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魔法少女リリカルなのは ~英雄の魂を持つ者~ 第03話『決意と護る力』

龍牙さん

地球を守った34のスーパー戦隊の魂を受け継いだ豪快な奴等の活躍する世界とは別の世界、35のスーパー戦隊の力は前世の記憶と共に家族を奪われた一人の少年の元に。今、魔法とスーパー戦隊の大いなる力が交差する物語の幕が上がる。

2012-05-15 14:11:01 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2990   閲覧ユーザー数:2929

ゴーカイガレオン内

 

「これが手持ちの手札(レンジャーキー)全部か」

 

『侍戦隊シンケンジャー』、『魔法戦隊マジレンジャー』、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』、『忍者戦隊カクレンジャー』、『忍風戦隊ハリケンジャー』の五つのスーパー戦隊のレンジャーキー、計15個をテーブルの上に並べながら最後にゴーカイレッドのレンジャーキーを置く。

 

35番目に位置するゴーカイレッドの力しか使えない『海賊戦隊ゴーカイジャー』を除いたとして、ソウマは全34のスーパー戦隊の力の中で僅か五つしか会得していない。…いや、正しくはレンジャーキーに宿る戦士達の魂に認められていないと言うべきだろうか?

 

「あの時の事を考えると……闇のヤイバだけじゃないだろうな」

 

間違いなく、他にも過去の34のスーパー戦隊に倒された悪の魂達が復活しようとしている。しかも、海鳴市に散らばったジュエルシードを利用して。そう考えると気が重くなる一方だ。

唯一の幸いは復活したと言っても直ぐには完全復活しない事程度だが、そんな物は何の慰めにもならない。不完全な状態でさえ、怪人や雑兵とは比べ物にならない幹部クラスの敵の力は、(なのはとユーノと言う仲間が居るとは言え)たった一人で戦うしかないソウマにとっては強敵である事には変わりない。

 

新たに扱える様になったカクレンジャーとハリケンジャーの力で何とか追い返したものの、肝心のジュエルシードは闇のヤイバに奪われてしまったのだから、それはソウマ達の完全な敗北だろう。

しかも、その奪われたジュエルシードから既に別の敵が蘇っているかもしれないと考えると、不安だけが悪戯に煽られてしまう。

 

(…強くなりたい…)

 

闇のヤイバの言葉を思い出しながら、そんな事を思う。何度も顔を見せる自分の中の心の闇を無意識の内に否定するように。だが、否定すればするほど、闇はソウマの中で強く・大きくなっていく。

 

(…その為にも…)

 

そう考えながら無言でまだ扱う事の出来ない残りのレンジャーキーの入っている宝箱へと視線を向ける。

 

(他のスーパー戦隊に早く認められないとな…)

 

『スーパー戦隊の大いなる力』と贅沢は言わないが、せめて普通に力を扱う程度の事が出来る様になりたいと願わずには居られない。

 

無意識の内で掌を強く握りながらレンジャーキーから視線を逸らすと…………すっかり忘れていた最近見つけた鳥型改め“オウム型のロボットらしき物体”が視界に入った。

 

「っと、そう言えば何なんだ、これ?」

 

そう言ってソウマはオウム型のロボットを持ち上げて見る。時にちょっと振ってみたりもした。すると、

 

「うわぁー!」

 

「ガッ!」

 

突然掌から飛び出したオウム型ロボットはソウマの顔面を直撃してから部屋中を飛び回る。

 

「酷いよ酷いよ! オイラの扱い酷すぎるよ!」

 

「…何なんだお前は?」

 

「お前じゃないよ、オイラは『ナビィ』だよ。君は?」

 

「…悪かったな、ナビィ。オレはソウマ、大海ソウマだ」

 

妙に聞き覚えのある声で叫ぶオウム型ロボットのナビィに対してそう言うと、ソウマはナビィに背中を向けて出していたレンジャーキーを仕舞い、出かけようとする。

 

「ちょっと、何処行くのさ、ソウマ?」

 

「あー…ちょっと知り合いに誘われててな…。プールの時の事も有るしな…。じゃ、留守番頼んだぞ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

ソウマがドアを閉めた瞬間、ガンッと言う音を立ててナビィがぶつかると、それに驚いたソウマが部屋の中に戻る。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「う、う~ん。『恋する少年の下に有る災厄の種、想いを喰らい巨大なる破壊を齎すであろう』、こんなんでましたけど」

