No.446278

化石ポケモンとレジ系連れて幻想的な世界へ

イーブイさん

主人公の『古谷 大輔』はレジ系と化石ポケモンと共に世界を放浪して居る遺跡マニアの青年。しかし旅の最中に突然起きた地震によって発生した地割れの中に落ちてしまう。そして次に目を覚ました時、其処は博麗神社だった。(※思いっきり嘘です)

2012-07-05 06:21:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4041   閲覧ユーザー数:3925

俺の名前は古谷(ふるや)大輔(だいすけ)。

 

化石ポケモンや古代遺跡が大好きな若きポケモントレーナー兼冒険家だ。

 

だが今俺が居るのはオンボロで草臥れた廃屋のような神社。

 

此処は心霊スポットとしても有名で、時々金髪の女性が現れる噂が有る。

 

これは心霊スポットマニアでもある俺が行かない理由なんて無いだろう・・・っという訳でやってきました。

 

・・・にしても何なんだ此処は?

 

イッシュ地方のストレンジャーハウスやシンオウ地方の森の洋館のような怖さでは無く、まるでこの神社自体が非常識の塊のような・・・体が拒絶するような感覚は何だ?

 

何処にも変哲な所は無いただ普通の神社だ・・・ちょっとオンボロですが。

 

でも本当に何なんだこの感覚は・・・ッ?!

 

「誰だッ!?」

 

俺は後ろから視線を感じ、バッと勢いよく振り返る。

 

其処には噂通りに金髪で金の瞳をし、白と紫色の服を着た女性が立って居た。

 

その女性を見て俺の本能が叫ぶ。

 

『コイツはヤバいッ!』

 

『逃げろッ!』

 

『コイツには敵わない!!』

 

頭の中でアラームが鳴りながら本能が逃走する事を選択し、迫る。

 

しかし体は頭からの命令を拒否して全く動かない。

 

全身に嫌な汗が垂れる。

 

「フフッ、こんにちわ。そしてようこそ、外の博麗神社へ」

 

女性は妖艶に微笑みながら口元を開いた扇子で隠す。

 

「・・・・ッ!?」

 

俺はそのただの女性の何気無さそうな挨拶に何も返答出来ない。

 

 

――――いや、口すらも動かず、空気すら取り込まない。

 

 

必死に体を動かそうとするも微動だにせず、生きた心地がしない。

 

そうだ、これはあの時と同じ・・・。

 

 

 

「―――あっ、貴方は・・・誰なんですか?」

 

 

 

俺は懸命に出した今にも消えそうな言葉を女性に向かって必死に放つ。

 

女性は俺が言葉を発せれた事に驚いたように瞠目した後、まるで面白い玩具を見つけたように口元を上げ、嗤う。

 

「へぇ・・・貴方この殺気で気絶しなかっただけで無く、更には言葉を発せれるなんて・・・やるじゃない」

 

「・・・ッ!?」

 

そう言った直後に体がまるで糸が切れた操り人形のようにガクンッとなり、片足を付いて何とか耐えながら女性の顔を自分でも分かる程に疲労した辛い表情をしながら見上げる。

 

「貴方本当に面白いわぁ・・・ねぇ貴方、『幻想郷』に来ないかしら?」

 

「・・・えっ?」

 

俺は女性が言った言葉の意味が分からなかった。

 

 

『幻想郷』?

 

 

何処だ其処は?

 

全く知らない地名を聞き、俺は疑問が頭に浮かぶ。

 

「まぁ知らないわよね、だって『この世界』には無いんだもの」

 

 

女性が言った『この世界』とは何だ?

 

 

何を言ってるのか・・・この世界とは何か?

