No.446289

ポケモンになってしまった俺物語 9

ネメシスさん

9話です。
「1週間に一度投稿というのは実は嘘だったんだ!!!」
『な、なん……知ってた』

……うん、なかなか1週間に一度投稿も難しい時期なのですということでひらにひらにぃorz

2012-07-05 07:42:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5797   閲覧ユーザー数:5696

 

 

オーキド研究所に泊めてもらった翌朝。

……とはいっても俺たちが目を覚ましたのは太陽が真上近くまで登ってきて、もうそろそろ昼食時かという頃だったのだが。

昨日はいろいろあって疲れていたとはいえ、ここは自分の家ではなく他人の家。

目を覚ましてまだぼやけ目だったところ、ふと時計を見た時すでに昼食時だったことに若干残っていた眠気は一気に吹っ飛んでしまった。

慌てて起きた俺と少し寝癖ができていた髪を簡単に整えたイエローは、そのままオーキド博士のところに向かった。

ちなみに今イエローの着ている服は、オーキド博士たち研究者が着ているような白衣を子供サイズに小さくしたもので、前のボタンがすべて閉じられている状態のもの。

昨日までイエローが着ていた服は汗や砂埃などの汚れでひどい状態になっていたため、オーキド博士の助手の一人だろう女性の研究員が洗濯をしてくれたのだ。

大人用の服はここが研究所であり、助手たちもよく泊まり込むこともあるのでいくらかの予備は置いてあるが、流石にイエローのような子供のしかも女の子用の着替えなど置いてあるはずもない。

しかし、研究用の白衣は別だ。

何度も言うがここは研究所、それもポケモン研究の権威であるオーキド博士の研究所だ。

そのため様々な所からトレーナーズスクールの初等部、中等部、高等部問わず生徒たちが授業の一環として年に何度か見学、または研修に来ることもある。

その時に、生徒たちに研究者や研究所の雰囲気を少しでも多く味わってもらうため、サイズの大きいものから小さいものまでの白衣をたくさん準備しているのだ。

その一着をイエローは借りて着ているというわけだ。

ちなみに白衣を借りているイエローが、家から自分の着替えを持って来なかったのかというとそういうわけでもなく、少なくはあるが着替えはリュックの中に入れて持ってきていた。

しかし、マサラタウンに来る途中でオニスズメの群れに襲われたことで、運悪くリュックに傷ついてしまった。

そのできてしまった傷からどんどん破れていき、ついには大きな切れ目ができてしまい、そこからほとんどの荷物がこぼれ落ちてしまったのだ。

唯一の救いと言えるのは、財布やポケモントレーナー認定のはがきなどの貴重品が切れ目ができたところとは別の所に入れていたため、こぼれ落とすことがなかったことだろう。

流石に、追われながらこぼれ落ちたものを拾っている暇などなかったから、これだけは本当に助かった。

……こぼれ落ちた中に替えの下着等も少なからずあったため、できたら戻るときに回収していきたいところではあるが。

 

 

「お、オーキド博士、おはようございます!」

 

 

『おはようございます!』

 

 

「おぉ、おはよう。よく眠れたようじゃな」

 

 

椅子に座ってコーヒーを啜っていたオーキド博士が、笑顔で俺たちに挨拶をしてくれた。

 

 

「は、はい。すみません、こんな時間まで寝てしまって」

 

 

「なぁに、『寝る子は育つ』というように子供は寝て育つものじゃ。それに昨日の疲れもあったんじゃろう、気にすることはない」

 

 

そういい、オーキド博士は朗らかに笑う。

 

 

「あ、イエローちゃんおはよう! 昨日の服、もう乾いてるわよ。着替えてきて、それからそろそろお昼時だしお昼にしましょ?」

 

 

オーキド博士と話している時、ちょうど部屋に入ってきた助手の人がイエローに声をかける。

 

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 

助手の人に案内されてイエローが着替えてくるのを待ち、オーキド博士やその助手たちと一緒に昼食をとる。

俺はポケモンフーズをもらったが、流石はオーキド博士の研究所といった所かポケモンフーズがうまい。

いい材料を使ってるようだ……そこまで舌が肥えているわけではないから勘でしかないけど。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

しばらくして昼食も終わり、お茶を飲んで少し休憩をとった後オーキド博士が話題を切り出した。

 

 

