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超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第12話

ME-GAさん

PCネットは手近(部屋の外)だし、スマホはWifiにしたら何故か電波が悪くなったorz
ネプVの話を知ったのは今日……
ショートメールとかも今日見ました申し訳ないです

2012-04-18 17:35:46 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1635   閲覧ユーザー数:1578

「あれからどれくらい経ったです……?」

「だいたい3日ってトコかしら」

コンパの問いにアイエフは携帯の時刻表示を見て答える。

ネプテューヌが倒れ、一行がココ、協会地下牢に閉じ込められてはや3日。

 

アイエフは傍らに倒れるネプテューヌの頬をそっと撫でる。

「ねぷねぷはどうですか?」

「ん、呼吸も弱くなってるし、冷たくなってる。早くココを出て治療しないとヤバイかも……」

アイエフはそう言って哀しげな表情を見せる。

アイエフは再び携帯を開いて液晶画面を見つめる。

「携帯にココまで助けられたのは初めてね」

「確かに、こんな真っ暗なところに一人でいたら気が滅入っちゃうです……」

コンパも今にも泣きそうな声でそう告げる。

 

彼女らに問題はなかった。

ただ閉じ込められているだけ。

一応食事も出るし、暗いだけで不便と感じたことはない。

しかし、問題はネプテューヌだった。

毒の効力か、一向に目を覚まさず、ただただ弱っていく。

治療も出来ない。

一刻の猶予も無かった。

 

 *

 

「生きてるか?」

扉の向こうから静かな声。

アイエフは咄嗟に身構える。

果たして相手が誰かは分からない。

だからこそ、なのか。

「誰?」

アイエフの問いに恐らく男は答えない。

「お願いです、助けて欲しいですぅ……」

コンパの今にも泣き出しそうな言葉に男は懐から鍵を取り出して扉の施錠を解く。

静かに解錠する音が響き、アイエフとコンパはネプテューヌを抱えて牢屋の外に出る。

「……とりあえず助かったわ」

「今はそんなことを言っている場合じゃない。すぐにここを出るぞ」

男は手招きして一行を促す。

しかし、

「待ってくださいです! もう一人、テラさんが……」

「今は構っているヒマがないんだよ。いいから早く!」

男の気迫にコンパはビクリと後退って、再びネプテューヌを抱えて躊躇しつつも男の後を追った。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

地下牢奥のとある一室。

不穏な空気が張りつめ、そこ一帯は他とは違う、別次元とも呼べるべき雰囲気を漂わせていた。

心なしか、黒霧が立ちこめて近付くだけで嫌悪感を煽るような空気が流れている。

 

『ハッ――ハッ――!』

 

獣の息遣い。

否、呻き声。

地獄のBGMを思わせるような畏怖の念を構築させるソレはただただそこに居た。

 

否、有った。

肩で息をし、動く度に揺れる美しき銀髪には汗がしたたり、双曲の、角、にはギラギラとどこから降り注いでいるのかと疑問を抱くように、光が反射している。

拘束された右手、左手、右足、左足は小刻みに震え、時折大きく揺れてはガチャガチャと拘束具を揺るがしまた呻き声を上げる。

 

テラ。

危険分子、そう見なされたテラはこうして協会地下牢最奥地に収容、拘束、封印、されていた。

テラに自我はない。

怒りに呼応し、動き、暴れ、狂い、壊す。

それしかなかった。

 

 

 

『ギ……ガァ……!』

ガシャン、と一際大きな金属音が響く。

しかし、また無音。

テラはがくりと頭を垂れる。

虚ろな瞳の先には――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

豪勢な装飾がされた一室。

ところどころに金色のやら銀色やらの装飾を施した内装は明らかに貴族であることを主張しているかのような雰囲気を漂わせている。

ガチャ、と扉が開き、先程の男がアイエフ、コンパの目の前にソファに腰掛ける。

「連れの娘は別の部屋で医者に診て貰っている。息もしているし、ひとまずは安心だ」

「なんで助けてくれたの?」

アイエフはそれでもまだ警戒の色を隠さずに男に言う。

「そう警戒しないでくれ。俺はジャッド。貴族だ」

アイエフの思った通りか、やはり男、ジャッドは貴族であった。

「あの、どうして私達のことを助けてくれたですか?」

「安心しろ。ちゃんと訳は話すつもりだ」

ジャッドは紅茶のカップを傾けて優雅に一啜りする。

やはりこの仕草は貴族と言うべきか、格が違うというか何というか、と考えさせられるものである。

「助けたのは、ただ単純に可哀想だった、ってのはダメだろうか?