 

全く理解出来ない俺を他所に女性はドンドン一人走りのように話を進めて行く。

 

 

 

「それじゃ返答が無いってことはOKって事なんでしょうし・・・行きましょうか!」

 

 

「―――――――――はい?」

 

 

俺は何を言ったのか全く理解して無いまま女性は俺の右手を手に取り、無理矢理立たせる。

 

そして後ろから大量の視線を感じ、反射的に振り返ると其処には無数の―――――

 

 

眼、目、眼、目、眼目眼目眼目眼目眼目ッッッ!!!!

 

 

はっきり言ってグロい。

 

吐き気させ誘い、催すであろう眼が大量に・・・それも四方八方に散らばった目が存在する空間が、後ろに広がっていた。

 

その空間は正に『一寸先は闇』を言葉通り表すかのように佇んでいた。

 

 

「それじゃ先に行ってて頂戴♪」

 

 

「へっ?<トンッ>・・・な?!」

 

 

後ろから軽い口調で女性が言うと、女性は軽く俺の体を押し、無理矢理空間の中に落とす。

 

 

そして俺は・・・意識が真っ暗となった。

 

☆★☆

 

チュンチュンと小鳥が囀る朝・・・

 

俺は何時ものようなキャンプ用寝具とは違う羽毛のような感触を背中に感じながら目を覚ます。

 

「―――何処だ、此処は・・・?」

 

俺は何も分からないまま取り敢えず体を起こす。

 

・・・体に異常は見当たらないし、服もそののままで荷物も体の横に置いてある。

 

でもこの敷き布団に掛け布団は何だ?

 

それにこの和風な部屋も一体・・・?

 

「あら、起きたのね」

 

突然、少女の声が聞こえたので振り向くと其処には障子の扉を開き、縁側の通路に立っている腋出しの少女が立って居た。

 

「・・・君は?」

 

「私はこの博麗神社の巫女、『博麗 霊夢』よ」

 

少女は堅苦しくないサバサバとした性格なのか年上の俺に対しても遠慮の無い言葉使いで自己紹介してくる。

 

・・・ってまぁそんなの俺は気にしないんだけどね、面倒臭いし。

 

「俺は古谷 大輔。世界を旅する冒険家だよ」

 

「ふぅ~ん、冒険家ねぇ・・・」

 

霊夢は興味の薄そうに呟く。

 

「―――まぁ女の子は興味持たないか、こういうのは。・・・それよりどうして俺は此処に?」

 

「アンタ・・・望んで此処に来てるんじゃないの? アンタが此処に居るのは紫がアンタを此処に住まわしてやって欲しいって言って置いて行ったからよ」

 

「・・・紫?」

 

俺は見知らぬ名前が出たので問いかける。

 

「『八雲 紫』・・・アンタをこの幻想郷に連れて来た張本人よ、全く・・・連れて来たからには最後まで責任持ちなさいよねぇ!」

 

俺はそれを聞いて思い出した。

 

あの妖艶で美しい金髪金眼の女性、そしてあの眼だらけの悪趣味な空間を操っているようにも見え・・・そしてあの恐怖のような妖気を持った摩訶不思議な女性。

 

俺はあの女性の姿を思い出してガクガクと体が震え出す。

 

はっきり言って二度と会いたくない存在だ。

 

―――だが、此処に置いて行ったとはどういう事なのだろうか?

 

霊夢はどうやらあの女性とパイプを持って居るようだ、それも下の名前で呼んでいる事から太い事は間違い無いだろう。

 

「それで霊夢、俺は元の世界に帰れるのか・・・?」

 

俺は取り敢えず一番気になる事を未だにプンスカと頬を紅くして膨らませている霊夢に聞いてみた。

 

「・・・う~ん、出来ない事は無いだろうけど・・・多分無理だと思う。紫の性格からして結界から出てもアンタの世界と境界が繋がってるとは思えないもの」

 

「・・・そうか」

 

はぁ、まさか帰れないとは・・・ショックだ。

 

まだ見ぬ化石ポケモン達や古代遺跡をこの目で見てみたかったのに・・・ガチで泣きそうだ。

 

