No.439005

真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第52話

海皇さん

再び間が空いてしまいましたが、お久しぶりです。

六月もあと少し、段々と夏に近づいてきました。

できることなら揚州編は夏になる前に終わらせたい・・・、いやまじで。

2012-06-18 21:31:34 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:3446   閲覧ユーザー数:3108

 太史慈軍が撤退したと言う知らせを受けてから一時間後、門前で足止めをしていた敵軍も撤退を開始したと知らせが入った。本命である部隊が居なくなったのだからいつまでも留まる理由も無かったのだろう。ただ、その理由を知らないであろうか、前線に居る冥琳は敵に追跡の兵を遣ったと知らせてきた。まあ冥琳の事だから多分気がついているんだろうけど、念には念を入れて、という判断なんだろう。

 

 「しかし何だったのかしらね。黒い軍勢って・・・」

 

 冥琳達の報告を天幕で待っているとき、雪蓮はぼそりと呟いた。

 

 「そうだな、一応助けてはくれたみたいだけど、敵か味方かもわからないしな」

 

 「でも一刀達本当に何も知らないの?天の御使いに仕える~って言ってたから一刀達と関係あるんじゃないの?」

 

 雪蓮がそんな質問をしてくるが、俺と愛紗は首を横に振る。

 

 「知らないな、大体俺は雪蓮達に独断であんな軍を作った覚えはないし、この戦いに同行させたつもりもない」

 

 「私もご主人様同様何も分かりません。ただ、天の御使いに仕える云々と言っていたのは気がかりですが・・・」

 

 「そっか~・・・・、二人とも手がかりなしか~・・・」

 

 雪蓮は手がかり無しなのにがっかりしたのか大きく溜息を吐く。そして長い桃色がかった髪の毛をガシガシと引っかいた。俺達も、全く予想外の事態に何が何だか分からなくなっている。

 敵か味方か不明の軍勢、その軍勢の発した「御使い」という言葉。

 おそらく連中の言っている御使い、とは俺と愛紗の事ではないだろう。

 では一体誰が?俺達以外にも別世界の人間が居るのか?

 俺の見た夢の中で聞いた声も気にかかる、愛紗にも伝えるべきだろうか?

 

 「それにしてもおかしいのは太史慈軍も同じよね~。確かオトリ部隊太史慈が引いたら直ぐに撤退しちゃったみたいじゃない。なんだか大軍らしかったんだから力押しで攻撃してくるのかと思ったら、あっけなかったわね~・・・」

 

 「まあ所詮はオトリ部隊ですからね。兵達もそこまで強いものを集めてなかったのでしょうね」

 

 「そう?それにしては苦戦してたみたいだけどね~・・・」

 

 まあ確かに太史慈軍が引いた後にすぐ引いてしまったオトリ部隊も妙と言えば妙だ。オトリとは言え軍勢の多さは相当のものだったらしい。軽く三万は居たんじゃないかと雪蓮は語っていた。ならばこの陣地に力ずくで攻め込むこともできたはずだけど・・・。

 

 「戻ったぞ雪蓮・・・、む、北郷殿と関平もいたか」

 

 俺が考え事をしていたら、調査から戻ったのか冥琳が天幕に入ってきた。よくよく見ると、手には敵軍の鎧を持っていた。

 

 「あ、お帰り冥琳。で、どうだった?何か成果はあったかしら?」

 

 「ああ、まあお前の言っていた黒い軍勢については分からなかった、が、あのオトリ軍のカラクリについては分かったぞ」

 

 「カラクリ、ですか?」

 

 愛紗が聞き返すと冥琳は頷いた。

 

 「簡単に言うとだ、我々は錯覚していたんだ」

 

 「錯覚?」

 

 「そうだ、敵の軍勢が普通よりも多く居ると錯覚を起こしていた、ということだ」

 

 「え~と・・・、すなわちどういうこと?」

 

 まだ訳の分からなそうな表情の雪蓮はそう聞き返す。冥琳は肩をすくめて解説を始めた。

 

 「正面から攻めてきたオトリの部隊だが、前方にほとんどの兵を集中していたのだ、だから我々はその勢いで援軍を送ることが出来なかったのだ」

 

 「え!?ちょ、ちょっと待ってよ!!確か後方にもかなりの兵が居るって言ってたじゃない!!」

 

 雪蓮の驚愕の声に冥琳は冷静に返答を返す。

 

 「あの後方に部隊、いや、兵士はほとんどいなかっただろうな。あれは全部張りぼてだ」

 

 「は・・・張りぼて?」

 