貴族の祖先は、『弱きを助け、強くを挫く』そんな誇り高い騎士だったからな」

しかしながらアイエフは相変わらず警戒する。

やはり、あんな事の後では不信にもなると言うべきか。

「まだ信用できないのか?」

「確かに今回は堪えたもの。ちゃんとした理由を言って」

「……強いて言うなら協会絡みだったってトコだな。

現在、協会と貴族は仲が悪い。信仰を重んじる協会と誇りを重んじる貴族。

前々から摩擦はあったが、今回は違う」

ジャッドは足を組み、ソファに深々と腰掛ける。

「既に貴族は、協会……とくに教院に対して大規模な武装蜂起を計画している」

「そこに、偶然私達がいた、ってことね……」

アイエフはなんとか納得してところで出された紅茶に手を伸ばす。

しかしながら、現在の問題はそれではない。

「ねぷ子は?」

「あの娘なら……」

「意識は戻っていないですけど、脈は安定しているです。

ただ、やっぱり原因の毒をなんとかしないことには……」

ネプテューヌの様子を見に行っていたコンパはアイエフの隣に腰掛ける。

ジャッドは何やら資料を取り出して二人の前に置く。

「件の毒だが、もうだいぶ前のものだ。記録を何年も遡ってやっと見つけたんだ」

コンパは資料に目を通して表情を嬉々としたものに変貌させる。

「でも、プラネテューヌの細菌兵器じゃないだけマシです。これなら材料が有れば、調合は簡単です!」

「じゃあ、材料が有れば万事解決ってことね?」

しかし、ジャッドはふるふると首を横に振る。

「簡単な話じゃないぞ。古い薬だけに、どこも材料となるモンを扱っていなくてな。

つまり、自分達で調達するしかないんだ」

アイエフは面倒くさそうな顔で立ち上がる。

「はぁ……、しょうがないわね。こんぱはここでねぷ子の看病していてくれる?

私が行ってくるから」

「ダメです! 専門的なことなので、私が行かないと分からないです!

あいちゃんがねぷねぷの傍にいてあげて欲しいです」

「……そんなに言うくらいなら二人で行ってこい。ネプテューヌはこっちで看ているから」

ジャッドは面倒くさそうに二人に指示する。

二人は少々納得のいかない感じの表情になったが、仕方が無く部屋を後にした。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

果たしてどれほどの時間が経ったか、

それはテラには分からなかった。

 

分かりたくもなかった。

ただ、目の前に広がる無力感と絶望感が内に溢れるように吸収され、己の中で沸々と煮えたぎっているのを感じた。

もう何も口にしていない。

どうでもよかったのだろう。

それ程までに、彼はショックを受けていたのだろうか。

 

はたまたは、また別の理由か――。

 

 

 

荒々しくドアが開く。

しかし、テラは顔を上げない。

ただじっと、床の一点を睨み続けて動かない。

男はテラの拘束具を外し、小さな手錠でテラの両手を後ろ手に拘束する。

「歩け」

乱暴に言ってのけ、テラはふらふらと立ち上がる。

時折前のめりに倒れそうになりながらも、ただ男の指示に従い、連行される。

最早、何も感じていないのかもしれない。

感じたくないのかもしれない。

 

 

白が映えるリーンボックスの自然を一望できるテラス。

そこに少女、グリーンハートは優雅にコーヒーを傾けていた。

「グリーンハート様」

おずおずと声を掛ける教院関係者の男性にグリーンハートはくるっと顔を向ける。

「例の少年をお連れいたしました」

「そうですか。ありがとうございます」

グリーンハートはニコッと微笑んでそう答える。

テラはがくんと崩れ落ちて、そのまま無言。

その姿を見てグリーンハートは小さく驚愕の表情を見せる。

「あらあら、すぐに拘束を解いてあげてください。一緒にお茶でもしましょうか」

グリーンハートの言葉に教院関係者は少々戸惑いつつも、テラに掛けられた拘束を解き、相変わらず頭を垂れて無気力に項垂れているテラをグリーンハートの正面の椅子に座らせる。

「それから、紅茶がよろしいかもしれませんわね。すみません、紅茶とお菓子を二人分お願いしてもよろしいですか?」

グリーンハートにそう言われて、慌てて教院関係者は言われたとおりの品を取りに戻る。

 

無言。

「初めまして、で間違いないですわね。リーンボックスの守護女神グリーンハートですわ」

「……」

無言。

しかし、グリーンハートは表情一つ変えずに、カップに残るコーヒーを最後まで飲み込む。

「今日はとても美味しいケーキがあると聞いて、是非貴方にも食べて頂きたいと思いまして、こうしてお呼びしたのです」

「……」

また、無言。

「……ネプテューヌのことを気にしていらっしゃいますか?」

「……当然だろ」

テラの低い声音に少々驚きつつもグリーンハートは続ける。

「もし、私がネプテューヌ暗殺を企てたというなら、貴方はどういたします?」

「……飛びかかって喉元抉ってやる」

グリーンハートは「それは怖いですわね」と呟いて運ばれた紅茶をそれぞれのカップに注ぐ。

「どうぞ、お召し上がりになってください」

しかし、テラは動かない。

「とっても美味しいですわよ?」

グリーンハートはそう言ってケーキを一口サイズに切り、そっと口元へ運ぶ。

もぐもぐごっくんとケーキを飲み込み、グリーンハートは口を開く。

「私はネプテューヌの暗殺などは企てておりません」

「……」

「信じたくはないですが、恐らくは教院長の独断かと……」

「だから何だってんだ……」

テラはバンとテーブルを荒々しく叩く。

「だからって何だ!? それでアイツが戻って来るのかよ!