「さてイエロー君、一日遅れてしまったが今日から君も、はれてポケモントレーナーとしてスタートするわけじゃ。じゃからして、まずはポケモン図鑑とモンスターボールを上げよう」

 

 

そういい、白衣のポケットの中から真っ赤な四角形の板状のもの、恐らくポケモン図鑑だろうものと、小さい状態のモンスターボール6つを取り出しイエローに手渡した。

 

 

「まずはその図鑑じゃが、それは捕獲したポケモンの数、遭遇したポケモンの数が自動で登録される優れものじゃ。

遭遇すればそのポケモンに関する基本的な情報を見ることができ、捕獲したならばボールを通じて図鑑がスキャンし、そのポケモンのさらに細かい情報を知ることもできるじゃろう。

それ以外にも各地域のマップも載っておるし、さらにトレーナーとしての本人証明書の役割も果たしておるから決して無くしてはならんぞ?」

 

 

「はい!」

 

 

元気よく返事をするイエローにオーキド博士も笑顔を浮かべ「うむうむ」と頷いている。

 

 

(うん、流石イエローだ。

早くもオーキド博士の、イエローに対する好感度を上げたみたいだな。

……まぁ、どんな仏頂面な初対面の人でもイエローの純粋な笑顔の前では気を許して、頬を緩めてしまうだろうがな!)

 

 

自分の事でもないのに、どことなく誇らしげな気持ちになってしまう俺だった。

これが親が誰かに子どもを褒められた時の心境というものだろうか。

 

 

「次にモンスターボールについてじゃが……まぁ、今更説明せんでもわかるじゃろうが一応説明しておくぞい? ……大体の事は、昨日言ったことそのままなんじゃがなぁ」

 

 

そう言って苦笑するオーキド博士。

今日言うはずだったことを、先取りして言ってしまったことで若干予定がくるってしまったのだろう。

 

 

「……モンスターボールとはポケモンたちを収納しておく入れ物じゃ。

トレーナーがボールに収めたポケモンは、そのトレーナーが捕獲したポケモンだと認識する機能がついており、さらにそれは自動的に図鑑の方にも登録される。

捕獲されたポケモンが他のトレーナーのモンスターボールで捕獲できないのも、そのトレーナーのポケモンとして登録されたことにより、窃盗防止の機能が働くためじゃ。

だからして、君のピカチュウはボールに収めておらんということは登録がされていないということであって、最悪他のトレーナーに捕獲される恐れもある。

……十分に、注意するんじゃぞ?」

 

 

「……はい」

 

 

……いざとなったらイエローに捕獲されることも視野に入れているとはいえ、他の誰かに捕獲されるという可能性も十分にあり得る。

俺だって、イエロー以外の奴に捕獲されるのなんてまっぴら御免こうむるため、これからますます細心の注意を払わなくてはいけないだろう。

人のポケモンを捕獲してくるような奴なんてめったにいないとは思うが、考えれば考えるほどいろいろと心当たりが出てくるのが怖い。

ロケット団はもちろんの事、ロケット団以外の犯罪者集団、それに一般人の中でも金持ちのお嬢様とかもかわいいポケモンのトップクラスに位置付けられているピカチュウを欲しがる奴はいるし、イエローとはぐれたときに野生と間違われてそのままということだって考えられる。

注意することにしすぎるということはないはずだ。

 

 

「そして、肝心のポケモンなんじゃが……」

 

 

そしてとうとう初めてのポケモンがもらえるというとき。

イエローもワクワクした表情でオーキド博士を見ていたのだが、なぜか博士はそこまで行っていったん言葉を区切った。

なんだろう、先ほどまでと違い若干言いにくそうにしている。

 

「……実は先週新人トレーナーがちょうど3人来てのぅ、新人用の3匹を連れて行ってしまったのじゃ。じゃから、残念ながら今ここに君に渡せるポケモンはいないんじゃよ」

 