・・・えッ、家族? 絶縁中ですよ。根拠? 幼い頃からDVされてたんで抜け出したら捜索願いを出してくれなかったから絶縁とみて間違い無いだろうね。

 

「とりあえず朝食にしましょ、それからこの幻想郷について説明してあげるしこれからの事も色々相談に乗ってあげる」

 

「・・・ありがとう」

 

俺は目の前に居る霊夢の気遣いに感謝しながら顔を俯かせて目尻から水滴を流し始め、口から嗚咽を漏らし始めた。

 

☆★☆

 

思う存分泣き喚いた後、俺は涙を拭いて腫れ上がった目元をバッグから出した氷で冷やして部屋から出る。

 

そして取り敢えず居間を探し始めるが直ぐに居間らしき部屋が見つかり、部屋を開けると其処には霊夢が既に座って待っており、俺を怒っているようにふくれっ面となっていた。

 

「・・・遅い」

 

「・・・悪い、少し一人で整理して居たかったんだ。さてと! 湿ったい空気は此処までにして早く食べちまおうぜ!」

 

「何アンタが仕切ってるのよ! 遅れて来たくせに!!」

 

「ウッ・・・さ、さぁ食べようかなぁ~うわぁすっごく美味しそうだなぁ~」

 

「下手な誤魔化し方ね」

 

「・・・スイマセンでした」

 

そんなくだらないやり取りを2人でやった後、俺は用意されたご飯を食べながら霊夢から幻想郷について説明された。

 

 

☆★☆

 

 

食べ終えると丁度同じくらいに幻想郷についての事を聞き終え、今は霊夢は食器の片付けをし、俺は縁側の通路に座って青空を見上げる。

 

「・・・良い天気だなぁ」

 

俺は爺さんのような事を呟きながらのんびりとしていると、空の彼方から黒い何かが此方に向かって来るのが見えた。

 

最初は飛行機かと思ったが、この幻想郷にそんなハイテクは存在しないらしいので直ぐに頭から切り捨てる。

 

そして黒い何かを近づいてく程にドンドンと姿形がクッキリと視認出来てきた。

 

その黒い何かは黒い尖がり帽子にウェーブの掛かった長い金髪、そして黒い魔法少女のような服装に魔法少女にはお決まりの竹箒に跨った少女だった。

 

その少女は自分の目の前の中庭へ降り立つと、俺を見つけて怪訝そうに見る。

 

「誰だお前? 霊夢は何処なんだぜ?」

 

少女は警戒しながらも霊夢の事を聞いてくる辺り、仲が良いんだろう。

 

俺は別に争う気は無い為、何気なく答える。

 

「俺は「あら魔理沙、来てたのね。ソイツは古谷 大輔。昨日からこの博麗神社に住み始めた者よ」・・・宜しく」

 

「ふぅん、まぁ霊夢が言うなら信じるぜ。私の名は『霧雨 魔理沙』、普通の魔法使いだぜ!」

 

霊夢から俺の名前を聞かされ、警戒を解いてくれる魔理沙。

 

はぁ、これからこうやってこの幻想郷で住んでいくのか・・・心労で倒れなかったら良いけど・・・。

 

「・・・ん? でもソイツって外の奴だろ? 何で此処に住んでるんだぜ?」

 

「あー、それは紫の所為よ。紫の奴、どうやら大輔を無理矢理連れて来た挙句、図々しく此処に住まわしてやって欲しいって言って大輔を置いて自分はスキマで消えたのよ。本当、良い度胸してるわ!」

 

「なんだ、紫の奴の仕業か。なら納得だぜ、それから大輔。悪かったな、急に疑ったりして」

 

「いや、俺を疑うのは仕方ないさ。気にするなって」

 

「そっか? なら気にしないぜ!」

 

「・・・(それで良いのか? 少しは気にしろよ・・・)」

 

魔理沙のアグレッシブさというか元気っぽさに呆れる俺。

 

まぁ・・・うん、もう良いけどさ。

 

はぁ・・・取り敢えずは警戒や疑いも晴れた事だし、一件落着って所で良いのか?

