No.446298

チートでチートな三国志・そして恋姫†無双

序章 異世界への旅の始まり

元々、「にじファン」様に載せていたものを改稿したものになります。

先に前書きを読んで頂けると、原作との相違点などがわかりやすいかと思います。

2012-07-05 08:09:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10072   閲覧ユーザー数:7832

 

第1話 邂逅

 

 

 

 

 

冷房が適度に効いている教室で、担任の工藤先生が夏休み前最後の連絡事項を話している。

 

「今日で一学期は終了です。期末テストの皆さんの成績も上々でした。聖フランチェスカの学生として、節度ある夏休みを楽しむように。また、我がクラスの北郷君が剣道の個人戦で全国大会への出場を決めています。健闘を祈りましょう。では、9月3日の月曜日に会いましょう。」

 

 

日直の礼とともに一学期は終わった。明日からは夏休みだけど、大量の課題、それにインターハイがある。剣道部は男子の部員が少ないから団体での大会出場は叶わなかったけれど、俺は個人戦で県2位という成績を残し、インターハイに出場することができた。これからは全国の猛者と戦うのだから、万全の練習をして臨まなくては。

 

俺と不動先輩は、早坂さんから『もし、私に本気で戦って欲しいというのなら、一本も取られずに全国優勝できるくらいじゃなきゃダメだよ。』と言われた。不動先輩はいまのところその通りにやれているけれど、俺は県大会の決勝で負けてしまった。だから、これからも必死で練習して、少しでも上にいけるように頑張らなくてはいけない。もう、残りは2週間ほどしかないのだから。

 

 

「北郷さん、インターハイ頑張ってくださいね!」

 

 

周りの女子から応援の言葉をかけられた。それに

 

「ありがとう、頑張ってくるよ。」

 

と応じる。同じ応援でも、やっぱり女の子からだとなにか違うなあ……。わけもなく嬉しくなってしまう。

 

 

「おーお-。相変わらず大人気やなあ。一緒にメシ行かんか?」

 

「ああ、いいぜ。でも、その後剣道部いって練習あるから、それまでな。」

 

これからどうしようか……と考えていると、友人の及川から声をかけられた。やっぱり、まずは腹ごしらえをしたほうがいいか。

 

「北郷~。」

 

昼食は黎明館でとろうか思っていたら、間の抜けた呼び声が聞こえた。こんな呼び方をするのは早坂さんしかいない。そう思って呼ばれたほうを見ると、藤田さんまで一緒に居た。この二人は相変わらず仲が良いなあ……。付き合えば付き合うほど本当に俺と同じ”ニンゲン”なのかを疑いたくなってくるような二人なんだけど……。

 

 

「何の用すか?」

 

 

「ん? ああ、部活も頑張って欲しいけど、課題をやるのも学生の義務だろう? 一番面倒そうなのだけ先に片付けておけば、あとはテキストとかプリントを解いて終わりだし、君の助けになるんじゃないかな……と思って誘ったんだよ。」

 

「そうそう、ウチの学校にある中で無駄だと思われるハコモノNo.1、東洋史史学資料館。通称”B級コレクションの館”にある資料を一つ選択し、レポートと考察を書けってやつ。2年の伝統課題だってさ。アホくさ。」

 

 

と早坂さんと藤田さんが言った。それで、そういえばそんな課題もあったなあ……と思い出した。英語・数Ⅱ・数B・現代文・古典・生物・日本史・世界史・政経という主要教科の全ての先生から大量のプリントやらテキストが課題として出されていたから、それ以外の課題のことなんてどこかへいってしまっていた。言われてみれば、そのレポート提出もあったんだよなあ……。

 

 

 

「せやかて、コイツは今からワイと食事なんやで。早くメシ食わんと練習が短くなってまうやん。」

 

「購買で買って歩きながら緑のカーテンの中で食べるのもなかなかオツなものだよ。課題といっても、資料を見て携帯で写真を撮れば終わりだろう? 今は12時半だけど、確か練習は1時半か2時くらいからじゃなかった?」