あと2,3日の内に新しく3匹が届く予定なのじゃが、というオーキド博士。

流石にサトシ達4人がマサラを発ったのはもう2ヶ月以上も前だったからサトシの時のように3匹がみんないない状況はないかなぁと思っていたらこれだ。

まぁ、それはその年に10歳の誕生日を迎える子供たちの人数が4人だけとは思っていなかったが、流石に3匹ともいない時にイエローが出くわすとは何という偶然だろう。

当のイエローはどう思っているのだろう、そう思ってイエローの方をうかがってみるが別段気にした様子は見られなかった。

いや、先ほどの期待していた表情からまるっきり平気ということはないのだろうが、それでも「いないならしょうがないよね」と子供とは思えないくらい素直に聞き分けている。

初めてもらえるポケモンというのはどんなトレーナーでもいろいろな思いを胸に選ぶものだ。

ゲームとはいえ、俺もどのポケモンにするか悩みに悩んで選んだ経験があるし、そのポケモンは最後の最後まで手持ちでい続けさせるくらい愛着がわいたものだ。

当初のサトシ程とは言わなくても、もう少し駄々をこねてもいいもののはず。

……イエローは本当にそこまで気にしてはいないのだろうか。

 

「そうですか、それじゃ仕方ありませんね」

 

 

「すまんのぅ、なんならもう2,3日泊まっていかんか?」

 

 

「あぁ、いえ、別に気にしないでください。そういう事情じゃしょうがないですし……それに、ちょっと早く戻らなくちゃいけない用事もできちゃいましたし」

 

 

薄らと頬を赤らめて恥ずかしそうに言うイエロー。

まぁ、何かというと来るときに落としてしまった荷物の回収なわけだ。

誰かほかの人に発見されてしまっては、それも相手が男の人だったなら目も当てられない。

 

 

「……うぅむ、しかしのう」

 

 

「本当に、気にしないでください。それに、ポケモンをもらわなくても、私の初めてのポケモンはもういますから」

 

そういうと、俺の方に視線を向ける。

初めてのポケモン、つまり俺事ピカチュウだ。

……いや、まぁ、確かにイエローの最初のポケモンは俺であることは確かなんだろうけど、最初の三匹の内の1体がもらえないというのはトレーナーとしては残念ではないのだろうか。

 

 

「……そうか、君がそれでいいというならわしは何も言わん。

見たところそのピカチュウも君にずいぶん懐いているようじゃし、いいパートナーになるじゃろう」

 

 

「はい! 私たちは最高のパートナーです!」

 

『……あぁ、そうだな』

 

 

……イエローや、そのまぶしい笑顔で「ねっ!」と俺に向けないでくださいな、恥ずかしくて顔を直視できないじゃないですか。

そしてオーキド博士、そんな俺たちを見て意味深にうむうむと頷くのは止めてくれ。

と、まぁそんなこんなでようやく目的を果たした俺達はオーキド博士やその助手たちにお礼をかねて挨拶をしてから研究所を出た。

 

 

『……なぁ、イエロー』

 

 

「ん、なぁに?」

 

 

『ほんとによかったのか、ポケモンをもらわなくても?

荷物の事があるにしても、それはいくらでも諦めは着くだろう。

オーキド博士もいいって言ってくれたんだしあと2,3日くらい泊まって待っててもよかったんじゃないか?』

 

 

最初にもらえる3匹のポケモン達。

それは各地方によって種類は異なっているが、基本はどこも同じように初心者トレーナー用に選ばれたポケモン達で、比較的育てやすく強くなりやすいのが特徴だ。

旅をする上で、力強い味方が増えるのは俺としては大歓迎だったのだが……。

 

 

「ううん、いいの。私本当に気にしてなんかないよ?

それにオーキド博士がいいって言ってくれてもやっぱり悪いよ、オーキド博士だって研究で忙しいだろうし」

 

 

あと荷物もやっぱり諦めつかないよと、苦笑いするイエロー。

 

 

『……まぁ、そりゃそうだろうけどさぁ』

 

 

「それに私、2番目に一緒に旅をする友達はもう決めてるから」

 

 

『え、どいつ?』

 

 

「ふふ、会ってのお楽しみね」

 

 

『……ふぅん、そっか。それじゃ楽しみにしておこうかな』

 

 

お楽しみと言ってはいるが、きっとそいつは俺も知っているポケモンなんだろうな。

ていうか、大体の予想はついている。

イエローが友達と言い、2番目に連れて行きたいというほど仲のいいポケモンと言ったら、ねぇ?

 

 

「それじゃ、行こっか…… “ミオ”!」

 

 

『……あぁ、行こうか……イエロー!』

 

 

お互いに呼び合い俺たちは最初来た道を逆に歩きだす。

……おっと、突然で悪かったな。

“坂井弥央(さかいみお)”、今更になるがこれが以前の俺の名前だ。

これからもイエローを守るため、日々精進するからみんなよろしくな!