 

――――良っか。

 

「それで魔理沙、今日は一体何しに来たのよ?」

 

霊夢が呆れながら聞くと、魔理沙は思い出しかのような顔を一瞬した後、とても焦った表情をし出す。

 

「ん? ぁあっ!! そうだった! 忘れる所だったぜ! 早く人里に来てくれ! 妖怪に似つかない変な奴が暴れてんだ!」

 

 

 

「「ッ!!?」」

 

 

それを聞いて俺達は驚愕する。

 

この幻想郷が妖怪達によって異変が起きる事が日常茶判事なのは聞いた。

 

だが妖怪に似つかない奴が暴れるなんて事は聞いてない。

 

「魔理沙、その変な奴ってどういう奴なのよ?」

 

霊夢は先程までの呆れた顔は鳴りを潜め、真剣な・・・異変解決の時の顔となる。

 

「あぁ、ソイツは私のマスパを全くもろともせず、慧音達の弾幕も全く効いて無いんだ! まだ人里の被害で死者は出て無いけど、このままじゃ人里が危ねぇ!!」

 

「何よそいつ・・・分かったわ! 行くわよ魔理沙!」

 

「おう!」

 

そう言って魔理沙と霊夢は空中に浮かぶ。

 

・・・ってちょっと待った!!

 

「おっ、おい! 俺はどうするんだよ!!」

 

俺の叫びは既に空の遠く彼方へと消えた魔理沙達には聞こえて無かった。

 

 

 

「――――ガチでどうしよう?」

 

 

俺は一人、縁側に座ったまま霊夢達が向かった方向をジッと見つめていた。

 

☆★☆

 

霊夢達が飛び去った後、俺はどうするか考える。

 

う~ん、一人でやる事ねぇ・・・あっ、取り敢えずポケモン達の体調チェックをしないと!

 

俺はバッグを俺が寝ていた部屋からバッグを取って来て中に有るボールを6つ取り出す。

 

「さぁ、みんな! 出てこい!!」

 

俺はボールを全て上空に投げると、ボールはパカッと開いて中から光を放つ。

 

そして光が止むと俺の目の前には甲冑ポケモンのアーマルド、シールドポケモンのトリデプス、頭突きポケモンのラムパルド、甲羅ポケモンのカブトプス、化石ポケモンのプテラ、そして最後に古代亀ポケモンのアバゴーラが現れる。

 

6体は俺の姿を見ると駆け寄ってくる。

 

・・・正直、身長が1m半を超えているポケモン達がドスドスと駆け寄ってくる光景は少し引く。

 

「みんな、今日から俺達はこの幻想郷と呼ばれる場所で過ごさなければならないみたいだ」

 

それを伝えると何を言ってるのか全く理解してないように頭を傾げるみんな。

 

「あー、簡単に言えば此処には野生のポケモンやポケモントレーナーが居ないって事だ」

 

それを聞いて理解出来たみんなは驚愕の表情をする。

 

「急に言われても納得出来ないかも知れない、けど俺は此処でもトレーナーとして・・・そして古代遺跡研究家としても生きていく。みんな、そんな俺に付いて来てくれるか・・・?」

 

俺は不安気に問いかける。

 

無理なら逃がす。

 

此処で過ごしていくのはキツイだろうから、霊夢経緯で八雲さんって人に知らせて貰って逃がして貰う気だった。

 

だけどみんなは――――

 

 

『『『『『『オオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!』』』』』』

 

 

俺の不安を消し飛ばす様に叫び、俺に付いて来てくると言わんばかりに近寄ってくる。

 

「・・・みんな、付いて来てくれるのか・・・こんな俺の為に・・・」

 

そう再度聞くと、みんなが笑顔で首を縦に振る。

 

