No.449568

失われた刻を取り戻すため ~兄と妹の約束~

紗雪メイン(?)のお話です。イベント投稿期間間に合うかな?
最後らへん雑です。お目汚しすみません。ネタバレになりそうな物があったら教えてください。

2012-07-09 00:11:10 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2238   閲覧ユーザー数:2204

 
 

『兄さん、約束してくれる?・・・したら・・・してくれる?』

『ああ、もちろんだ、・・・してやるよ!』

『じゃあ、指きりげんまんしよ?』

ユービキーリゲーンマーン・・・

最終戦争(ラグナロク)が終結して数ヶ月・・・、月読島はいつもの平穏を取り戻していた・・・。・・・ある場所を除いては。

「んぅ・・・。」

今ここ相楽家で、目が覚めた者がいた。その者の名は芳乃 零二(よしの れいじ)。

学生で魔法使いでもあり、最終戦争の参加者である人物である。

「ふあ・・・、よく寝た・・・。何か懐かしいものを見たな・・・。・・・今何時だ?」

時計を見ると午前9時。零二は普段は早く起きているのだが、今日はいつもより遅く起きたのだった。

「だぁっ?!寝坊した・・・って今日は日曜日か・・・」

そう言いながら飛び起きてふとカレンダーが目に留まると、今日は日曜日ということに気付いて安堵していた。

「ん?いつもなら紗雪が起こしてくれるんだがな、今日はどうしたんだ?」

 黒羽 紗雪(くろばね さゆき)。零二の義妹で一緒に相楽家にお世話になっており、零二と同じく最終戦争に参加していた魔法使いである。

 紗雪はいつもなら例え日曜日でも同じ時間に起こしてくれるのである。しかし、どうしたことか今日は起こしてはこなかった。

「紗雪の奴、今日は起こし損ねたのか?」

 前にもそういうことがあった。ただし、それは自分が疲れているか、病で伏せているか、もしくはこっちに気を遣っているとき、もしくは自分が早く起きている場合だけである。零二たちが住んでいる相楽家は、食事作りは日替わり当番制であり、当番の日は早く起きて朝食の準備をしなければならないのだ。ちなみに今日の当番は紗雪だったはずだ。

(・・・とすると急ぎの用事でも出来たか、まだ寝てるということか?まあ心配だし部屋を覘いてみるか。)

 そう思い自分の部屋を出ようとすると・・・

「くぅ・・・くぅ・・・」

自分の部屋から一定のリズムの寝息を立てている音が聞こえた。

(・・・誰だ?サクラか?)

 そう一瞬思ったが、布団の膨らみの大きさは小さかった。零二はその布団に近づき、恐る恐るそれをめくると、

「っ・・・。さ、紗雪か・・・?」

「ん・・・兄さん・・・」

 そこには、ぶかぶかのピンク色のパジャマを着ていて、髪肌共に白く、猫のぬいぐるみを抱きしめて眠っている、初めて会った時のような幼い姿の紗雪が眠っていたのだった・・・。

「んで、どうだサクラ?何か分かったか?」

零二はサクラに言った。

「んー、一応紗雪ちゃんが子供になっている理由は魔術によるものでその能力までは分かったんだけど・・・それをかけた術者までは分からないんだよ・・・」

「それでも上出来だ、サクラ。んでこの魔術は何なんだ?」

「えっへん!マスターに誉められたんだよっ!それでね、この魔法は対象の相手を身体・ 精神を幼退化させるという魔法なんだよ。」

サクラは対魔術兵器戦略思考(ミーミスブルン)を通して出た結果を見て答えた。

俺はそれを無視してまた質問した。

「何だそれ、魔法なのか?」

「うん、多分紗雪ちゃんが戦略破壊魔術兵器を使えないようにしたんだと思うんだよ」

サクラは答えた。

「・・・ああ、そういうことか」

俺は納得した。何だそういうことか。

「何か分かったの、マスター?」

サクラは聞いてきたので答えてやることにした。

「多分これは俺を目的とした犯行だ。俺は最終戦争の勝者だからな。俺の魔力が目当てなんだろう」そう魔力。

俺の魔力は普通の魔法使いとは桁違いなのだ。その上最終戦争の終わりに究極魔法を使える程の魔力を手に入れたのだ。・・・まぁ、その究極魔法を使える程の魔力は今はもう無いが。「んー、でも何で紗雪ちゃんを狙ったの?」

「それは俺を戻しても無駄と悟ったんだろう。俺の魔術兵器は常に現界しているんだ。しかも完全自立型(スタンドアローン)なんだし、近くにいる魔法使いを戦闘不可の状態にした方がまだましと判断したんだろう」

