No.408191

仮面ライダークロス 仮面ライダークロス~真ビギンズナイト~前編

RIDERさん

今回からクロス編です。
駄文ですが、よろしくお願いします。

2012-04-14 13:06:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1104   閲覧ユーザー数:1085

「父さん、母さん!誕生日おめでとう!」

光輝は小さな紙の袋を出して、目の前の二人に渡した。

この二人は光輝の両親である。

「ほう、覚えていたのか!」

光輝の父、白宮隼人は喜んだ。彼と隣にいる光輝の母、白宮優子は、偶然にも誕生日が同じなのだ。

「何が入っているのかな?」

優子が言い、二人は紙袋を開ける。

中にはキーホルダーが入っていた。

隼人のは剣の形をしており、優子のは銃の形をしている。

「ごめんね。こんなのしか思い付かなくて」

「いや、嬉しいよ。」

「大切にするわね。でも、何でこの形を選んだの?」

「それはもちろん」

光輝はいたずらっぽく笑う。

 

「二人が仮面ライダーだからだよ。」

 

 

 

 

「……はっ!」

僕は目を覚まして起き上がり、辺りを見回した。

「……夢か……」

そうだよね、あの二人が生きているはずがない。父さんも母さんも、一年前に死んだんだから…

僕はもう一度辺りを見回す。

この家は一度全焼している。だから、家には写真も、それを撮るためのカメラも、それを納めるためのアルバムもない。あの時に全て失われてしまった。

……まあ、カメラもアルバムも、新しく買えばいいんだけど、問題はそこじゃない。写真だ。

思い出が、失われてしまった。

父さんも母さんも、もう僕の記憶の中にしかいないんだ。

 

それがすごく、悲しかった。

 

「…はぁ…」

僕はため息をついて、時計を見た。そして目が飛び出そうになった。

「9時!?完璧に遅刻じゃないか!」

僕は慌てて身支度を整え、家を飛び出した。時間がないので、ロイヤルランナーに乗って行く。

僕は学園に向かった。

 

 

僕はロイヤルランナーを駐車場に停めて、校舎に走る。

それにしても変だな…校舎から人の気配がしない。

そのことを妙に思いながらも、僕は足を止めなかった。

 

 

…やっぱり変だ。中に入ったのに、人の気配が全くない。

とりあえずと、僕は三年B組の教室の戸を開けた。

 

「この本前に読んだな…」

 

僕を迎えたのは、読書に興じるドナルドの一言だった。

「ドナルド…」

「やあ、おはよう!」

「お、おはよう…」

僕は思わず挨拶した。

「え、ドナルド一人?みんなは?」

「うーん、ドナルドもかれこれ30分くらい待ってるけど、誰も来ないんだよね。」

「いや、気付こうよ。おかしいでしょ、それ」

でもどうしたんだろう?そういえば、ここに来るまで人の気配がなかった。

……これは調べてみる必要があるな。

「ドナルド。学園に人がいるか調べたいんだ。手を貸してくれないか?」

「もちろんさぁ♪」

「ありがとう。じゃあ二手に別れて探るよ」

僕達は別れた。

 

 

僕の思った通りだ。学園から人という人が、全員消えている。

中等部や小等部、先生達まで、本当に全員だ。

僕はドナルドと合流した。

「どう?誰かいた?」

「うーん、誰もいなかったねー。」

ドナルドも同じだった。

みんな本当にどうしたんだろう?ドナルドがいるから、休みってわけじゃないみたいだし……ひょっとして、何かの事件に巻き込まれた、とか?

 

どうしようか迷った挙げ句、僕は一つの打開策を思い付く。

「こうなったら、鳴海探偵事務所に行こう。フィリップさんなら、何か知ってるかもしれない。」

「そうだね。行ってみようか」

ドナルドは了承してくれた。学園に無断で外出するのは気が引けるけど、今は緊急事態だ。

僕はロイヤルランナーで、ドナルドは自転車で、鳴海探偵事務所に向かった。

 

 

しかし、ドナルドってすごいな。自転車でロイヤルランナーについてこられるんだから。

「ハッハッハッハ☆」

しかもあんなに涼しそうに……っていうかどんな脚力?