俺はそれを聞いて俯き、泣きそうになるが、1日に何度も泣いては男が廃ると言い聞かせて俯くだけにして泣くのは堪える。

 

「ありがとう・・・俺、頑張るぜ!」

 

そう言って決意が出来た顔で顔を上げると同時に――――

 

 

 

<ドォォォォォォンッッッ!!!>

 

 

霊夢達が向かった方向から途轍もなく巨大な音がし、黒煙が此処からでも分かる程に舞って居る。

 

「ッ!! あれはッ!! プテラ、あの場所まで連れて行ってくれ!!」

 

俺は直ぐさまプテラ以外のポケモンをボールに戻してバッグを背負い、プテラに頼む。

 

プテラは『任せろ』と意気込んだ顔で翼を羽ばたかせ、俺の肩を掴んで俺の身体を宙に浮かばせる。

 

・・・これ体の制御が難しいんだよね、まぁ良いけどさ。

 

そして黒煙が発生している人里が見える位置まで浮かんだあと、猛スピードで向かった。

 

 

 

【一方、霊夢達は――――】

 

 

 

霊夢達は大輔を神社に置いて行ったまま人里に向かって飛ぶ。

 

「・・・良いのか霊夢?」

 

「何がよ?」

 

「大輔だぜ、無視したのはアイツを巻き込みたくなかったからだろ?」

 

「・・・アイツは自分の置かれた状況をまだ整理出来て無いのよ、今朝だって幻想郷の事について説明した時もかなり混乱してたから・・・。そんな状態の大輔を連れて行って更に混乱させるのも悪いし、そもそも大輔は私達とは違って魔力も何も持たない普通の人間。連れて行っても役立つとは思えないわ」

 

「まぁそうだけどよぉ・・・」

 

「府に落ちないかも知れないけどこれで納得して。さぁ、着いたわよ・・・気を引き締めなさい」

 

「・・・おう! 行くぜ!!」

 

霊夢と魔理沙は一気に人里へと降り始める。

 

素早く人里の入口付近に降り、中に入ると其処は人が散り散りと慌てふためいて居り、丁度人里の真ん中付近から何度も衝撃音や爆撃音が聞こえる。

 

「・・・あそこね」

 

「急がねェと・・・慧音達が!!」

 

「ええ!!」

 

2人は走って人里の真ん中まで向かう。

 

そして人里の真ん中付近に辿り着いた時――――

 

 

 

 

 

『GYAOOOOOOOOOOO!!!!!!』

 

 

「「ッ!?」」

 

 

 

 

 

――――悪魔の咆哮が響いた。

 

「おい、霊夢ッ! あれ!!」

 

「もう見えてるわよッ!」

 

2人が見据えた先・・・其処には岩壁のような屈強で怪獣映画に出てきそうな体、ドリルのような角、獰猛な眼を持った怪物を、水色の髪に青色の服を着た女性と白髪にオーバーオールのような物を着た少女が手から放つ弾幕や炎をぶつけて対抗しているも全く効いている様子は無い。

 

「慧音! 妹紅!」

 

魔理沙が叫ぶと水色髪の女性=『上白沢 慧音』と、白髪にオーバーオールを着た少女=『藤原 妹紅』は顔だけを振り向かせ、魔理沙達の存在に気付く。

 

「おおっ! 魔理沙か!! どうやら博麗の巫女を連れて来たようだな! スマナイがコイツを抑えるのは2人でもキツイ!! 加戦してくれ!」

 

「おう!」

 

「分かってるわよ!!」

 

4人は散開し、怪物に挑むが4人が放つ弾幕はその屈強な体に弾かれて効かず、逆にチマチマとした攻撃を受けて怪物を怒らせる。

 

 

『GYAGOOOOOOOOOO!!!!!』

 

 

怪物はその木のような太さを持った腕を地面に向かって振り下ろし、大地を叩き割る。

 

そして叩き割った時に宙に舞い上がった岩石はまるで怪獣に操られるかのように一直線に霊夢に向かう。

 