だから紗雪を狙った…筋は通っていると思う。

「じゃあじゃあ、何で私を魔法で狙わなかったんだよ?」

「そりゃ、お前が魔術兵器だからだよ。魔術兵器は歳を取っても変化するか?」そう魔術兵器は歳を取っても変化しない。変化した例を言えば鈴白のスウァフルラーメぐらいか。

「じゃあ、私は仕方なく狙おうにも狙えなかったんだね。良かったんだよ♪」

それを喜んでいるサクラ。余りにそのせいで狙われた紗雪に不謹慎なので・・・

「もしくはお前がへっぽこ兵器だからだな」

落としてやった。

「私はへっぽこ兵器じゃないんだよ!」サクラはそう喚いた。

「んで、この魔法を解く方法は?何か無いのか?」

「見事に無視されたんだよ・・・。まぁ、いいや。今は紗雪ちゃんのことだもんね。んと、解く方法は術者に解いて貰うか、もしくは・・・」

サクラが説明している途中に声が聞こえた。

「兄さん、おかわり。」

「ああ、分かった。今用意してやるよ。」

そういえば紗雪が食事途中なのを思い出した。炊飯器から茶碗にご飯をもって、もう一つに味噌汁を注いで、紗雪に渡す。

「はいよ。紗雪」

「ん・・・ありがと、兄さん。」

そのやり取りを見てサクラが、

「マスター、私もおかわり!」

そう言ったが、

「お前は自分でやれ!」

「紗雪ちゃんと待遇が違いすぎるんだよ?!」

そうやっている内に朝食の時間が過ぎていった・・・。

「本当に行くの?マスター。」

「ああ、ここにいても何も変わらないだろ?それに他の奴の事も気になるし。」他の奴とは龍一のような魔法使いのことだ。俺の味方になる魔法使いは他にもいる。その魔法使い達が狙われている可能性が高い。しかも、そいつらに電話したが、全部繋がらなかった。だから探しに行くのだ。

「でもでも、私も一緒に行かなくて大丈夫?しかも紗雪ちゃんを連れて行って。」

「だからさっき言っただろ?お前がお守りなんて無理だろうし、お前を連れて行ったら道草食うだろうし。」

「でもその術者に襲われたらどうするんだよ!?」

「俺には『復元する世界(ダ・カーポ)』があるだろ?それでお前を呼べば良い」

『復元する世界(ダ・カーポ)』。それは24時間以内に出会った人物を呼び戻す、及び物質を24時間以内の状態に戻す能力。それを使えば離れ離れになったサクラでも呼び戻せる事が出来るだろう。

「じゃあ、私の昼飯は!?どうするんだよ!?」

「それもさっき言っただろ。作り置きがあるからそれを食えって。」

「うう・・・マスターは冷たいんだよ・・・」

何言ってるんだ、こいつは。俺が学校に行っている間も有ったじゃないか。そう思っていると紗雪が服の袖を引っ張っていた。

「兄さん、早く・・・」

「あ、ああ。すまん。んじゃ行ってくるからな。サクラ。留守番しとけよー。」

そう言うと、サクラがギャーギャー喚いていた。この際無視する。そして、紗雪が玄関のドアを開けると・・・。

「やっほー、れーじ。元気にして」

  バタン。ガチャン。紗雪が扉を閉めて鍵を掛けた音だ。その行動、約0.2秒。かなり早かった。扉の向こうから「ちょっ、れーじ!れーじ!?」とドンドンと叩く音と声が聞こえてくる。悪いが里村、もうちょっと待ってろ。

「なぁ、紗雪。何で扉を閉めたんだ?」

俺は優しく紗雪に問いかけた。

「ん・・・何か扉の外に嫌悪感を覚える存在がいたから見ないようにした」

どうやら子ども状態の紗雪でも里村のことが嫌いのようだ。というか子どもの頃でも嫌悪感という言葉使えたんだな。

「んじゃ俺の後ろに隠れてろ、それなら見なくてもいいだろ?」

「ん・・・分かった、そうする」

そう了承すると俺の後ろに隠れたので、俺が再びドアを開けると・・・

「もうっ!れーじ何で早く開けないのさー!?」

里村が俺を問い詰める。

「いや、ちょっとな・・・。」

俺がそう口ごもっていると、

「んで、その子供誰?」

里村は俺の後ろにいる紗雪を見つけて尋ねてきた。里村は同じ魔法使いだし、勘が鋭いから隠しても無駄だろう。なので偽りなく話す事に決めた。

「とりあえず、場所を移そう、家の兵器がうるさいしな。」

「・・・ふーん。そういうことなんだ、道理で気に食わないと思ってた。」

里村はそう言いながらケーキを一口サイズに切って食べた。今俺たちはカフェにいる。

このカフェはペット同伴OKのカフェでこのカフェで営業している主人も猫を2匹飼っている。紗雪はどうやらその2匹と戯れているようだ。「んで、里村達も狙われている心配があったから会いに行こうとしたら里村が玄関に来ていて驚いたぞ」