 

そうこうしているうちに、僕達は鳴海探偵事務所にたどり着いた。

僕は事務所のドアを開ける。

「翔太郎さん!」

そのまま中に入る僕。でも僕を迎えたのは、翔太郎さんでも、亜紀子さんでも、フィリップさんでもなかった。

「あれ?光輝くんじゃん。ドナルドくんもいる」

エリザベスさんだ。クイーンさんやウォッチャマンさん、サンタさんもいる。

「エリザベスさん?それにクイーンさん達も…翔太郎さん達は?」

肝心の翔太郎さん達がいない。クイーンさんが答える。

「翔ちゃんならいないわよ。」

「ついでに亜紀子ちゃんとフィリップくんもね。どこ行ったかもわかんないし」

ウォッチャマンさんが補足した。

それは困る。フィリップさんがいないんじゃ、調べてもらえない。

「そうだ、照井さん!」

僕はクロスフォンを取り出して、照井さんに電話をかけた。

 

でも照井さんは出てくれない。

 

「じゃあ、ドナルドが超常犯罪捜査課に直接電話してみるよ。」

ドナルドは携帯電話を取り出して超常犯罪捜査課に電話した。

「ドナルドです。照井さんいますか?」

繋がったみたいだ。っていうか、ドナルドよく電話番号知ってたな…。

「……え?……はい……はいわかりました。ありがとうございます」

ドナルドは電話を切ってから、僕に結果を伝えた。

「照井さん行方不明だって。」

「照井さんが!?」

僕は驚いた。翔太郎さん達に続いて照井さんまで行方不明になるなんて、こんな偶然があり得るのか?

 

完全に手詰まりだな。さてどうしようか………ん?

「そういえばクイーンさんエリザベスさん、何でここに?学校は?」

今日は休みじゃないはずだけど。エリザベスさんが答える。

「今日は振替休日でお休みなんだよ~ん♪」

「だから来たんだけど、肝心の翔ちゃん達がいないからつまんなくてさ。」

クイーンさんが補足した。

なるほど、振替休日か…。

「そういうあんた達こそ、何でここにいんの?」

クイーンさんに訊かれ、僕は事情を話した。

「それは明らかに事件だね~。」

サンタさんが間延びした声で言った。今度はウォッチャマンさんが尋ねてくる。

「それって、本当に何の前触れもなく起きたの?」

「はい。僕が学園に着いた時には、もう誰もいなくて…僕より先に来ていたドナルドに訊いても知らないって言ってるし…。」

「ドナルドが来た時には、もうああなってたからね。最初は今日は休みかと思ったけど、光輝君が来てくれたから、そうじゃないってわかったんだよ。」

「ところで、ウォッチャマンさんとサンタさんは、どうしてここに?」

ウォッチャマンさんとサンタさんは答える。

「ちょっと面白い話を聞いたから、翔ちゃんに教えた方がいいかなって思って。」

「僕もだよ。なんかヤバそうなんだよね~。」

僕はその話が気になったから、聞いてみることにした。

「話って?」

「実は……」

ウォッチャマンさんが言おうとした、その時、

 

ガチャッ

 

「すいません。依頼をお願いしたいんですけど……。」

ドアを開けて、一人の女性が入って来た。

えっ、今この人依頼って言った?

どうしよう……。

「あの、申し訳ありませんが、僕達はここの従業員じゃないんです。」

「そうなんですか?じゃあ従業員の方は……。」

「今いないんです。」

「そう、ですか…。」

女性はすごく悲しそうな顔をした。

僕はその顔を見てやりきれなくなり、気付けば、

「よかったら、僕が代わりに引き受けましょうか?」

そう言っていた。

 

 

ウォッチャマンさんが耳打ちしてくる。

(ちょっと大丈夫なの光輝くん?君は探偵じゃないんだよ?)

