No.407893

真・恋姫†無双~恋と共に~ 外伝:こんなアレな日

一郎太さん

壮大な叙事詩。
感動超大作。
涙なしには、読み進められない。
アンケじゃないけど、質問もあるよ。

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2012-04-13 23:45:25 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:7488   閲覧ユーザー数:5306

 

 

こんなアレな日

 

 

大学の授業も終わり、俺はいま、部屋に戻って来ていた。2部屋隣に住む愛紗は部活から戻っておらず、雪蓮たちとの約束がある訳でもない。

 

「……」

 

祭りでのバイトまでは、少しばかりゆっくりしようか。午前中はそんな事を考えていたが、そうもいかなくなった。

 

「……」

 

恋は俺と同時に授業を終え、一緒に帰宅している。璃々ちゃんのベビーシッターのバイトまで、少し時間が残っていた。

 

「……」

 

一緒にゆっくりしていると思うだろ?違うんだよ。

 

「……なぁ、恋」

「…………………………………………………………なに」

 

こんな感じ。返答までに時間が掛かるのはいつもの事だが、今日は、その沈黙の時間がかつてない程に長い。

 

「そろそろ、機嫌直したらどうだ?」

「…………………………………………………………無理」

 

さて、お決まりの回想に入るとしようか。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

大学の新学期も水曜日から始まった。本日も、学年も上がった事で数少ない授業を受ける為に、自宅にて昼食を終えたところだった。

 

「これも頼む」

「……ん」

 

じゃぶじゃぶと水の音が台所になる。少し前から、恋はこうして、俺の手伝いをしてくれるようになっていた。とはいえ、料理は壊滅的に苦手なので、皿洗いなどの後片付けだが。

 

「こっち拭いていいか?」

「ん…お願い」

 

恋は皿を洗い、俺はある程度乾いた皿を、布巾で拭いていく。

 

「恋もだいぶ慣れてきたようだな」

「ん……もう、お皿は割らない」

「流石だ」

 

始めたばかりの頃は力加減が分からず、よく皿を割っていた。しつこい汚れのついたフライパンをへし折った事もあった。だが、それも慣れたもので、こうして洗う方を全般的に任せてもよいくらいだ。

 

「――――――おしまい、っと」

「しゅーりょー」

 

すべての食器を洗い終わり、流しをきれいにして、最後にまな板を洗剤の溶けた水に投入し、後片付けも終了した。

 

「……えらい?」

 

流しの手前に掛けたタオルで濡れた手を拭きながら、恋は問う。大学生にもなってこれはないと言う奴もいるかもしれないが、恋が手伝いを始めたのは、最近だ。ちゃんと褒めてやらなければ。

 

「あぁ、偉いぞ」

「ん……」

 

頭を撫でてやれば、俺に抱き着こうと恋が手を上げる。その時だった。

 

 

 

 

 

 

――――ガダッ……ぼちゃんっ。

 

「「…………え?」」

 

何かが、水に落ちた。俺は恋の頭に手を置いたまま、恋は俺に向かって手を伸ばしたまま、その音の出どころを探る。

 

「「……」」

 

まず目についたのが、波紋の残る水桶と、そこに浸るまな板。そして、その奥から連続的な振動音。

 

「…………あ」

 

これは俺の声だ。身体を傾けて底を覗き見れば、水の中で、恋の携帯が震えている。

 

「パーカーのポケットから落ちちまったみたいだな……」

「……」

 

おそらくだが、俺に抱き着こうと手を伸ばした時にパーカーの裾も巻き上げ、そのままポケットから落としてしまったのだろう。

 

「こりゃ、もう駄目だな」

「……」

 

電池の蓋を開け、四角い電池を取り出す。振動は止まった。

目に見える範囲で水分を拭き取り、再度電池を挿入する。何度か試してみたが、すぐに振動を起こしてしまい、電源を入れるまでもなく、完全に壊れてしまった事が分かる。

 

「あとで買いに……っと、今日は2人とも夜までバイトだな。明日、買いに行くか…………っと、恋?」

 

振り返れば、恋の姿がない。……いや、俺の視線の高さにないだけで、視界には入っていた。床に崩れ落ち、両手両膝をついて首を垂れている。

 