誰がやった、も関係ねえ! これは全部協会に関係したテメエ等の仕業だろ!!」

テラはそう言って再び椅子に座る。

 

 †

 

苦悩――

 

責任逃れ?

そうだ。

責任逃れ。

逃げたいだけ。

守れなかった自分を赦したいだけ。

怖いだけ。

目の前の少女、この人は、悪くない。

そう、分かっているはずなのに。

 

 

怖い

 

――怖い。

怖いんだ。

怖いだけなんだ。

弱いんだ――。

 

 †

 

「ッ……!」

テラの頬を一筋の涙が伝う。

グリーンハートはただ見て見ぬフリ。

テラは両肘をテーブルに突く。

「クッソ……」

苦悩

後悔

様々な感情が渦巻く中で、テラは、全てを――。

 

投げ出したくなった。

 

 

 

 

それでも――、

 

 

「これを」

 

グリーンハートはテラの前に数枚の資料を置く。

「教院長が使用した毒薬の資料ですわ」

「……」

「こちらに解毒剤の材料が、明記されています」

「……!」

テラは資料を手にとってそれらを一つ一つ確認していく。

「残念ながら、古い薬のために材料はどこの店舗も扱っておりませんでしたわ……」

「……だったら採ってくればいい、ってことだろ」

テラは立ち上がり、協会の出口を目指す。

ふと、立ち止まる。

「なあ、女神様?」

「……ベールと呼んでくださいな。堅苦しい呼び名はあまり好きではありません」

 

テラは暫しの沈黙の後、

「ベール、なんでここまでしてくれる?」

「……何故でしょうね?」

「……」

ベールは相変わらずの微笑で答える。

「……礼は言っておく。ありがとう」

テラはそう言い残し、勢いよくテラスを飛び出した。

決意に満ち満ちた表情で。

 

 

 

 

――守りたい、と

 

胸に秘めながら。

 

 

 

「これだな」

テラは群生している解毒薬材料の一つである植物を一定量集めてバッグにしまう。

 

数時間走り詰めの戦闘詰め。

テラも少々疲労を感じ始めたところではあるが、休んでいるヒマはない。

一刻も早く材料を集め、ネプテューヌの元へ届けなければならない。

その思いだけが、テラを突き動かす。

だから走る。

 

 

「あった!」

「やったですぅ!」

コンパはアイエフから薬草を受け取り、バッグにしまう。

彼女たちが集めた材料はこれで5つ目。

あと二つ集めれば、解毒剤を作成することが出来る。

しかし、

「つ、疲れた……」

「ここまで来るのにすごく時間が掛かったです……」

コンパとアイエフはぜいぜいと肩で息をして近くの木に寄り掛かる。

走りっぱなしで約2時間。

流石に、少女達の体力としては限界と言うべきか。

「あいちゃん……少し休憩するです?」

「ううん。あと少しだから頑張るわ」

アイエフはすっかり疲弊した身体を引きずってゆっくりと前進するが、すぐにぺたんと座り込む。

 

 †

 

「あれ……?」

何とか立とうとしてみるが足が言うことを聞かない。

「あいちゃん? 大丈夫です?」

「うん……」

とは言ったモノの、立とうと思う気持ちとは反比例して身体はどんどん重くなっていく。

どうしよう……。

早くねぷ子を助けないといけないのに……。

 

しかし、そう思えば思うほど私の身体から力が抜けていく。

とうとう上体も維持できない始末。

私はくらりと後ろに倒れる。

が、急いでコンパが支えてくれる。

「ありがと……」

「あいちゃん、相当疲れてるですね!? なんで言ってくれなかったですか!?」

珍しくコンパが大声を上げている。

やっぱり看護学生だけに、こういうところは厳しいのかな。

とりあえず、コンパは私を木陰に移動させてくれる。

「はぁ、ホントならこんなところで休んでるヒマなんかないのに……」

「ダメですよ! ここで私達が倒れちゃったらねぷねぷも助けられないです!