 

「…………」

 

心配してみるとナビィから飛び出した“不吉すぎる”予言めいた謎の言葉に思わず唖然としてしまうソウマ。

 

「…なんだよ、それ?」

 

そして、思わず聞いてしまう。

 

「何って、『お宝ナビゲート』だよ!」

 

「…災厄の種…ジュエルシードの事か…。物凄く欲しくないお宝だな。じゃ、改めて留守番頼んだぞ、ナビィ」

 

恐らくジュエルシードの在り処に関係していると言うのは解るが、肝心の内容が理解できない。が、間違いなくそのジュエルシードは一刻も早く回収しなければとんでもない事になる。それは理解できる。

 

一刻も早くナビィのお宝ナビゲートをなのは達にも伝えた方が良いだろうと考えて、内心慌てながらソウマはゴーカイガレオンを出て行った。

 

「あっ、ちょっと、まだ続きが有るよ! 『護ろうとする意思が命を守る力を与えるぞよ』って、何の事だろう?」

 

最後に告げられた予言を聞かずにソウマは出かけていった。まあ、前半部分の方がソウマにとっては重要なのだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウマは先日、なのはに父親が監督をしている翠屋JFCの試合が有るから見に来ないかと誘われた。

プールの一件以来、なのはが無理をしている様子が目立つ事と、多少は興味が有った事、プールでプールに居た全員が意識を失う前にソウマとなのはが居なくなった事をアリサ達に疑問に思われている事と合わせて誘いを受けた訳だ。

 

以前家に誘われた時になのはの母親には一度会ったが、なのはの父親には本日初めて会う事になる訳なのだが…。

 

「…妙な予感がするのは気のせいじゃないよな…? 絶対」

 

嫌な予感ばかりが当たってしまう事は、先日の闇のヤイバとの遭遇からも明らかになっているために思わずそんな言葉が零れてしまう。不吉すぎる『お宝ナビゲート』の内容と言い、はっきり言って不安材料が多すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

河川敷のサッカーグラウンド、サッカー選手達がグラウンドを走り回り、なのは達はそれを応援している。

 

『…と言う訳だ』

 

その最中にソウマはゴーカイガレオンの中で見つけたナビィとナビィの『お宝ナビゲート』で出た予言について話していた。

 

『それって、つまり、この先に発動するジュエルシードの事だよね?』

 

『先ず間違いないだろうな』

 

『でも、何処に有るのか全然分からないの』

 

『…ピンポイントな様で微妙な占いだよな。『恋する少年の下』なんて言われてもな…』

 

確かにナビィの占いだけでは何処に有るのか分からないが、それでもこれから発動するであろうジュエルシードの手掛かりが有ると言うのは大きいだろう。

 

『まあ、オレが見つけた所で封印は出来ないから、全部そっちに丸投げするしかないけどな』

 

『そう言えば、ソウマって封印とかは出来なかったよね』

 

『…オレの武器は便利な魔法の杖(デバイス)とかじゃ無いんでな。頑張ってくれとしか言えないな、残念ながら』

 

『うん、頑張るの!』

 

妙に張り切っている声を出すなのはに対して思わすソウマは苦笑を浮かべてしまう。

 

『そう言えば、ソウマって魔力は有るのに探知とかって全然ダメだよね』

 

『最初から覚える気無いからな』

 

ユーノ曰く、ソウマにもなのはに順ずるレベルの魔力は持っているそうだが、ソウマとしては、禄に使えるか分からない魔法よりもスーパー戦隊の力の方を選んで熟練度を高めているので、精々がこうして念話を使える程度だ。

 

『折角才能有るのに…』

 

『残念ながら、オレは二つの事を同時に出来るほど器用じゃ無いんでね。海賊戦隊として戦う道がオレの選んだ道って奴だ』

 

魔法の才能に関してはソウマは『不要』として切り捨てている。背負うべき力は、悪の魂達と戦う為にも35のスーパー戦隊の力と定めているのだから。

 

そんな時、ホイッスルが鳴り響く。それに気が付いて其方の方を見てみると、翠屋JFCの選手が一人、腕を押さえて倒れていた。

相手選手と接触した際に腕を痛めたようだ。マネージャーに手当てをされているが、本来なら腕なら問題なく試合を続けられるだろうが、悪い事に彼のポジションはキーパー、唯一サッカーで手を使えるポジションだ。