(わかってます。でも困ってる人を見ると、放っておけないんです。もしかしたらなんとかなるかもしれませんし)

「あの…」

女性は不安そうな顔をして僕を見た。

僕は笑顔で返す。

「大丈夫ですよ。まず、お名前を」

「はい…私は神原(かんばら)アリスと申します。」

ウォッチャマンさんが反応する。

「神原って、あの神原アリス!?」

僕も知ってる。すごく有名な俳優さんだ。

「うわ~感激~!」

「ウォッチャマンさん。」

僕は暴走するウォッチャマンさんを制して神原さんに尋ねる。

「それで、依頼というのは?」

「はい。捜してほしい人がいるんです」

「捜してほしい人?」

「はい。私の兄と姉を……」

「え……」

僕は絶句した。神原さんのお兄さんとお姉さん、神原信介(かんばらしんすけ)さんと神原雅(かんばらみやび)さんは、この人と同じくらい有名な俳優さんだ。でも………

「そのお二人は、数週間前に亡くなられているはずですけど……。」

そう、二人は数週間前、ロケバスで移動中に交通事故で亡くなったんだ。

「私もそう思っていました。でも私は見たんです!」

そう言って神原さんは今から三日前に起きたという、ある出来事を語り出した。

 

 

その日の夜は珍しくフリーで、一人帰路についていたのだが、不意に何かの気配を感じて、その方向を見てみた。

そこには……

 

死んだはずの兄と姉が立っていたのだ。

 

二人はニヤリと笑うと、そのままどこかへ行ってしまう。

慌てて追いかけるも、もはや二人は消えたあとだったという……。

 

 

「それって『死人還り』じゃない?」

クイーンさんが言った。

「死人還り?一時期流行ってたあれ?」

僕は尋ねた。死人還りは僕も知っている。今から数ヶ月ほど前に、かなり話題になっていた事件だ。

「でも、それってもう解決したんじゃ…」

「あたしもそう思ってたけど、まだ終わってなかったみたいだね。」

すると、

「それだよそれ!」

ウォッチャマンさんが騒ぎ出した。

「それって、何が?」

サンタさんが答える。

「僕達が翔ちゃんに教えようと思ってた話だよ。死人還りがまた起き始めたみたいなんだ、って」

「えっ!?」

僕が驚くと、今度はウォッチャマンさんが言う。

「僕も翔ちゃん達が解決したと思ってたけど、一体どうしたんだろうね~」

そうか、前の事件は翔太郎さん達が解決したのか…。なら犯人はきっとドーパントだな……。

僕は神原さんに尋ねる。

「それで、僕にその二人を捜してほしい、と?」

「はい。見つけてもらいたいんです。もう一度、お兄ちゃんとお姉ちゃんに会いたいから…」

「その前に一つ訊いておきます。死んだ人が生き返ることは、絶対にない。もしそうだとしても、それはまやかしです。それでも真相を知る覚悟がありますか?」

神原さんは少し黙って考えていた。

そして、

「はい。」

神原さんは答えを出した。

「…わかりました。お引き受けします」

僕は依頼を引き受けた。エリザベスさんが僕に話しかける。

「光輝くん本当に大丈夫なの?」

「正直言って、僕がこの事件を解決できるかどうかはわからない。この人を放ってはおけないんだ。」

「光輝くん…」

「大丈夫。やれるだけのことはやってみるから。ドナルドもいるし。ね、ドナルド?」

「もちろんさぁ♪」

「とりあえず、それっぽい所をあたってみます。」

「あ、ありがとうございます!」

神原さんは頭を下げた。

 

本当はみんなを捜しに行きたいけど、手がかりがない以上、こっちの方を優先すべきだ。

ごめんね、みんな…僕は心の中で謝った。

 

 

 

僕達は神原さんから、信介さんと雅さんのお墓の場所を聞き出し、そこへ向かった。

 