「そんなの喰らわないわよッ!」

 

弾丸の雨を掻い潜り、怪物に接近する。

 

「これでも喰らいなさい!『夢想封印』!!」

 

霊夢がゼロ距離からお札とカラフルな玉を大量に放つ。

 

 

<ドォォォォォォンッッッ!!!>

 

 

巨大な音が鳴り、煙が舞う。

 

「よっしゃ! 流石霊夢だぜ!」

 

「ふぅ・・・これで終わりかな?」

 

「そうだな・・・」

 

霊夢以外の3人は漸く倒したと安心する。

 

 

―――だが、現実は非情だ。

 

 

 

「グッ・・ァア・・・コ、ノォ・・・」

 

 

煙が晴れ、其処に有った光景は・・・傷一つ無い怪物に首を掴まれた霊夢という光景だった。

 

『GARUUUUUUUUU・・・』

 

「ッ霊夢ゥ!!」

 

「なっ・・・!?」

 

「あの攻撃が効いて無いのか・・・?!」

 

3人は驚愕し、呆然とした。

 

「ッ霊夢を離せェ!! 魔符『ファイナルスパーク』!!!!!」

 

だが魔理沙だけは直ぐに元に戻り、霊夢を助けようと駆け寄りながら巨大なレーザー砲を発射する。

 

しかし――――

 

『GARUOOOOOOOO!!!』

 

「うわあああああッッッ」

 

ファイナルスパークは怪物の体に叩きつけられるも、効いておらず、怪物は掴んでいた霊夢を投げて魔理沙にぶつける。

 

霊夢をぶつけられた魔理沙は霊夢を衝撃から護りながら屋敷の壁に叩きつけられる。

 

「クッソォ・・・霊夢! 大丈夫か?!」

 

「ゲホッ、ゲホッ・・ぅぅ・・何とかね・・・」

 

魔理沙は背中に走る痛みに耐えながら霊夢を心配すると、霊夢も咳き込みながらも何とか意識を保っている事を伝える。

 

「魔理沙! 霊夢!」

 

慧音と妹紅の2人は霊夢と魔理沙に駆け寄り、2人の前に出て護るように立つ。

 

怪物はそんな4人を嘲笑うかのように睨み、ゆっくりと迫ってくる。

 

「チィ・・・博麗の巫女の攻撃でも効かないとはッ・・・!! どうすれば・・・?!」

 

『SAIDOOOOOOOOO!!!!!』

 

怪物はゆっくりと歩いていたが一気に猛然と走り出し、その角を回転させながら突進してくる。

 

その突進は慧音と妹紅には軽く避けれたが、避けたら未だ動けない霊夢と魔理沙に攻撃が通る。

 

正に絶対絶命のそんな時ッ―――!!

 

 

 

 

「プテラ! 破壊光線!!!」

 

 

 

上空からその叫びが聞こえた直後に細長いビームが怪物に直撃する。

 

そのビームは、魔理沙が放ったファイナルスパークとは違い、怪物の体を遥か後方にまで吹き飛ばした。

 

そして上空からゆっくりと先程のビームを放った張本人である灰色の翼竜に肩を掴まれた状態で、翼竜に指示した者が舞い降りる。

 

 

 

「大丈夫か? 霊夢、魔理沙」

 

☆★☆

 

「なっ・・・大輔!? なんで此処に?!」

 

「助けに来た!!」

 

俺はプテラによって見事に着地する。

 

さてと、どうやら此処が人里みたいだな。

 

俺は目の前に存在する者を見る。

 

 

・・・どう見てもサイドンだよなぁ?

 

 

どういう事だ? 此処にはポケモンが居ない筈じゃ・・・?

 

まさか霊夢が此処にもポケモンが居る事を伝え忘れた?