……てか、俺はいったい誰に挨拶してんだろう。

 

 

「ミオ、どうしたの? 早くいこうよ!」

 

 

『あ、あぁ、わかったよ!』

 

 

今度こそ、俺たちは歩き出した。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「ふむ、行ったか。しかし、ボール嫌いのピカチュウか。

ピカチュウもそうじゃが、イエロー君も含めてどことなくあいつ等にそっくりじゃったな」

 

 

そういいオーキドは以前研究所から旅立った一人の少年サトシとそのパートナーであるポケモン、ピカチュウを思い出す。

確かに最初サトシはピカチュウに電撃を浴びせられていてとても仲がいいとは言えなかったが、元々サトシはポケモンに好かれやすい。

まだサトシが小さいころ、時々研究所に遊びに来ては研究所のポケモンと遊んでいるのを見たことがある。

恐らくポケモンもサトシのポケモンが大好きだという想いを感じ取り、自然と心を許せる存在だと感じたんだろう。

以前トキワシティについた時、サトシが連絡をくれたがその時にはすでにピカチュウとは仲良くなっていた。

少々気難しいところがあり、オーキドもいろいろと手を焼かされていたあのピカチュウがである。

この短い期間の中で何があったかはわからないが、その何かのきっかけでピカチュウはサトシの想いを感じとり心を許すまでに至ったのだろう。

今では固く千切れることのない強い絆で結ばれたパートナーとなっているというわけだ。

そして、今回トレーナーになったばかりのイエローだが、まだ会ってそれほど時間が経っていないというのに、イエローがとても優しい子だということを感じ取ることができた。

それは近くにいたピカチュウを見ても明らかだろう、あの慕い様は長年共に歩んだトレーナーとポケモンを彷彿させる。

もしかしたら、サトシと同等かそれ以上にポケモンに好かれやすい存在かもしれない。

そうオーキドは、旅立ったばかりの新人トレーナーたちに思いをはせるのだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

~一方そのころのサトシ達~

 

十万ボルトをピカチュウにおぼえさせることに成功したサトシだが、それでもニビジムでのバトルはギリギリのバトルだった。

最後にスプリンクラーを利用しなければもしかしたら一度目と同じようにイワークに負けていたかもしれない。

しかし、そんなこんなで勝利を収めることができたサトシは旅の連れであるカスミと、さらに元ニビジムのジムリーダーであるタケシを仲間に加えて次の目的地ハナダシティに向かうため、その途中にあるおつきみ山に向けて歩いていた。

 

 

「そういえばサトシ、お前って1番道路通ってきたんだよな?」

 

 

歩いている途中、何やら新聞のようなものを読んでいたタケシがふと話しかけてきた。

 

 

「あぁ、そうだけど、それがどうかしたのか?」

 

 

「いやな、一番道路でオニスズメの大群がトレーナーを襲ったっていう記事を見つけてな、サトシは大丈夫だったのか気になっただけさ」

 

 

「……あぁ、オニスズメの大群かぁ。あの時は大変だったなぁ」

 

 

「え!? ってことはサトシも襲われたのか!? よく無事だったなぁ」

 

 

「全然無事じゃなかったぜ? あの時はまだ駆け出しだったからろくに戦えもしなかったし、ピカチュウもボロボロになっちゃったしで大変だったけど、何とか撃退することができて助かったんだ」

 

 

「あの時は? い・ま・も、じゃないの?」

 

 

「う、うるさいなぁ! 俺だってあの時よりは成長してるんだから、今襲われたって絶対に返り討ちにしてやるぜ! なぁ、ピカチュウ!」

 

 

「ピッカ、ピカチュウ!!(あぁ、もちろんさ!!)」

 

 

「……その自信は一体どこから来るのやら」

 

 

カスミはそういうとハァっと溜息を吐く。

確かにサトシは確実に強くなっているし手持ちポケモンもピカチュウを筆頭にここらのポケモンでは早々負けないくらいには強いだろう。

だが、サトシはすぐ調子に乗ってしまうお調子者な性格ゆえか、勝ち続けるとバトル中でも油断して返り討ちに会いかねない。

本当に見ていて危なっかしいお子ちゃまだ、そうカスミはもう一度溜息を吐く。

 