まず私達が健康状態を最善にしておかないとできることもできないです!」

「そう、よね……」

私はそう言って全身の力を抜く。

そう言えば、最近力みっぱなしだったかも……。

肩が痛いわね……。

 

そう思ってなんとなく自分の方を軽く揉んでみる。

スゴイ肩こりしてる……。

私はそう思って木に頭をもたれ掛からせてみる。

凄く力が抜ける。

何もしたくないな――。

 

 †

 

ズシン、

と辺りに軽く地響きが鳴る。

見れば、音のした方向には巨大モンスター、ミノタウロスが巨大な戦斧を構えて佇んでいる。

ズシンスシンと足音を立てて歩き出す。

「って、こっち来てない……?」

「来てるです……」

二人は身を寄せて恐怖に身を駆られる。

疲労で動けない。

敵は間違いなく、彼女たちを目標としている。

目の前で戦斧を振りかぶるモンスター。

 

――終わる。

 

そう二人が感じたときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「伏せろっ!」

 

轟く少年の声。

少女達は反射的にその声に従い、身をかがめる。

直後、ミノタウロスの頭部から爆炎が上がる。

飛び出す影。

それは屈強なミノタウロスを蹴り一撃で吹き飛ばし、さらに爆撃弾を撃ち込む。

モンスターの姿が爆煙に包まれ、視認できなくなるが、それでも追い打ちで少年は弾丸を撃ち込む。

「……テラ?」

「おうよ」

少年、テラはアイエフの問いに答える。

「しばらくしゃがんでろ」

テラは腰のナイフを掴んで突っ込む。

雄叫びを上げてミノタウロスは戦斧を横に薙ぐ。

テラは身をかがめてそれを避け、足に弾丸とナイフで一閃し、機動力を削ぐ。

更に、その隙にもう片方の足に全力の蹴りを叩きこみ、モンスターを転ばせる。

転倒したモンスターは悲鳴を上げて蹲る。

テラはモンスターの頭上に跳躍して脳天に蹴りを叩き込む。

モンスターが少し唸るとがくっと力無く倒れる。

「大丈夫か?」

「え、あ……うん」

差し伸べられた手を取ってアイエフは立ち上がるが相も変わらずアイエフはふらふらと崩れる。

「……立てないのか?」

「そうみたい……」

「ん、そうか」

テラはそう言ってアイエフを抱え込む。

「ぅえ!?」

アイエフは奇妙な声を上げて赤面する。

俗に言うお姫様抱っこ。平然とやってのけるテラにアイエフは金魚のように口をパクパクと開け閉めしている。

「ホラ、コンパも」

テラは少々屈み込んでコンパに背中に乗るように促す。

コンパは遠慮しつつもテラの背中におぶさる形となり、何この人間玉? みたいな感じになっている。

「って! テラ、ちょと待って!」

慌てすぎて噛んでいる。

しかし、テラは気にしない。

「ここにねぷ子の解毒剤の材料があるの! 採ってこないと――」

「大丈夫だ。お前らが集めた5つの材料と、俺が集めた2つで足りる」

「テラさんも材料集めしてたですか?」

コンパの問いにテラは頷く。

「ん、ここに来る前に二人がここに行ったってのを聞いてさ。もしかしたらって思って来たけど、ギリギリのところ出会えてよかったよ」

テラはずり落ちそうになるコンパを再び好位置に戻して少し早足になる。

「急ごう。少しでも遅くなったらねぷ子の命がない」

テラは駆け出す。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

貴族邸。

ネプテューヌが眠る部屋の隣室。

そこには何とも言い難い不穏な空気というか何というか、とにかくそういった類のモノが流れていた。

テラとアイエフ。

その二人だけがそこに居た。

テラはごうかな装飾のなされた柱に背をもたれ、アイエフはソファに腰掛けている。

 

――無言。

 

――静寂。

 

居心地の悪い空気。

嫌悪?

しかしながら、その空気は払拭できない。

果たして二人にもその空気は嫌悪感を抱けるほどに悪い空気である。

しかし、である。

それを振り払うには、あまりに事態は深刻すぎる。

「……」

「……」

無言も無言。

もう何も言わなすぎて備え付けてあるクローゼットからうぅ~、と呻き声が聞こえてくるほどに恐ろしい静寂であった。いや、クローゼットから声聞こえたら普通に怖いんだけどね。つーか、音してないからね。

ともかくである。

テラはあまりにアイエフを信じなさすぎた。

アイエフもテラや仲間を信じなさすぎた。

あんまりである。

「なんで、こんなことになってるんだろな……」

テラはゴン、と鈍い音を立てて窓ガラスに強打したこめかみを押さえる。

「……」

アイエフは服の裾を握る拳に込める力をいっそう強めた。

「ずっと、辛かったのよ……」

「え?」

アイエフが唐突に口を開く。

「教院長に言われた通り、ね。自分の信仰心を隠すのが辛かったわ……。

自分の信じたいモノを公にさらせない、いつも演技している自分が辛かった……」

アイエフはそう言って力無く笑う。

もう、笑うしかないのである。

テラは、そんなアイエフを見て唇を噛む。

アイエフはグイと目尻を拭う。

泣いている、まさにそうだった。

テラはきゅっと口をつぐむ。

 

 †

 

傷つけて、しまった。

泣かせてしまった。

大事な娘を。

守りたいと、誓ったのに。

結局自分は要領が悪い。

守りたいと決めたモノの一つしか守れないのか。

いや、一つも守れていないじゃないか。

 

辛い。

 

苦しい。

 

痛い。

 

きっと辛いのは彼女の方。

自分が弱きになっているヒマなんかない。

資格もない。

 

 

「そう、よね……。正式に女神様の信仰できるー、なんてそんなオイシイ話、あるワケないよね――」

アイエフは乱暴に涙を拭う。

しかし、後から後から流れ出るソレはもう止められない。

止められないんだ。

「へへ……。なんでだろ……?

