No.430320

【獣機特警K-9】立ち込める暗雲【交流】

古淵工機さん

大犯罪の温床と化した暗黒街。
果たしてその先にあるものとは一体!?
K-9隊、出動せよ!!

◆出演

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2012-05-31 00:06:05 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1000   閲覧ユーザー数:944

ファンガルド星には数多くの都市がある。

産業都市、農業都市、学園都市など実にさまざまな表情を見せるファンガルドの都市。

だが、都市にあるのは必ずしも輝きばかりとは限らない。

光があれば影がある、というように、都市にもまた闇の部分が少なからず存在しているのだ。

フェザントヒル。

ラミナ市の北西部に隣接する都市である。

ここには数多くのコングロマリットが次々に工場を建設し、そこで働く人々が都市を形成して今に到っている。

しかしながら、そのあまりにも速すぎる都市化の波に、そこに暮らす人々の秩序は追いついていなかったのだ。

事実、街路はスラム化し、廃工場や廃倉庫はマフィアやヤグザにとっては格好の隠れ家となっていた。

先日発生した女子児童連続誘拐・改造事件もこの都市の一角で起きていたのである…。

ところ変わってここは、ラミナ市内にあるラミナ警察署のK-9ルーム。

その扉が開き、マキ・ロックウェル署長が入ってきた。

「あ、署長。おはようございます」

「みんな、朝早くからご苦労さま。早速で悪いけど、あなたたちに辞令が下ったわ」

そう言うとマキは懐から1枚の紙を取り出し、K-9隊のメンバーに見せた。

 

<辞令 エルザ・アインリヒト以下K-9隊9名 上記の者、フェザントヒル市街及びその周辺地域の治安回復任務を命ず ファンガルド警察総監 アイヴィー・ヒルトン>

 

「…ということらしいのよ」

「やれやれ、また危険地帯ってワケですか」

と、アレクセイ・フトライミツィが銃を磨きながら呟いた。さらにマキは続ける。

「ええ、あの街は今凶悪犯罪が多発していて警察も手がつけられない状況が続いている。マフィアやヤグザがそこを根城にして一儲けしようと考えているみたいよ」

「なんてこった!警察は何してたんだよ!?」

と、頭を抱えながら叫ぶ超 五華に、シス・セザンヌのツッコミが炸裂する。

「…我らもその警察なのだが」

「うっ!?」

その漫才をよそに、マキはさらに続ける。

「酷いもので、あるものは首を切り落とされ、あるものはバイクで引きずられて殉職した。警察だとわかれば容赦なくマフィアやヤグザに潰される。今回行くフェザントヒルってそんな場所なのよ」

「そんな…!そんなの、あんまりにも酷すぎます!!」

と、テーブルを勢いよく叩いて立ち上がったのは煌月陸斗だった。

それをエルザは落ち着いた調子でなだめる。

「落ち着けリク、だからこそ我々が行くことになったのだ」

「でも、あんな危険な場所…」

「危険な場所、危険な任務だという事は承知している。だが、思い出してみろ。そもそも我々K-9隊の創設目的は何だ?」

エルザの問いに、リクはしばらく考えたのち、こう答えた。

「…えーと、確か通常の警官には成しえない危険任務の遂行…はっ!?そ、そうか!!」

「そういうことだ。一般の警官では到底遂行不可能な危険な任務こそ、我々が成すべきことだ」

再び緊張に包まれるK-9ルーム。その沈黙を破ったのはフィーア・天神と九段下久遠だった。

「でも、あそこって連日のように爆破事件なども起きているんでしょう?」

「確かに。こないだもテロがあって警官が5人死んだってニュースでやってたもん」

「ま、決死の作戦ならオレはいつでも大歓迎なんだけどな」

「でもやっぱり怖いですよ。俺あんなゴミだまりの中で死にたくないですし」

「どうかな?お前近接は不得手だから対ロボット爆弾踏んでそのままドカンかもなww」

「「「ええええぇぇぇぇぇ!?」」」

 

