No.447620

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 外伝~イリーナの決意~前篇

soranoさん

外伝~イリーナの決意~前篇

2012-07-06 23:18:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1743   閲覧ユーザー数:1625

~クロスベル市内~

ペテレーネがティオに魔術を教えている間、リウイは今もメンフィル大使館で預かっている少女達――イリーナとエリィの縁者、祖父のヘンリー・マグダエル市長宅に向かって着いてドアをノックした。

 

コンコン

ノックを聞き、市長に仕えているであろう執事がドアを開け姿を現した。

「……どちら様でしょうか?」

「メンフィル大使、リウイ・マーシルンだ。イリーナ・マグダエルとエリィ・マグダエルの件について話すことがあったのでこうして参上した。約束もなしで急で悪いが市長殿と会えるか?」

リウイが名乗り上げると執事は目を見開き驚いた。

「なんと……!メンフィルの皇帝陛下でございましたか……!これは失礼して申し訳ありません!今すぐ主人に話して来ますので申し訳ありませんが少しの間だけお待ち下さい!」

「ああ。」

執事はリウイの返事を聞くと急いで書斎で仕事をしているマグダエル市長に報告した。

 

「旦那様、リウイ皇帝陛下がイリーナお嬢様とエリィお嬢様の件で話すことがあるので、今入口の所でお待ちになっております!」

「何!?どうしてリウイ皇帝陛下がイリーナ達のことを……?とにかく会おう。すぐに客室にお通ししてくれ。私も今すぐ向かう!」

「かしこまりました!」

市長はリウイの突然の訪問と、最近行方がわからなかった娘夫婦の子供達の件をなぜリウイが報告をしに来たのかと驚いたが気を取り直し執事にリウイを客室に通すよう指示して、市長自身も客室へ向かった。そして市長とリウイは対面した。

「……メンフィル大使、リウイ・マーシルンだ。連絡もなしに突然の訪問に答えてくれて感謝する。」

「そんな!これぐらいのことで陛下に感謝されるとは恐れ多いです……!………それで、孫達のことでリベールからはるばる来たとおっしゃいましたがあの子達の行方がわかったのでしょうか?……実は最近娘夫婦と連絡が取れなくて探していたのですが……」

リウイの感謝に市長は恐縮した後、本題に入った。

「ああ。イリーナ・マグダエルとエリィ・マグダエルは今メンフィル大使館で預かっている。」

「なんと……!一体なぜそんなことに……?」

市長はリウイの言葉を聞いて驚いた後、メンフィルが孫達をなぜ預かった経緯を聞いた。そしてリウイは話した。2人の両親が最近世間を騒がしていた子供達を誘拐していた犯行グループに殺されたこと。イリーナとエリィは幸運にもたまたまその場にいたリウイの娘であるプリネに保護され、プリネに2人を事件が解決するまで大使館で預かるように嘆願されたのでそれに答えたこと。そして事件が解決したのでこうして2人の無事を知らせに来たことを話した。

 

「そんな……!もう娘達がエイドスの所に召されていたなんて………!………どうりでいくら手紙や通信をしても連絡がない訳です………」

市長は娘夫婦の訃報を聞き、ショックを受け両手から力が抜けた後、顔を下に向けた。

「心中お察しする………預かった2人の安全を考え、事件が解決するまで連絡しなかったことには謝罪する。」

「………いえ、孫達のことを考えての行動としてはあの時はそちらの方が安全です。………孫達を救い今まで守ってくださってありがとうございました………」

市長は孫達だけでも生きていることに希望を持ちリウイにお礼を言った。

「俺達は王族としての義務を果たしたまでだ……それで、2人をどうする?」

「当然私が育てます!迎えに行かせていただいてもよろしいでしょうか?」

「……かまわん。ただ後2、3日ほどクロスベルで用事があるので待ってほしい。クロスベルを発つ時、必ず連絡はする。」

リウイは今は亡き愛妻が転生した可能性のある少女が自分の許を離れる事に一瞬だけ迷ったが、気を取り直し答えた。

「わかりました。連絡をお待ちしております。」

「ああ。………それでは失礼する。」

そしてリウイは市長邸を後にした。

 

ホテルへの帰り道、リウイは赤ん坊を抱いて幸せそうにしている夫婦に気付いた。

「うん?あれは………」

リウイはその家族を見て少しだけ驚いた。なぜなら、その夫婦は報告にあったレンの両親でもあったのだ。

「ふふ、本当に可愛いね。お前にそっくりだよ。」

「ほ~らよしよし」

女性は抱いている赤ん坊をあやしていた。

「ふふ、前の子はあんなことになってしまったけれど……でもよかった。女神様は私達をお見捨てにならなかったんだわ。」

「おいおいその話はしない約束だろう?昔のことはもう忘れよう。」

「ええ……哀しいけれどその方があの子のためよね……おお、よしよしいい子でちゅね~」

「あぶぅ、あぶぅ。」

赤ん坊は女性に甘え、また女性も笑顔であやしていた。

(………下衆共が………!………あの親子をどうするかはレン次第だ。俺達がどうこう言う事ではない。俺達ができるのはあの子を見守り立派な大人に育てるだけだ………

ヘイワーズ夫妻よ、今はいいがその子供が成長するに従ってお前達はきっと捨てた娘のことを思い出し後悔する。その罪をどう償い、捨てた娘とどう向き合うかはお前達次第だ……今は偽りの幸福をかみしめるがいい……!)

 

リウイはレンを忘れようとしている実の両親を心の中で怒った後、踵を返しホテルへ向かった……

 


 
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