 

「大丈夫かなぁ?」

 

アリサが心配そうな声を漏らすが、どうやら試合復帰は無理そうな様子だ。補欠は居るが、中々交代の選手が出ない事からゴールキーパーのポジションは彼以外に居ない様子だ。

 

「まあ、最悪は適当な選手をキーパーにするしかないけど、負けかな、これは」

 

思わずそう呟いてしまうとなのは達から抗議する様な視線を向けられる。

 

「アンタ、どうしてそんな事言えるのよ?」

 

「あー…。キーパーってポジションは他のポジションと根本的に違うからな。当然、練習の内容も違う」

 

アリサの咎める様な言葉にソウマは総説明する。何度も練習を行って『手を使わない事に慣れている』選手では、キーパーはやり難いだろう。

 

「最後の壁に大きな穴が開いた様なモンだ、経験が少しでも有る奴が居ねぇなら、誰がやっても大差ないだろ」

 

どっちにしても、不利である事に変わりは無く、勝率が大きく下がったのは間違いない。

 

そんな事を考えていると翠屋JFCの監督でなのはの父親である『高町 士郎』と目が合う。

 

(…なんか、嫌な予感が…)

 

 

(…何でこんな事に…)

 

GK(ゴールキーパー)用の翠屋JFCのユニフォームに着替えてゴールポストの前に立ちながら、ソウマはそんな事を思う。

 

 

「君が大海ソウマ君か、君の事はなのはから聞いてるよ。俺は高町士郎、なのはの父で翠屋JFCの監督をやってる。よろしくな」

 

「はい、此方こそよろしくお願いします」

 

「突然ですまないが、試合に出てくれないか」

 

「はっ?」

 

 

物凄く短いがこれが、ソウマが試合に出るまでの経緯である。

 

的確にボールの動きを見て防いでいるのはこれまでの訓練の成果と言った所だろう。

闇のヤイバに敗れた後、これまでの訓練に加えて動体視力と視野の広さを磨く為に毎日空を眺めて流れ星を探す程度の事はしていたし。

そう言った意味ではソウマに代理を頼んだ士郎の詠みは当たっていると言えるだろう。

 

最初は素人がゴールキーパーになった事で味方の選手の動きが守りを中心にした消極的な物に変わったが、相手のシュートを的確に防いだ事で安心して攻撃に廻った事も有って今の所優位に進んでいる。

 

「甘い」

 

相手のシュートもソウマにしてみれば簡単に反応できる。今までの戦い…特に負けたとは言え前回の闇のヤイバとの戦いの経験と成果が有れば、反応出来ない方が不思議だろう。

 

(…丁度良い訓練って所かな?)

 

タイミングが合ったので相手のシュートを逆に蹴り返しながら表情に楽しげに笑みを浮かべる。考え込めば込むほど闇のヤイバの言葉は心の中に影を落として闇を育てる温床となるが、こうして体を動かしている間はそんな事を考えずに済む。結果的にソウマとしてはチームへの参加はいい気分転換になった。

 

だが、そんなソウマを見つめながら悔しげに歯を食いしばり手を握り締めるキーパーの少年の事にはソウマは気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウマSIDE

 

(…正直調子に乗りすぎました)

 

具体的に言うと、キーパーやっているのに飽きて思わず前に出てしまった訳です、ソウマくん。それで失敗すれば良かったが、結果的に得点にまで絡んでしまっている。

 

(…少しは動体視力とか上がってるのかな?)

 

どうも比較対象が圧倒的格上(幹部クラス)しか居ないので自覚が沸かないが。結果、この試合において、終盤だけとは言え運動神経と合わせて見事にキーパーだけでなく得点に絡むアシストで活躍してしまった訳だ。

 

(…改めて考えるとチームワークも有ったモンじゃないな。結果的に自分の役割放棄した訳だし。勝ったって言っても反省しないとな)

 

二度目の参戦が有るかは分からないが、少なくとも戦う時にこんな事ではダメだと反省する。チームのメンバーから尊敬の目で見られているのも知らず、3対0で勝利したチームの中で唯一深刻に反省しているソウマでした。

 

(…ダメだな、オレも…)

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウマはその後の祝勝会を断ってジュエルシードの探索に出ていた。少なくとも、ナビィのお宝ナビゲートを信じるなら、間違いなく動物では無く誰かが手に入れて、それを発動させる可能性が高い。下手をすれば既に手に入れている可能性もありえるのだ。