「…………orz」

「ま、そうなるわな」

 

とりあえず、慰めないと。

 

 

 

 

 

 

orzの体勢から段々と力を失い、とうとう床に伸びてしまった恋の傍に腰を下ろす。

 

「なんというか……残念だったな」

 

恋の頭を撫でる。

 

「……画像も、動画も……ぜんぶ、消えた」

「だろうなぁ」

 

ただ電源がつかなくなったとかだったら可能性はあるが、完全に水没だからな。電池を入れてもただ震えるばかりだし。

 

「バックアップ取ってないデータも……たくさん……」

 

ついでに恋の声も震えている。こんな状態は数年ぶりかもしれない。

 

「とりあえず、携帯ショップに行ってみるか。夜はバイトがあるし、今日は学校を休もう」

 

恋の為なら、初回の授業を休むことなど、造作もない。だが、俺の予想にはして、恋は床に顔をくっつけたまま首を振った。

 

「だめ……今日は、稟ちゃんの講義がある……」

「あー……妄想学か……」

「休むわけには、いかない……」

 

稟ちゃんというのは、うちの大学の准教授だ。何気に、俺たちのゼミの先生だったりする。ちなみに面子は、俺・恋・雪蓮・冥琳・霞の5人と、なんともまぁ、身内で固まったゼミだ。もっとも、昨年から始まったばかりなので仕方がないといえば、仕方がないが。

 

「恋の、インスピレーションの……師匠……」

「だもんな」

 

ちなみに、妄想学というのは、稟ちゃんが俺達と対して変わらない年齢にも関わらず開拓した学問だ。方法論の世界に新たな切れ込みを入れ、新しい分野の学問として認められた事は、その世界では有名らしい。今年度から、前期後期と講義もある。

あと、『稟ちゃん』と呼んでいるのは、彼女自身が、『先生と呼ばれると、自分だけ年を取った気持ちになる』と発言した事から、雪蓮が呼び始めた為だ。

 

「アレを休んだら……執筆にも影響が……」

「だよなぁ」

 

さらに補足だが、彼女は妄想学の第一人者でありスペシャリストでもある為、よく妄想の世界に耽る。些細な事がきっかけとなって彼女の妄想癖を引き起こし、自身の世界にのめり込んで、さらには鼻血を噴く事もしばしばだ。

 

「……今日は、我慢する」

 

そういう事となった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

稟ちゃんの講義+αも終わり、俺達は部屋に戻る。仲の良い友人からの連絡はたいてい俺と恋の両方に来る為、問題はない。だが、恋には仕事もあった。

 

「――――今日は何も連絡してないってさ」

「……………………………………………………ありがと」

 

何故か俺まで番号を知っている恋の小説の担当に電話をし、事情を話して、何か連絡はしていなかったか問う。問題はないようだ。

しかし、恋の気分はどんどんと落ち込んでいくばかりだ。

 

そうこうしているうちに、互いのバイトの時間が迫る。

 

「ほら、恋。そろそろ行かないと。璃々ちゃんが幼稚園から戻って来るぞ」

「ん……」

 

流石に璃々ちゃんのような子どもの世話と自身の事情を天秤にかける事はなく、恋はもぞもぞと、orzの体勢から立ち上がった。

 

「……何やってるんだ?」

 

だが、その動きも、途中で止まる。両手両足を床につけ、ぴんと腕と脚を伸ばした状態で、ぷるぷると小刻みに震えている。

 

「………………………………生まれたての、子鹿」

 

相当に末期だった。

 

 

壊れかけの恋をなんとか送り出し、俺もバイトに向かう。商店街を歩いて通り抜け、その先にある、1軒の居酒屋の裏口をくぐる。

 

「――――恋も大袈裟な奴よ。携帯依存症というやつか」

「携帯ってよりは、中に入ってるデータの方かな。画像やら何やらが全部パァになったからな」

 

祭さんの指導のもと、食材の下拵えをしながら会話をする。祭さんも苦笑しながら、恋の不幸を労わってくれていた。

 

 

 

 

 

 