たどり着いた場所はヴェルタース教の教会。ここの墓所だった。

ヴェルタース教っていうのは、世界でも最大の規模を誇る宗教団体で、世界中にその教会がある。風都にあるのも、その一つだ。

そして、ここには僕の父さんと母さんのお墓もあった。

ついでにって言ったら悪いけど、僕はドナルドと一緒に、父さんと母さんのお墓の前でも手を合わせた。

こんな風にお墓参りをする日が来るとは、夢にも思わなかったけど。

神父を務める闇道正夫(あんどうまさお)さんが、僕を見て言う。

「今一人暮らしですよね?大変ですね。」

「…ええ、大変です。でも、音をあげてる暇はありませんから…」

「…お強いですね。」

シスターを務める黒夢満(くろゆめみちる)さんが言った。

「いえ、強くなんかありませんよ。少なくとも、父と母よりは……。」

それから僕は、二人に死人還りのことについて訊いてみた。

「死人還り、ですか…そういえば一時期流行ってましたねぇ…。」

「誰だか知りませんが、ひどいことをするものです。死者の魂を冒涜するとは。我らの会長がお知りになられたらどれだけ憤慨なされるか…。」

闇道さんと黒夢さんはそう言った。

「そうですね。地獄行きは確定だと思います」

どうやらここはハズレらしい。

次は神原さんが二人を見たっていう所に行ってみよう。

「行くよドナルド。」

「うーん…」

「どうしたの?」

「…ハッハッハッハ☆何でもないさぁ♪」

「そう?じゃあ行こうか。」

「アクティーブ!」

僕達は教会をあとにした。

 

 

光輝達が去った後、黒夢は闇道に尋ねた。

「どうしますか?」

「…バレたら面倒だ。手を打っておけ」

「了解しました。」

黒夢は携帯電話を取り出し、どこかに電話をかける。

「…少し脅して、手を引かせてやるか…」

闇道が不気味な笑みを浮かべた。

 

 

僕達は神原さんが信介さんと雅さんを見たっていう所にきた。

「見たところ怪しい点はないな。ここもハズレか……」

さて、手詰まりだ。次はどこを調べようかな?他に死人還りが起きた場所でも調べてみようか……。

僕がそう思っていた時、僕のクロスフォンに電話がかかってきた。

「もしもし、白宮です。」

「私です。」

「神原さん。どうしたんですか?」

「ごめんなさい…依頼を取り消させてくれませんか…」

「えっ!?」

僕は驚いた。

「一体どうして…」

「わけは言えませんが、とにかく依頼を取り消させて下さい。それから、もうこの事件に関わらないで……ありがとうございました…。」

「神原さん!?神原さん!!」

電話は切れてしまった。

「何があったんだ?とにかく一度事務所に戻ろう。行くよドナルド!」

僕はそう言って事務所に戻ろうとする。

でもドナルドは動こうとしない。

「どうしたんだよドナルド?」

僕が声をかけても、ドナルドはどこか一点を見たまま、反応しない。

「一体どこを見て………」

気になってドナルドの視線を追うと、僕は信じられないものを目にした。

 

信介さんと雅さんが立っていたんだ。

 

二人はニヤリと笑ってどこかに行こうとする。

「っ!待って下さい!!」

僕は慌てて追いかけた。ドナルドもちゃんとついてくる。

 

二人は構わず歩いていく。まるで僕達を誘ってるみたいだ。

 

そうこうしているうちに、僕達は広場のような所に着いた。

「くっ!見失ったか…!」

辺りを見回すけど、二人の姿はどこにもない。

その時、

「ふっふっふっ…」

「くっくっくっ…」

 

突然、空から二体のドーパントが現れた。

一体は牛骨の面を着け、黒いローブを纏い、鎌を持ったドーパント。

もう一体は魔女の面を着け、白いローブを纏い、ハサミを持ったドーパントだ。

「我が名はティアー。」

「我が名はバイタル。」

「生と死の境界を切り裂き…」

「死者の魂を呼び戻せる…」

「「至高にして絶対の存在なり!」」

ティアー・ドーパントとバイタル・ドーパント、か……なるほどね。前回の死人還りがドーパントの仕業なら、今回もってことか。

「お前達が死人還りを起こしていたんだな!?」

「ふふふ…その通り。」

「素晴らしいだろう?我らの力は!」

ティアーとバイタルは交互に喋る。

「それで、僕達に何の用だ?」

「なぁに、我らの力を信用せん者どもがいると聞いてな。」

「その不届き者どもに罰を与えに来たのだ。」

要するに、僕達を倒したいってことだね?