ウーのその言葉に過剰反応したメンバー、およそ3名。

「イヤだぁ!やっぱりボク死にたくなーい!!アレクお兄ちゃん、お先にどうぞっ!!」

「あのさ、俺は死ぬときはかわいい女の子の隣でって決めてるの。グーテ先行きなよ」

「お先って、ちょ、グーテだって死ぬのやだよ!!」

騒ぐ男子3人を見つめて呆然とする残りメンバー。

 

「えーっと、オレ何かマズいコト言っちゃった?」

そのウーの言葉に、イシス・トライスターの的確なツッコミが入る。

「十分問題発言です!恐怖心をあおるんじゃありません!!」

「えー…」

呆れ果てるイシス、フィーア、クオン、マキ、ただただ黙視しているシス、頭をかきむしるウー。

そして騒ぎ立てる男子メンバー。エルザはその状況を見るや、こう言った。

「落ち着け諸君。今回行くのは我々だけではない。他の機動部隊にも同様の辞令は来ているし、救護班の手配もついている」

「でもやっぱりヤですよ、いくらなんでもこれは…」

「大丈夫よ、みんな落ち着きなさい」

まだ涙を目に浮かべているリクの背後から、女性の声が聞こえた。そして、その声の持ち主がゆっくりとK-9ルームに入ってくる。

全身にはアーマージャケットを着込んでいたが、K-9隊のメンバーがその顔を見間違えるはずがなかった。

 

「そ、総監!?そのお姿は一体!?」

そう、いつもはセクシーな制服を着用しているピューマ形ロボット。アイヴィー・ヒルトン総監その人である。

「みんなも聞いての通り、この任務は我がファンガルド警察の中でも特Aクラスの危険任務よ」

「特Aクラス…ってことは?」

「最悪の場合、死亡もありえる。そのくらいの覚悟が必要だってコト。そしてこの危険任務に最も適しているのが…」

というアイヴィーの言葉に、静かに、かつ強い調子でクオンは答える。

 

「ボクたちロボットってワケなんだね…?」

「そう。でもいくら優秀な精鋭ロボット部隊といっても、あなたたちだけでは危険だから、さっきエルザが言ったように他の機動部隊にも連絡を入れてあるわ」

「じゃあ、総監はなんでそんなゴツいアーマーなんか着てんスか?」

「いい質問ね。なぜなら…今回の任務には私も行くからよ」

「…えええええええええ!?」

それに驚いたのはヤング組二人…リクとクオンだった。

 

「ちょ、危険地帯なんですよ!?ロボット用の爆弾なんかもあるかもしれないんですよ!?」

「そーだよ、死んじゃうかもしれないんだよ!?」

「大丈夫。こう見えて私は特別機動班の出身よ。弾丸の雨の中をかいくぐって生き延びてきたんだから。それに…」

「それに?」

きょとんとするK-9隊。アイヴィーはさらに続ける。

「…私はその機動班の班長を務めてたんだけどね…一人の殉職者も出さずにミッションを成功させたのよ」

「そ、そういえば聞いたことがあります。確かアイヴィーさんが在籍されていた機動部隊では必ず全員生還していたって…」

と、驚きの表情を浮かべるマキ。アイヴィーはその言葉を聞いて微笑を浮かべると、K-9隊のほうに向き直って言った。

「大丈夫。あなたたちはファンガルドの希望の星だもの…死なせはしないわ」

「なるほど、総監がそう仰るなら安心ですね」

「まあ、そうだな。…さて、作戦は明朝より実行される。そのため今夜中にはラミナ署を発つ。休眠はナインキャリアー内で行うのでそのつもりで」

「了解!!」

「フフ、みごとなリーダーシップよエルザ。…さて、そういうわけだからマキ、K-9隊のみんなは私がお預りします。いいかしら?」

「わかりました。ご武運をお祈りいたします!」

そう言うとマキは、安堵に満ちた笑顔でアイヴィーに敬礼したのであった。

 

かくしてK-9隊は、激戦の地フェザントヒルへと向かうこととなった。

果たしてそこで彼らを待ち受けているのは一体…!!


 
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