「へー、私が本当に心配だから会いに来てくれたんだ、嬉しいな♪」

里村はそう言うと紗雪は里村に不機嫌な顔を向けて、

「兄さんはあなたとは言っていない。あなたは兄さんが対象とした何人かの内の一人に過ぎない、だから勘違いしないで」

と言い放った。

「・・・何この子供、生意気なんだけど。ねぇねぇこんな子、託児所に預けてデートしようよー!」

「二人共口喧嘩するな。紗雪は心も幼児の時のままだし里村の方が大人なんだから抑えろって」 「だってこの子、むかつく…」

そう里村は口ごもりせうになったら何か閃いたようでそしてこう言った。

「そうだね、そうだよね。私大人だもんね。だから紗雪ちゃんのよ~な子供との付き合いの時は我慢するよ、だけど今度れーじだけで夜の大人の熱い熱~い付き合いをしようね!別の意味でも良いよ、というかそっちの意味で捉えてくれると嬉しいなっ♪」

里村はそう言うと勝ち誇ったような顔で紗雪を見た。

「ちょっお前そんなこと言ったら・・・」

俺はそう言いながら紗雪の方を見ると、

「・・・・・・・・・・・・。」

里村をこれ以上無いという程睨んでいた。

「そ、それは置いとくとして里村は今日俺以外の知り合いにあったか?んで何も変わりはなかったか?」

俺は一触即発のような雰囲気を避けようとして里村に尋ねた。

「んー、今日れーじの前に会ったのは龍一となぎさくらいかな。二人共変わり無かったよ?二人共デレデレしているし・・・」

そう龍一と鈴白は最終戦争が終わった後、晴れて恋人同士になった。しかもそのイチャイチャっぷりが半端ないのだ。それはもう周りの目が気にしない程。この前の文化祭に行われた校内ベストカップルNo.1決定戦でぶっちぎりで一位になったのだ。その大会で いつもカップル同士やっていることを発表しそれを壇上で自分たちで再現するというもはや公開処刑に近い種目があったのだが、龍一・鈴白ペアは教室内で二人でお弁当食べさせっこして一口毎に誉め合うという偉業を成し遂げた。その間観客の中には 「ぐわあぁぁ!何だこれは!?」「くっ・・・駄目だ・・・入り込む隙が無い・・・」等終始HPが削られていた…俺と里村と雨宮会長を除いて。俺たちが平気な理由はその行為が常時生徒会室で 行われているのだ。初めはそのいちゃラブっぷりにはドン引きだったが、今ではその光景は見慣れている為最早何も感じなかった。因みに霧崎剣吾は「リア充爆発せんかな~・・・」と呟いていた。お前はスケベの塊なのに何を言うか。

「ふむ・・・いつも通りか。んでお前はどうする?俺は紗雪と一緒に術者を探しに行くつもりなんだが」

そう言って紗雪を見る。紗雪は一緒に来てほしくないような顔をしている。

「んー、私もついて行こうかな~と思ったけどやめとく。約束があるから・・・・・・その二人の」

そう言うと里村のテンションが著しく下がっていった・・・。

「・・・まぁ、ご愁傷様。じゃあ俺はこれで・・・」

俺はそう言いながら財布から自分と紗雪が頼んだ分のお代を置いて側にいた紗雪 の手を引いて後にしようとしたのだが・・・

ガシッ

そういう擬音が聞こえてきそうにテンションが下がって机に突っ伏していた里村が俺の腕を掴んでいた。

「・・・里村、離してくれないか。俺らは紗雪をこんな風にした犯人を捜さなくちゃいけないし、里村は待ち合わせがあるんだろ?だったらそっちに行かないと」

そう宥めるようにいったが

「やだやだ!このままれ~じが行っちゃったら私だけ生け贄になっちゃうもん!だったられ~じも道連れにした方がまだマシだー!」

と駄々をこねた。

くっ・・・何とか抜け出さないと・・・このままじゃ俺たちも被害を被ってしまう。特に紗雪の精神面上に。今紗雪は身体も精神も子供の状態なのだ。もし子供のままその光景を見て元の紗雪に戻ったら何かしらの影響は出ると思う、いや違いない!今自分の理性が「このシスコンが」と言ったように聞こえたが気にしてはいけない。それぐらい重大なのだ。だから早く抜け出さなければならない。何か状況を変えるを方法はと里村を見ると---。「もしもし?渚?今日の用事何だけどもう二人人数足していい?うん、れーじ達だよ。後待ち合わせ場所もミルキーウェイのカフェでいい?うん、そこ。ん、近くにいる?じゃあ今から来てー。うん、じゃまたー。」