 「ああ、敵軍が撤退した後にあそこを調べたら、大量の藁人形、木偶人形の兵士が背中に旗や松明を背負わされて立っていた。そして、倒した敵軍の兵士の鎧を調べて見つけたんだが、鎧の背中に二本の松明を背負っていた。恐らく、松明の火の量と旗の量で、自軍の後方にも敵軍が大量にいると見せかけていたのだろう。ましてや攻めて来たのは夜、本物か偽物かを見分けるのも困難だ。単純だがかなり有効な策だ」

 

 冥琳の説明で、俺達は合点がいった。

 すなわち、もともとオトリの軍勢は、正面を攻めていた前線部隊がほとんどであり、後方にはほとんど兵がいなかったのである。それを後方にも大軍が控えているように見せかけるために藁や木偶の人形に火のついた松明やら旗やらを背負わせて、大量に立てておく。こうすれば、明かりや旗の多さで、後方にも大軍がいるように錯覚させることが出来るのだ。さらに、襲撃してきたのが月も出ていない夜であったことも敵軍に幸いして、俺達はまんまと騙されてしまったのだ。

 

 「はあ~、姑息と言うか何と言うか・・・・。敵も中々強かね~・・・」

 

 「まあ袁術や黄巾党とは違うと言うことだ。しかし・・・、全焼は避けられたとはいえ、こちらの被害もかなり大きいぞ」

 

 冥琳は深刻そうに呟いた。

 俺達が受けた報告によると、備蓄されていた兵糧のうち約三割が焼失、さらに、太史慈を食い止めるために戦いを挑んだ明命も、重症を負って戦線を離脱しなければならなくなった。咲耶に亞莎も、戦線離脱には至らないものの大小の傷を負っている。兵も多く消耗しているため、相当きつい状況であることは間違いない。

 

 「ええ・・・。せっかく祭達が運んできてくれた兵糧も、ほとんどが駄目になっちゃったしね・・・。このまま進軍すべきかどうか・・・・」

 

 「あと兵糧がどれだけ無事か、によるな・・・・。万が一にも一週間持たない量だった場合には・・・・、遠征はここで断念する以外ないだろう・・・」

 

 冥琳の言葉に、俺達の間には重い空気が漂い始めた。

 

 

 劉繇side

 

「失敗しただと!?」

 

 その頃、会稽郡の劉繇軍本拠の城では、太史慈の軍からの伝令を聞いた劉繇の怒号が響き渡っていた。その声の出所は城内部の作戦会議室、そこでは長距離を移動して疲弊しきった伝令兵を鋭い視線で睨みつける劉繇と、怒り狂う劉繇を宥める厳白虎と王朗がいた。

 

 「はっ!!作戦遂行中、突然妙な軍勢が現れまして・・・、突然の襲撃に浮き足立った我が軍はなすすべなく攻撃にあい、太史慈将軍はこれ以上の攻撃は不可と判断なされて攻撃中止と共に撤退をいたしました!!」

 

 「あのアホ!!束沙が奇襲にあったからあれほど注意しろと言っておいたのに!!・・・んで!!その妙な軍勢ってのは何だ!!何か特徴があったんなら何でもいいから言ってみろ!!」

 

 作戦が失敗したことが原因で、劉繇は殺気立ち、その苛立ちを伝令兵にぶつけるかのように怒鳴りつける。なりふり構わぬ殺気を浴びた伝令兵は恐怖に竦んでがたがたと震えていた。

 

 「まあまあ劉繇ちゃん、落ち着いて落ち着いて~。そんな怒ってたら、伝令ちゃんから聞けるものも聞けなくなっちゃうわよ~」

 

 「・・・・少し、頭冷やして?」

 

 猛り狂う劉繇に対して、厳白虎と王朗は落ち着いており、劉繇を必死に宥める。

 冷静な二人の声に、劉繇は段々と落ち着いてきたのか、殺気を収めて、大きく息を吐いた。

 

 「・・・・悪い、少し冷静さ無くしてたわ。キレてる場合じゃねえってのによ・・・」

 

 劉繇は厳白虎と王朗、そして伝令の兵士に頭を下げて詫びると、表情を引き締めて兵士を見る。

 

 「・・・んで、落ち着いたところでもう一度聞くが・・・、敵の特徴は?分かったことは何でも良いから話せ」

 

 「は、はっ!!旗印は黒い烏、鎧も乗っている馬も漆黒の軍勢で、その数は約1000騎!!一人一人が恐ろしく強く、太史慈将軍も二人相手取るのに手一杯で・・・・」

 

 「・・・もういい、よく分かった」

 