 

「そうですね。練習は遅くとも2時には参加したいっっすね。最低4時間はやりたいですし。」

 

「じゃ、問題ないね。行く? 行かない?」

 

「折角の誘いですし、ありがたくのらせて貰います。」

 

 

これまで、この学院で行われた全てのテストで全教科満点をとり、昼休みには―――俺もたまに教えてもらえるけど―――哲学や経済、政治などという難しい話をいろいろと議論している2人だ。『課題は授業中に終わらせる』と言い、藤田さんに至っては『寮では三国志か読書』だ。実際、俺が藤田さんの部屋に行くときも殆ど三国志のゲームばかりやっている……。早坂さんは”鬼才”、藤田さんは”天才”の二つ名があるけど、その思考回路は常人の俺には理解不能だ。ともかく、課題をどうこなすかとかそういうことの参考になるならありがたい限りだ。一緒に勉強関係のことをするのは、あの”議論”を除けば珍しい機会だし。

 

 

今日は何を食べようかな……と思ったけど、いつも通りサンドイッチとカフェオレにした。このサンドイッチ、見た目は普通だけど、俺の知るどこの店よりも美味しい。

 

 

「しかし、ここのは何から何までウマイわ~。街の喫茶店よりうまいんとちゃうか?」

 

「そうだな。食べ物が美味しいのは一番ありがたいぜ。」

 

 

「お前らも買ったか~? じゃ行こうか~。」

 

ぐだーっとしたやる気ない話し方と合理的な話し方が合わさっている早坂さん。実は二重人格なんじゃないか? と思うことがたまにある。

 

 

「お、不動先輩。先輩も購買っすか?」

 

「うむ……。藤田殿。おや、早坂殿に北郷殿、及川殿も一緒であったか。北郷殿は今日も部活に来るか?」

 

 

周りの女生徒が「如耶姉様!!」と黄色い声をあげるなか、本人はいたって平然としている。先輩の度胸はすごいよなあ……。

 

「もちろんです。これから資料館にいって課題の下準備をしてからですけど、いつも通り行く予定です。だいたい、1時半から2時くらいの間に行けると思います。あそこからだと剣道場はわりと近いですし。」

 

 

「あの課題は大変なのでな、頑張るのじゃぞ。それがしも食事をして少し休息したら部活へ行く予定でござる。また会おう。」

 

 

「相変わらず美人や~。最高や~。不動先輩。玉の輿玉の輿。」

 

 

及川が一時トリップしてしまったけれど、予定通り資料館へ向かっている。それにしても……。及川は気楽で良いよなあ……。

 

 

途中の道は鬱蒼とした木々が真夏の日光を遮ってくれているから、日射しはそれほどでもない。それでも暑いことは暑いけど……。たわいない話をしながらサンドイッチをパクつき、たまにカフェオレを飲みながら歩いていると、ちょうど食べ終わったころに資料館へ着いた。

 

 

「ここかあ。春に興味本位でちょっと覗きにきたけど、中途半端なのしかなかったよなあ。覚えてるか? 藤田。」

 

「偽物の確率100%のものしかない……と思った記憶があるな。確か、理事長で慶大の名誉教授をやってる人の収集品を展示するためにここを作ったんだろ? にしても胡散臭いわ。その人はガラクタ収集で有名らしいし。」

 

「あー。そういやそんな話だったね~。何でウチに短大部まであんのに理事長は慶大なのやら。せめて名大にすりゃいいのに。」

 

 

そういう問題なんだろうか……と思いながら展示されている資料を見ている。それより向こうにいる男が気になった。何を言っているのかはわからないけど、ブツブツ呟いてるみたいだ。頭は大丈夫なんだろうか? ウチの学校では髪を染めるのは禁止だけど、あの男は茶髪だ。やっぱりおかしいよな? 見た覚えもないし……。でも、どうもタダ者じゃないような感じがするなあ……。

 