ぴっ、と電話の切れた音がした。くそ、増援を呼ばれた。

「むふふ~。もう後2、3分経てば渚達が来るから観念した方がいいと思うな~。だ・か・ら~、一緒に同じ苦しみを味わお?」

里村は少し首を傾けて満面の笑みをしながらそう言ってきた。くっ…!もう駄目なのか…!

そう思っていると紗雪が縮こまって何かをしていた。その近くにいたのは…猫?

「…行ってきて…!」

そう紗雪が里村を指差して言うと2匹の猫は俊敏に動き出した。

「ひゃっ!」

里村が可愛い声を出して驚いていた。無理もない。里村の視線に急に1匹の猫の顔が近距離で飛び出してきたのだ。反射的に身を引くとそこにはもう1匹の猫が…

「へっ、あ、ちょ、何!?」

後ろから里村の首に抱きついていた。何か猫が遊んでとじゃれついているようだった。

「兄さん、今…!」

紗雪の発言で気づいた。今は猫のおかげで里村が俺の腕を掴んでいた手が放れてる…!チャンスだ!そう判断するとすぐに紗雪と店を後にする。そして後ろから

「ちょっ、待てー!れーじー!!この裏切り者~!!」

その声がドップラー音のように虚しく響いていた…。

何とか逃げ延びた自分と紗雪はその後、他の場所でも犯人を捜したが、何の手掛かりも見つからなく時は既に夕方。流石に家に置いてきたサクラが空腹になって飢えている気がしたので捜索を打ち切って月読商店街で食材を買って、下ごしらえをする…筈だった。

「いやいや、お前が本当にするのか?大丈夫か?」

主に頭が。

「心配ないんだよ、マスター。これでもマスターの役に立とうと失敗してから練習したんだよ?」とサクラはそう言っているが、

「お前が台所に立っていた覚えが無いんだが。」

そう、サクラが台所で何かしていたという記憶があまり無い。あったとするなら皿運びをする為に台所の食器棚に行った くらいか。

「むむ、心外かも。マスターは学校行っている間に私が何もしていなかったと思っているの?」

そうは言うが…

「しかし、家にあった食材が何も減ってなかったぞ?」

減っていたのはカップヌードルぐらいか 。あと、卵。

「ふふん、前のような失敗はしないんだよ!私にはもうこの本があるんだから!」

そう言ってサクラは手にあった本を上に掲げた。

その本の種類は…レシピ本?

「なあ、サクラ。それを指示通りに調理出来るのか?」

「勿論なんだよっ!」

そうサクラは胸を張って答えた。こんなにサクラが自信満々なのは久しぶりな気がする。

「そ、そうか、大丈夫か。なら問題ないか…。じゃあ今日の料理はお前に任せるわ。材料はそこにあるから。俺は紗雪の所に行ってくるから。何かあったら言ってくれ」

「分かったんだよ♪」

そう、今紗雪は居間にはいない。紗雪は里村が現れてから今でも不機嫌だった。里村が去った後でも不機嫌だったのは、里村のあの夜中のデートの約束発言や自分を取り押さえるときに密かに(紗雪には気付かれてたが)里村が俺の手を無理矢理自分の胸に押し付けてたことに問題があったのは明白だった。

(さて…どう宥めようか…)

不機嫌になったのはサクラだったら楽に機嫌を取れるのだが、紗雪にはそうはいかない。紗雪は自分がいることを気にせずに里村と俺がいちゃついているように見えたのだろう。それが気に食わなかったと思われる。紗雪は今、気分が校内カップルNo.1決定戦の観客状態なのだろう。

(この状況を作った俺が何とかしないとな…)