 堰を切ったように早口で話す兵士を押し留め、劉繇は厳白虎と王朗に顔を向けた。

 

 「・・・・てな特徴なんだが、お前ら、心当たりあるか?」

 

 「全くないわよ~。烏の旗印に真っ黒な鎧なんて・・・、気味が悪いじゃない~」

 

 「・・・・聞いたことない」

 

 二人の否定の言葉に劉繇は肩をすくめ、再び兵士に振り返る。

 

 「・・・まあとにかくご苦労だった、下がって休んでいいぞ」

 

 「は、はっ!!・・・あ、それからこれは他の兵から聞いた話ですが・・・・」

 

 「ん?」

 

 退出しようとした兵士が、何かを思い出したかのように話し始めたのを聞いて、劉繇達は耳を傾ける。

 

 「敵が言っていたらしいのですが・・・・何やら『我等は八咫烏、天の御使いに仕えし者達なり』とかなんとか・・・・」

 

 「・・・・分かった、下がれ」

 

 劉繇の言葉を聞いた兵士は、黙って一礼すると部屋から出て行った。それを見届けた劉繇は厳白虎と王朗に顔を向けた。

 

 「・・・で、どう思う?お前ら」

 

 「どうって言われてもねえ・・・・」

 

 「・・・・聞いた事がない」

 

 二人からの返答は芳しくないものであった。無論劉繇も知るはずがない。

 ただ、天の御使いに仕える、と言っていたことから孫呉軍にいる天の御使いと何がしかの関係があるのではないか、それしか分からなかった。

 

 「・・・まあ大方天の御使いが抱えている秘密部隊か何かだろうな」

 

 「・・・・だと思う」

 

 「でも~、それだとどうするの~?話し聞いてるだけだととても強そうよ~?」

 

 厳白虎の質問に劉繇はしばらく沈黙していたが、やがて、硬い表情で口を開いた。

 

 「・・・そろそろ俺も出てもいい頃合、だな・・・・」

 

 「!・・・出る、の・・・・?」

 

 「ああ・・・・、睦月の事だ。失敗したといっても連中の兵糧はそれなりに削れたはずだろうし、それなりの痛手も与えてるだろう。が、こちらも主力の睦月の軍が痛手を受けちまったからな・・・・。俺も出て少しでも補うしかねえだろ・・・」

 

 「でも~、劉繇ちゃんまで出ちゃったらこの城の守りはどうするの~?」

 

 「そこはてめえらに任せる、こっちにゃもう余裕なんざねえんだよ」

 

 劉繇は天井を睨みながらぼそりと呟いた。

 もはや自分達に以前のような余裕はない。

 どんな手段をもってしても会稽に到達する前に、孫呉の息の根を止める。

 

 そんな決意が、その瞳から伺えた。

 孫呉居残り組side

 

 「ちょっと大喬!!小喬!!あんたたちまた皿に汚れが残ってるじゃない!!皿洗いくらいまともにできるようになりなさいよ!!」

 

 「は、はう~、ご、ごめんなさいです~・・・・」

 

 「む、む~・・・・、何で江東一の美人姉妹の私達が皿洗いなんて~・・・」

 

 「小喬~・・・・、アンタなんか言った!!?」

 

 「い、いえ!!何も!!」

 

 「詠ちゃん。あまり新入りさんをいじめちゃだめだよ?」

 

 そのころ留守番組の月と詠は、新しく一刀のメイドとなった大喬、小喬姉妹に家事の手ほどきをしていた。なにしろ二喬は、メイドにはなったもののろくに皿を洗ったことする無いという有様・・・。まあ今までがお嬢様だったのだから仕方ないといえば仕方ないのだが・・・。

 その結果、月と詠は先輩メイドとして二喬に家事の手ほどきをすることとなったのである。

 

 「月!!でもね、今女官に求められているのは即戦力なのよ!?碌に皿も洗ったこともない女官なんて誰が雇いたいって思うのよ!!」

 

 「分かってるよ詠ちゃん。詠ちゃんは二人が心配だから厳しく教えてあげているんだよね?」

 

 「別に、そんな訳じゃないけど・・・・・。ボ、ボクはただ、まともに仕事できないメイドなんて邪魔でしかないから、少しはマシになるようにビシビシやってあげてるだけよ!!」

 

 「二人ともごめんね、詠ちゃん素直じゃないから」

 

 「ってちょっと月!?話し聞いてるの!?」

 

 「いえ、大丈夫です!!雪蓮様の女官になるためですから、この程度の仕打ち、耐えてみせます!!」

 