「何コレ? 確かにかなり古いものであることは間違いないけど、なんでメンマを漬けた壺だってわかるわけ? それに、ふつうはもっとマシなの漬けるでしょ。しかも後漢末期とか三国志の時代じゃん。そもそもメンマなんてあったの?」

 

 

「さあ……? これは箸かな? ん? 誰だアイツ。あんな奴ウチの学校にいたっけ?」

 

「あ、藤田さんも気になりました? タダ者じゃないような感じがするし、さっきからブツブツと呟いているみたいで気になっていたんですけど。」

 

「そんなんどうでもええやん。さっさと資料みてこんなアホらしい課題おわすんがええんやないの?」

 

「早坂はどう思う? けっこうなやり手みたいだけど。」

 

「ん……? ”なぜこんなところにコレがある。だが、ようやく見つけた。外史への突端。道標( みちしるべ)。” ……。変な奴だねぇ。まあ、確かになかなかのモノをもっているような感じはするけど。私や藤田と同じくらいかねぇ?」

 

「な、なんでわかるんや? てか、ありえへんでお前ら! なんで見ただけで強いかどうかわかるんや?」

 

……。自分の実力を磨けば、わざわざ試合なんてしなくても相手を見さえすれば、ある程度の力はわかるものだ。けど……。”読唇術”までできるっていうのはもう……だよなあ。”凄い”とか、そういうレベルじゃないような気がするけど、この人ならできてもおかしくないんだろう。そう思わないとやってられない。

 

? ”ガイシ”って何だろう?

 

 

「んなのふつうじゃねえか? しかし早坂、読唇術とは流石だな。」

 

「俺は鍛えてるから。この二人もそうでしょ。にしても早坂さん、今の本当っすか?」

 

何か気になるなあ……。

 

「多分ね。でも、どーでもいいんじゃない? それより、私はこの紙をレポートのネタにしようかな。蔡倫(さいりん)が作って、いつからか竹にとってかわったらしいんだよね。その辺を書けばいいんだろうから。」

 

「じゃあ、俺はこの偃月刀(えんげつとう)にしようかな。”漢代の偃月刀”に。後漢末期の技術で偃月刀なんてなかったらしいんだよね。武器の変遷みたいなの。」

 

 

さすが……としかいいようがない二人だ。膨大な知識であっさり内容を決めてしまった。

 

「俺は鏡にしようかな……。卑弥呼にプレゼントしたとかいう、神秘性のカタマリ。」

 

 

「なんでそんなにあっさり決まるねん!! もーええわ。ワイはこの壺や。メンマや、保存食や。」

 

一応4人とも決まった。あとは部活に行くだけだ。まだ1時だ。ここから剣道場までは10分くらいで行ける。練習には充分間に合う時間だな。

 

 

「ど~れ。ちょーっとイタズラしてこようかな~。」

 

 

「? 何すんの?。」

 

 

そんなことを言って、いきなり早坂さんが例の男子生徒のほうに歩いて行った。

 

 

「ごめんごめん、私にもそれ見せてくれない?」

 

「何だキサマは?」

 

 

「うわー。あの早坂をキサマ呼ばわり。度胸あるね~。」

 

と藤田さんが言った。確かに、あの人を”キサマ”呼ばわりなんて俺には一生ムリだ。どうなるかヒヤヒヤしながら顛末を見ていると、早坂さんが

 

 

「いや~。キミも課題でレポート書くやつがあるからここに来たんでしょ? 私もそれ見ようかなあ……と。とりあえず、一通り見ておきたいし。」と言った。男は

 

「あ、ああ。スマン。」

 

 

と返した。特に何も起こらず、謎の男は足早に去っていった。それにしても、早坂さんの威圧感がパネェ……。口調はむしろ軽いからよけいにそう感じられる。俺は端で見てるだけだったというのに背筋が寒くなった。

 

 

「これも鏡だねえ。三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)とも八咫鏡(やたのかがみ)とも伝わる……いやいや、こんなとこに国宝なんてあるわけないでしょ。三種の神器を何だと思ってるの?」

