪戯をするやつはいないと思うが」

 

『・・・・・言っておくが、これは悪戯でもなければ脅しでもない。来なければ弟は死ぬぞ』

 

「待て!」

 

プツッ ツー、ツー・・・・・。

 

「クッ・・・・・!」

 

一方的に切られ、千冬は忌々しげに携帯を持つ手を見る。

 

『なになに? なんだかただならぬ雰囲気っぽいけど』

 

「・・・・・・・一夏が攫われた」

 

『ええええ~!? それは大変だ~! どうしよどうしよ~!?』

 

IS(束)が、ガッチャガッチャと音を立てて慌てるように走り回る。

 

「落ち着け。おそらく相手は亡国機業の連中だろう。まったく・・・・・、懲りないやつらだ」

 

『あれ? ちーちゃん、意外と落ち着いてるね』

 

「まあな。だが一つだけ問題がある」

 

『問題? なになに?』

 

「あの時はISがあったが、今の私にはISがない。さて、どうしたものか・・・・・・・」

 

『ちーちゃんちーちゃんちーちゃん! ここ! ここにあるよ! ちーちゃんの新しい専用機、ここにあるんだよ!』

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『なにその疑いの眼差し!? 性能は紅椿と同等・・・・・いや、それ以上だよ!』

 

ワーギャーと騒ぐISにややうんざりしながら千冬は苦笑する。

 

「わかったわかった。今回だけお前に騙されてやる。さっさと操縦権を寄越せ」

 

『うぅ・・・・・なんだか釈然としない言い方だけど、まあ、いっか!』

 

するとISは脚部から光の粒子になり始め、千冬の左手に収束していく。

 

『フィッティングも微調整もちーちゃんのデータを使って終わってるから、すぐに出撃できるよ』

 

「そうか。そう言えば」

 

『なに?』

 

「聞いてなかったな。このISの名前」

 

『名前? う~ん、そうだ! 《迦楼羅》なんてどう!?』

 

「迦楼羅・・・・・・悪くないな」

 

千冬が言い終えるのと、《迦楼羅》が千冬の左手の中指にリングとなって装着されるのはほぼ同時だった。

 

「さて・・・・・どこの誰かは知らないが」

 

千冬は一度目を閉じて一人呟く。

 

「弟に手を出すことは許さんぞ」

 

千冬の目は、かつて世界最強の座に君臨したブリュンヒルデのものになっていた。


 
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