それを阻止する為にも、または短時間で解決する為にもと思って探しに出ているのだが、成果は上がっていない。

 

「ったく、何処に有るんだか…」

 

もう少し発動する場所が分かれば良いのだが、そこまで多大な期待するのはナビィに対して酷と言う物だろう。

 

(にしても)

 

壁に背中を預けて自動販売機から買った缶ジュースに口を着けながら、探すのを一旦止めて以前から肌身離さず持っている“それ”を手に取る。

ジュエルシードとは違う青い宝石らしき物の付いた簡素なペンダント。ソウマにとっての始まりの夜、家族の唯一の形見だ。

 

(…誰が父さん達を…)

 

思考が憎しみに染まりそうになるのを必死に抑えながらソウマはそれを握り締める。少なくとも、ジュエルシードの回収が終わるまではそれの事は忘れていよう、今回の事件が終わった後でなら、両親の敵について調べるのも良いかもしれない。…少なくとも、それが彼の中の『闇』の元凶となっているのは間違いないのだし。

 

そう考えてポケットの中にそれを押し込むとソウマは再び歩き出そうとした時、

 

「っ!? 何だ!?」

 

突然光が溢れ、巨大な木が生えていくのが見える。

 

「チッ!? 遅かったか」

 

舌打ちしながら周囲を見回すと残念ながら、今の人気では目立たずに変身するのは間違いなく不可能だろう。そう判断するとソウマは木の生えた方向へと向かって走り出す。

 

悲鳴を上げて逃げてくる人達の合間を縫って走っていると木の生えている方向から根が伸びてくる。

 

「豪快チェンジ!」

 

丁度人目が消えたのを確認すると素早くモバイレーツとゴーカイレッドのレンジャーキーを取り出し、ソウマはゴーカイレッドに変身し、ゴーカイサーベルを取り出し迫ってくる根を切り裂いていく。

 

「チッ! オレ一人じゃ被害を抑えきれない」

 

なのは達が一刻も早くジュエルシードを封印してくれるのを祈るしかない。少なくともゴーカイジャーの装備にこの状況で根に捕われたり、襲われたりした人を助けられる装備は少ないのだ。現在扱えるスーパー戦隊の力も同様の理由で無理だろう。

 

頭を振って意識を切り替えると、枝をゴーカイガンで撃ち落しながら、根をゴーカイサーベルで切り裂きながら、ソウマは手持ちのレンジャーキーで可能な方法を考える。

 

「チッ、精々マジレンジャーの力だけか」

 

そんな事を呟きながら、進んでいくソウマの手の中で新たなレンジャーキーが現れる。それは、人を、命を、地球の未来を救う、スーパー戦隊の一つ。

 

「ああ、力…借りるぜ! 豪快チェンジ!」

 

 

 

『ゴーゴーファーイブ!』

 

 

 

スーパー戦隊の中の最大のレスキューチーム、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』

 

「『ブイランサー』!」

 

ナギナタ状の武器『ブイランサー』を使いGゴーレッドは自身へと迫る枝や根を切り裂いていく。

 

(…チッ、それにしても限がない。ジュエルシードが発動した事は高町も知ってるだろうし、一度合流する事を考えた方が良いか)

 

そう考えながらGゴーレッドが進路上に居る逃げ遅れた人達を『ライフバード』の各種ツールを活用しながら、ジュエルシードの発動したであろう地点へと進んでいくと、なのはからの念話が届く。

 

 

ソウマの変身したGゴーレッドは進路上にいるジュエルシードの発動に巻き込まれた人達を助けながら進んでいくと、モバイレーツになのはから連絡が入る。

 

なのは達の現在地を聞いて直ぐに其方へと向かう。

 

 

…彼女達が居るのがビルの屋上だった為に上るのに多少時間が掛かったが。

 

 

「悪い、遅くなった」

 

「「ソウマ(くん)!?」」

 

「…流石に始めてみる姿じゃ戸惑うよな…」

 

現在の自分の姿がなのは達の知らない所で使えるようになった初めて変身したスーパー戦隊の姿である事を思い出してゴーレッドへの変身を解く。

 

「えっと、今のは…」

 

「『救急戦隊ゴーゴーファイブ』、レスキューのエキスパートでもあるスーパー戦隊の一つだ。この惨状に巻き込まれた人達を助ける為に、レンジャーキーの意思が力を貸してくれたんだろうな」