 

 

俺もその鏡のところへ行った。確かに、それは何の変哲もないただの鏡だった。

 

「……。とりあえず、写真とってあとは部活行きますわ。」

 

この資料館は撮影可能なところがありがたい。携帯で説明と展示物の写真を撮って、さあ部活だ。

 

 

みっちり6時間強汗を流し、今は7時近くになった。

 

「北郷殿、この後はどうするのじゃ? 夏期休暇中でも申請をすれば寮での生活も可能となっておる。部活は8:30から19:30迄の間ならば可能じゃ。」

 

と不動先輩が聞いてきた。今日は自由練習だったけど、全員が参加していた。とはいえ、明日から夏休みが始まるので、他の部員達には家に帰る準備をする必要があった。そのため、5時くらいで部活を終えていた。それで俺と先輩の二人しかいなくなってしまったけれど、そのおかげでたっぷり稽古をつけてもらえた。役得役得。

 

 

「インハイまでは寮の申請出してるんで、それまでは学校残ります。先輩はどうするんですか?」

 

「明後日からは家から通う予定じゃ。親父殿が帰れ帰れとうるさいのでな……。お陰で明日は帰る準備をせねばならん。終わってからは部活をする予定じゃ。」

 

「今日は本当にありがとうございました。あと着替えて寮戻ります。」

 

「うむ。鞄もあってたいへんじゃな。ではまた明日会おうぞ。」

 

 

そんなやりとりの後、剣道場を後にした。鞄に胴着、と荷物は結構重い。寮はさっきの資料館のほうに向かえば15分ほどだからまあいいけど。

 

 

「そういや、今日は変なヤツがいたなあ……。ウチの学校では染髪が禁止になっているのに茶髪だったし。アイツ誰だったんだろう?」

 

思わずそんな独り言を呟いて資料館のあたりまで行くと、昼間の男が居た。走っていた。手に鏡を持って。

 

 

「ちっ。今日はツイてるのかツイていないのかさっぱりわからん日だ。ようやく鏡を見つけたと思ったら怪物みたいなのがいるし、盗んだら今度は見つかるし……。」

 

 

何なんだこのマヌケは……。この学園のセキュリティはかなり厳しい。にも関わらず警報も何も鳴っていない。つまり、鏡を隠して普通に歩いていれば誰にもバレない。それなのにわざわざ手に持って走っている。それに、ご丁寧に自分で『盗んだ』とまで暴露してるし……。? ”怪物”って早坂さんのことかな? とりあえず、捕まえて警察呼ぶか。

 

 

「おい、盗んだその鏡を返せ!」

 

「うるさい!! オレの邪魔をするなら潰すまでだ。」

 

そいつはいきなり蹴りをくり出してきた。だが、”鏡”という”守るモノ”がある相手のほうが不利だ。冷静にいけば大丈夫だろう。おまけに、かなり動揺しているみたいだし。とりあえず胴着をぶん投げた。大事なものだからあんまりやりたくないけど、仕方ない。胴着はそいつに当たって鏡が落ちた。鏡は割れた。同時に鏡から光があふれ出して俺たちを包み込んだ。

 

 

「な、何だ?! 何が起きてるんだ?」

 

「クソッ。まあいい、貴様は外史の突端を開いた。もう引き返せない。せいぜい足掻け。そして覚えておけ、所詮、外史は人形の世界だということをな。」

 

「な、何言ってるかさっぱりわかんねえよ。てか、まずテメエは何者だ?」

 

「オレは于吉(うきつ)。じゃあな、クソ餓鬼。」

 

 

捨て台詞を吐いて茶髪の男は消えた。意外とあっさり答えてくれたな……。というバカみたいなことを考えていると、ふとあいつの名前が気になった。于吉? 于吉って確か、『三国志』に出てくる人物だったよな? 

 

 

これから俺はいったいどうなるんだ?

 

 

体と鞄が光に包まれ、俺は意識を失った。

 

 
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