とうの昔に決めたはずだったのに……。なんで、今更……」

そう漏らす声も震えているのが分かる。

「アイエフ……」

でも、なにもできないんだ……。

無力さ。

 

 

 

歯がゆい。

気持ちが悪い。

許せない。

俺はそっとアイエフに歩み寄る。

そして、彼女を抱きしめる。

それしかできない。

そうしかしてやれない。

「ゴメンな……」

「え……」

「俺が、お前のことをちゃんと見てやれなかったから……。

お前も、辛かったんだよな……」

そう言って、彼女の綺麗な茶髪を撫でる。

「そんな、こと……っ」

「ゴメンな……すぐに信じてやれなくて……」

自分の声も震えているのが分かる。

辛い。

自分が駄目だと改めて感じさせられる。

「隠さなくていいんだ……」

「え……?」

「自分に嘘なんか、つかなくていい……」

彼女を抱く力を少し強める。

腕の中で彼女が震えるのが分かる。

伝わる。

「嘘、なんて……」

「俺達と居るときくらい、いや、俺の前でくらい素になってもいい……。

隠さなくていいんだ……。自分を偽るのは辛いモンな……」

彼女の腕が俺の背中に回される。

震えている。

 

 †

 

「わ、たし……」

アイエフの声は震えている。

頬には大粒の涙が伝い、唇はふるふると震えている。

小さな嗚咽を漏らしながら、彼女は告げる。

「つ、らかったよぅ……。ずっと、苦し、かった……」

テラの胸に顔を埋めて消え入りそうな声で。

テラはそっと、その小さな背中を撫でる。

「隠さなくていい。きっと、みんな受け入れてくれる。例え、お前が何をしていたとしても――」

テラはアイエフを抱き寄せる。

彼の腕の中で、アイエフは小さな声で泣きじゃくる。

偽りの自分を洗い流すように。

「っ……う、くぅぅ……!」

「辛かったな……。ゴメンな……」

テラはきゅっと目を瞑る。

苦悩、そして後悔。

 

 

 

 

 

 

 

 

――。

 

ドタドタと荒い足音の後、一室のドアがけたたましく開け放たれる。

「おまたせー! ネプテューヌ、ただいま復・活!!」

ババーン!

と、豪勢なBGMが流れそうなほどに堂々と扉の前でポーズを決めるネプテューヌを二人は流れていた涙も止めて呆然と見ていた。

「ねぷねぷ~、いきなり走ったら駄目で……す……」

ネプテューヌとアイエフは部屋の状況を見て、テラやアイエフと同じくして呆然と立ちすくむ。

それもそのはず、テラがアイエフを抱き寄せ、端から見れば恋人同士。

しかしながら、内情を知っている彼女たちからすればソレすなわちテラがアイエフを襲っているようにしか見えないのである。内情分かってねえじゃん、という突っ込みには黙殺とさせて頂く。

「……て、……て、……」

「……て?」

ネプテューヌはわなわなと拳を振るわせて怒りオーラを周囲に纏う。

そして、地面を勢いよく蹴り、テラに向かって――

 

 

 

 

 

「テラさんの、馬鹿―――――!!!!」

 

恐らく、ネプテューヌ史上初の華麗なライダーキックを決めることに成功したのである。

「何でおrゲッフ!!」

見事にテラの右頬に命中し、テラは豪快にかぐやら何やらを巻き込んだあげくにテーブルの角に後ろ頭を強打し、意識を失った。

 

 

 

 ‡

 

「何故、女神が鍵の欠片の存在を知っている!? お前が教えたのだろう、イストワール!!」

女性はバンと机を叩き、萎縮してしまいそうになる怒号で叫ぶ。

「嘘をついたな! 私が居ない間に思念を飛ばしたのだろう!?」

「……」

しかし、イストワールは答えない。

「何人だ! 『守護神』達の何人に鍵の欠片のことを話した!?

何人が動いている! どこまで知っている!?

モンスターのことか、魔王のことか!! 答えろ!!」

「……」

イストワールは未だ無言。

「何も、話す気はないか……。

もう、その口は用を持たんな……。黙らせておいてやる……!」

 

 ‡

 

