No.446593

ILKI 生章 一話

龍宮ノウさん

にじファンより移転。
ポケモンの二次創作であり、シリーズモノでもある。

2012-07-05 19:19:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:530   閲覧ユーザー数:527

 
 

ポケモンは逃げていた。

自分の同属の仲間達には既に逃げるように指示を出してある。

ポケモンは四足歩行だった。

走るのは得意だ。

しかし、群れのリーダーである以上、狙われやすいのは当たり前だ。

ポケモンは追手を次々と蹴散らすごとに傷を負い、深い物を既に二、三負っていた。

ポケモンは群れのリーダーである以上、死ぬわけにはいかなかった。

 

狂獣、か。

 

かつて人間に付けられたあだ名。

幾多の人を殺め、仲間のために尽くした。

悪いのは人間だ。

その考えはいつも曲がらなかった。

「見つけたぞ!追え!」

人間の声がする。

厄介な事に、追手は銃を持っている。

こっちの能力に対抗するためだろうが、銃弾はポケモン達の能力よりもたちが悪い。

 

クソ!こっちはもう殆ど力が残ってないんだぞ!

 

流れ出るポケモンの血で逃げたルートは知られてしまうだろう。

それでも、逃げないよりはましだ。

不意に足がもつれた。

立ち上がろうとしても上がらない。

 

なんだ、撃たれたのか・・・。

 

「ようやく捕まったか。

 まったく、手間かけさせやがって」

 

警備員の服を着た男は銃をこちらに向けた。

この場で処刑するつもりらしい。

ポケモンは最後の抵抗として思いっきり、憎しみをこめて睨みつけてやった。

効きもしない呪いもついでにかけてやろう。

「なんだ、その目は?」

ポケモンは静かに答えた。

「気に入らないならここで殺せ。

 はあ、これで少しはこっち側の怒りも思い知ってくれたかな?

 二千人、さっきの奴で達成した。

 まったく、お前達も懲りないねえ。

 俺達はお前等みたいなカスを始末してやったまでさ。どうせ同属にも良く思われてないんだろ?

 俺達だって、人間の勝手な都合で滅びるのはごめんだからよ。

 特にお前達みたいな奴らのためにな」

人間の男は何も言わなかった。

ただ、見下すだけだった。

 

ポケモンは最後に心の中で呟いた。

 

俺が死んでも、俺の仲間は全員生きてる事を忘れるな。

あいつらならきっと、殺ってくれる。俺以上に。

 

呟き終わるのと同時に意識は跡絶えた。

人間はポケモンを撃ち殺した。

狂獣と呼ばれた、そのポケモンを。

 

 

 

 

ポケモンは目を開けた。

まず目に入ったのは、白いリノリウムの床。

 

生きてる・・・?

 

ポケモンは立ち上がろうとして気付いた。

自分の手が違った形状をしていることを。

 

俺の手じゃない・・・!

 

手の色は、黒だった。

しかも、人間の手のような形をしていた。

足や胴体にも目を走らせる。

全てが赤と黒で彩られていた。

 

ふと、立ち上がってみる。四足歩行だと、違和感があった。

試しに、違う立ち方をしてみた。

 

二足歩行になると、違和感は無くなった。

 

そして、後ろの方に目を走らせる。

あったのは、赤い髪だった。

足まで伸び、綺麗な丸い髪飾りのようなもので留められていた。

 

間違いない。

ポケモンは悟る。

 

俺はゾロアークになって、蘇った。

 

慣れない体で首を動かすと、周りには学生服を着た人間達がいた。

全員、物珍しげにゾロアークを見ていた。

その人間のうち、最も近いところにいた人間が訊いてきた。男だ。

 

「お前、もしかしてポケモン?」

 

当たり前のことを訊いてきた。

ゾロアークがそうだ、と答えると訊いてきた少年はさらに言った。

「転生、してきたらしいな。

 信じられんけど。そう思うしかないか」

少年は苦笑した。

 
 

 
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