俺がそれに気づいたのは、21時を回った頃だった。溜まったゴミを捨てる為、裏口を出た時の事だ。

 

「……………………一刀」

「うぉっ!?……って、恋!?どうしたんだ?」

 

扉を開ければ、なんと恋が立っていた。4月とはいえ、夜は少々肌寒い。いくら健康な恋とはいえ、多少は堪えるだろう。

 

「……家の鍵、忘れた。あと、財布も」

「…………マジか」

 

そういえば、碌に荷物の確認もしてなかったからな。

 

「いつから此処にいるんだ?」

「ちょうど……来たばっかり」

「そっか」

 

少しだけホッとする。恋の事だ。いくら顔見知りとはいえ、財布もないのに店に入るのは憚られたのだろう。長い間ここで待っていたらと思うと悲しくなるが、実際はそうではなかった。

 

「いいよ。入りな。何か作るよ」

「……いいの?」

「あぁ。客足も落ち着いたからな」

「金曜なのに……」

「たぶん、もうすぐ第二陣が来るはずだ。カウンターなら、邪魔にならないだろ」

「……ありがと」

 

両手が塞がっている俺は、抱き着いてくる恋の顔に頬を寄せるのだった。

 

 

 

 

 

 

「(パクパクムシャムシャモキュモキュ――――)」

 

客は少ない。恋に適当におかずを作り、白米と一緒に出してやれば、いつものように食べ始める。

 

「給料から引いておくからな」

「へーい」

 

からからと笑う祭さんと、別の客のツマミを作る俺。恋はカウンターの端で、料理に舌鼓を打っている。

 

「――――ごちそうさまー」

「おう、またいつでも来るがいい」

 

豪気な接客だ。最後の客も帰り、店内には俺と祭さん、そして恋の3人となる。時刻は23時。

 

「――――祭さん、片づけ終わったよ」

「そうか。なら、今日はもう帰るといい。金曜の夜にこの調子なら、もう客も来ないだろう」

 

言いながら、祭さんはエプロンを外す。恋は祭さんに言われ、入り口の暖簾を回収していた。

 

「それじゃ、帰るか」

「ん……バイバイ」

「おう、またいつでも来い。今度は、客としてな」

「ん……」

 

テレビを見ながら日本酒を呷る祭さんに別れを告げ、俺達は店を出た。

 

 

手を繋ぎながら、商店街を歩く。週末という事もあり、二次会に行くサラリーマン、カラオケへと向かう大学生などなど、さまざまな人で道は溢れていた。

 

「…………一刀」

「どうした?」

 

ふと、恋がこちらを向いた。

 

「お願いが、ある……」

「珍しいな。いいよ、言ってごらん」

 

食事以外で恋がおねだりをするのは、珍しい。せいぜい、ネタに使わせてくれ、くらいだ。いまは腹も膨れている為、食事関連のお願いでない事は、容易に想像がついた。

 

「……明日、携帯買いに行くの……ついて来て」

「なんだ、そんな事か」

 

御安い御用だ。

 

「……恋もそろそろ、スマフォが欲しい」

「まぁ、ずっとガラケーだもんな」

 

高校の時からずっと使い続けている携帯だ。そろそろ社会の波に乗ってもいいかもしれない。

 

「それで……割引に入る」

「割引?」

 

学割ならずっと使っているはずだが。

俺の疑問を他所に、恋は言葉を続ける。その頬は、店で飲んだ酒の所為以外の理由で、朱くなっていた。

 

「………………家族割。ダメ?」

「オチがないからって、そういう突発的なネタはやめなさい」

 

なんかもう、グダグダだった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

むしゃくしゃして書いた。反省はしていない。

 

という訳で、実話。

本日朝、一郎太の携帯が水没致。

欠席出来ない授業があったので、昼間は買いに行けず、放課後もバイトまで1時間もなかった為、断念。

バイト終了は22時だったので、何も出来ず。

明日、新しい携帯を買いに行きます。

ずっとガラケーだったので、スマフォに変えるいい機会かも。

 

一郎太はド〇モユーザーなのですが、どのスマフォがいいかオススメがある方は、是非お教えください。

 

ではまたいずれ。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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