「――ッ!」

テラはガバと上体を起こす。

全身のあちこちが痛い、とテラは違和感を覚えるが、自分はいったいどうして眠っているのか全く記憶になかった。

ふと、自分の周りを見ればテラはベッドではなく、ソファで眠っていた。どうでもいいな。

そして、傍らではネプテューヌ、コンパ、アイエフが見慣れぬ人物二人と何事かと話している。

「――この人は俺の養父で貴族長のテュルコワーズ郷だ」

テラにとって見慣れぬ人物一号のジャッドは隣に座る立派な髭を生やした中年の男性の紹介やらなんやらをしているらしかった。

「あ、テラさんおはよー」

ネプテューヌはもぐもぐとなにか、炒飯的な食べ物を頬張っている。

「ああ、おはよう……?」

とりあえず、なんで自分は寝ていたのか、とかそう言う疑問は多岐にわたって浮かんできたのだが、とりあえずテラは立ち上がって一同が居るテーブルの周りに近付く。

「ネプテューヌと君にはまだ挨拶していなかったな。

俺はジャッド。協会に密偵に行ったときに、この三人を連れて来て保護した」

その言葉にテラはビキリと額に青筋を浮かべて掴みかかり、低い声音で言う。

「おい……お前の所為でこっちはどんだけ大変だったと思ってンだ……?

街ン中走り回ってよ……コイツら見つけんのにどんだけ体力使ったか分かるか……?」

しかし、そんなテラを宥めてアイエフは続ける。

「それより! なんで私達を助けたの? 二人も目が覚めたし、話があるなら早くして!」

そこでジャッドの傍らに立っていた男性が声を上げる。

「それはワシの方から単刀直入に言おう。

実は、お嬢ちゃん達にワシ等の仲間になってもらいたい!」

また随分と単刀直入すぎる言い方だな、と一行は思ったのだが、一応助けて貰ってるし、何より顔が強面なので言えなかった。

「んー、何で?」

こっちもこっちでずけずけ言えるタイプだったな、とテラは嘆息する。

「そもそも、ねぷねぷはずっと眠っていたからこの大陸の事情を知らないです。

どうか教えてあげて欲しいです」

男性は「ふむ」と声を漏らして口を開く。

「今から十年前――(以下、長くなるので作者によって要約させて頂く)」

 

 

 

十年ほど前、リーンボックスでは国政院の反乱が起こった。

当時の国政院は権力を我がものにしようと現在のギルドの元となる異教徒の集団を集めて協会襲撃を企てた。

そして、それを知った貴族がそれらを討伐し、異教徒達は散り散りに逃れ、貴族達は実績を称えられ、女神に勲章を貰ったとかなんとか。

 

現在の教院長であるイヴォワールは国政院の反乱という事件は協会の恥と見なし、事実を隠蔽しようと貴族の勲章さえも取り上げようとしていた。

 

 

 

以上、長ったらしい説明を要約したが案の定というか何というか同じような長ったらしい説明になってしまった。

(本音を言うとジャッドとテュルコワーズ郷を喋らせたくなかっ(殴

長くなるので頑張って要約させて頂きました。ありがとうございます)

 

 

「要は協会倒すために一緒に戦え、ってことかよ……」

テラはげんなりと肩を落とす。

「助けて貰ってお礼はしたいですけど……協会の人と戦うのはちょっと……」

コンパは遠慮がちに告げる。

ネプテューヌもうんうんと頷く。

「テュルコワーズ卿の気持ちも分かるが、協力に関しては俺も反対だ。

彼女たちは部外者だろう?」

「モンスター達を倒して回れる者などそうそういない。見た目に反してこの者達は勇猛果敢、それに協会に貶められた者同士でもある」

その言葉にテラはうーんと考えさせられるモノはあるが、それでも、である。

「協会に色々とされたのは確かだけど、私達は人と戦ったりしたくないの」

「前に人と戦ったりしなかったっけ?」

そんなネプテューヌに関して、三人はスルー。

ジャッドはハアと溜息を吐く。

「コイツらにも言ったが、別に人手が欲しくて助けたワケじゃない。

テュルコワーズ卿もここは退いてくれ」

しかし、テュルコワーズは納得いかない感じで唸る。

「ではこうしよう! 前線には立たなくても構わん!

他の部分で、皆さんには協力して貰いたい!! 仕事の内容もモンスター退治に限定しよう!」

テュルコワーズの提案に一同は顔を見合わせて、「ま、いいか」的な雰囲気になる。

「まあ、モンスターを退治して欲しいって話なら断る理由もないです」

「確かにそう言う話なら……。でも、協会のいざこざには絶対関わらせないでよ!」

アイエフはそれだけを念押して、この会議はお開きとなった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

テュルコワーズに連れられて一行はすっかり寂れた交易路へと赴いていた。

すっかり人気が無く、それどころかモンスターが往来するような危険なこの場所にいったい何の用があるのかと一行は疑問に思う。

「ここは昔に使われていた交易路なのだが、すっかり新しい交易路が出来てここは誰も通らずモンスターが出現してしまっている!」

どうでもいいけどこのオッサン、テンションとか何とかあんまり貴族っぽく無いな、とかテラは思った。

「我々は協会に対し、武装蜂起を企てている! そしてそれには大量の武器が必要なのだ!」

「へぇ」

「それらを協会に悟られずにこっそり運ぶにはこういった人が通らない道の方が都合がよい」

「で、モンスターを俺達に退治して欲しい、って事か?」

「そう言うことだ! 頼んだぞ!」

ガッハッハ、と豪快に笑ってテュルコワーズはずしずしと足音荒く帰っていく。

絶対あの人貴族じゃないよ、とか一同は思ったのだが口にするのも面倒な事項なので敢えて何も言わずに言われたとおりに仕事に取り組む。

 