「面白い。死者が蘇るなんてあり得ないからね、どうせインチキしているんだろ?僕がそのタネを暴いてやる!」

言いながら僕はクロスドライバーを装着し、

 

〈CROSS!〉

 

「変身」

 

〈CROSS!〉

 

クロスに変身する。

「ならば見せてやろう。」

「我らの力を!」

ティアーは鎌を、バイタルはハサミを、それぞれ持って襲いかかってきた。

ドナルドは僕に言う。

「今日は君がどれくらい強くなったか、見せてもらうね。」

「うん。ドナルドはゆっくり見物してるといいよ」

僕がそう言うと、ドナルドは下がった。

 

僕は鎌とハサミをかわしながら、ティアーとバイタルにダメージを与えていく。

この二体、見た目と武器の割にはそんなに強くない。むしろ弱い部類に入る。

僕はレクイエムサーベルで鎌とハサミをまとめて受け止めた。

「どうしたの?力を見せるんだろ!?」

そのまま鎌とハサミを弾き上げ、レクイエムサーベルで二体を斬りつけた。

「ぐっ!」

「ごあっ!」

二体はアスファルトを転がり、よろめきながらも立ち上がる。

当然この隙を逃す僕じゃない。

僕はすかさずレクイエムサーベルにレクイエムメモリを装填、

 

〈REQUIEM! CANTABILE〉

 

レクイエムサーベルから光線を放った。

「「ぐああああああああああ!!」」

二体は爆煙に包まれる。そして煙が晴れた時、奴らの姿はなかった。

「いない!?逃げ足の速い奴らだ…!」

思わず悪態を突く僕。

でも僕は次の瞬間、見てしまった。

 

男性と女性が、肩を並べて歩いて来るのを。

 

それは、僕にとって最も親しい人物だった。

 

二人は僕を冷たい目で見つめた。

 

僕は知らないうちに二人を呼んでいた。弱々しい声で。

 

 

「父さん……母さん………。」

 

 

「お姉様、一つ訊きたいことがありますの。」

園咲家。食事の場で、若菜は冴子に尋ねた。

「何かしら、若菜?」

「…以前解決された死人還りが再び起きているそうですが、何かご存知?」

同時に、さっきから大盛り炒飯を口に掻き込んでいた井坂の手が止まる。

「……知ってますよその事件。確か、死者を蘇らせられるドーパントがいたとか…実に興味深い。前回はチャンスを逃しましたが、まさか再び起こってくれるとは…そのメモリ、ぜひとも手に入れたい…!!」

井坂の目には貪欲な光が宿っていた。

と、

「違うんだよ井坂君。」

琉兵衛が口を挟んだ。

「違うとは?」

尋ねてくる井坂に、琉兵衛は詳しく説明する。

「あれは、死者を蘇らせるドーパントの仕業ではない。変身のドーパントが、死人に化けていただけなんだ。」

「…そうなのですか、冴子君?」

今度は冴子に尋ねる井坂。

「ええ、前回の死人還りの真相は、そういうことなんです。」

「ふむ…だが、強力なメモリであることに違いはない。やはり欲しい…」

井坂の目に再び貪欲な光が宿る。

冴子は若菜の質問に答えた。

「死人還りのことだったわね。もちろん知っているわ」

若菜は身を乗り出す。

「それで、今回の真相は…?」

 

 