 

いや、そんな事を伝え忘れるとは思えない・・・。

 

俺はチラッと後ろに居る魔理沙と霊夢を見る。

 

「霊夢、魔理沙・・・もう一度聞くけど本当に大丈夫か?」

 

「え、えぇ・・・それよりその翼竜は何よ・・・式?」

 

「式・・・? コイツはポケモンだぜ、あのサイドンと一緒だ」

 

「・・・ポケモン? ってそんな事より何で来たのよ?! 神社で待ってなさいよ!!」

 

「ゴメン無理、でも・・・アイツは俺達が倒すから安心してくれ!」

 

その言葉に驚く霊夢。

 

そんな霊夢を尻目に俺は戦略を立てる。

 

取り敢えずサイドン相手にプテラは相性が悪い、此処は引かせて奴の弱点を突けるポケモンで対抗しよう。

 

「戻れプテラ!!」

 

俺がボールを翳すと、ボールの丸い突起物から発せられた光をプテラはその身に受け、プテラは赤い光と同化してボールの中に吸い込まれた。

 

そして今度は腰からプテラを戻したボールとは違うボールを取り出して、同じようにボールにある丸い突起物を押した後、前に投げる。

 

するとボールはパカッと開き、中から茶色の体色に両腕の鎌を持ったポケモン『カブトプス』が現れる。

 

「うおっ?! 翼竜が消えたかと思ったら今度は別の式が現れた!? 妖獣使いか?!」

 

後ろから聞こえる魔理沙の驚きの声を無視して目の前のサイドンに集中する。

 

サイドンは先程プテラが放った破壊光線が効いているのか少し動きを鈍らかせながら此方を敵意を持った獰猛な眼で睨んでくる。

 

そうだ、それで良い。兎に角、俺とカブトプスに注意を引かせなければ!!

 

「カブトプス、サイドンを倒すぞ! 『水の波導』!!」

 

俺が指示すると、カブトプスは口から水のリングを発射する。

 

そのリングは動きが鈍っているサイドンには効果抜群であり――――

 

 

 

『GYAOGUAAAAAAAAAAAAA!!!!!?????』

 

 

 

サイドンの水タイプを受けた事による悲鳴が人里にけたたましく響く。

 

「なっ・・・私達の弾幕をもろともしなかった怪物が苦しんでいるだとっ!?」

 

「サイドンは岩・地面タイプ。水タイプである『水の波導』は岩・地面タイプには4倍のダメージを与える」

 

俺は無駄だと分かって居ながらも説明するが、やはり後ろの4人には全く理解出来て居ない。

 

俺はそんな分かっていない4人を置いて一人考える。

 

しかし、そんな暇をサイドンは与える気が無いらしく、岩や瓦礫を宙に浮かせて此方に発射してくる。

 

「『ストーンエッジ』か! ならばコッチも『ストーンエッジ』だ!!」

 

カブトプスも同じように岩を宙に浮かせ、サイドンが放ったストーンエッジを相殺させるように放つ。

 

サイドンとカブトプス、両者のストーンエッジが両者の間合いの丁度真ん中付近で衝突し合い、砂煙を巻き上げる。

 

「カブトプス、奴は此方がまだ見えて居ない。今の内に『剣の舞』だ!」

 

カブトプスは激しくその場で舞い、攻撃力をグーンと上昇させる。

 

「何躍らせているのよ! こんな時に!!」

 

「良いから見てろよ! 様子見は終わりだ、こっから本番なんだからな!!」

 

その言葉を聞いて霊夢達は驚愕しているのが後ろを向けて居ても分かる。

 

でもそんな事を気にしてる時間は無い。

 

速攻で決める!!

 

「カブトプス! 1撃で決めろ、『滝登り』だ!!」

 

カブトプスはもの凄い勢いで突撃し、まるで滝を登るようにサイドンの胸の駆け上って両腕の鎌で切りつける。

 

 

『GYAOOOOOOOOO!!!!?』

 

 

サイドンの体は背中から重力に従って体制を崩し、鈍い音を立てながら倒れた。


 
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