どれくらいのモンスターを討伐したか、

 

テラは一体のモンスターを切り伏せて浮かんだ疑問を口にする。

「なあ、一つ思ったんだが」

「何?」

「アイツらは何処から武器を集めてくるんだろうな?」

「どーいうこと?」

ネプテューヌが刀を収めてそう問う。

「リーンボックスではあまり武器とかそう言うモノの製品は発達していないんだ。

そういう以上、他から輸入していることになる。ラステイションやら、プラネテューヌやら、な……」

テラはナイフをしまい込んでそう呟く。

「ちょっと待って。それって……違法じゃない?」

ゲイムギョウ界に置いて、各大陸間の物流は禁止されている。

それもそのはず、文化、文明に各大陸で大きな差があるために協会によって抑えられている。

「以前、ラステイションでアヴニールに突入したことは覚えているな?」

「はいです。確かラステイションを発つ少し前ですぅ」

「そこで面白いことを聞いてな。何かと思ったが、今繋がった」

「テラさーん、勿体ぶってないで教えてよー」

ブーたれるネプテューヌを軽く宥めて、テラは真剣な目付きで答える。

「リーンボックス宛の荷物が幾つか隠されていたらしい」

「つまり……」

「今回の事例にアソコの会社も関与していたって事ね」

「そういうこと」

テラは腕を組んで近くの木にもたれる。

「俺達は悪く言えば犯罪に手を貸している。共犯者、ってことだろうな」

「汚い真似するわねー……」

アイエフはポリポリと後ろ頭を掻いて漏らす。

とりあえず、目的は達成した。

一行は急いで貴族邸を目指した。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「ちょっと、ジャッド!?」

ちょっと、とジャッド、は似ている気がしないでもない。

ともあれ、

アイエフは勢いよく扉を開いてジャッドの名を呼ぶ。

「おお、お帰り」

「そうじゃなくて! どういうことなの!?」

「それより、ネプテューヌ宛に手紙が来てるぞ」

露骨に話を反らしたのが丸わかりであったが一応ネプテューヌは渡された手紙を確認する。

「協会からだよ?」

「……何だってんだ」

テラは背後から手紙をのぞき込む。

『協会』からとしか書いていないが、果たしてそれは信用していい物なのかと一同は思ったが、意を決して封を切る。

「……」

「何て書いてあるです?」

「……なんかこの前の件で謝りたいみたいだよ?」

テラはネプテューヌから渡された手紙に一通り目を通す。

内容は、以前のネプテューヌ毒殺事件についての陳謝についての次第についてが記してある。

女神の直筆であろうサインを添えられている。

「どうする?」

アイエフにそう問われても一行はなかなか好返事は出せない。

ましてや前の事例があるしなー、と思うのだった。

しかし、だ。

「女神は教院長の独断だって言っていた……。信用はまだできないが」

「んー、悪いのは女神様じゃないですし、会いに行って確かめるのはどうです?」

コンパの提案に、何故かジャッドが声を荒げて反論する。

「冗談だろ? 殺されかかったところに行くなんて……!

いちいち真に受けるんじゃない!」

「大丈夫です! 私がねぷねぷに怪しいものを口に入れないように気をつけるです!」

犬?

もしくは子供?

なんて感じのことをテラとアイエフの二人は思ったのであったがまあ、コンパがそう言うのなら大丈夫な感じはするなー、と思う。

まあ、安心感が20%ほど上昇しただけで全体で見ればまだまだ2割程度しか無く、それはつまりネプテューヌには安心感がないと公言できるほどだがこれは本人の名誉のために伏せておいた方がいい事項であろう。

「それに、女神様の前でならそうそう下手なことは出来ないです! いざとなったら女神様が助けてくれるです!」

果たしてそうなのかな、と一同は安心指数が10ほど下がった気がしないでもないのだがコンパの言葉が異様な自信感をつけてくれたのでなんとか顔を出してみようかな、レベルには達していた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

以前に訪れた時と同じように豪勢なパーティが開かれていた。

ネプテューヌは並べられる料理に目移りしつつもコンパとアイエフに制止されてぷくーっと頬を膨らましているところを見るとどうやら前回の経験は全く活かせていないらしかった。

「またパーティだね! リーンボックスってお金持ち?」

ネプテューヌの一言で話が逸れそうだったのでコンパが慌てて軌道修正。

「それより、女神様は何処です? はやく会いたいです……」

「まさかまた『来られませんでしたー』みたいなオチじゃないわよね?