 「そうです!!こんな鬼畜眼鏡のいびりなんかに負けてたまるもんか!!ね、お姉ちゃん!!」

 

 「うん!!小喬ちゃん!!」

 

 「くおらああああああ!!!誰が鬼畜眼鏡よ!!誰が!!それが教えてもらっている人間の態度かああああ!!!」

 

 二喬にボロクソ言われた詠は顔を真っ赤にして二喬を怒鳴りつける。そしてそれを無視して互いに両手を握り合い見つめあう大喬と小喬。そんな三人を月はにこにこと笑いながら眺めていた。

 

 劉表side

 

 その頃、袁紹軍と同盟を組んだ劉表は、新野から離れた小川で、蒯良、蒯越姉妹をお供に優雅に釣りを楽しんでいた。

 

 「紅刃様~、いいのかよ、袁紹の加勢に行かなくて~」

 

 「やかましい、あのたわけには武器と兵糧を送ってやった、文句はあるまい。今余は釣りをしているのだ、少し黙ってろ」

 

 劉表は蒯良の方を振り向かず、釣り糸を注視しながら返答を返した。ちなみに始めて十分ほど経つもののまだ一匹も釣れてはいない。

 

 「んでもさ~袁紹の奴ギャアギャアうるせえらしいじゃん。援軍送れ援軍送れってさ~」

 

 「そんなもの余が病気であるとでも伝えて適当にあしらわせておる。問題ない・・・・・、お、一匹目」

 

 劉表はようやく魚を釣り上げて上機嫌になりながら、釣った魚を魚籠の中に放り込み、新しい餌を付け始める。

 

 「姉上、紅刃様にもお考えあっての事なのです。ここは黙って見守りましょう」

 

 「ん~そりゃ分かるけどな~・・・」

 

 「何だ?手持ち無沙汰ならそこに釣竿二本あるからそれで釣りでもしたらどうだ?中々に夢中になれるぞこれは・・・・・む、二匹目か」

 

 「あはは~・・・あ、あたしそういう我慢とか待つのって苦手だからさ~・・・」

 

 劉表の提案に蒯良は少し引きつった笑みを浮かべながら拒否の言葉を口にした。劉表はふむ、と少し残念そうにしながら再び釣り針に餌を付け始める。

 

 「それよりも孫呉の連中はどんな様子だ。まさか開幕早々に敗北、等という興ざめなことは無かったろうな」

 

 「はい、劉繇軍は焦土作戦を実行して孫呉軍の現地調達を封じ、兵糧攻めを実行している模様です」

 

 「ふむ・・・・、まあよくある戦術か・・・。で、孫呉はどうしている?まさか食事も出来ずに干からびているのではあるまい?」

 

 劉表の質問に、蒯越は淀みなく返答を返す。

 

 「今の所は兵糧補給で持っているようですが、補給線を狙われたり陣地の兵糧庫を狙われたりと難儀している様子です。どちらにせよ、あまり長期戦には耐えられないでしょうね」

 

 蒯越の言葉に劉表はふむ、と何かを考え始めた。

 

 「・・・まあいい、ここで負ければそれまでといったところ、か・・・。どちらにせよ我等にとって連中の勝敗等どうでも良いからな」

 

 「・・・ですが戦いは長引いてもらえれば此方にとっても都合が良いでしょう」

 

 「確かに、だが、どの道今の所は連中に手を出すつもりはない。連中には我等に手を出さないでもらえればそれでよい。我等の狙いは・・・」

 

 劉表が竿の手ごたえを感じて一気に引き上げる。と、引き上げた糸の先端に、今まで釣り上げた魚よりも遥かに大きな鯉が食らいついていた。それを見て劉表は笑う。

 

 「さらなる大物よ」

 

 

 

 

 あとがき

 

 皆さんこんにちは。今回は以前より早めの更新となりました。まあ充分遅いですけど・・・。

 

 今回は久しぶりの二喬と月、詠の登場です。まあただ単に登校してない期間が長すぎて久しぶりに感じてしまうだけなのかもしれませんが・・・。

 

 しかし本当になんで二喬は消滅してしまったんでしょう?ロリはもういらないって意味か?でもそれじゃあ雛里や美羽はどうなるんだって話になりますし・・・。

 

 やっぱり呉ルートで一刀が二人の変わり(雪蓮、冥琳の伴侶役)になるからいらなくなってしまったというのが正解なんですかね・・・。公式は何も言っていませんが・・。

 

 まあこの作品ではそこそこ出番はある予定ですので、二喬ファンの方は乞うご期待を・・・。

 

 ん?二喬のファンなんてそもそも居ない?いても少数派?

 


 
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