No.412031

ゆうかりんを鉄板で焼いてみた

お題ったー(http://shindanmaker.com/5317 )より「ユウガタノクマさんの今日のお題は、鉄板で焼かれている幽香です!頑張って下さい! 」との事なのでがんばった。というか一発目でこれが出てめっさ吹いたw。面白そうだからちょくちょくお題ったーのテーマに沿って書いてみます。

2012-04-21 20:12:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2558   閲覧ユーザー数:2551

 風見幽香は目を覚ました。

 背中に伝わるひんやりとした冷たさと、すこし体を動かすだけでもゴツゴツと骨に響く堅さに違和感を覚え、起きあがろうとする。

 がちゃり、と音が鳴った。

「くっ痛う!?」

 音と共に四肢が締め付けられ、元の冷たい寝床に引き戻された。

 あわてて腕を見て、幽香はさらに驚愕した。自らの手首には革の手錠がはめられており、鎖が寝床の下まで延びているのだ。そして、なぜ自分はこんな固い寝床に寝ているのだろうと思って首を回し、また驚きの声をあげた。

 幽香は黒く冷たい鉄板の上で寝ていたのだった。

 記憶を反芻してみるも、いつも通りパジャマにナイトキャップを被って、いつも通りにふかふかのベットに眠ったところまでしか記憶がない。

「何これ……」

「目が覚めましたか?」

「誰!?」

 頭上からの声に、とっさに顔を向ける。

 そこには二本の触覚を揺らせて不適に笑う妖怪、リグル・ナイトバグの姿があった。

「おはようございます。幽香さん」

「あなた……いったい何のつもり」

 いつもとは違う雰囲気のリグルに違和感を覚えながらも、幽香は四肢につけられた鎖を引きちぎろうと力を込めた。

 普段の幽香ならこのような鎖は豆腐を崩すように簡単に壊せるだろう。しかし、鎖はがちゃがちゃと音をたてるばかりで一向に外れる気配はなかった。

 そんな幽香に構うことなく、リグルは悠然とした表情で語り始めた。

「幽香さん。僕はね、ずっと考えていたんですよ」

「……何を」

「幽香さんはいつも僕に激しく攻撃をしてきますね」

「そうね。で、それがなにか問題?」

「僕はですね。それでいつも痛くて、辛くて、苦しんでいたんです。けど、それが幽香さんがくれる愛だと思って喜んでいたんです」

 ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。

これはいつものリグルではない。いつものようにじゃれて来てはでマスタースパークを受けるようなリグルではない。

「でも、幽香さんは痛がっていない。辛がっていない。苦しんでいない。それじゃあ僕が幽香さんを愛していると言えないじゃないですか」

「な、何を言って……」

 手のひらが汗でびしょびしょになる。なんとか起きあがろうともがいてみても、固いドアを叩くような音と鎖の音が鳴り響くだけで一向に効果がない。

「ですから、これから僕が幽香さんを愛しているという証拠をお見せします」

 そう言って、リグルは姿を消す。そしてどこかからカチリ、という音が聞こえた。

 それと同時に火花が弾ける音が響いたと思うと、急に冷たかった背中が熱を帯びる。それにある一つの想像が頭をよぎって、幽香は「ひっ」と声をあげた。

「あ、あなた一体何を……」

「ですから、幽香さんにも僕の愛を分けてあげるんですよ」

 じわりと暖まる背中は次第に熱いと感じるようになり、やがて無数の針を刺されるかのような激痛へと変わった。

「あつっ……ぐぅぅぅぅぅぅ!!!!」

「そうですよ幽香さん。もっと痛がって、苦しんでください。それが幽香さんが教えてくれた愛の形なんですから」

「ふ、ふざけ……あつ、熱い……か……はっ……」

 弾ける音と共に肉が焼け焦げる臭いが立ちこめる。背中から昇る煙が肺に吸い込まれ、呼吸すらおぼつかなくなってしまう。

「熱い……あつ……あつっ……つぅぅぅ……ぅぅぅぁぁああああああああ!!!」

 獣のようなうなり声をあげ、手足がちぎれんとばかりに振り乱す。それでも彼女を

つなぎ止めた鎖は外れる気配はなかった。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

「なにを謝っているんですか幽香さん」

 リグルは幽香の顔をのぞきこんで言った。幽香の表情は涙でぐずぐずになり、以前の勝ち気な姿からは想像できない状態となっている。

「あつい!あついの!!もういじめたりしないからもう……やめ……」

「やだなあ、幽香さんは誰もいじめてないじゃないですか。それどころか僕は嬉しいんですよ。こうして、僕たちは痛みも辛さも苦しさも分けあうことができたんですから」

「そ……そんな……」

「それともまだ僕の愛が足りないですか?実は今、火力も中火の状態なんです。強火にしておきますね」

「ちょ、やめ……や……」

「えい」

「あぐぅぅぅぅぅぅぅううううううううう!!!!」

 流れ出た油や汗がはぜ、肉が異臭と共に音を立てて焼ける。後頭部から脳髄に熱が伝播し、すでに意識を保つことさえ困難な状態となった。その時。

 唐突な落下感と背中に激痛が走った。

 

                       †

 

「幽香さーん」

 花畑にのんきな声が響いた。マントを翻してヒマワリの木立を走り抜け、リグルはザクザクと地面を掘り返している幽香に近づいた。

「……」

 不機嫌そうに手のひらサイズのスコップを振るう幽香はリグルの声にびくり、と反応する。そしてリグルが幽香のそばに来ると。

「バゴス!」

「ありがとうございます!?」

 リグルをスコップでひっぱたいた。

「ねえ。わたしね、昨晩イヤな夢を見たからすごく機嫌悪いの」

 幽香は地面にうずくまったリグルの襟首をつかみあげると、脇に置いておおいた愛用の日傘をリグルの鼻先に突きつけた。

「そ、そうなんですか幽香さん。よければ僕が相談に乗りますけど……どんな夢だったんですか」

「とりあえず、一方的に殴られる痛さと怖さを教えてあげるわ」

 花畑に七色のマスタースパークが飛び出したのはその時であった。


 
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