 

「…そう……なんだ…」

 

先ほどまで変身していたゴーレッドのレンジャーキーを手に取りながらゴーカイレッドはそう告げる。そんなゴーカイレッドの言葉を聞きながらなのはは俯きながらそう呟く。

 

「とにかく、早く元となっている場所を探さないと」

 

「いや、十中八九あそこだろ?」

 

ユーノの言葉にゴーカイレッドは中心にある大樹を指差しながら告げる。少なくとも、中心点と考えられる場所に大本である箇所にジュエルシードが有る可能性は高い。偶発的な暴走、何者かの意図が無い以上はそう考えるのが自然だろう。だからこそ、なのは達が不在の状況でゴーカイレッドは真っ直ぐに其処に向かおうとしていた。

 

「流石に細かい位置までは分からないけどな」

 

「確かに、言われてみれば…」

 

「レイジングハート、お願い!!!」

 

《スタンバイ・レディ、セットアップ》

 

ゴーカイレッドとユーノの会話を聞いていたなのはがデバイスをセットアップする。バリアジャケットを纏うとなのはは、

 

「リリカルマジカル、探して災厄の根源を!」

 

なのはがジュエルシードを探し始めた瞬間だった。周囲に有るダミーと思われる樹の一部が人型へと変わって襲い掛かってくる。

 

「え? キャア!」

 

「危ない!」

 

それはゴーカイレッドの振るうゴーカイサーベルの一閃で容易く倒す事ができたが、次々と眼下に広がる惨状の中で新しい個体が誕生している。

 

「…ウッドゴレムって所かよ…?」

 

「何これ…」

 

「多分、人間が発動させてしまったんだ。強い思いを持った者が願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強く発動するから…」

 

「なるほど、こいつ等は発動させた奴を守る番人って所か?」

 

ゴーカイガンで現れるウッドゴレムの群を撃ちながらゴーカイレッドは、

 

「こいつ等は任せて、早くジュエルシードを封印してくれ」

 

なのは達へと封印作業を任せ、自分はウッドゴレム達と戦う為にビルから飛び降りながらゴーカイガンを撃つ。それによってウッドゴレム達は一斉にゴーカイレッドへと襲い掛かってくる。

 

「さあ、派手に行くぜ!」

 

ゴーカイガンを連射しながらウッドゴレムの群の中に飛び込むとゴーカイサーベルで次々と切り裂いていく。

 

「オラァ!」

 

元が木製のせいかウッドゴレム達は簡単に倒せている。ウッドゴレムの一体を蹴り飛ばして他の固体と纏めるとゴーカイガンとゴーカイサーベルのシリンダー部分にレンジャーキーを装填、二つのシリンダーをぶつけ合う様にすると、

 

 

 

『ファーイナルウェーブ』

 

 

 

「ゴーカイスクランブル!」

 

ゴーカイガンから打ち出した銃弾を加速させる様にゴーカイサーベルの斬撃を飛ばし、二つの必殺技は一つになりウッドゴレム達を纏めて吹き飛ばす。

 

「良し、これで…っ!?」

 

何かの気配に気が付いて横に飛ぶと足元の樹が巨大な生物の頭の様に形を変えていた。同時に現れる新たなウッドゴレム達。

 

「チッ、やっぱり無尽蔵って訳か」

 

手の中にあるゴーカイサーベルを握りなおし再び現れたウッドゴレム達へと向き直る。シンケンジャーやマジレンジャーの力で纏めて燃やしてしまうのが一番楽なのだが、そんな事をすれば、下手をすればジュエルシードの発動に巻き込まれた人達まで焼き殺してしまう危険が有る。同様にカクレンジャーに変身したとしても下手な忍術は使えない。

 

(…能力制限されるのが三つ。マトモに使えるのは三つだけか…)

 

そう考えながら他のスーパー戦隊の力を借りる事を思い直す。

 

(…いや、一体一体は大して強くない。一人で十分だ)

 

再び新たに出現したウッドゴレム達に向かっていく。彼自身の目的は単なる時間稼ぎなのだ。なのはがジュエルシードを見つけるまで持ちこたえれば、勝ちだ。

 

「ハァ!」

 

ゴーカイレッドは再びウッドゴレム達を切り裂いていく。時折罠の様に現れる獣の頭状になった枝に注意する必要が有るのだが、それでも能力の上で優位に居るのはゴーカイレッド(ソウマ)の方だ。