「どうして…どうして父さんと母さんが!?」

クロスは激しく動揺していた。それはそうだろう。一年前に死んだはずの両親が、こうして目の前に現れたのだから。

対する父、隼人は冷たい視線を送りながら、クロスに言う。

「まだわからないのか?生き返ったんだよ俺達は。」

「嘘だ!死人は絶対に生き返ったりしない。父さんだってそう言ってたじゃないか!」

さらに激しく動揺するクロス。

そんな彼に、母、優子は、やはり冷たい視線を送りながら言う。

「でも、これは事実よ。私達は生き返ったの」

「そんなはずない!そうだ、あいつら……」

クロスは声を張り上げる。

「いるんだろ!?出て来い!!出てきて説明しろ!!どんなペテンを使った!?」

「黙れっ!!!」

「!?」

隼人はクロスを黙らせた。

「そんなことはどうでもいい。俺達はな、お前のことを恨み続けてきたんだからなぁ……。」

「僕を?何で…」

「俺達が死んだ理由をよーく思い出してみろ。俺達がなぜ死んだか、それはお前が弱かったからだ!」

「!!!!!」

クロスは衝撃を受けた。これは彼自身一番気にしていることなのだ。

隼人は続ける。

「おかげで俺達は、一条の光も差さない闇地獄を、一年もさまようはめになったわけだ。」

優子も言う。

「憎かったわ。あなたがずっと憎かった」

再び隼人。

「ああ、憎いよ。俺はお前が憎い!」

「う……あ……」

クロスは何も言い返せず、ただ呻くことしかできない。

「だから、死ね。」

「!?」

父親から発された驚くべき言葉に、クロスは再び衝撃を受ける。

「あなたも、私達と同じ苦しみを味わうのよ。」

「心配するな。すぐに生き返らせてやるから」

言うが早いか、、二人はダブルドライバーの片方しかないような形状をしたドライバー、ロストドライバーを装着し、さらに隼人はFと書かれた黒いメモリを、優子はMと書かれた白いメモリをそれぞれ取り出し、起動させた。

 

〈FATHER!〉

〈MOTHER!〉

 

そして、

「「変身」」

二人はロストドライバーのメモリスロットにメモリを挿し込み、開く。

 

〈FATHER!〉

〈MOTHER!〉

 

隼人は男性の天使像をかたどったマスクを被った黒い戦士、仮面ライダーファザーに、優子は女性の天使像をかたどったマスクを被った白い戦士、仮面ライダーマザーに変身した。

二人は圧倒的な体術でクロスを追いつめる。

すると、マザーはWのトリガーマグナムそっくりな銃、マザーマグナムを取り出し、ファザーはクロスのレクイエムサーベルそっくりな剣、ファザーサーベルを取り出し、さらにクロスを攻め立てる。

クロスは相手が両親の姿をしていることもあり、反撃できない。

かといって、二人の攻撃が激しすぎて防ぐこともできない。

反撃も防御もできないクロスは、大きく体力を減らされていく。

 

ついにクロスは膝をついてしまった。

「弱いな光輝。」

「あなた、この一年で何も学ばなかったの?」

「くっ…!」

クロスにかけられる冷たい言葉。クロスはそれでも立ち上がる。

だが、彼はもはや満身創痍。とても戦えない。

「もういい。これで終わらせるぞ」

「そうね。」

ファザーはファザーサーベルのスロットにファザーメモリを装填。

 

〈FATHER・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「ファザーギルティー」

マザーもマザーマグナムにマザーメモリを装填。

 

〈MOTHER・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「マザーカプリッチオ」

二人はそれぞれの武器を構え、

「「はーっ!!」」

ファザーはエネルギーの斬撃を、マザーは巨大なエネルギーの弾丸を放った。

「うわああああああああああああ!!!!!」

クロスはこれをまともに食らい、大ダメージを受けて変身が解けてしまった。

だが、絶命には至っていない。

「しぶとい奴だな。今とどめを刺してやる」

光輝にファザーサーベルを突きつける。

しかし次の瞬間、野球ボールが飛んできてファザーの顔面に直撃した。

「ぐあっ!何だ!?」

ファザーが驚いて野球ボールが飛んできた方向を見ると、

「ハッハッハッハ☆光輝君はやらせないよ♪」

ドナルドが歩いて来ていた。

「貴様…俺達の邪魔をするつもりか?」

「もちろんさぁ♪」

「…いいだろう。まず貴様から殺してやる…」

ファザーはファザーサーベルを構えた。

だが、

「待って。」

マザーがそれを阻んだ。

「光輝、今はまだ生かしておいてあげる。けど覚えておいて。この件から手を引かなければ、私達は今度こそあなたを殺す。」

マザーはファザーを連れてその場を去っていく。

「父、さん……母…さん……」

光輝は最後の力を振り絞って二人を呼ぶ。

しかし、返ってきた答えは、無情だった。

「俺達は」

「私達は」

「「もうお前(あなた)の親じゃない。」」

「………」

光輝は何も言えなかった。

 

 

 

(どう……して……)

 

 

 

光輝の意識は、闇に堕ちた…………。


 
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