そう思って紗雪の部屋へと向かおうとしたその時、

「塩を適量…塩はこれだった筈なんだよ!」

振り返るとそこには砂糖が入っている入れ物を開けているサクラの姿。「サクラ、それはちが」

俺はその間違いを指摘しようと言い終える前に

「適量四人分だから…よい、しょっ!」ドバッ。

無情にも砂糖は鍋の中へと入っていった…。

「このぉ~…、へっぽこ兵器がぁぁ!」

その後まだ鍋の中に何も入れてなかった事で難を逃れたが、結局夕飯を自分で作る事になってしまい、当然紗雪の部屋に行くのも遅れてしまった。

コンコン、と俺は紗雪の部屋の扉をノックした。

「紗雪~。ご飯だぞー」

「………」

返事が無い。どうやらかなり不機嫌のようだ。

「紗雪~…入るぞ…」

俺はそう言い扉を開けると部屋の電灯は付いていなかったが、月夜の灯りで部屋の中が大きな物を見分ける程度に照らされていた。そして俺は紗雪の姿を探すと…いた。姿は見えないが、ベッドの上で布団をくるんでいる。

「紗雪、大丈夫か?」

「ッ…兄さん来ないでっ!」

俺が心配して紗雪に近づくと紗雪から制止の声が返ってきた。

「紗雪…すまない…」

俺は謝った。

「ッ…どうして…?どうして謝るの?」

紗雪は今にも消え失せそうな声で尋ねてきた。

「いや、だって紗雪泣いているだろ・・・?」

先程から紗雪の方から嗚咽の混じった声なのだ。

「それが・・・どうして兄さんが悪くなるの?」

「俺が紗雪の・・・妹の気持ちを知らないで傷つけたからだ。兄失格だな・・・。」

俺がそう言って布団にくるまれたままの紗雪を後ろから抱きしめる。

「!・・・ふぇ・・・ふぇ・・・兄さん・・・!兄さん・・・!ふわあああああああああぁぁぁ!!!」

紗雪は俺の腕で泣き崩れたのだ。

「・・・んで、俺を誰にも渡したくなかったと」

「うん・・・兄さん、ごめんね?そんなことで不貞腐れちゃって・・・」

今紗雪の部屋で俺は胡坐をかいて、更に紗雪は俺の上に座っている。どうやら紗雪は俺と楽しげに会話しているサクラや里村に嫉妬していたらしい。それは誰にでもある独占欲。子供がそれを抑えるのは難しい。

「良いんだ、紗雪。お前は兄に甘える権利があるんだ。昔から」

「兄さん、でもそれは子供の時までで・・・」

「そんなもんいつ誰が決めた?・・・それにお前は今子供だろ?昔甘えられなかった分兄に甘えとけ」

そう、俺が子供の時紗雪の祖父母の家に引き取られ、紗雪の兄になったが、紗雪はそれを受けいられず兄である俺に甘えられなかった。

「ん・・・ありがと、落ち着いてきた。」

「そうか・・・なら下でサクラが夕飯食べたくて待ってるから行こうか」

「ん・・・分かった。でも1つだけ我儘言っていいかな?」

「ん、いいぞ。言ってみろ」

「兄さん・・・チューして」

「・・・へ?」

「だから・・・チューして」

「えっと・・・どこに?」

「唇に」

いやいやいやいや、それは拙い!いくら可愛い紗雪の為だとはいえ、妹だ!子供だ!と自分の善が拒否反応を示してしまう!

「いや、それはちょっと・・・」

「兄さん・・・ダメ?」

うっ・・・そんな潤んだ瞳で上目使いになりながらそう言うのは反則だ!

「わ、分かったよ。準備はいいか?」

「うん・・・ん・・・」

紗雪が目を瞑り唇を迫らせた。

そして俺たちはキスをした・・・。

『兄さんは私を傷つけない?本当に?』

『ああ、なんなら責任取ってお前の願い事何でも叶えてやるよ!』

『兄さん、約束してくれる?私のこと傷つけたら結婚してくれる?』

『ああ、もちろんだ、結婚してやるよ!』

『じゃあ、指きりげんまんしよ?』

ユービキーリゲーンマーン・・・

思い出した・・・昔キスをしたら結婚するという約束を紗雪としていた・・・!

そう思い出している内に紗雪が突然光りだし、その光が無くなると、元の紗雪の姿に戻っていた。

「兄さん。約束ですからね?責任・・・取ってもらいますよ?」

紗雪が元の姿に戻るとにこやかにそう言った。

「あ、ああ。」

しかし、俺はあまりの突然な出来事に唖然としていたのか、そう答えられなかった・・・。

「ふふっ、じゃあ行きましょう、兄さん!」

おまけ

苺「っくしゅん!・・・一体どこに行ったのじゃ?魔術兵器『若気の至り』(アンチエイジング)

暴走して対象が定まらんかったが・・・まぁ大丈夫じゃろ。あの魔法を解く方法は子供の頃に願った些細な事でも叶えれば戻るのじゃし・・・」

 

 
 

 
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