 

「何!?」

 

だが、他のウッドゴレムの相手をしている内に足元から新たに出現したウッドゴレムに足を掴まれる事で動きを止めてしまう。同時に次々と現れるウッドゴレム達がゴーカイレッドの体を捕らえる事で動きを止めようとするが両足が動けないとしても、近づかれる前にゴーカイガンで、近づかれてもゴーカイサーベルで切り裂いていく。

 

「うわぁ!」

 

そんなゴーカイレッドに焦ったのか、別の枝から頭のようになった枝が伸びて動きを封じられているゴーカイレッドをそのまま飲み込み他の枝と一体化する様に消えていく。

 

「ソウマ君!」

「ソウマ!」

 

そんなソウマの姿に思わず叫び声を上げるなのはとユーノ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(くっ、ダミーって言っても殆ど本物の樹と変わらないか…)

 

辛うじて両腕は動かせるが武器を使える状況では無く、足は完全に固定されてしまっている。少なくともゴーカイサーベルを使っても切れるだけのスピードは持てず、ゴーカイガンもこの状況で使うには向いていない。

 

(…一番有効な手段の火で燃やすのは…無理だよな、やっぱり…。どうする?)

 

現在の手持ちの手札ではこの状況では完全に有効な手段が無く、なのはが一刻も早くジュエルシードを封印してくるのを待つしかない。

 

(…何やってるんだろうな、オレは…)

 

少なくとも大樹の生み出した防衛機能と思われるウッドゴレム達を無視して封印作業など出来なかっただろう。それが可能ななのはから注意を引き付ける為とは言え、一人で戦った。

 

(…結局、仲間を信頼も何もしていなかった訳か、オレは)

 

考えてみれば、ソウマは仲間を頼る事をせずに“一人で何かをしようとし続けていた”。封印等はなのはに任せるしかないが、戦う事は全て一人で何とかしようとしていた傾向にある。

 

「…サッカーの時だけじゃない。前々からそうだったって事か…。本当にダメだな、オレは」

 

そう思っているとバックル部分から光と共に新たなレンジャーキーが出現し、ゴーカイレッドの手の中にそれは降りる。

 

「これは…そうか…。これなら! 豪快チェンジ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウッドゴレム達は脅威としていたゴーカイレッドが消えるとジュエルシードを探知していたなのは達を次の標的に定めた様子でなのは達の居るビルに枝を伸ばし始める。

 

「なのは、あいつ等が来るよ」

 

「そんな、まだ終わらないのに」

 

まだジュエルシードの位置が分からず、ゆっくりと近づいてくる敵に対して焦る二人だが、そんな時、

 

 

『天装!』

 

 

そんな声と共に吹き上げた赤い竜巻が纏めてウッドゴレム達を吹き飛ばし、その中で切り刻む。

 

そして、片手に剣『スカイックソード』を持って、片手に特徴的な形をした共通装備『テンソウダー』を持ち、背中から半透明の天使の翼を広げ、半透明の羽を撒き散らしながら降りる赤き戦士。

 

「星を護るは天使の使命」

 

ソウマに新たに力を貸したのは、星を護る使命を帯びた五人の護星の天使、

 

「天装戦隊、ゴセイジャー! なんてな」

 

34番目…ゴーカイジャーの直接的な先輩に当たるスーパー戦隊、『天装戦隊ゴセイジャー』

 

ソウマの変身したGゴセイレッドはスカイックソードを地面に突き刺し、テンソウダーにカードを装填し、

 

「ツイストルネード!」

 

巻き起こす赤い竜巻がウッドゴレム達を吹き飛ばしていく。そして、

 

「こいつ等はオレが近づけさせない、落ち着いてジュエルシードを探すんだ!」

 

「う、うん!」

 

風を使ってウッドゴレム達を吹き飛ばす事で防ぎながらGゴセイレッドは、ウッドゴレムがなのはに近づけない様に護りに専念している。

 

 

「見つけた! リリカルマジカル、ジュエルシード…シリアルⅩ…封印!!!」

 

なのはが叫んだ瞬間、レイジングハートから巨大なピンク色のビームの様な物が発射され、ジュエルシードのある場所に直撃する。

 

 

「レッドブレイク!」

 

丁度襲い掛かってきた巨大な生物の頭の様になった枝をGゴセイレッドが切り裂くのと、なのはがジュエルシードを封印するのはほぼ同時だった。

 