 

「まぁまぁ、二人とも落ち着けって。本当に仲がいいな二人は」

 

 

「「どこが仲がいいんだよ(のよ)!!!」」

 

 

一々息の合う二人である。

「そういうところだよ」という言葉はさらに火に油を注ぐようなものだと思いタケシは心の中でつぶやき口に出すのはやめておいた。

 

 

「でも、相手が飛行タイプで、今より弱いって言ってもこのピカチュウだったんだろ? それなのにボロボロになったっていうことは、それだけ数が多かったって事か」

 

 

「え、あぁ、そうだな。どれくらいかはわからなかったけど……空一面にオニスズメの大群がいたからな」

 

 

さっきまで返り討ちにすると大見得を切ったサトシであるが、その時のことを思い出すと寒気を覚えてしまう。

それくらい、その時の光景は鮮烈に脳裏に焼き付いているのだ。

 

 

「ふぅん……ってことは、こいつ等はかなり強いってことか」

 

 

「「……え?」」

 

 

タケシの言葉に二人はまたも同時に声を上げる。

それと同時に二人そろってにらみ合いプイッと顔をそらすのだが、それをタケシは見ないふりをして話を続ける。

 

 

「ほら、これ見てみろよ」

 

 

そういい、自分の見ていた記事を二人に見せる。

そこに書いてあったのは

 

 

≪一番道路にオニスズメの大群現る!?

一人のトレーナーと一匹のポケモンが見事撃退!!≫

 

 

という大きな見出しで書かれた記事だった。

そこには文だけでなく上空から撮影されただろう一人のトレーナーと一匹のポケモンがオニスズメの群れから逃げつつ迎撃をしている写真だった。

一人は女の子のようで写真の角度から顔が見えないが、この特徴的な形に使用している技からいってポケモンの方はピカチュウだとわかる。

 

 

「へぇ、すごいじゃん。一匹だけでこれだけの数を相手して、しかも撃退までしちゃうなんて」

 

 

「お、俺だってオニスズメを撃退したぞ!」

 

 

「ピッカァ!(そうだ!)」

 

 

「……いや、あんた等の場合ボロボロになって運よくって事だったじゃない。見ればわかるでしょ、この子たちほとんど無傷じゃない?」

 

 

カスミの言うように、その写真を見る限りでは多少の引っかかれたりつつかれたりしたような跡は見えるが、それも服のみでそれ以外に肉体に怪我らしい怪我も見当たらない。

……自分たちはボロボロになって逃げるのが精いっぱいだったというのにである。

 

 

「う、うぐぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 

「ビ、ビガァァァァ!!!(う、うぐぅぅぅぅぅ!!!)」

 

 

「ま、世の中の広さが少しはわかったんじゃない? 同じ一人と一匹でもあんたとこの子じゃ全然違うわけよ」

 

 

「ちっくしょぉぉぉ!!! いつかこいつらとバトルして絶対勝ってやる!」

 

 

「ピッカァァァ!!!(負けないぞぉぉぉ!!!)」

 

 

本人たちの知らないところで主人公からライバル認定されてしまったイエローとピカチュウであった。

 

 

「ま、返り討ちに合わないように精進なさいな」

 

 

熱く燃え上がっている二人にさらに油どころかガソリンをそそごうとしているカスミに今度はタケシが溜息を吐く。

 

 

「……まったく、二人ともいい加減落ち着きを持たないと。旅は長いんだし途中で疲労で倒れるぞ……ほんとお前らは俺がいないとダメなんだなぁ!」

 

 

と、なんだかんだとこんな二人をほっておけないタケシ。

これで女だったらきっといい嫁になるだろうにと、これは我らが主人公ミオのタケシを見て思った事の内の一つである。

ちなみに、タケシが読んでいた記事は「ニビ速報」という、ニビシティとその周辺の面白そうな出来事をマッハのスピードで飛ぶことができるピジョットにカメラを取り付けて即座に発見後撮影&録画をして編集、作成された不定期に報道されるニビ新聞社の号外記事である。

その担当記者のモットーはマッハのスピードで駆け抜け珍騒動珍事件のネタを誰よりも早く仕入れ報道するということで、この新聞のお蔭で早期解決された事件も多いという。

……ま、これがこの物語に関わって来るかどうかは知るところではないが。

 

 

 


 
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