何かあったときのために、逃げる準備しとく?」

とりあえず扉付近の場所を確保して女神が現れるのを今か今かと待つ。

しかし、そんな予想に反して壇上にはテラやアイエフの記憶に深く残るリーンボックスの女神、グリーンハートが優雅に歩みを進めて壇上に備えられている豪華な椅子へと腰掛ける。

「あの人じゃない? やっぱ女神様ってだけあってほかの人とはオーラって言うか、なんか違うよね!」

果たして本質を知っているアイエフはどんな心情でいたかは知らないがとにかく女神が来た以上、罠である可能性は低いと考えて一行は女神の元へと歩み寄る。

「初めまして、の方もいらっしゃいますわね……。私がリーンボックスの女神グリーンハートですわ。

ネプテューヌにはとても悪いことをしましたわね。私の監督不届ですわ。申し訳ありません……」

深々と頭を下げるグリーンハートに一行は少々遠慮しつつも、というかこっちも悪い気がしてきてペコペコと頭を下げる。

「そもそも誰かが守護女神戦争のことを教院長にお話ししてしまったらしいですわ……」

「え、えー? は、はーど? 戦争? 女神様とは初めましてだよね?」

ネプテューヌの言葉にグリーンハートはうーんと小さな声を上げる。

「……とぼけているのね。お友達もいることですし……。

でも、どうか誤解なさらないで欲しいの。この因縁に下界の方々を巻き込むつもりはない、ということを」

果たしてその言葉が何を意味していたのか、それは一同には理解できなかった。

アイエフはおずおずと挙手してグリーンハートに尋ねる。

「あの、グリーンハート様? 少しよろしいですか?

私達、鍵の欠片というアイテムを探しているんですが……」

グリーンハートはアイエフの姿を見て少し目の色を変える。

「あら? あらあら……あいちゃん、貴女も来ていたのね?

普段通りでいいと言いましたでしょう?」

何この人達、知り合い? と一行(アイエフ除く)は思った。

「もしかしてネプテューヌと一緒に旅をしているのですか? ……羨ましいですわ」

「そっか……。女神様は旅をしたくてもできないですね……」

「そういうことではないけれど……。それより、鍵の欠片がどうかなさったのですか?」

そういえばそんな話題してたなー、と自らの流されやすさを軽く呪ったテラがネプテューヌを肘でちょいちょいと小突く。

「あー、私達、鍵の欠片って言うアイテムを探してて強いモンスターが守ってるんだけど、女神様は知らない?」

「んー……、とは言っても私は出不精ですし……。

外のことはあまり……。宣教師さんなら何か知っているかもしれないですわね」

女神様ってそんなに太ってるようには見えないなぁ、とネプテューヌは思う。

もちろん出不精とデブ症は同じ発音でも意味は全く異なるので注意が必要である。

最も出不精はいずれはデブ症に繋がることも無きしにもあらずではあるが。

グリーンハートは脇にはけていた女性を手招きする。

「コンペルサシオンです。貴女達とは以前お会いしましたね」

女性の言葉通り、テラ達と以前会った宣教師の女性だった。

「あー、最初に来たときに会ったもんね!

何処かで聞いたことあると思ったけど、ここの教会かぁ」

「お久しぶりですね。……鍵の欠片というアイテムの存在は分かりかねますが、強いモンスターをお捜しというのなら私が案内いたしましょう。

後日に連絡を致しますのでその時には――」

コンペルサシオンはぺこりと一礼してまた脇にはける。

「と、言うことですわね。さあ、今日のパーティはどうぞ楽しんでいってください。

……安心してください、毒を混ぜるような真似はしていませんわ」

グリーンハートの言葉に一同は、なんとか安心したようでネプテューヌはいの一番に並べられている料理へとかぶりつく。

遅れてコンパも並んでいる料理のあれこれを見てはうんうんと唸っている。

しかし、テラとアイエフは動かない。

グリーンハートはそんな二人を見て予備として置いてある椅子に座るように促す。

多少遠慮しつつも二人は言われたとおりに座り、運ばれてきた紅茶に口を付ける。

「……ベール、いや女神様と呼んだ方がいいか?」

「いいえ、いつも通りに呼んでください」

「え? あの、二人は知り合い?」

アイエフの疑問にグリーンハートはニコリと微笑んで答える。

「まあ、以前に少し」

「……少し面倒があってな、あん時は助かった」

「いいえ、お気になさらず」

グリーンハートはまたニコリと微笑んでさらりと答える。

やはり、格が違うと言うべきか。

テラは未だに鋭い目付きをしながらも、少し申し訳なさそうに肩をすくめる。

「済まなかった……。前は酷いことを言って」

テラは重々しく頭を下げる。

それをグリーンハートは寂しそうな表情で、哀しそうな表情で見ていた。

哀しげな表情でネプテューヌを見ていたとテラやアイエフは思ったが、次に見たとき、彼女の表情はいつも通りの穏やかなものになっていた。

「さ、今夜は盛大なパーティですわ。思う存分楽しんでいってください」

そう微笑みかける彼女を見て、それ以上二人は詮索できなかった。

 

 

 

――。

 


 
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