足場にしていた枝が消えていくと、巻き込まれていた人達も同時に解放されていく。

 

「やったな」

 

その中で一人、Gゴセイレッドは車椅子の乗った少女の姿を見つけると、其方へと跳んで倒れていた車椅子を立たせて地面に横たわっている少女を起さない様に車椅子に座らせると、再びその場から飛び去っていく。

 

 

 

なのは達の元へと飛び去ろうとしたジュエルシードを中心に魔法陣が広がる。それと同時に、

 

 

『ウーザ・ドーザ・サザード』

 

 

不気味な声で何かの呪文が響くとそれに合わせてジュエルシードは消え去ってしまった。

 

「ええ!?」

 

「今のは、一体!?」

 

「今のは…プールの時の奴の仲間だ!」

 

なのは達の元に着地するとゴセイレッドへの変身を解きゴーカイレッドの姿に戻ったソウマが、慌てて彼女達の元に走りながら警告する。今のはマジレンジャーの魔法、それも敵側の…。

 

「ジュエルシード、取られちゃったんだね」

 

「そうなるな」

 

それでも、状況はまだ良い方だ。ここで復活した悪の魂との戦いは危険すぎる。ジュエルシードを奪われるのも危険だが、それでも今戦うよりもマシだろう。

 

「ソウマくん、ユーノくん、色んな人に、迷惑かけちゃったね…」

 

「え?」

 

「………」

 

ユーノはなのはの言葉に彼女の方へと顔を向けると、とても悲しそうな表情を浮かべていた。ゴーカイレッドのマスクで表情は見えないが、ソウマもなのはと同じ意見だろう。

 

「何言ってるんだ! なのはは、ちゃんとやってくれてるよ! ソウマもそう思うだろ!?」

 

「そうだ。なのはは良くやってる。寧ろ、ダメなのはオレの方だ」

 

誰がジュエルシードを発動させていたのか…中心地から降りてくる二人の顔には見覚えがあった。サッカーの試合の時にソウマと交代するしかなかった怪我をしたキーパーとマネージャーだ。

 

「…もしかしたら、暴走の原因はオレかもしれない…」

 

勝手なプレーをしたせいで…周りを考えずに勝手に行動したせいで。だとしたら、二重の意味で失格だろう。

 

「違うよ。私、気付いてたんだ。あの子が持ってるの…。でも、気のせいだって思っちゃった」

 

膝を抱えて座り込むなのは。その姿は親に叱られた子供のようだ。

 

「ソウマくんの教えてくれたヒントも、ソウマくんに一言でも相談してれば、こんな事起こらなかったかもしれないのに…」

 

「なのは…。お願い、悲しい顔しないで。元々は僕が原因で…なのははそれを手伝ってくれてるだけなんだから! なのは! なのははちゃんとやってくれてる」

 

「そうだ。何時までも俯いていちゃダメだ。次に起さない様にすれば良い。その気持ちをムダにしなければ…こう思って行動した方が良い」

 

俯くなのはにソウマがそう声をかける。

 

「そう呼ぶ資格が有るか分からないけどな。偉大な先輩の言葉だ。『何とかなるさ』ってな」

 

「ソウマくん」

 

ソウマの言葉に顔を上げながらなのはは微かに笑顔を浮べる。

 

(…僕は…僕は、たった一人の女の子の顔すら笑顔に出来ないのか…。ソウマだって、辛いはずなのに…笑顔に出来たのに…)

 

ユーノは意を決してソウマの肩へと飛び乗る。

 

「ねえ、ソウマ。スーパー戦隊って、五人居るんでしょ? だったら…僕にも力を貸してもらえないかな?」

 

「…はぁ?」

 

ユーノからの相談に思わず呆けた声を上げてしまう。流石に小動物には無理だろうと言う言葉を飲み込みながら、『決めるのはオレじゃない』とだけ告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、

 

「…何なんだよ、今日は?」

 

買い物帰りのソウマは思わずそう叫んで駆け寄る。ソウマの目の前に居るのは怪我をしてボロボロになった杖の様な物を持った金色の髪の少女と、傷だらけの赤い毛並みのオオカミ。

 

慌てて上空に姿を隠しているゴーカイガレオンを呼び出してゴーカイレッドに変身すると少女とオオカミをゴーカイガレオンに運び込む。

 

 


 
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